Quantcast
Channel: ~星の欠片~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

銀の糸 7

$
0
0
イメージ 1


皇女チェギョン・・・生まれて初めて経験する遊園地でのデートは、とても楽しく瞬く間に時間が過ぎた

子供の様にはしゃぎ歩き回ったチェギョンも、日が傾く頃には顔に疲れの色を浮かべ初めた


散々振り回された≪チェギョンのお姉さん達≫も、さすがにお疲れのご様子である

そんな事に気がついてしまったシンは、チェギョンに残念そうに話しかけた

『チェギョン・・・次の乗り物で最後にしよう。夕食を済ませたら送っていくよ。』
『えっ?・・・あ・・・うん。そうだね・・・じゃあ観覧車に乗りたい。』

非常に残念そうにするチェギョンだったが、シンにはもう帰国してからのビジョンが見えていたのである

きっとこのシン・チェギョンと、帰国してからは恋人になれる・・・

敢えて今・・・無理をさせる必要はなく、また韓国に戻ってからゆっくりデートできたらいい・・

そんなことを考えていた

互いに同じ方向に気持ちが向いていながらも、見ている方向は真逆なのである


チェギョンを伴って乗りこんだ観覧車・・・ゆっくりと観覧車は地上を離れ夕暮れの空に向かって上っていく

チェギョンは高い場所から地上を見渡す様に眺め、夕陽に染まったその表情はなぜかとても悲しげに見えた

『そんなに残念がらなくてもいい。また来たらいいんだから。』
『えっ?・・・うん・・・』

そうシンが言っても落胆の表情のままのチェギョンに、シンは聞きたかった帰国の日程を問い掛けた

『もう出逢ってから二週間が過ぎたけど、チェギョンの帰国はいつだ?』
『私は再来週って言われているの。日にちまではまだ確定していないけど。』
『そうか。。。だったら同じ頃帰国だな。同じ飛行機だったら退屈しないな。くくっ・・・』
『うん。そうだね・・・』

そんなことはあり得ないと思いながらも、僅かばかりの夢を見る

やがて観覧車が地上に戻ってくると、辺りはすっかり夕闇が訪れ・・・

なんだか足取りの重いチェギョンを心配そうに見つめながら、シンはチェギョンの頭を励ます様に撫でながら歩く

『どうした?元気がないな。』
『えっ?元気だよ。』
『くくっ・・・美味しいもの食べに連れて行くから、元気になれ!』
『・・・うん♪』

折角の残り少ない自由時間・・・楽しく過ごさないと一生後悔する

チェギョンは笑顔を取り繕うとシンの顔を見上げ笑ってみせた



すっかり暗くなってしまった頃遊園地を出た二人は、駐車場に停めてある車に乗り込み食事に出かけた

気がつくと毎日のように食事を共にしている二人。。。大学の講義の時間以外は、常に一緒にいた様なものだ

シンはいつか行ってみたいと思いながらも、一人で入るには気後れし・・・今まで一度も行けなかった店へと

チェギョンを連れて行った

そんなに格式ばった店ではない。。。だが、美味しいお肉を食べさせてくれると評判の店である

二人は案内されたテーブルに向かい合って腰掛け、シンはグルメ雑誌などでよく見かけるメニューを

二人分注文する

『ここのステーキ美味しいって評判なんだ。』
『そうなの?』
『あぁ、肉が口の中で蕩けるらしい。』
『そっか~~すごく楽しみだ♪お腹空いて来ちゃったね。』
『あぁ。昼間ハンバーガーだけだもんな。くくっ・・・きっとアレとは比べ物にならない。』
『そんなことないよ!アレだってすごく美味しかった。私…感動したもの。』
『感動?』
『うん、感動・・・なんかいっぱい感動してる。』
『安上がりだな。チェギョンは・・・くくくっ・・・』

やがてオーダーされたステーキ肉が、食欲をそそる匂いを漂わせ二人の前に運ばれる

シンはチェギョンがペーパーエプロンをしている間に、自分の肉を一口サイズに切り分け、

チェギョンの物と交換する

『あ・・・ありがとう。』

確かに料理長などにそう言った配慮を受けることはあっても、今まで一度として同世代の異性に

そんなことはされたことが無い

(そんなに優しくしないで欲しい・・・)

自分のステーキ肉を微笑みながらカットしているシンに、チェギョンは気付かれない様に切ない視線を向けた




一緒にいて楽しい時間はチェギョンにとって段々辛いものとなっていく

自分の中でシンが大きくなればなるほど、別れの時辛さが想像できた

もちろん・・・チェギョンは自分の素姓を言うつもりもなければ、別れの挨拶もするつもりはなかった

ただ留学先で出逢った一カ月間の友人として、忘れ去られるだろうと思っていた

毎日がチェギョンにとって初めての連続で、驚いたり幸せだったりする日々・・・

残り少ない時間を精一杯シンと過ごしたい。。。帰国まであと一週間に迫った日の朝のことだった



朝食の時間、チェ尚宮が神妙な面持ちでチェギョンに話しかけて来たのだ

『皇女様・・・』
『チェ尚宮さん!ここではチェギョンよ。』
『あ…申し訳ございません。チェギョン様。。。大変残念なことをお伝えせねばなりません。
皇帝陛下からのご命令で、明朝帰国のチャーター機がご用意されました。』
『えっ?ちょっと待って!!チェ尚宮さん・・・それ…どういう事?
あと約束は一週間残っているわ。チェ尚宮さんの力でなんとかして!!』
『申し訳ございません。皇太子殿下が・・・チェジュン様の容体が、あまりよろしくないそうです。』
『チェジュンが・・・』
『チェギョン様、親しくしていただいたご友人に、今日お別れのご挨拶をお済ませください。』
『・・・・・解ったわ・・・』

チェ尚宮としてもこんなことは言いたくなかったのである

この三週間、チェギョンが皇女としてではなく普通の女の子として、実に生き生きと愛らしく変化して行くのを

毎日見ていたチェ尚宮は知っていた・・・

自分の身を切られる思いでチェギョンに残酷な宣告をしたのである

だがこれも皇女として生まれついた者の運命・・・

いつも通りの時間シンの車に乗り込むチェギョンを、チェ尚宮は深々と頭を下げて見送った

出来ることならば痛みを遺した思い出に、して欲しくはなかったのである



イメージ 2

いつもすみませんね~~急展開で(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
このお話は短編の為・・・10話で完結させたいと思っております。
なので・・・ガンガン話が進みます~~♪
恐らく・・・この先の展開を読んでいる方もおられるでしょうが
『しーーーっ!!』だよ♪
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>