ミンとイ・スンレの後姿を見送りながら、チェギョンはなんともいえない複雑な想いに囚われた
言い出した自分でさえ戸惑うイ・スンレとの親子鑑定の結果・・・母娘であることが証明されたが
その事によって何かを期待していた訳ではない
ただ寂しかったから真実を知りたかっただけ・・・逢ってみたかっただけ・・・なのである
胸の前で握り締めたままの封筒を見つめ、チェギョンは一つ溜息を吐いた
(もしかして・・・自覚のないままお金の無心をしていたのかな・・・)
欲しかったものはそんなものではない
自分でも上手く表現できないが、血を分けた人と逢えたというのに自分の想いが伝わらなかったような気がする
(ヒョリン・・・あのヒョリンが亡くなったお母さんの産んだ娘?)
父という人が溺愛しているヒョリン・・・ヒョリンは亡くなった母からもそして両親からも愛されて育った
それを聞いてしまった時、妬ましさというよりもっと醜い感情が自分の中に湧き起こるのを知った
誰からも愛されて生きて来たヒョリンと自分との違いを、まざまざと見せつけられた思いだった
ミンに送られシン家に戻ったイ・スンレは、夫のナムギルの部屋を訪ねた
『あなた・・・今戻りました。』
『こんな時間にイ家の奥さんと一体どこに行っていたんだい?』
『それを話したくてここに来たんです。』
『何か深刻な話なのかい?』
『ええ。とても深刻で重大なお話です。』
『お前がそんな顔をするなんて・・・一体何があったんだい?』
『実は・・・』
イ・スンレは今日めまぐるしく起こった出来事を、夫のナムギルに事細かに話して聞かせた
もちろん夫は笑いさえ浮かべ、冗談としてその話を受け取った
『あなた冗談などではないんです。』
『そんなドラマみたいな話・・・実際に起こるわけがないだろう?』
『あなたもきっとあの子に逢ったら解る筈です。』
『だったら・・・うちに居るヒョリンは私の子ではないというのかい?』
『はい。そうです。あなたは信じようとなさらないと思い、あの子の毛髪を貰って来ました。
早急にあなたとの親子鑑定をしてください。』
『本気で言っているのかい?スンレ・・・』
『本気です。真実が書かれているという日記帳をあの子から借りてきました。
読んでみたらいかがですか?きっとあなたも何かを感じる筈です。』
『ヒョリンが・・・私の子ではなく赤の他人だと?』
『ええ。私は実の娘のあの子にお金だけ渡して帰ってきてしまいました。
どう対応していいのか分からなくてそんなことをしてしまったけれど、せめて手くらい握ってあげればよかった。
抱きしめてあげればよかった・・・私の子供なのに・・・どうしてそれが出来なかったのでしょう。
そんなことさえも思いつきませんでした。情けない・・・』
涙にくれるイ・スンレ・・・妻のそんな姿を初めて見たナムギルは、その晩夜を徹して
チェギョンの育ての母が遺した黒い革表紙の日記帳を読み続けた
そして翌朝一番に向かった先は、大学時代からの親友で信用のおける医師の元だった
つまりナムギルは妻の昨晩の話が真実だと信じたのである
だがそれでも自分との親子鑑定をする気持ちになったのは、ヒョリンに対する気持ちのけじめを
つけたかったからなのかもしれない
一方チェギョンの住むアパートからイ・スンレを送り届けたミンは、すっかり日付も変わった時間になって
漸く家に帰りついた
このところ心ここにあらずだったミンを心配していた夫と息子のシンは、遅い時間に外出など
することのないミンがなかなか帰って来ないことに不安を募らせ、二人揃ってリビングで待っていた
そこにミンが帰って来たのである
音をさせない様にそっと家の中に入っていったミン・・・だがリビングに入っていくと夫と息子は雁首揃えて
自分を待っていたのである
『ミン・・・遅かったじゃないか。』『母さんどこに行っていたんだよ!』
まさに似たもの父子である
『あ・・・二人共起きていたの?遅くなってごめんなさい。』
『そんなことはいいから!どこに行っていたんだよ!!』
『う~~ん・・・』
言い淀むミンに夫のヒョンは窘めるように言う
『ミン・・・一人で悩んでいないで私達にも相談したらどうだ?
この間から様子がおかしかったのは私もシンも気が付いていたんだ。』
『あ~・・・気付かれていたのね。心配掛けてごめんなさいね。』
ミンは意を決した。チェギョンがシン家の娘と判明した以上、もう黙っていることはない
二人に正直に話そうと思った
『実はね・・・シンとヒョリンとの縁談をお断りしようかと思って・・・』
『えっ?乗り気だったのは母さんだろう?』
『そうだミン。お前はシン家の奥さんと非常に懇意にしていただろう?なのになぜだ?』
ミンは大きく深呼吸をした
『ヒョリンとでは・・・亡きお父様達の願いは叶わないからよ。』
『はぁ?』『ミン・・・言っている意味がよく理解できない。詳しく説明しなさい。』
『つまり・・・ヒョリンはシン家の娘じゃないってことなの。』
『えぇっ!!』『なにっ!!」
二人共ソファーから立ち上がらんばかりの剣幕だ
『一体どういうことだね?』
『ヒョリンがシン家の娘じゃないって言うなら…本当の娘はどこに居るんだ?』
『本当の娘は・・・シン、あなたも知っている人よ。』
『あぁ?』
怪訝そうな顔をする夫とシンに、ミンは最近起こった一連の騒動の話を聞かせた
深夜であるにも拘らず二人はその話を真剣に聞き入った
『つまり・・・あのチェギョンがシン家の本当の娘だって言うのか?』
『そうよ。』
『またタイミングよくミンはそのチェギョンさんとやらに逢ったものだな。』
『あの時声を掛けたのが私でよかったわ。変な人が関わってきたとしたら犯罪に発展する可能性もあるし・・・』
『本当にお前が通りかかってよかったよ。』
『だがどうしてそんな酷いことが出来るんだ?妬みの気持ちからそんなことが出来るものなのか?』
シンが言っているのは生まれたばかりの赤ん坊をすり替えたヒョリンの生みの母のことだ
『普通の神経ではそんなことができる筈もないわ。生まれたばかりの自分の子供を手放すなんて・・・。
でも相当、生活して行くのに切羽詰まった状態だったみたい。』
『ミン・・・そのチェギョンさんは、育ての親にちゃんと愛情を受けたのか?』
『受けてないと思うわ。日記にもチェギョンさんの事は書いていないのに、ヒョリンの成長に関しては
嬉しそうに書き記してあったくらいだもの・・・』
『信じられない。そんな酷い母親がいるのか?』
『母さん・・・俺はチェギョンとそれ程親しいわけじゃないが、あいつは友達にも
いつも一線引いたところがあった。遊びに行こうと誘っても絶対に来ないし、あいつの母親だった人は
学校のイベントにも顔を出したことがないそうだ。
入学式にさえ一人きりだったと、親友のガンヒョンが以前ぼやいていたくらいだ。
ヒョリンはシン家でぬくぬくといい暮らしをして来たって言うのに、なぜチェギョンばかりが辛い思いを
しなきゃならないんだ!!おかしいだろう?』
『そうねシン、すごくおかしいことだと思うわ。だからお母さん・・・頑張って二人を親子だと認めさせたの。』
『それで・・・ミン、そのチェギョンさんはシン家に引っ越したのかい?』
『いいえ。まだナムギルさんが何も知らないの。
恐らく今スンレさんがナムギルさんを説得している筈よ。もう一度親子鑑定をする事になりそうね。
その結果が出たらシン家に迎えてくれると思うわ。そうでなければ私が納得できないわ。』
『そうか。一人きりでどんなに心細いだろうな。ミン・・・力になってやりなさい。』
『ええもちろんよ。』
『俺も・・・出来ることがあったら力を貸すから。』
『ヒョリンが帰って来たら恐らく大騒動になるわ。シンはその時、チェギョンさんの盾になってあげて。
本当はあの子が・・・あなたの許嫁なんだから・・・』
『あぁ・・・』
シンの頭の中にいつも一歩下がった場所でニコニコと笑っているチェギョンの姿が浮かんだ
先日家で逢った日から、チェギョンはどれだけ心を乱されたかと思うとシンの胸まで痛んだ
明日チェギョンを励ましに訪ねてみよう・・・そんなことを思いついたシンは、なかなか寝付けないまま
長い夜を過ごすのだった
言い出した自分でさえ戸惑うイ・スンレとの親子鑑定の結果・・・母娘であることが証明されたが
その事によって何かを期待していた訳ではない
ただ寂しかったから真実を知りたかっただけ・・・逢ってみたかっただけ・・・なのである
胸の前で握り締めたままの封筒を見つめ、チェギョンは一つ溜息を吐いた
(もしかして・・・自覚のないままお金の無心をしていたのかな・・・)
欲しかったものはそんなものではない
自分でも上手く表現できないが、血を分けた人と逢えたというのに自分の想いが伝わらなかったような気がする
(ヒョリン・・・あのヒョリンが亡くなったお母さんの産んだ娘?)
父という人が溺愛しているヒョリン・・・ヒョリンは亡くなった母からもそして両親からも愛されて育った
それを聞いてしまった時、妬ましさというよりもっと醜い感情が自分の中に湧き起こるのを知った
誰からも愛されて生きて来たヒョリンと自分との違いを、まざまざと見せつけられた思いだった
ミンに送られシン家に戻ったイ・スンレは、夫のナムギルの部屋を訪ねた
『あなた・・・今戻りました。』
『こんな時間にイ家の奥さんと一体どこに行っていたんだい?』
『それを話したくてここに来たんです。』
『何か深刻な話なのかい?』
『ええ。とても深刻で重大なお話です。』
『お前がそんな顔をするなんて・・・一体何があったんだい?』
『実は・・・』
イ・スンレは今日めまぐるしく起こった出来事を、夫のナムギルに事細かに話して聞かせた
もちろん夫は笑いさえ浮かべ、冗談としてその話を受け取った
『あなた冗談などではないんです。』
『そんなドラマみたいな話・・・実際に起こるわけがないだろう?』
『あなたもきっとあの子に逢ったら解る筈です。』
『だったら・・・うちに居るヒョリンは私の子ではないというのかい?』
『はい。そうです。あなたは信じようとなさらないと思い、あの子の毛髪を貰って来ました。
早急にあなたとの親子鑑定をしてください。』
『本気で言っているのかい?スンレ・・・』
『本気です。真実が書かれているという日記帳をあの子から借りてきました。
読んでみたらいかがですか?きっとあなたも何かを感じる筈です。』
『ヒョリンが・・・私の子ではなく赤の他人だと?』
『ええ。私は実の娘のあの子にお金だけ渡して帰ってきてしまいました。
どう対応していいのか分からなくてそんなことをしてしまったけれど、せめて手くらい握ってあげればよかった。
抱きしめてあげればよかった・・・私の子供なのに・・・どうしてそれが出来なかったのでしょう。
そんなことさえも思いつきませんでした。情けない・・・』
涙にくれるイ・スンレ・・・妻のそんな姿を初めて見たナムギルは、その晩夜を徹して
チェギョンの育ての母が遺した黒い革表紙の日記帳を読み続けた
そして翌朝一番に向かった先は、大学時代からの親友で信用のおける医師の元だった
つまりナムギルは妻の昨晩の話が真実だと信じたのである
だがそれでも自分との親子鑑定をする気持ちになったのは、ヒョリンに対する気持ちのけじめを
つけたかったからなのかもしれない
一方チェギョンの住むアパートからイ・スンレを送り届けたミンは、すっかり日付も変わった時間になって
漸く家に帰りついた
このところ心ここにあらずだったミンを心配していた夫と息子のシンは、遅い時間に外出など
することのないミンがなかなか帰って来ないことに不安を募らせ、二人揃ってリビングで待っていた
そこにミンが帰って来たのである
音をさせない様にそっと家の中に入っていったミン・・・だがリビングに入っていくと夫と息子は雁首揃えて
自分を待っていたのである
『ミン・・・遅かったじゃないか。』『母さんどこに行っていたんだよ!』
まさに似たもの父子である
『あ・・・二人共起きていたの?遅くなってごめんなさい。』
『そんなことはいいから!どこに行っていたんだよ!!』
『う~~ん・・・』
言い淀むミンに夫のヒョンは窘めるように言う
『ミン・・・一人で悩んでいないで私達にも相談したらどうだ?
この間から様子がおかしかったのは私もシンも気が付いていたんだ。』
『あ~・・・気付かれていたのね。心配掛けてごめんなさいね。』
ミンは意を決した。チェギョンがシン家の娘と判明した以上、もう黙っていることはない
二人に正直に話そうと思った
『実はね・・・シンとヒョリンとの縁談をお断りしようかと思って・・・』
『えっ?乗り気だったのは母さんだろう?』
『そうだミン。お前はシン家の奥さんと非常に懇意にしていただろう?なのになぜだ?』
ミンは大きく深呼吸をした
『ヒョリンとでは・・・亡きお父様達の願いは叶わないからよ。』
『はぁ?』『ミン・・・言っている意味がよく理解できない。詳しく説明しなさい。』
『つまり・・・ヒョリンはシン家の娘じゃないってことなの。』
『えぇっ!!』『なにっ!!」
二人共ソファーから立ち上がらんばかりの剣幕だ
『一体どういうことだね?』
『ヒョリンがシン家の娘じゃないって言うなら…本当の娘はどこに居るんだ?』
『本当の娘は・・・シン、あなたも知っている人よ。』
『あぁ?』
怪訝そうな顔をする夫とシンに、ミンは最近起こった一連の騒動の話を聞かせた
深夜であるにも拘らず二人はその話を真剣に聞き入った
『つまり・・・あのチェギョンがシン家の本当の娘だって言うのか?』
『そうよ。』
『またタイミングよくミンはそのチェギョンさんとやらに逢ったものだな。』
『あの時声を掛けたのが私でよかったわ。変な人が関わってきたとしたら犯罪に発展する可能性もあるし・・・』
『本当にお前が通りかかってよかったよ。』
『だがどうしてそんな酷いことが出来るんだ?妬みの気持ちからそんなことが出来るものなのか?』
シンが言っているのは生まれたばかりの赤ん坊をすり替えたヒョリンの生みの母のことだ
『普通の神経ではそんなことができる筈もないわ。生まれたばかりの自分の子供を手放すなんて・・・。
でも相当、生活して行くのに切羽詰まった状態だったみたい。』
『ミン・・・そのチェギョンさんは、育ての親にちゃんと愛情を受けたのか?』
『受けてないと思うわ。日記にもチェギョンさんの事は書いていないのに、ヒョリンの成長に関しては
嬉しそうに書き記してあったくらいだもの・・・』
『信じられない。そんな酷い母親がいるのか?』
『母さん・・・俺はチェギョンとそれ程親しいわけじゃないが、あいつは友達にも
いつも一線引いたところがあった。遊びに行こうと誘っても絶対に来ないし、あいつの母親だった人は
学校のイベントにも顔を出したことがないそうだ。
入学式にさえ一人きりだったと、親友のガンヒョンが以前ぼやいていたくらいだ。
ヒョリンはシン家でぬくぬくといい暮らしをして来たって言うのに、なぜチェギョンばかりが辛い思いを
しなきゃならないんだ!!おかしいだろう?』
『そうねシン、すごくおかしいことだと思うわ。だからお母さん・・・頑張って二人を親子だと認めさせたの。』
『それで・・・ミン、そのチェギョンさんはシン家に引っ越したのかい?』
『いいえ。まだナムギルさんが何も知らないの。
恐らく今スンレさんがナムギルさんを説得している筈よ。もう一度親子鑑定をする事になりそうね。
その結果が出たらシン家に迎えてくれると思うわ。そうでなければ私が納得できないわ。』
『そうか。一人きりでどんなに心細いだろうな。ミン・・・力になってやりなさい。』
『ええもちろんよ。』
『俺も・・・出来ることがあったら力を貸すから。』
『ヒョリンが帰って来たら恐らく大騒動になるわ。シンはその時、チェギョンさんの盾になってあげて。
本当はあの子が・・・あなたの許嫁なんだから・・・』
『あぁ・・・』
シンの頭の中にいつも一歩下がった場所でニコニコと笑っているチェギョンの姿が浮かんだ
先日家で逢った日から、チェギョンはどれだけ心を乱されたかと思うとシンの胸まで痛んだ
明日チェギョンを励ましに訪ねてみよう・・・そんなことを思いついたシンは、なかなか寝付けないまま
長い夜を過ごすのだった
あはは~~ん♪油断大敵(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
すまぬ~~今日はムーミン日なので
明日一括でお返事させていただきます。
コメントは御褒美にいただいておきます~~❤
すまぬ~~今日はムーミン日なので
明日一括でお返事させていただきます。
コメントは御褒美にいただいておきます~~❤