新年度が始まり其々が新しい生活に馴染もうとしている頃、ギョムは4歳の誕生日を迎えた
宮殿中がお祝いムードだというのに、なぜか私は気分が優れず侍医の診察を受けた
そして判明した第二子懐妊♪≪次はまだか?≫と待ちわびていた三陛下は、その知らせに大喜びし
妊娠初期の私を十分すぎるほど労わってくれた
大学を卒業したことで夫婦同伴の公務スケジュールもぎっしり詰まっていたのだけど
やはりすべてをキャンセルし、私はお腹の中の子を育むことに専念するよう命が下された
シン君などは寝相の悪いギョムに自室で眠る様にと言い掛けたが、よくよく考えたらあと一年でギョムも
皇位継承者としての教育を受ける立場となる
甘えられるのはあと一年だけ・・・そう思ったらギョムに一人で自室で眠る様になんて言えない
渋るシン君を説得しあと一年間は傍に置いてやりたいとお願いした
ギョムを懐妊した時と今とでは状況が違う。今は平穏でなんの心配もなく日々が送れる
なので公式の懐妊発表は少し先延ばしにすることにした
妊娠初期の大切な時期をなるべくギョムと過ごすようにしている私
そんな私の元に、ある日ガンヒョンからすごい剣幕の電話が掛かって来たのだ
『もしもし?』
『チェギョン・・・アタシよ。今ちょっといいかしら・・・』
『うん~~♪ガンヒョンどうしたの?』
『ギョンと喧嘩したのよ。』
『ギョン君と喧嘩?珍しいね・・・』
ガンヒョンはチャン・ギョン夫人である事を隠し、この春からチャン航空広報課に勤務し始めた
主婦兼キャリアウーマンだ
『アタシがチャン航空に入社したの知ってるでしょう?』
『うん。もちろん~~♪』
『新入社員なのに出来る女って言うのは、先輩社員からなにかと疎まれるのよ。』
『ガンヒョンほど頭が切れると・・・そういうやっかみも受けちゃうかもね。』
『でしょう?アンタだってそのくらい解るわよね。』
『うん。なんか想像できるよ。』
『なのに入社一年目から≪産休を取らせてください≫なんて言える?』
『えっ?・・・ガンヒョン・・・』
『ギョンと約束していたのよ。仕事が一人前になるまでは子供は作らないって・・・
なのにあの馬鹿!!』
『ガンヒョン・・・つまり・・・妊娠したっていうこと?』
『そうなのよ。アイツが約束を破ったせいで・・・』
『ガンヒョン・・・妊娠したのに嬉しくないの?』
『・・・っつ・・・嬉しくない訳ないでしょう?でも新入社員なのに、ギョンはアタシの立場も考えずに・・・』
『新入社員が産休を取るのは難しい事?』
『そんなの前例がないわよ。』
『前例がないならガンヒョンが前例を作ったら?』
『えっ?・・・』
『ガンヒョンは後継者夫人である事も隠しているんでしょう?』
『そうよ。そんなこと職場で言うつもりもないわよ。』
『だったらこれからの社員の為にも、ガンヒョンが前例になったらいいんだよ。』
『前例に・・・なる?』
『うん。ガンヒョンは妊娠したからって仕事をおろそかにする人じゃないでしょう?』
『当り前よ!アタシを誰だと思ってんの?』
『だったら妊婦だということを忘れさせるほど良い仕事して上司に認めさせて、
そして誰にも文句を言わせず堂々と産休を取れる人になったらいいよ。
それがガンヒョンが自分らしく生きる術だと思うけどな。』
もちろんそれは簡単な事でないと重々承知している
だけどガンヒョンならきっとやり遂げると思い、ガンヒョンの闘志に火を付けたのだ
『そうしたら家庭や子供を持つ女性はもっと社会進出がしやすくなるでしょう?』
『そうか!!つまり・・・働く女性社員の手本になれということね。』
『そう。何れはガンヒョンがチャン航空後継者の妻である事は世間に知られるんでしょう?』
『何れはね・・・』
『だったらそれまでは頑張ってみなよ。』
もちろん・・・それには育児を助けてくれる人の支えも必要だ
だが幸いガンヒョンには実家のお母様もチャン家のお義母様もご健在で、助けてくれる手は何本もある
恵まれた環境にある者がこれから出産を望む女性の道筋を作るべきだ。ガンヒョンならきっとそれが出来る
『わかったわ。ギョンにもあまり冷たくしないで、上手く持ちあげて色々と協力を促すわ。』
『そうだよ~それがいい♪あっ!!そうだ!公式発表はまだなんだけど、実は私も妊娠したの。』
『えっ?チェギョンも?ふふふ・・・先輩がいるからすごく心強いわ。』
ガンヒョンは私と同じ王立病院を受診することに決め、穏やかな口調で電話を切った
ガンヒョンも妊娠したとは・・・きっと同じ時期に出産になるわね・・・そんな事を思い
まるで王立病院で出産するのが、合宿のように思えて楽しくなってしまう私だった
さらにその日の午後のことだった・・・
チェギョンからガンヒョンが妊娠したとの嬉しい報告を聞いた日の午後
昼食を済ませ寛いでいる時だった
ハワイから帰国した時に挨拶に来て以来なかなか忙しくて顔を出せなかった、ユルとユミ夫妻が
東宮を訪れたのだ
俺達は満面の笑みで二人を迎え、応接室に二人を通した
ソファーに腰掛け、なんだかいつもよりも神妙な面持ちのユル
『シン・・・実は・・・そのっ・・・』
『なんだ?』
『あ・・・だからあのさ・・・』
何か言い掛けて・・・ユルは口ごもった
その時隣に座って居たユミが、我慢できないとばかりに顔中を真っ赤に染めて俯くと呟いた
『あ・・・赤ちゃん・・・できました~~♪』
『『えっ?』』
思わず驚愕の表情で目を見開いてしまう俺とチェギョン。こんな時夫婦って奴はなぜ同じ反応を示すのだろう
共に暮らすうちに似てきてしまうのか?
つまり・・・もしかしてひょっとして・・・俺達三組のカップルに宿った命は≪ハワイ産≫か?
そう思ってしまったらもう俺は顔が緩んで仕方がなくなってしまい、つい怪しい笑いを零してしまう
『くっ・・・くくくっ・・・うわはっはっは・・・』
『な・・・なんだよシン。新婚早々・・・おかしいか?』
少し憮然とした表情のユルに俺は苦笑しながら白状をする
『いや、すまないユル。そうじゃないんだ。実は・・・チェギョンもなんだ。』
『『えぇ~~~っ!』』
ユルもユミも声を揃えて驚きの表情をチェギョンに向けた
チェギョンは満面の笑みでユミに話しかけた
『ユミ・・・もう病院は行った?私は王立病院で受診したよ。ギョムの時もそうだったしね♪
あのさ・・・もし病院まだだったら王立病院にしない?』
『へへへ・・・実はもう王立病院に行って来たんだよ~~♪』
『そう!!そうだったんだ。じゃあ・・・ガンヒョンとも病院で逢うかもよ。くすくす・・・』
『えっ?ガンヒョン?えっ?えぇぇ~~~~っ!!』
『くすくす。ガンヒョンもだって。』
『本当?すごい!!すごい偶然だ~♪』
いや・・・その凄い偶然の機会を作ったのは、何を隠そうお前達夫婦だろう?
と言いたくなったが、敢えて言わずにおいた
なぜなら従兄弟のユルが何かを察したらしく、非常に恥ずかしそうな顔になっていたからだ
同じ家に住みながら何年も自分に我慢を強いて来たユル
そんな純情な男にこれ以上・・・からかう様な言葉は言えまい
ユルに先輩ぶって父親になる心構えを話す俺は、今後のユルの役に立てるかもしれないと嬉しく思った
画して三組の夫婦に訪れた≪ハワイ産ベイビー≫は、順調に母体の中で育っていくのだった
さて・・・次回40話をもちまして
このお話を完結させていただきます❤
ところで・・・管理人地方は昨日の午後から雨が上がり
今日もちょこっとしか降っていないのですが
全国的にすごい被害になっていますね。
どうか被害が最小限でありますように・・・
お祈りしております。
また今後もどうぞお気を付け下さいね。
このお話を完結させていただきます❤
ところで・・・管理人地方は昨日の午後から雨が上がり
今日もちょこっとしか降っていないのですが
全国的にすごい被害になっていますね。
どうか被害が最小限でありますように・・・
お祈りしております。
また今後もどうぞお気を付け下さいね。