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孤独な皇子に愛の手を 60 (最終話)

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それから四年の月日が流れた・・・

皇太子殿下イ・シンと妃殿下シン・チェギョンの間には、第一子ギョムが誕生した後第二子ウナを授かった

大学卒業と同時に王族会ハン・チョルスとシム・ウンジュは挙式を挙げ・・・また皇太子夫妻の大親友である

チャン・ギョンとイ・ガンヒョンも・・・長い春を漸く実らせ結婚に至った

四年間イギリスで勉学に励んだ皇族イ・ユルは、帰国時に美しい女性を伴い世間を驚かせた

ユルの同伴した女性とは韓国でも一、二を争う大財閥の娘だった

これから婚約・・・婚姻の日取りが決定するだろう



久し振りに帰って来たユルを歓迎し、宮中では宴が開かれた

宴にはもちろんハン・チョルスやシム・ウンジュ夫妻をはじめ、続々と代替わりした若手王族が押し寄せた

もちろん古株もその中には数名混ざっていたが、居心地が悪かったのかすぐに姿を消した

未婚のユルの周りには、すぐに王族の娘達が群がろうとしたが・・・ユルは同席させたイギリス帰りの恋人を

常に身近に置き、王族の娘達に取り入る隙を与えない徹底ぶりだった

宴が終わった時、宮殿の庭で皇太后が微笑みながら提案をする

『漸くユルが帰国して来たのだ。皆で記念写真でも撮ろうかの・・・』
『それはいいお考えですわ。皇太后様・・・』

皇太后を中心に両隣りを皇帝陛下と皇后・・・その隣にギョムとウナが腰掛けた

そのすぐ後ろにシンとチェギョンが並び・・・シンの隣にユルが並んだ

チェギョンはそんな様子を遠巻きに見ているユルの恋人に手招きをした

『こちらにおいで下さい。一緒に写真に入りましょう♪』
『えっ?私もよいのですか?』

皇太后も満面の笑みで手招きをする

『早くこちらに来るがよいぞ。そなたもじき・・・家族だ。おほほ~♪』

チェギョンの隣に駆け寄ったユルの恋人。この記念写真に収まる事がどんな意味を成すのか承知した上で

家族として受け入れられた喜びが隠しきれないらしく、恥ずかしそうに微笑んだ

皇帝陛下付きのキム内官が皇室一家に向かって声を掛けた

『では参ります。』

何度かシャッター音が響いた後、家族は其々の宮殿に帰っていく

何れこの記念写真に収まる人間も更に増えていくことだろう

そんな予感をさせる記念写真となった

その記念写真は大きく引き伸ばされ各宮殿に飾られた

もちろんユルも、その大きな写真が飾れるだけの家を探している真っ最中である




それからしばらくして・・・皇太子殿下イ・シンの元にとんでもない公務依頼が舞い込んだ

二人の思い出の無人駅が改修工事を終え、新しい駅となったのを記念し・・・あろうことか皇太子夫妻に

一日駅長をお願いしたいとの依頼であった

元々ひなびた地域であったが、二人の出逢いの場と噂が広まり・・・駅の周辺も随分開発されたとの噂を聞いた

思い出の場所の変わってしまった姿はあまり見たくない

だがやはり、その駅を有名にしてしまった責任も少し感じていた

何よりももう一度行ってみたかった場所なのは事実だった

シンはその依頼に応えチェギョンと第一子ギョムを連れて、駅のリニューアルオープンに立ち会うことにした

第二子のウナも連れて行きたかったのだが、まだ二歳という幼さのウナは公務に連れ出すには早すぎると

判断してのことだった



親子三人の遠出・・・ギョムは駅に向かう車中、ずっと嬉しそうにおしゃべりをしていた

チェギョンもあの駅に行ける事がやはり嬉しいのだろう。目を輝かせていた

『ギョム・・・着いたぞ。』
『おぉ~これが駅と言うものですか?お父様・・・』
『おぉ~~あの頃と全然違うね。シン君・・・』
『さぁ降りようか。』

余りにも大きな駅になっている事に面食らったのは、実はシンの方であった

駅の中に入った時・・・あの待合室は影も形も無くなっているのではないかと、少し落胆する部分もあった

駅長や駅員に出迎えられ、大勢のギャラリーの見守る中・・・皇太子夫妻のテープカットが行われた

駅長は満面の笑みで二人に興奮気味に声を掛けた

『さぁどうぞ・・・待合室にご案内いたします。』

二人は緊張しながらその場所に向かった。もちろんギョムも一緒について来ているが、ギョムの表情は

初めて見る駅の中に目を輝かせ楽しそうにしていた

『あっ!!シン君・・・残ってる。』
『本当だ・・・』

新しくリニューアルした駅とは思えないほど古ぼけた待合室が、あの頃のままその場所にあった事に

二人は感激し声を上げた

駅長はそんな二人を見て嬉しそうに、反対側を指示した

『ええ・・・もちろんあの待合室は、そのままにしてあります。ここを訪れる人達も
外から眺め祈りを捧げていくだけで、あまり中に入ろうとはしません。ここは縁結びを願う人達にとって
聖域の様な場所なんです。』
『そうでしたか。』
『有難い・・・』
『さぁ中に入ってお寛ぎください。今・・・お菓子を持って参ります。』

そう言い残して駅長は急ぎ足で去っていく

『お菓子って・・・ひょっとして?』
『あぁ、きっとそうだろうな・・・』
『まさかここで食べた事まで知ってるんじゃ・・・』
『そうじゃないだろう。お前が前に買いに行ったから・・・お前の好物だって知っているんだろう。くくっ・・・』
『だったらいいけど・・・ここに監視カメラでもあったのかとドキドキしちゃった。くすくす・・・』
『中に入ろう。』
『うん♪』

綺麗に磨かれた窓からは燦々と日差しが降り注ぎ・・・壁にはひとつの落書きもされていない

その代わりその壁にはノートが一冊掛けられており、その中を開けると沢山の≪叶わぬ愛の成就への願い≫が

切々と綴られていた

『すごいね・・・。私達の縁を羨ましく思った人がこんなにたくさんいるのね。』
『あぁ。すごいな・・・』

その時待合室のガラス戸が開き、駅長が姿を現した

『これをどうぞお召し上がりください。妃殿下の好物だと伺いました。』

駅長が手に持っていたのは、やはりあの≪エッグタルト≫だった

『どうもありがとう。』
『どうぞ心行くまでお寛ぎください。』

一緒に差し入れられたミネラルウォーター。それを見てチェギョンはクスリと笑う

『やっぱりどこかで見られていたんじゃないの?くすくす・・・』
『折角だから食べようか。』
『うん。そうだね。』

チェギョンとシンは間にギョムが座れるスペースを空けて腰掛けた

するとギョムはチェギョンに手を伸ばした

『お母様のお膝に座るぅ~~♪』

チェギョンも微笑んでギョムを膝に座らせようとしたが、それをシンが制した

『ギョム・・・お母様はお腹に赤ちゃんがいるだろう?お父様の膝に来なさい。』
『はいっ!!』

ギョムはシンのいい付け通りシンの膝に座ると、チェギョンの持っているエッグタルトを凝視した

『ギョム・・・食べる?』
『はいっ♪』

チェギョンはギョムの手に一つエッグタルトを載せ、それからその箱をシンに向けた

『シン君もどうぞ。』
『あぁ。』
『今日は沢山食べちゃいやよ。』
『くくっ・・・解っているよ。』

ギョムはシンの膝の上でエッグタルトを頬張った

『お・・・美味しいです~~お母様♪もう一つください。』
『あらギョム?そんなに食べるの?』
『いいえ・・・ウナにお土産に持って帰るんです~♪ウナは今日・・・お留守番だから。』
『そう?じゃあ・・・ポケットに入れると壊れちゃうから、お母様が持って行ってあげるね。』
『はい。お利口で待っているウナにあげてください♪』
『そうね♪』

シンはエッグタルトを頬張りながら遠い昔に想いを馳せた

あの日・・・自分の味方など誰ひとりとしていないと殻に籠っていた時、この場所でチェギョンに出逢った

空腹のシンに甘いエッグタルトと共に屈託のない笑顔をくれたチェギョン

チェギョンと出逢って周りの人の愛にも気がついたシン

仕える者達との絆も深め・・・そして今は誰よりも愛情に包まれている

孤独だった皇子は・・・もうどこにもいない

身分は高貴なものであっても、その愛情は誰よりも純粋だった

チェギョンが愛をくれた

空腹だったシンにエッグタルトをくれた様に、誰にも負けない強い愛をくれた

だからシンはこの先も、愛に満ちた皇太子としてこの国を護り続ける・・・チェギョンと一緒に・・・




孤独な皇子に愛の手を 完


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皆様~~長きに渡って
このお話にお付き合いいただきありがとうございました❤

その間に五周年も過ぎてしまい
また300万HITも過ぎてしまいました。

実は管理人・・・少し視力の方が落ちてしまいまして
今後更新は一日置き・・・になってしまうと思われます。
それでも細々と続けていきたいと
思っております。
どうぞご理解くださいね❤

また、御礼のお話は
この先別荘とかちょっと忙しく
恐縮ですが金曜日からにさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

最後までお付き合いいただき感謝いたします。

~星の欠片~管理人 ★emi ★








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