第一子懐妊中ゆえ、非常に重苦しい動作ながら宮中を駆け回っている皇太子妃シン・チェギョン
そんなチェギョンの後を追いかけるように歩く皇太子イ・シンの姿は、まさに宮中の名物となりつつあった
大学の入学式を目前に控えたある日・・・既に宮中では慣例行事となりつつある
≪妃殿下監修のキムチ漬け≫が行われていた
さすがにチェギョンは臨月と言う事もあり、椅子に座って指導だけしている
『しっ・・・シン君!!それじゃあ・・・調味料が足りないって!!それだとソフトマイルドタイプになっちゃうっ!』
『っつ・・・』
ここで何か反論しようものなら、チェギョン自らその場に座り込み白菜に手を伸ばしそうな剣幕だ
『解ったよ。もっと塗ればいいんだろう?』
『うん♪』
この宮殿を最初訪れた時には女官見習いだったチェギョンが、今ではすっかり皇太子妃として君臨している
そんな様子にもすっかり慣れた女官達は、二人を微笑ましく思い見つめながら作業を続ける
そしてそんな宮中行事をハラハラしながら見守っている三陛下達
皇太子殿下第一子の誕生を心待ちにしているようである
その宮殿を上げてのイベントがひと段落した頃・・・東宮殿にはイ・ユルが訪れていた
『シン・・・それにチェギョン、僕今日イギリスに発つよ。』
『あぁ?ユル・・・見送りに行くから、出発の日が決まったら連絡をくれと言ってあっただろう?』
『ふふふ・・・いやいや見送りに来られたらこっちが心配で堪らなくなる。』
ユルはゆっくりと視線をチェギョンのお腹に向けた
『えっ?ユル君・・・私のせいで言わなかったの?』
『ふふふ・・・そうじゃないよ。ただ妃殿下は今大事な時だからさ。
だからシン・・・チェギョン、ここで挨拶を済ませていくよ。四年間・・・行って来ます。』
『あぁ。四年経ったら帰ってくるんだろう?』
『もちろん。シン一人に皇室を任せておけないからね・・・ふふふ。
チェギョン・・・生まれてくる子が見られないのは残念だけど、元気な赤ちゃんを産んで♪』
『うん!!もちろん~♪ユル君・・・身体に気を付けて、沢山勉強して来てね。』
『うん、そうするよ。シンも皇太后様の事頼んだよ。』
『あぁ。心配するな。それに子供が生まれたら、きっともっと元気になられる筈だ。』
『そうだね。じゃあ・・・行って来ます。』
ユルは二人と固く握手を交わし、公用車に乗り込み空港へと向かった
皇室を支えるより大きな人になるべく、イギリスで沢山の事を学んで来る・・・そう心に誓うユルだった
それからしばらくして、シンとチェギョンは韓国芸術大学に入学した
高校から一緒の顔触れはほとんどそのままだったが、驚いた事に外部受験し入学した者に
シム・ウンジュをはじめとする王族会令嬢が、顔を揃えていたのだ
もちろんチェギョンの印象に強く残っている者はシム・ウンジュのみであり・・・
あの女官見習い試験で早々に退散した者は、大学生と言う事もあり容姿もあの頃より随分大人びていて
チェギョンにとってみれば、初めて逢う人にしか思えなかったのである
そんな王族会令嬢の輪の中にいたシム・ウンジュに、チェギョンは声を掛けた
『シム・ウンジュさん♪この大学に進学したの?』
『妃殿下・・・はい。妃殿下のお傍で色々学びたいと思いまして・・・』
『すごく心強いです♪』
『妃殿下はそろそろ・・・御出産されそうな雰囲気ですね?』
『あ・・・解ります?もう身動きするのも大変で・・・くすくす・・・』
『もう暫くの辛抱です。頑張ってくださいね。』
『はいっ♪あ・・・そう言えばハン・チョルスさんとはその後・・・』
『ええ、もちろんいいお付き合いを続けております。実はそろそろ婚約の話が出ているんです。』
『えっ?そうなんですか?わぁ~~楽しみですね。』
『結婚はもちろん大学を卒業してからなので、四年後なんですけどね。ふふふ・・・』
『きっとハン・チョルスさんは早くウンジュさんを売約済みにしたくて堪らないんです。
逃したら大変だって思っている筈です。』
『ふふふ・・・そうでしょうか。』
『ええきっとそうです♪』
周りを取り囲んでいた王族会令嬢達は、皆チェギョンから声を掛けられるのを待っていたが
最後までチェギョンが他の令嬢に声を掛ける事は無かった
なぜなら・・・声を掛けようにも話す理由がまったくなかったからである
結局あの女官見習い試験に参加したシム・ウンジュ以外の令嬢は、妃殿下となったチェギョンの友人にも
なれなかったのであった
入学から数日後・・・シンは抜けられない公務が入り、友人のイ・ガンヒョンとチョン女官に
≪チェギョンの事をくれぐれも頼む≫と言い残し、コン内官と共に公務先に向かった
もういつ生まれてもおかしくない時期である
仕える者や周りの友人達も、その日がやってくるのを心待ちにしていた
シンが地方の公務先を視察している時のことだった
コン内官は掛かってきた電話に顔色を変え、すぐにその内容をシンに耳打ちした
『殿下・・・大変です。』
『まさか・・・チェギョンが産気づいたのか?』
『いえ・・・そうではなく・・・親王様が御誕生されたそうです。』
『なっ・・・なにぃ~~!!』
(朝、大学でチェギョンと別れてからまだ二時間しか経過していない
なのに・・・誕生?
生まれたって言うのか?しかも親王・・・はぁ・・・)
『そっ・・・それで妃宮の様子は・・・』
『はい。母子ともに大変お健やかであられると・・・』
『はぁ・・・よかった。』
すぐにでも公務を中断しチェギョンの元へ駆けつけたい気持ちが本音だが、やはり皇太子としての公務を
投げ出すようなことはできず、結局王立病院にシンが向かったのは夕方のことだった
特別室をノックしその扉を開けると、元気のいいチェギョンの声が部屋の中に響いた
『シン君~~遅いっ!!』
『遅いって言われても・・・お前は俺が公務を放棄して、ここに駆けつける皇太子でいいのか?』
『それは嫌だけど・・・』
『随分安産だったそうだな。』
『シン君・・・この痛みを知らないくせに、安産とか言わないでっ!!
突然やって来てものすご~~く痛かったんだからね!!』
ベッドに横たわったままチェギョンは随分元気な様子だ
『そうだな。俺にはその痛みを解ってやれないし・・・分かち合う事も出来ない。』
『あ~~別にそんなこと言わなくていいよぉ。お疲れ様って言ってくれないの?』
『あ?あぁ・・・』
シンはベッドサイドに置いてある椅子に腰掛け、チェギョンの頭に手を置いた
『お疲れ様チェギョン。よく頑張ったな。』
『うん♪もう赤ちゃん見てきた?』
『いや・・・まだだ。まずお前の顔を先に見なきゃと思って・・・』
『そうなの?すごいイケメン君だよ。身体も他の赤ちゃんより大きいみたい。
きっとシン君に似たんだわ。』
『そうなのか?』
『うん♪見に行く?』
『まだ動かない方がいいんじゃないのか?』
『う~~ん。そんなこと無いと思う。すぐに歩けって言われたもの・・・』
ベッドから起きあがろうとするチェギョン
だが見に行くまでもなく、皇太子殿下来院の知らせを聞き付け看護師長が
生まれたばかりの親王を連れて部屋を訪れた
親子が三人揃った特別室・・・シンはなんとも言いようのない感情に包まれ、生まれたばかりの赤ん坊に
そっと手を伸ばした
『綺麗な顔をしているな。とても高貴な顔立ちだ。』
『そうでしょう?分娩室は大騒ぎだったんだよ。美しい親王様の御誕生だって・・・』
『ありがとう。』
『ん?』
『俺の家族をこの世に生みだしてくれて・・・』
シンは微笑むチェギョンの唇に感謝のキスをひとつ落とした
親王様御誕生で益々繁栄が約束された皇室一家・・・
次回最終話では四年後の姿をお目に掛けましょう
そんなチェギョンの後を追いかけるように歩く皇太子イ・シンの姿は、まさに宮中の名物となりつつあった
大学の入学式を目前に控えたある日・・・既に宮中では慣例行事となりつつある
≪妃殿下監修のキムチ漬け≫が行われていた
さすがにチェギョンは臨月と言う事もあり、椅子に座って指導だけしている
『しっ・・・シン君!!それじゃあ・・・調味料が足りないって!!それだとソフトマイルドタイプになっちゃうっ!』
『っつ・・・』
ここで何か反論しようものなら、チェギョン自らその場に座り込み白菜に手を伸ばしそうな剣幕だ
『解ったよ。もっと塗ればいいんだろう?』
『うん♪』
この宮殿を最初訪れた時には女官見習いだったチェギョンが、今ではすっかり皇太子妃として君臨している
そんな様子にもすっかり慣れた女官達は、二人を微笑ましく思い見つめながら作業を続ける
そしてそんな宮中行事をハラハラしながら見守っている三陛下達
皇太子殿下第一子の誕生を心待ちにしているようである
その宮殿を上げてのイベントがひと段落した頃・・・東宮殿にはイ・ユルが訪れていた
『シン・・・それにチェギョン、僕今日イギリスに発つよ。』
『あぁ?ユル・・・見送りに行くから、出発の日が決まったら連絡をくれと言ってあっただろう?』
『ふふふ・・・いやいや見送りに来られたらこっちが心配で堪らなくなる。』
ユルはゆっくりと視線をチェギョンのお腹に向けた
『えっ?ユル君・・・私のせいで言わなかったの?』
『ふふふ・・・そうじゃないよ。ただ妃殿下は今大事な時だからさ。
だからシン・・・チェギョン、ここで挨拶を済ませていくよ。四年間・・・行って来ます。』
『あぁ。四年経ったら帰ってくるんだろう?』
『もちろん。シン一人に皇室を任せておけないからね・・・ふふふ。
チェギョン・・・生まれてくる子が見られないのは残念だけど、元気な赤ちゃんを産んで♪』
『うん!!もちろん~♪ユル君・・・身体に気を付けて、沢山勉強して来てね。』
『うん、そうするよ。シンも皇太后様の事頼んだよ。』
『あぁ。心配するな。それに子供が生まれたら、きっともっと元気になられる筈だ。』
『そうだね。じゃあ・・・行って来ます。』
ユルは二人と固く握手を交わし、公用車に乗り込み空港へと向かった
皇室を支えるより大きな人になるべく、イギリスで沢山の事を学んで来る・・・そう心に誓うユルだった
それからしばらくして、シンとチェギョンは韓国芸術大学に入学した
高校から一緒の顔触れはほとんどそのままだったが、驚いた事に外部受験し入学した者に
シム・ウンジュをはじめとする王族会令嬢が、顔を揃えていたのだ
もちろんチェギョンの印象に強く残っている者はシム・ウンジュのみであり・・・
あの女官見習い試験で早々に退散した者は、大学生と言う事もあり容姿もあの頃より随分大人びていて
チェギョンにとってみれば、初めて逢う人にしか思えなかったのである
そんな王族会令嬢の輪の中にいたシム・ウンジュに、チェギョンは声を掛けた
『シム・ウンジュさん♪この大学に進学したの?』
『妃殿下・・・はい。妃殿下のお傍で色々学びたいと思いまして・・・』
『すごく心強いです♪』
『妃殿下はそろそろ・・・御出産されそうな雰囲気ですね?』
『あ・・・解ります?もう身動きするのも大変で・・・くすくす・・・』
『もう暫くの辛抱です。頑張ってくださいね。』
『はいっ♪あ・・・そう言えばハン・チョルスさんとはその後・・・』
『ええ、もちろんいいお付き合いを続けております。実はそろそろ婚約の話が出ているんです。』
『えっ?そうなんですか?わぁ~~楽しみですね。』
『結婚はもちろん大学を卒業してからなので、四年後なんですけどね。ふふふ・・・』
『きっとハン・チョルスさんは早くウンジュさんを売約済みにしたくて堪らないんです。
逃したら大変だって思っている筈です。』
『ふふふ・・・そうでしょうか。』
『ええきっとそうです♪』
周りを取り囲んでいた王族会令嬢達は、皆チェギョンから声を掛けられるのを待っていたが
最後までチェギョンが他の令嬢に声を掛ける事は無かった
なぜなら・・・声を掛けようにも話す理由がまったくなかったからである
結局あの女官見習い試験に参加したシム・ウンジュ以外の令嬢は、妃殿下となったチェギョンの友人にも
なれなかったのであった
入学から数日後・・・シンは抜けられない公務が入り、友人のイ・ガンヒョンとチョン女官に
≪チェギョンの事をくれぐれも頼む≫と言い残し、コン内官と共に公務先に向かった
もういつ生まれてもおかしくない時期である
仕える者や周りの友人達も、その日がやってくるのを心待ちにしていた
シンが地方の公務先を視察している時のことだった
コン内官は掛かってきた電話に顔色を変え、すぐにその内容をシンに耳打ちした
『殿下・・・大変です。』
『まさか・・・チェギョンが産気づいたのか?』
『いえ・・・そうではなく・・・親王様が御誕生されたそうです。』
『なっ・・・なにぃ~~!!』
(朝、大学でチェギョンと別れてからまだ二時間しか経過していない
なのに・・・誕生?
生まれたって言うのか?しかも親王・・・はぁ・・・)
『そっ・・・それで妃宮の様子は・・・』
『はい。母子ともに大変お健やかであられると・・・』
『はぁ・・・よかった。』
すぐにでも公務を中断しチェギョンの元へ駆けつけたい気持ちが本音だが、やはり皇太子としての公務を
投げ出すようなことはできず、結局王立病院にシンが向かったのは夕方のことだった
特別室をノックしその扉を開けると、元気のいいチェギョンの声が部屋の中に響いた
『シン君~~遅いっ!!』
『遅いって言われても・・・お前は俺が公務を放棄して、ここに駆けつける皇太子でいいのか?』
『それは嫌だけど・・・』
『随分安産だったそうだな。』
『シン君・・・この痛みを知らないくせに、安産とか言わないでっ!!
突然やって来てものすご~~く痛かったんだからね!!』
ベッドに横たわったままチェギョンは随分元気な様子だ
『そうだな。俺にはその痛みを解ってやれないし・・・分かち合う事も出来ない。』
『あ~~別にそんなこと言わなくていいよぉ。お疲れ様って言ってくれないの?』
『あ?あぁ・・・』
シンはベッドサイドに置いてある椅子に腰掛け、チェギョンの頭に手を置いた
『お疲れ様チェギョン。よく頑張ったな。』
『うん♪もう赤ちゃん見てきた?』
『いや・・・まだだ。まずお前の顔を先に見なきゃと思って・・・』
『そうなの?すごいイケメン君だよ。身体も他の赤ちゃんより大きいみたい。
きっとシン君に似たんだわ。』
『そうなのか?』
『うん♪見に行く?』
『まだ動かない方がいいんじゃないのか?』
『う~~ん。そんなこと無いと思う。すぐに歩けって言われたもの・・・』
ベッドから起きあがろうとするチェギョン
だが見に行くまでもなく、皇太子殿下来院の知らせを聞き付け看護師長が
生まれたばかりの親王を連れて部屋を訪れた
親子が三人揃った特別室・・・シンはなんとも言いようのない感情に包まれ、生まれたばかりの赤ん坊に
そっと手を伸ばした
『綺麗な顔をしているな。とても高貴な顔立ちだ。』
『そうでしょう?分娩室は大騒ぎだったんだよ。美しい親王様の御誕生だって・・・』
『ありがとう。』
『ん?』
『俺の家族をこの世に生みだしてくれて・・・』
シンは微笑むチェギョンの唇に感謝のキスをひとつ落とした
親王様御誕生で益々繁栄が約束された皇室一家・・・
次回最終話では四年後の姿をお目に掛けましょう
いやいや・・・お待たせして恐縮でした。
次回最終話・・・
どんなお話になるのか
どうぞ楽しみにしていてくださいね❤
次回最終話・・・
どんなお話になるのか
どうぞ楽しみにしていてくださいね❤