チャン会長とチャン・ギョン・・・そしてその部屋に集結していたコン内官や女官達が部屋から去った後
三陛下はチェギョンの元へと駆け寄った
『妃宮・・・』
『妃宮よくぞ無事で・・・』
『そなたもろくに睡眠さえとっていなかったというのに、よくぞ・・・』
皆チェギョンの身体を労わる様にチェギョンの身体のどこかに触れ、懐妊の喜びに浸っている
そしてこの長かった半月のチェギョンの功績を口々に褒めたたえた
『妃宮は、今回の一件のマスコミ取材にも応じたのだ。実に皇太子妃たる堂々とした態度で立派だった。
太子にも見せたかったくらいだ。』
『そうだ妃宮は・・・自分自身も不安だっただろうに、常に私達を気遣ってくれた。』
『私など・・・太子の件を聞いて床に伏してしまい、妃宮がずっとつきっきりで看病してくれたのだ。』
シンの前で褒めちぎられ、非常に照れ臭い気分のチェギョンは俯いて頭を掻いた
『そうでしたか・・・』
シンは自分が不在の半月間・・・チェギョンが必死に家族を守ろうとしてくれた事に胸を熱くする
そして・・・そんな思いの中で≪来るべきものが来ない≫状態はどんなにか不安だっただろうと思い
チクリと胸が痛んだ
『とにかく今は、一刻も早く王立病院に行き受診しないと。』
マスコミ発表の前に確実な妊娠したとの診断が欲しいシンはそう呟いた
『おぉ!!そうであったな。皇后よ・・・医長に連絡してあげなされ。』
『ええ。すぐに連絡を入れておきますわ。太子・妃宮・・・すぐに王立病院に向かいなさい。』
『はい。』『そういたします♪』
もちろん皇族の診療などは、特別診療室で行われる為・・・まだ表沙汰になる事はない
シンとチェギョンは半月間シンと共に苦労してきた者達は休ませ、他のイギサやチョン女官に付き添われ
王立病院へと向かった
『おめでとうございます。妊娠七週目に入ったところです。
殿下もご無事にお帰りになり、宮殿はいい事づくめですね。』
『ありがとう。それで・・・出産予定日はいつになるのだ?』
『はい。来年の四月上旬になると思われます。状況によって前後する事もございますが
今は妊娠初期ですので、十分な注意をして差し上げて下さい。』
『ありがとう。』
王立病院産婦人科医長の診断を受け、意気揚々と宮に戻った二人
本殿にはチョン女官が出向き、正式な診断を貰った事を報告し・・・二人は東宮でゆっくりと過ごす
久し振りにまじまじと見る夫は、ずっと頬を緩ませた状態であり・・・チェギョンはなんだかそんなシンを見るのが
嬉しくて堪らなくなる
『シン君・・・ひょっとしてシメシメとか思ってない?』
『あぁ?それはどういう意味だ?』
『マスコミもこれで、事故の件をうやむやにできるし・・・よくやったと思ってるでしょう?』
『あぁ?・・・くくっ・・・まぁな。生まれる前から親孝行だ。』
『くすくす…本当だね。ところで・・・消えてしまった島の話なんだけど・・・』
『あぁ。なんでも聞いてくれ。』
『どんな場所だったの?』
『ジェット機が不時着した場所は砂浜だった。海は透き通るように青く、島の少し奥に行くと湧き水があって・・・
その先には川が流れていた。俺は素手で魚を獲る名人だ。くくっ・・・』
『シン君自ら・・・魚を捕まえたの?』
『あぁ。イギサが止めるのも聞かずにな。生きて行くには必要だろう?イギサも納得して
一緒に川に入り魚を捕まえた。』
『そのお魚・・・美味しかった?』
『そりゃあもぉ・・・その辺りに転がっていた木に刺して塩焼きにして食べたんだが、
あんなに美味しい魚は・・・今まで食べたことがない。』
『い・・・いいなぁ~~~♪お野菜とかは?』
『野草を摘んださ。食べられる野草を知っていたからな。』
『えっ・・・シン君が?』
『あぁ。昔ボーイスカウトで覚えたことが役に立ったと言うわけだ。』
『そんなワイルドな一面があったなんて・・・だから痩せてもいなければ、筋肉質になって帰って来たんだね?
しかも日焼けもして・・・くすくす・・・
あ~あ!!私もそんなところに行ってみたかったな~♪』
『あぁ。俺もそう思ったよ。キャンプ道具を持ってお前を連れて来てやりたいって・・・
そう思って漁船から島を見ていた時に、その島が消えてしまったんだ。』
『え~~~っ・・・なんか幻の楽園だね。』
『あぁ。きっと幻の楽園なんだろうな。くくっ・・・
とにかく今回の一件では陛下達を守ってくれてありがとう。』
『そんな~~・・・無事に戻ってきてくれてありがとう。』
『くっ・・・妊娠してくれてありがとう。』
『くすっ・・・子供作ってくれて・・・ありがとう。』
ありがとうと言う感謝の言葉を伝えられる事が、こんなに幸せなことだと知らなかった二人
その夜二人は妊娠初期の妻を労わりながら抱きあって眠った
お互いの体温が・・・息遣いが感じられる場所に居られる喜び・・・
そしてチェギョンのお腹の中に宿った新しい命への希望
今まさに二人は苦難を乗り越えて幸せの絶頂だった
翌日・・・マスコミ関係者を招いて皇太子殿下イ・シンの記者会見の場が持たれた
眩しいほどのフラッシュを浴び会見場に出て行ったシンは、日焼けした顔で誇らしげに微笑んでいた
もちろん連絡が一切取れなかった今回のジェット機の失踪に、マスコミは大いに興味を持っていた
会見場に腰を下ろしたシンはマイクに向かって話し始めた
『お集まりの皆さん・・・そして国民の皆さん
皇太子イ・シンです。今回の事故の件では大変ご心配をおかけいたしました。
心よりお礼とお詫び申し上げます。
まず・・・今回の事故が起こった経緯ですが、私達の乗った小型ジェット機が、乱気流に巻き込まれ
個人所有の島に不時着いたしました。
ところがその場所は無線も通じず、携帯の電波も届かない場所でして・・・
よもや≪失踪≫と言う騒ぎになってしまいましたが、私をはじめとする宮の職員・・・またチャン航空の職員達は
その島の所有者の厚意で、二週間お世話になりました。
ですが・・・船などの所有が無く、救助隊に見つけて貰うまで帰ることができませんでした。
小型ジェットの乗客乗員とも全員無事に帰還いたしました事をここにご報告申し上げます。』
『殿下・・質問が・・・』
一人のマスコミ関係者が、その会見の矛盾点をついて来ようとしたのだろう。挙手をし言葉を発した
シンはそれに気がつかない振りをし、会見を続けた
『それからもう一つ・・・重大な報告があります。妻である皇太子妃シン・チェギョンの懐妊が発覚いたしました。
ただいま妊娠七週目に入った非常に大切な時期です。マスコミ関係者の皆さんも国民の皆さんも
どうぞ温かく妻を見守ってくださるようお願い申し上げます。』
『『おぉーーーっ!!』』
どよめくマスコミ関係者達・・・
それもその筈だろう。つい一週間ほど前に≪信じて待つのみ≫と実に堂々とした姿を見せた妃殿下が
懐妊したとのおめでたいニュースなのだ
あの時の会見で妃殿下たる風格を見せつけたシン・チェギョンは、マスコミ関係者からも一目置かれる
存在となっていたのである
シンの計らいで会見場に待機させられていたチェギョンは、おずおずとその場に姿を現した
その瞬間からその場は皇太子夫妻の御懐妊発表の場となり、見事シンの目論み通り質問は
生まれてくる御子の事に集中した
まさに≪シメシメ≫というシンの心の声が聞こえてきそうな会見となったのである
余計な事を突っ込み入れそうなマスコミ関係者も
さすがに黙らずにはいられない(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ところで・・・この間親戚のおじさまから
ニャンコのご飯グッズをいただいたんですよ。
その箱が・・・今朝出掛ける次男の鞄にぶつかって
床に落ちましてね・・・
長男が叫ぶので見に行ったところ
ふぅ殿・・・何を思ったか、その箱に顔を突っ込んで
勝手におやつ食してました~~!!
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
『お前はノラ猫さんかっ!!』と
思わず突っ込みを入れたくなるほど
いやしんぼうのふぅ殿健在でございます。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!