皇太子殿下イ・シンが18歳を迎えた直後・・・まるでシンに急かされるように皇帝陛下は婚姻の日取りを決定し
公に発表をした
出逢いから二年・・・二人はめでたく婚姻の日を迎えることとなった
見事皇太后との約束を守り抜いたシンではあったが、その実情については定かでない
略式でありながらもきちんと手順を踏まえた婚礼の儀式は、平民であるチェギョンの両親にとって
厳かでありながらも非常に緊張の連続だったようだ
当のチェギョンに至っては、女官仕事をしていた時と同じ様に失敗する事も無く実に堂々と
その神聖な儀式を務めあげた
皇太子妃の衣装を纏ったチェギョンを見つめ、シンは思わず笑みを零した
あの時・・・もし家出をしていなかったら
そしてあの場所で偶然出逢わなかったら・・・違えていたかもしれない二人の人生
もしかしたらシンは勧められるままに王族の娘と縁を結び
そしてチェギョンもハン・チョルスと縁を結ぶ事を拒めずにいただろうか?
そんな事を考え身震いする思いのシンは、その直後にある事を思い出した
若い王族を集めた親睦パーティー・・・あの場所にチェギョンが来ていた事を
(くくっ・・・あの場所で逢わなかったとしても、きっと俺は親睦パーティーの時お前に・・・)
チェギョンの横顔を見つめ含み笑いするシン・・・そんなシンに気が付きチェギョンは問い掛けた
『なぁに?シン君・・・何が可笑しいの?』
『くくくっ・・・いや・・・別に何も。お前があまりに綺麗だから、嬉しくなっただけだ。』
『それだけ~~?』
『あぁ。さぁ、そろそろ門が開く。国民がお前の晴れ姿を見に来ている。二番目にいい笑顔を見せてやれ。』
『えっ?二番目に・・・って?一番は?』
『一番いい笑顔は・・・永遠に俺だけのもの。くっ・・・』
『もぉっ・・・』
やがて門が開き二人は婚礼パレードに出発した
三陛下そしてシン家の両親は、めでたくこの日が迎えられた安堵に肩の荷が下りた気分のようだ
『ああ・・・暫くは妃宮に肩を揉んでくれとは言えないだろう。』
『そうですね陛下。ですがチェギョンの事ですから、すぐに本殿に来てくださいますわ。』
『そうだろうか・・・』
そんな二人に皇太后は横やりを入れる
『来られる筈あるまい。太子が妃宮を離さないだろう。あの調子では・・・おほほほほ・・・』
『そうかもしれません。ですがあの分では・・・すぐに良い知らせが舞い降りるかもしれませんわ。』
『だと良いのぉ。おほほほほ』
『おほほほほほ~~♪』
一方シン夫妻はナムギルがスンレを家に帰そうとしていた
『えっ?あなた・・・今日は親戚が集まるのよ。うちでお祝いしなくちゃ・・・』
『そうはいかない。私は大事な仕事が残っているんだ。これから皇太子ご夫妻の同牢の礼の儀式にお出しする
御膳を作らねば・・・』
『でも今日はお休みをいただいたんじゃなかったの?』
『可愛い娘の婚礼の御膳だ。私がやらなくてどうする・・・』
婚姻の儀式の間中笑顔だったナムギル・・・もう既に二年前からチェギョンは宮殿に住んでいたとしても
やはり娘を嫁がせる父の気持ちは寂しさで満ち溢れていた
『解ったわあなた。お二人の御膳をしっかり作りあげて帰って来て。お祝いはそれからにしましょう。』
『うんうん~~~!!』
『早く調理室に行かないと、お二人がパレードから戻ってきちゃうわ。』
『そうだ。じゃあスンレ・・・行って来る。』
『行ってらっしゃい。』
大急ぎで調理室に向かって行くナムギル。夫のそんな後ろ姿を見送りながら、スンレもまた胸に寂しさを
募らせるのだった
父の代わりに婚礼の儀に立ち会っていたハン・チョルスは、皇太子夫妻がパレードに出発するのを見送り
その門から出て行った
そこにはやはりチェギョンの晴れ姿を一目見ようと思ったのか、シム・ウンジュの姿があった
『ウンジュさん・・・』
『あ・・・ハン・チョルスさん。お綺麗でしたね妃殿下。』
『本当に・・・溜息が出るほどお綺麗でした。』
『そのお顔は・・・まだふっきれていないということですか?』
『いいえ、もう友人としてお美しいと思っただけですよ。』
『本当に?』
『ええ本当です。ですがウンジュさんも大学受験を控えておいでですよね?』
『大学受験?ええ・・・ですが王立大学に行こうと決めていますから・・・
相当成績が悪くなければ落とされませんわ。』
『そうですか。では・・・一度ご自宅に伺っても?』
『はい!もちろん大歓迎です。』
『近々ご連絡させていただきます。』
そう言いながらハン・チョルスはシム・ウンジュと携帯番号の交換をした
あの皇太子妃選出騒ぎから二年余り・・・漸く二人の時間が動き始めたようだ
『ちょっとぉ~まだ皇太子ご夫妻は来ないの?』
『もうすぐよ。今ギョンが様子を見に行っているわ。ほら・・・ギョンが走って来た。
きっともうすぐよ。
ファン君・・・そろそろカメラセットした方がいいかもよ。』
『そうだね。あのギョンの様子じゃ・・・すぐにやってきそうだ。』
皇太子ご夫妻の婚礼パレードを待ちかねている6人
ヒスンとスニョン・・・そしてガンヒョンは手持ちのバッグの中から、祝福メッセージを書いた紙を取り出した
そしてファンはビデオカメラを、インは一眼レフを構えその時を待った
『来るよ~~もうすぐだよ~~♪二人共すっげ~~カッコいいの♪』
『ほらアンタも早くこのメッセージ一緒に持って。』
『解った。ガンヒョン♪』
ギョンとガンヒョンは目立つようにと横に長く書いたメッセージの端と端を持ち、それを広げた
『来た~~♪』
『チェギョ~~ン!!』
『シン~♪』
湧きかえる歓声の中、二人を載せた馬車がゆっくりと進んで来る
そして沿道で見守ってくれている親友たちに気が付き、微笑みながら手を振った
『チェギョン・・・馬車を降りようか?』
『えっ?』
『門はすぐ目と鼻の先だ。お前が慣れない履物で足が痛くないならの話だが・・・』
『うん。構わないよ。』
『折角だから国民の祝福を直に感じよう。』
『うん、それがいい!!』
チェギョンの快諾を受け、シンは声を上げた
『馬車を停めよ。』
突然の皇太子殿下からの停止命令。驚いて集まって来た護衛する者達
だが、シンは悠々とその馬車を降り・・・それからチェギョンに手を貸して馬車から降ろした
『ここからは歩いて行くとしよう。後に続いてくれ。』
『はっ・・・はい!かしこまりました殿下。』
皇太子夫妻がパレードの馬車から降りられたという噂は瞬く間に広がり、沿道には途轍もない数の国民が
集まって来る
シンとチェギョンは微笑みながら、その道の両端に手を振る
みると若い女性の大半は、二人に向けて振る手に≪縁結びのマスコット≫を握り締めていた
『シン君・・・あれだよ!ほら・・・皆が手に持っているでしょう?』
『あれか。肖像権侵害のマスコットは・・・』
『もう~そういうこと言わないの♪皆私達の結婚を祝ってくれているんだよ。』
『あぁ、こんなに幸せなことはない。』
やがてパレードの終着である門に辿りついた二人
二人は一度振り返り国民に向けて軽く会釈をすると、門の中へと消えて行った
次回47話は恐縮ですが二部構成となります。
色々ね・・・大変だから(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
色々ね・・・大変だから(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!