夕食後・・・本殿・皇后の部屋に向かったチェギョンは、恐縮しながら皇后付きの尚宮に面会を申し込んだ
『あの・・・尚宮様、慈慶殿にお仕えしているシン・チェギョンですが、皇后様にお目にかかりたいのですが・・・』
ここは慈慶殿ではない。このような格好では叱られるかもしれないと思いながら、
チェギョンは恐る恐る願い出た
ところが皇后付きの尚宮は、その辺りの事情も皇后から聞いていたらしく微笑んで部屋に案内をしてくれた
『皇后様から聞いておる。お入りなさい。』
『はい。失礼いたします。』
<トントン>
『皇后様、シン・チェギョンが参りました。』
『通すがよいぞ。』
チェギョンは恐れ多く思いながら皇后の部屋に入っていく
『皇后様、参りました。』
『待っておった。ささっ・・・チェギョンや、もう一度肩揉みをお願いできるか?』
『はい、もちろんです皇后様。では、失礼いたします。』
ソファーに腰掛ける皇后の背後に回り、チェギョンはその華奢な肩に両手を置くと力を込めた
『あ・・・皇后様、先程より随分凝りが良くなっているようです。』
『くぅ・・・そうか。くっくぅ・・・なかなか癖になる心地良さだ。くぅ~~はぁ~~ん・・・・
そっ・・・そこが~~くぅ~~~っ・・・』
皇太后の部屋では抑えた声の皇后だったが、ここは皇后の部屋・・・遠慮のないその声に
肩を揉んでいるチェギョンの方が一瞬怯み手が停まってしまう
『チェギョンや・・・何をしておるのだ。もっとだ・・・』
『はっはいぃ~~。』
『そっそうだ・・・そこが・・・くぅ~~~っ堪らぬ・・・はぁ~~っ・・・』
なんともあらぬ誤解を受けそうな声を上げる皇后に戸惑いながらも、チェギョンは肩揉みを続けた
すると肩揉みを初めて5分も経たないうちに、皇后の部屋の扉がいきなり開かれた
<バタン!!>
乱暴に開かれた扉・・・その音に驚きチェギョンが扉の方に目をやると、そこには皇帝陛下が
鬼の形相で立っていた
『皇后!!一体何をしておるのだっ!』
そんな陛下に今にもまどろみそうな恍惚とした目を向けた皇后は、気だるそうに答えた
『なにって・・・チェギョンに肩を揉んで貰っているのです。陛下・・・』
『肩を・・・揉んで貰っているだと?チェギョン・・・?』
チェギョンは一瞬にして体を強張らせ、皇后の肩から手を外すと伏し目がちに頭を下げた
『陛下!!初めてお目にかかります。慈慶殿にお世話になっているシン・チェギョンと申します。』
陛下はチェギョンの挨拶に応じもせずに皇后に話しかけた
『皇后たる者がはしたない声を上げるのではない。』
『えっ・・・はしたない?あら・・・大変失礼をいたしました。チェギョンの肩揉みが余りにも心地よくて・・・。
あ!!そうですわ。陛下もチェギョンに肩を揉んで貰ったらよいのです。陛下も常日頃から肩が凝ったと
仰って居るではないですか?チェギョンは大変上手なんです。
ささっ・・・こちらにお掛けください。』
そう言った頃には既に皇后はソファーから立ち上がり、陛下の腕を捉えると今まで自分の座っていた場所に
陛下を座らせた
そしてその横に腰掛け、後ろに立ち尽くしているチェギョンに微笑みかける・・・
『さぁチェギョン、陛下の肩も揉んで差し上げて。』
『は・・・はいっ!皇后様・・・』
チェギョンは緊張のあまり大きく深呼吸をすると、皇帝陛下の肩にそっと手を載せた
『では・・・皇帝陛下失礼いたします。』
じんわりと・・・力を込めていく・・・しかしその皇帝陛下の肩は、まるで岩石の様に固く凝りを解すどころではない
(こんなに肩が凝っている人なんて・・・初めてだ・・・)
驚いて渾身の力を入れてみるも、その懲りが解れる様子は無く・・・チェギョンは額に汗が浮かぶほど
必死になって肩揉みを続ける
『っつ・・・蚊が留まっている様なものだな・・・・。皇后が言うほどの者ではない。』
『もっ・・・申し訳ございません。』
『私は失礼する。』
陛下は不機嫌そうに皇后の部屋を出て行ってしまい、チェギョンは皇后に申し訳なさそうに何度も頭を下げた
『皇后様・・・申し訳ございません。ご期待に添える働きが出来ず・・・本当に申し訳ございません。』
『ほほほ・・・よいのだチェギョン。そなたは肩を揉みに宮殿に上がったのではない。
それに陛下の肩はすごく凝っていただろう?』
『はい。あの様に肩が凝ってらっしゃる方は・・・初めてです。』
『それだけ皇帝と言う立場はその肩に重圧が掛かっていると言う事だ。だから懲りずに、
また陛下の肩を揉んでやっておくれ。』
『はい!頑張って修行を積みます!!』
チェギョンのその細い腕に、皇帝陛下の凝り固まった肩を揉み解すと言う大変な課題が課せられてしまったようだ
その夜の宿題タイム・・・二人が唯一共に過ごせる時間、チェギョンは今日あった事をシンに報告した
『シン君・・・今日ね、皆さんの肩揉みをしたんだ。』
『皆さんとは女官のか?』
『ううん違う。皇太后様から始まって、皇后様や皇帝陛下まで・・・』
『あぁ?皇帝陛下まで・・・か?』
『うん。皇帝陛下の肩・・・すごく凝っていて全然解れなかった。』
『お前は・・・そんな事までやらされているのか?』
『そうじゃないよ。自分から揉みましょうか?って言ったの。だって皇后様がお辛そうだったから・・・
自分から率先して肩揉みしたんだよ♪
でも・・・陛下だけはびくともしなかった。』
『そうか?』
『うん。それだけお疲れが溜まっていると言う事なんだろうね。国を背負う立場だもんね。
あ・・・そうだ!!いいこと思いついた♪
シン君・・・肩揉みの練習させてくれない?』
『あぁ?俺はまだ若い。肩など凝ってはいない。』
『ちょっとだけでもいい。ダメ?』
シンの目を覗きこむように哀願するチェギョンに、シンが勝てる筈もない
本当は触れて欲しくない。触れられたら触れたくなるから・・・
だがチェギョンのお願いを断れるシンではなかった
『あぁ。じゃあ・・・少しだけな。』
『うん♪』
チェギョンはソファーから立ち上がり、小走りにシンの背後に回るとシンの肩に手を掛けた
『じゃ・・・いきま~~す♪』
『あぁ。・・・くっ・・・くぅ~っ・・・・?』
『しっ・・・シン君、肩凝ってるよ。すごく凝ってる。』
『俺だって色々と重圧がある。くぅっ~~~っ・・・・』
チェギョンはこんなに若いシンの肩さえ凝っているのだから、皇帝陛下が岩石並みに肩凝りしてしまうのは
当然だろうと感じ、その国の頂点の立場が如何にストレスを生じるものなのかと思い知った
その日から夜の宿題タイムの時間、陛下の練習台という名目のスキンシップが加わる事となった
その週の金曜日・・・授業が終わったチェギョンは、自転車に跨り猛ダッシュで宮殿に帰ろうとしていた
その時・・・
『チェギョンさん・・・』
聞き覚えのある声がチェギョンを呼び止めた
自転車から降り振り向いてみると、そこには車から降り微笑むハン・チョルスの姿があった
『今宮殿に居ると聞きました。元気そうでよかった。』
『はい。とっても元気です。』
『あの・・・今後僕と逢う時間は、都合付きませんか?』
『すみません。金曜日もお仕事が入っているんです。』
『そうですか。・・・でも、携帯のメモリーは消さないでくださいね。』
『消しませんよぉ♪』
『では・・・いつかあなたとまたデートできるのを期待しています。』
『はい・・・』
チェギョンにとって金曜日の約束はデートなどではなかった。逢いたくて逢っていたわけではなかった
ハン・チョルスが嫌いなわけではない。だが好きと言うカテゴリーに彼は居ない
(きっともうお逢いする事は無いでしょう。)
そう心の中で呟きながらも、チェギョンは笑顔で頭を下げると再び宮殿に向けて自転車を走らせるのだった
昨日は寒かったですね~~!!
冷たい雨の中、無事第二王子の入学式に行って参りました。
今日から・・・私は自由~~♪と思いきや
大学生って・・・意外と家に居るのね・・・
お昼に帰ってくるし・・・
邪魔くさい(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!