(ちぇっ・・・チェギョン!!)
思わず声を上げそうになるのをシンは必死に堪えた。なぜならこの場所は本殿であり、皇帝陛下の目の前だ
もしその心の中に秘めた気持ちをあからさまに出してしまったら、皇帝陛下はなんの罪もないチェギョンに
あの逃避行などのすべての責任を押し付け、処罰の対象とするかもしれないと考えたのだ
だが当の皇帝陛下自身はシンのそのような想いなどとっくに見通していたが、宮殿の女官見習いが
勝手に制服を調達することなどあり得ないと、驚きを隠せずとも≪皇太后様の命令だろう≫と思い
黙っていたのである
ところが・・・
チェギョンがその扉を開け『では失礼いたします。』と出て行こうとした時、意外な人物がチェギョンのその格好を
咎めた
『あなた!!この由緒正しい宮殿で、なんて格好をしているの!!』
『えっ・・・あっ・・・申し訳ありません。』
なんの罪もないのにいきなり部屋にいた同年代の女の子から叱責を受け、ひとまず頭を下げたチェギョンである
『皇帝陛下・・・私が皇太子妃になった暁には、宮殿内の風紀を乱す様な行いは絶対に許しません!!』
これにはチェギョンも困り果ててしまった。一応形だけ頭を下げたが、これは皇太后が用意した制服
慈慶殿の女官見習いのチェギョンにとって、皇太后は絶対的な存在なのである
何か一方的に正義感を振りかざすヒョリンに、さすがのハン家の当主もその腕を掴むと小声で助言した
『やめなさいヒョリン。』
『いいえお父様・・・こういう事がはっきり言えるようでないと皇太子妃など勤まりませんわ。』
ハン家の当主とミン・ヒョリンのそんなやりとりに、うんざりした顔つきで皇太后が声を荒げた
『チェギョンの格好がそんなにおかしいか?これは私が用意し私が着ろと命令した物だ。
皇太子妃にと名乗りを上げるのなら、物事の外側だけ見て何も考えずに口に出す様な
思慮のない者では困る。
ハン・・・そなたは一体何がしたいのだ?
おぉそうだ。話のついでに言っておくが、シン・チェギョンは私が預かる事となった。
感心な娘でな・・・私の元で下働きをするというのだ。自分の利害など一切考えておらぬとても良い娘だ。
惜しい事をしたな。おほほほほ・・・
では、私はチェギョンを連れて慈慶殿に戻ろうかの。きっとそこでお茶を飲む方が私も楽しそうだ。
じゃあ失礼する。チェギョン参るぞ。』
『はっ・・・はいっ!』
一体自分は何をしにここに連れて来られたのだろう・・・そう思いながらチェギョンは慈慶殿に戻っていく
皇太后が去っていった部屋の中では、非常に気まずくなったハン家の当主がヒョリンを連れてそそくさと
席を立った
『皇太后様は一体何をお考えなのだ・・・』
呟くように言う皇帝陛下に皇后は微笑みかけた
『皇太后様は皇太后様なりに何か考えておいでなのですよ。』
両陛下のそんな様子にシンは非常に憤った顔つきで問い掛けた
『陛下・・・あの娘が陛下が一番推薦する娘ですか?ハン家が養女にしてまで私の妃にしようと言う娘ですか?
あの様な者が妃になったとしたら、仕える者達は気持ちよく仕事が出来ないでしょうね。』
『・・・うむぅ・・・・』
元々胡散臭いと思っていたハン家の養女が、これほどまでに厚顔無恥だったとは・・・と陛下も呆れ返り
シンの言葉に反論もできず、ただ黙ってしまったのであった
『ヒョリン・・・先程の失態はどう挽回するのだ?
もう皇太后様からお前は嫌われてしまった。あろうことかシン・チェギョンにあの様な言いがかりをつけるとは。』
『皇太后様から嫌われようと私が結婚しようとしているのは皇太子殿下です。
皇太子殿下さえ手に入れてしまえばこっちのもの・・・』
『本当だな?お前がそれなりの結果を出すまでは、養子縁組の話は保留とするからな。』
『ええ。どうぞご期待ください。それより・・・あのシン・チェギョンって何者なんですか?』
『先帝とあの娘の祖父が親友だった縁で、皇太后様はあの娘が非常に気に入っているようだ。
それに困ったことにうちのチョルスもだ。』
『えっ?チョルスお兄さんが?』
『そうだ。将来結婚したいと今でも言っている。』
『なぜ?あんな何も持っていない小娘に心を奪われるんでしょう。』
『ヒョリン・・・お前もそれほど魅力的な女性にならないと、皇太子殿下はお前に落ちないだろう。』
『大丈夫です。きっと上手くいきますわ。ふふふ・・・』
宮殿から帰る車の中、ハン家の当主はヒョリンの決意を耳にし半信半疑の気持ちになりながらも
このヒョリンの入宮なくして我が一族の繁栄は望めないと思ったようだ
一方慈慶殿に戻っていった皇太后とチェギョンは、皇太后の部屋でお茶を楽しんでいた
『ん~~♪チェギョンの煎れてくれたお茶は美味しいのぉ。チェギョンもそこに座りなさい。』
『はい。失礼いたします。』
『先程の娘・・・どう思った?』
『えっ?どうと言いますと?』
『シンのお妃候補なのだ。』
『シンく・・・あっ皇太子殿下のお妃候補ですか?』
『なんとも腹立たしい口を利く者だったな。』
『・・・殿下の花嫁候補であるなら、私には何も口を挟む資格などありません。』
『ふむぅ・・・だが私は気に入らぬのだ。あんな上からものを言う者が皇太子妃になどなってみなさい。
女官たちはきっと嫌な思いをするだろうな。』
『私は・・・皇太后様のお住まいで女官をするので、そんな想いはしなくて済みますね。くすくす・・・』
『おぉそうだチェギョン、今日はお休みの日だった。後は部屋に戻ってゆっくりしなさい。』
『あ・・・そうでした。ありがとうございます。学校の宿題が残っているので、それを片づけてしまいますね。』
『そうしなさい。』
チェギョンが皇太后の部屋を去って行って暫くしてから、本殿から戻る途中のシンが皇太后の元にやって来た
『おや・・・シン、どうしたのだ?』
恐らくチェギョンがまだいるだろうと思いやってきたのだろうと察した皇太后は、楽しそうに問いかけた
『あ・・・いえ、皇太后様がご機嫌を損ねて行ってしまわれたので心配になって・・・』
そう言いながらシンの目はチェギョンを探している
だがその視線の先にチェギョンは居ない
『チェギョンか?』
『えっ・・・?あ・・・はい。』
『部屋に戻ったぞ。』
『・・・そうでしたか・・・・』
明らかに落胆の色を浮かべた瞳は、何かを思いついた様で皇太后をじっと見つめた
『あ・・・あの皇太気后様、お願いがあるのです。』
『なんだ?言ってみるが良いぞ。』
『チェギョンの・・・学業の遅れが心配です。』
『おぉ?それはどういう意味だ?』
『以前アルバイトをしていた頃から、チェギョンはずっと休みが無かったので
昼休みに宿題を片付けていたのですが、以前学校内の私の部屋に来る時には
いつも宿題を持って来ていました。
チェギョンに毎日少しの時間だけでも、私が宿題を教えてあげたいと思うのですが
なにせ・・・宮殿内は人の目がありまして・・・』
『なるほど・・・確かにそうだな。ではこうしよう。私の就寝時間は9時半だ。
チェギョンも私に就寝前のお茶を持って来て仕事が終わる。それから先・・・この部屋を二人に貸してやろうかの。』
『えっ?この部屋をですか?』
『おぉ・・・私はすぐに眠ってしまうのでな。隣の部屋にはいるが、よほど大騒ぎをしなければ目が覚める事も無い。
静かに宿題を教えてやることが出来るのならここに来るがよいぞ。』
『本当ですか?ありがとうございます。感謝いたします皇太后様・・・』
『よいのだ。チェギョンも女官の仕事をしていて勉強が追いつかないのでは困ってしまう。
太子がちゃんと教えてあげるのだぞ。』
『はい。そういたします。』
シンの目が輝いている。一日ほんの少しの時間でもチェギョンと過ごす時間を確保できたシンは
意気揚々と東宮殿に戻っていった
おぉ~っと~~シン君が行動を起こしてしまいました。
宮殿の中ではなかなか逢えない・・・から
毎日逢えるようになったシン君は
嬉しくて仕方がないらしい❤
思わず声を上げそうになるのをシンは必死に堪えた。なぜならこの場所は本殿であり、皇帝陛下の目の前だ
もしその心の中に秘めた気持ちをあからさまに出してしまったら、皇帝陛下はなんの罪もないチェギョンに
あの逃避行などのすべての責任を押し付け、処罰の対象とするかもしれないと考えたのだ
だが当の皇帝陛下自身はシンのそのような想いなどとっくに見通していたが、宮殿の女官見習いが
勝手に制服を調達することなどあり得ないと、驚きを隠せずとも≪皇太后様の命令だろう≫と思い
黙っていたのである
ところが・・・
チェギョンがその扉を開け『では失礼いたします。』と出て行こうとした時、意外な人物がチェギョンのその格好を
咎めた
『あなた!!この由緒正しい宮殿で、なんて格好をしているの!!』
『えっ・・・あっ・・・申し訳ありません。』
なんの罪もないのにいきなり部屋にいた同年代の女の子から叱責を受け、ひとまず頭を下げたチェギョンである
『皇帝陛下・・・私が皇太子妃になった暁には、宮殿内の風紀を乱す様な行いは絶対に許しません!!』
これにはチェギョンも困り果ててしまった。一応形だけ頭を下げたが、これは皇太后が用意した制服
慈慶殿の女官見習いのチェギョンにとって、皇太后は絶対的な存在なのである
何か一方的に正義感を振りかざすヒョリンに、さすがのハン家の当主もその腕を掴むと小声で助言した
『やめなさいヒョリン。』
『いいえお父様・・・こういう事がはっきり言えるようでないと皇太子妃など勤まりませんわ。』
ハン家の当主とミン・ヒョリンのそんなやりとりに、うんざりした顔つきで皇太后が声を荒げた
『チェギョンの格好がそんなにおかしいか?これは私が用意し私が着ろと命令した物だ。
皇太子妃にと名乗りを上げるのなら、物事の外側だけ見て何も考えずに口に出す様な
思慮のない者では困る。
ハン・・・そなたは一体何がしたいのだ?
おぉそうだ。話のついでに言っておくが、シン・チェギョンは私が預かる事となった。
感心な娘でな・・・私の元で下働きをするというのだ。自分の利害など一切考えておらぬとても良い娘だ。
惜しい事をしたな。おほほほほ・・・
では、私はチェギョンを連れて慈慶殿に戻ろうかの。きっとそこでお茶を飲む方が私も楽しそうだ。
じゃあ失礼する。チェギョン参るぞ。』
『はっ・・・はいっ!』
一体自分は何をしにここに連れて来られたのだろう・・・そう思いながらチェギョンは慈慶殿に戻っていく
皇太后が去っていった部屋の中では、非常に気まずくなったハン家の当主がヒョリンを連れてそそくさと
席を立った
『皇太后様は一体何をお考えなのだ・・・』
呟くように言う皇帝陛下に皇后は微笑みかけた
『皇太后様は皇太后様なりに何か考えておいでなのですよ。』
両陛下のそんな様子にシンは非常に憤った顔つきで問い掛けた
『陛下・・・あの娘が陛下が一番推薦する娘ですか?ハン家が養女にしてまで私の妃にしようと言う娘ですか?
あの様な者が妃になったとしたら、仕える者達は気持ちよく仕事が出来ないでしょうね。』
『・・・うむぅ・・・・』
元々胡散臭いと思っていたハン家の養女が、これほどまでに厚顔無恥だったとは・・・と陛下も呆れ返り
シンの言葉に反論もできず、ただ黙ってしまったのであった
『ヒョリン・・・先程の失態はどう挽回するのだ?
もう皇太后様からお前は嫌われてしまった。あろうことかシン・チェギョンにあの様な言いがかりをつけるとは。』
『皇太后様から嫌われようと私が結婚しようとしているのは皇太子殿下です。
皇太子殿下さえ手に入れてしまえばこっちのもの・・・』
『本当だな?お前がそれなりの結果を出すまでは、養子縁組の話は保留とするからな。』
『ええ。どうぞご期待ください。それより・・・あのシン・チェギョンって何者なんですか?』
『先帝とあの娘の祖父が親友だった縁で、皇太后様はあの娘が非常に気に入っているようだ。
それに困ったことにうちのチョルスもだ。』
『えっ?チョルスお兄さんが?』
『そうだ。将来結婚したいと今でも言っている。』
『なぜ?あんな何も持っていない小娘に心を奪われるんでしょう。』
『ヒョリン・・・お前もそれほど魅力的な女性にならないと、皇太子殿下はお前に落ちないだろう。』
『大丈夫です。きっと上手くいきますわ。ふふふ・・・』
宮殿から帰る車の中、ハン家の当主はヒョリンの決意を耳にし半信半疑の気持ちになりながらも
このヒョリンの入宮なくして我が一族の繁栄は望めないと思ったようだ
一方慈慶殿に戻っていった皇太后とチェギョンは、皇太后の部屋でお茶を楽しんでいた
『ん~~♪チェギョンの煎れてくれたお茶は美味しいのぉ。チェギョンもそこに座りなさい。』
『はい。失礼いたします。』
『先程の娘・・・どう思った?』
『えっ?どうと言いますと?』
『シンのお妃候補なのだ。』
『シンく・・・あっ皇太子殿下のお妃候補ですか?』
『なんとも腹立たしい口を利く者だったな。』
『・・・殿下の花嫁候補であるなら、私には何も口を挟む資格などありません。』
『ふむぅ・・・だが私は気に入らぬのだ。あんな上からものを言う者が皇太子妃になどなってみなさい。
女官たちはきっと嫌な思いをするだろうな。』
『私は・・・皇太后様のお住まいで女官をするので、そんな想いはしなくて済みますね。くすくす・・・』
『おぉそうだチェギョン、今日はお休みの日だった。後は部屋に戻ってゆっくりしなさい。』
『あ・・・そうでした。ありがとうございます。学校の宿題が残っているので、それを片づけてしまいますね。』
『そうしなさい。』
チェギョンが皇太后の部屋を去って行って暫くしてから、本殿から戻る途中のシンが皇太后の元にやって来た
『おや・・・シン、どうしたのだ?』
恐らくチェギョンがまだいるだろうと思いやってきたのだろうと察した皇太后は、楽しそうに問いかけた
『あ・・・いえ、皇太后様がご機嫌を損ねて行ってしまわれたので心配になって・・・』
そう言いながらシンの目はチェギョンを探している
だがその視線の先にチェギョンは居ない
『チェギョンか?』
『えっ・・・?あ・・・はい。』
『部屋に戻ったぞ。』
『・・・そうでしたか・・・・』
明らかに落胆の色を浮かべた瞳は、何かを思いついた様で皇太后をじっと見つめた
『あ・・・あの皇太気后様、お願いがあるのです。』
『なんだ?言ってみるが良いぞ。』
『チェギョンの・・・学業の遅れが心配です。』
『おぉ?それはどういう意味だ?』
『以前アルバイトをしていた頃から、チェギョンはずっと休みが無かったので
昼休みに宿題を片付けていたのですが、以前学校内の私の部屋に来る時には
いつも宿題を持って来ていました。
チェギョンに毎日少しの時間だけでも、私が宿題を教えてあげたいと思うのですが
なにせ・・・宮殿内は人の目がありまして・・・』
『なるほど・・・確かにそうだな。ではこうしよう。私の就寝時間は9時半だ。
チェギョンも私に就寝前のお茶を持って来て仕事が終わる。それから先・・・この部屋を二人に貸してやろうかの。』
『えっ?この部屋をですか?』
『おぉ・・・私はすぐに眠ってしまうのでな。隣の部屋にはいるが、よほど大騒ぎをしなければ目が覚める事も無い。
静かに宿題を教えてやることが出来るのならここに来るがよいぞ。』
『本当ですか?ありがとうございます。感謝いたします皇太后様・・・』
『よいのだ。チェギョンも女官の仕事をしていて勉強が追いつかないのでは困ってしまう。
太子がちゃんと教えてあげるのだぞ。』
『はい。そういたします。』
シンの目が輝いている。一日ほんの少しの時間でもチェギョンと過ごす時間を確保できたシンは
意気揚々と東宮殿に戻っていった
おぉ~っと~~シン君が行動を起こしてしまいました。
宮殿の中ではなかなか逢えない・・・から
毎日逢えるようになったシン君は
嬉しくて仕方がないらしい❤