ユル先生から≪僕と付き合わない?≫そう告げられた翌日、私の心は揺れ動いていた
何に揺れ動いていたか・・・それは自分の気持ちに対してではない
アレンジメントフラワーのコンテストで入賞したいから、ユル先生とお付き合いする・・・
そんな気持ちは微塵もない
ユル先生の元を離れた方がいいのではないか・・・つまりユル先生の教室を辞めるか否かで
悩んでいたのである
いつからか自分の作品はユル先生の教え通りの物とは違って来ている事も気が付いていた
段々年数を重ねるうちに、私自身も言うなりではなく自己主張する様になって来たのだろう
今もユル先生の作品は確かに素敵だと思うけど、私の目指す所とは違う
辞めた方がいいのかな・・・
『はぁぁぁぁ~~~~・・・・』
大きく溜息を吐いたその時、店内にイ・シンさんがいらっしゃることに気がつき、私は慌てて笑顔を取り繕った
『あ・・・たっ大変失礼いたしました。いらっしゃいませ♪』
『こんばんは。なんだか憂鬱そうだな。なにか・・・あったのか?』
『あ・・・いえそんな・・・』
社員のウナもアルバイトのユリンも今日は早上がりで既に店にはいない
私は接客業という枠から少しだけ自分を解放してあげたくなったみたいだ
『あの・・・お聞きしたいんですけど、誰かとお付き合いする時にその方が自分にとって有利な
人間であるかどうかなんて考えます?』
『あぁ?いいや・・・そんなことは考えない。たとえば政略結婚だったら相手が有利な人間であることが
第一条件になるだろうが、お付き合いで利害を考えるなんて純粋とは言えないだろう。』
『ですよね・・・』
『誰かから告白された・・・とか?』
もちろん話の流れでイ・シンさんはそう言ったのだろうが、私の心臓は跳ね上がりそうな思いだった
『えっ?!・・・ええまぁ・・・』
『その人に好意を持っているわけではないのか?』
『好きとか考えた事もなくて・・・。すごく尊敬する人なのは確かなんですが
私にとって恋愛対象ではないと言いますか・・・』
『だったら断ればいい。』
『相手は私の先生なんです。断るのなら師弟関係も終わらせた方がいいのかなと思って・・・』
『あぁもちろん。そのままでは気まずいだろうからな。何も悩む事は無い・・・』
『そうですよね~♪あ・・・すみません。今日はどのお花にしましょうか?』
そう言いながら私はハンドクリームのお礼を言っていない事に気がつき慌てた
『そうだな。今日はこれを貰おう。』
イ・シンさんが指差した薔薇の中から、一番瑞々しいものを私は一本取り出した
『フラワー・ガールですね。かしこまりました。
あ・・・あの・・・お礼が遅くなってしまって・・・昨日いただいたハンドクリーム、指先がしっとりして
すごくいいんです。本当にありがとうございました。』
『しっとり?』
そう言うとイ・シンさんは徐に、薔薇の花を持っていない左の指先を掴んだ
うわっ・・・指先に私のすべての血液が集まりそうだ
『本当にしっとりしている。良かった・・・いつも気になっていたんだ。』
『あ・・・はい。ありがとうございます。』
男性から手を握られたのなんて・・・何年振りだろう。もちろん私だって恋愛経験がないわけじゃない
だけどこの人からこんな行為を受けるとは思ってもみなかった私は、顔が真っ赤に染まっていただろう
ほんの一瞬だった時間がものすごく長く感じられ、イ・シンさんが私の指を離した後私は動揺を隠そうと
必死にラッピングをしたような気がする
なにせ頭にまで血が上ってしまってよく覚えていない
『どうもありがとうございました♪』
イ・シンさんは店を出る時に少しだけ振り返り私にこう告げた
『付き合うなら本当に好きな人と付き合った方がいい。君には利害関係の恋愛なんて無理だ。』
『はっはい!!』
もちろん私だってそう思っている。付き合うならあなたがいい・・・イ・シンさんがドアの向こうに消えた後
私はそっと呟いた
ユルに宣戦布告までしておきながら、先手を打たれてしまった俺だったが・・・どうやらシン・チェギョン嬢にとって
イ・ユルは師と言う存在でしかないようだ
折角気合を入れて訪れた彼女の店だったが・・・相談相手の様な形になってしまい憂鬱そうに悩んでいる彼女に
俺までさらなる悩みを与える様な事も出来ず、結局今日までデートに誘う事など出来なかった
しかし・・・いよいよ明日は母が退院すると言う連絡が入り、俺は今日こそは彼女に気持ちを伝えようと
意気込んで≪来夢生花店≫を訪ねた
今日もショーケースには実に愛らしいアレンジメントがディスプレイされており、俺の緊張を解してくれる
決して派手ではない店頭のクリスマスツリーも、まるで彼女を見ているようで心が和んだ
『こんばんは。』
店内に入って行くと彼女は俺のプレゼントしたクリームを手に塗っているところだった
『あ・・・いらっしゃいませ♪』
極上の笑顔で迎えられ、俺はまた自分の想いが口から出なくなりそうだ
『実は・・・母が明日退院することになった。だから見舞いに訪れるのも今日が最後だ。』
『えっ?・・・それはおめでとうございます。よかった~~本当に良かったですね。』
彼女は一瞬驚いた様に目を見開き、そのあと満面の笑顔を浮かべた
『と言う事は・・・この店にご来店いただけるのも今日が最後ですね?
良かった・・・実は私、明日お休み貰っているんです。』
『明日は休みだったのか・・・』
『はい。明日フラワーアレンジメントのコンテストがあって、それに参加するんです。』
『そうか!それは頑張らないとな・・・』
あぁ・・・明日大事なコンテストを控えているなんて聞いたら、心を乱すような言葉は言えない
喉元まで出かかっているその言葉を、俺は必死の思いで抑え込んだ
『じゃあ今日は・・・今までの感謝をこめて私からプレゼントさせていただきますね。』
彼女はそう言うと何本かの薔薇を見繕い、丁寧に棘を取り除き小さな花束にしてくれた
もう閉店時間はとうに過ぎていた
だがそんなことは構わないと言う様に、彼女は俺に薔薇の花束を手渡すとにっこり微笑んだ
『お母様の退院おめでとうございます。イ・シンさんもご健勝であられますように・・・』
これで終わりにするつもりなどない。病院に来る事は無くても度々彼女に逢いに来るだろう
『ありがとう。君も明日頑張れ!!』
『はい。どうもありがとうございました。』
ありがとうを言うのは俺の方だろう?今日・・・彼女は自分のポケットマネーで俺に花束をくれたのだ
『じゃあまた・・・』
それだけを言うのが精一杯で≪来夢生花店≫を出る
よくよく考えたら明日開催されるコンテストって・・・毎年我が社のミン秘書が優勝している
コンテストじゃなかったか?
きっと母も退院したその足で駆けつけるに違いない
俺も・・・行ってみようか
陰ながら応援するくらいなら邪魔にはならないだろう
明日に退院を控えた母の病室に行った時、母はいつもと違い何本もの薔薇が小さな花束になっているのを見て
嬉しそうにその花の香りを嗅いだ
『ん~~いい香りね♪ところでシン・・・あなた、このお花うちの店から持って来たんじゃないのね?』
『あぁうちの店のものじゃない。なぜわかった?』
『薔薇の棘が丁寧に処理されているし・・・何よりもラッピングが事務的じゃないわ。』
『そうだろう?くくくっ・・・』
『シン・・・もしかしてあなたの意中の相手って、≪来夢生花店≫にお勤めの方?』
『さあな。上手く行ったらいつか逢わせるよ。』
『楽しみに待っているわ。』
彼女に逢った事のない母は、コンテスト会場で彼女を見ても解らないかもしれない
だがその花を見て、彼女の人柄を理解しただろう母に・・・まだ俺と同じ感性を
持ち合せているのではないか・・・
だとしたらまだ見込みがあると密かに胸を撫で下ろした
何に揺れ動いていたか・・・それは自分の気持ちに対してではない
アレンジメントフラワーのコンテストで入賞したいから、ユル先生とお付き合いする・・・
そんな気持ちは微塵もない
ユル先生の元を離れた方がいいのではないか・・・つまりユル先生の教室を辞めるか否かで
悩んでいたのである
いつからか自分の作品はユル先生の教え通りの物とは違って来ている事も気が付いていた
段々年数を重ねるうちに、私自身も言うなりではなく自己主張する様になって来たのだろう
今もユル先生の作品は確かに素敵だと思うけど、私の目指す所とは違う
辞めた方がいいのかな・・・
『はぁぁぁぁ~~~~・・・・』
大きく溜息を吐いたその時、店内にイ・シンさんがいらっしゃることに気がつき、私は慌てて笑顔を取り繕った
『あ・・・たっ大変失礼いたしました。いらっしゃいませ♪』
『こんばんは。なんだか憂鬱そうだな。なにか・・・あったのか?』
『あ・・・いえそんな・・・』
社員のウナもアルバイトのユリンも今日は早上がりで既に店にはいない
私は接客業という枠から少しだけ自分を解放してあげたくなったみたいだ
『あの・・・お聞きしたいんですけど、誰かとお付き合いする時にその方が自分にとって有利な
人間であるかどうかなんて考えます?』
『あぁ?いいや・・・そんなことは考えない。たとえば政略結婚だったら相手が有利な人間であることが
第一条件になるだろうが、お付き合いで利害を考えるなんて純粋とは言えないだろう。』
『ですよね・・・』
『誰かから告白された・・・とか?』
もちろん話の流れでイ・シンさんはそう言ったのだろうが、私の心臓は跳ね上がりそうな思いだった
『えっ?!・・・ええまぁ・・・』
『その人に好意を持っているわけではないのか?』
『好きとか考えた事もなくて・・・。すごく尊敬する人なのは確かなんですが
私にとって恋愛対象ではないと言いますか・・・』
『だったら断ればいい。』
『相手は私の先生なんです。断るのなら師弟関係も終わらせた方がいいのかなと思って・・・』
『あぁもちろん。そのままでは気まずいだろうからな。何も悩む事は無い・・・』
『そうですよね~♪あ・・・すみません。今日はどのお花にしましょうか?』
そう言いながら私はハンドクリームのお礼を言っていない事に気がつき慌てた
『そうだな。今日はこれを貰おう。』
イ・シンさんが指差した薔薇の中から、一番瑞々しいものを私は一本取り出した
『フラワー・ガールですね。かしこまりました。
あ・・・あの・・・お礼が遅くなってしまって・・・昨日いただいたハンドクリーム、指先がしっとりして
すごくいいんです。本当にありがとうございました。』
『しっとり?』
そう言うとイ・シンさんは徐に、薔薇の花を持っていない左の指先を掴んだ
うわっ・・・指先に私のすべての血液が集まりそうだ
『本当にしっとりしている。良かった・・・いつも気になっていたんだ。』
『あ・・・はい。ありがとうございます。』
男性から手を握られたのなんて・・・何年振りだろう。もちろん私だって恋愛経験がないわけじゃない
だけどこの人からこんな行為を受けるとは思ってもみなかった私は、顔が真っ赤に染まっていただろう
ほんの一瞬だった時間がものすごく長く感じられ、イ・シンさんが私の指を離した後私は動揺を隠そうと
必死にラッピングをしたような気がする
なにせ頭にまで血が上ってしまってよく覚えていない
『どうもありがとうございました♪』
イ・シンさんは店を出る時に少しだけ振り返り私にこう告げた
『付き合うなら本当に好きな人と付き合った方がいい。君には利害関係の恋愛なんて無理だ。』
『はっはい!!』
もちろん私だってそう思っている。付き合うならあなたがいい・・・イ・シンさんがドアの向こうに消えた後
私はそっと呟いた
ユルに宣戦布告までしておきながら、先手を打たれてしまった俺だったが・・・どうやらシン・チェギョン嬢にとって
イ・ユルは師と言う存在でしかないようだ
折角気合を入れて訪れた彼女の店だったが・・・相談相手の様な形になってしまい憂鬱そうに悩んでいる彼女に
俺までさらなる悩みを与える様な事も出来ず、結局今日までデートに誘う事など出来なかった
しかし・・・いよいよ明日は母が退院すると言う連絡が入り、俺は今日こそは彼女に気持ちを伝えようと
意気込んで≪来夢生花店≫を訪ねた
今日もショーケースには実に愛らしいアレンジメントがディスプレイされており、俺の緊張を解してくれる
決して派手ではない店頭のクリスマスツリーも、まるで彼女を見ているようで心が和んだ
『こんばんは。』
店内に入って行くと彼女は俺のプレゼントしたクリームを手に塗っているところだった
『あ・・・いらっしゃいませ♪』
極上の笑顔で迎えられ、俺はまた自分の想いが口から出なくなりそうだ
『実は・・・母が明日退院することになった。だから見舞いに訪れるのも今日が最後だ。』
『えっ?・・・それはおめでとうございます。よかった~~本当に良かったですね。』
彼女は一瞬驚いた様に目を見開き、そのあと満面の笑顔を浮かべた
『と言う事は・・・この店にご来店いただけるのも今日が最後ですね?
良かった・・・実は私、明日お休み貰っているんです。』
『明日は休みだったのか・・・』
『はい。明日フラワーアレンジメントのコンテストがあって、それに参加するんです。』
『そうか!それは頑張らないとな・・・』
あぁ・・・明日大事なコンテストを控えているなんて聞いたら、心を乱すような言葉は言えない
喉元まで出かかっているその言葉を、俺は必死の思いで抑え込んだ
『じゃあ今日は・・・今までの感謝をこめて私からプレゼントさせていただきますね。』
彼女はそう言うと何本かの薔薇を見繕い、丁寧に棘を取り除き小さな花束にしてくれた
もう閉店時間はとうに過ぎていた
だがそんなことは構わないと言う様に、彼女は俺に薔薇の花束を手渡すとにっこり微笑んだ
『お母様の退院おめでとうございます。イ・シンさんもご健勝であられますように・・・』
これで終わりにするつもりなどない。病院に来る事は無くても度々彼女に逢いに来るだろう
『ありがとう。君も明日頑張れ!!』
『はい。どうもありがとうございました。』
ありがとうを言うのは俺の方だろう?今日・・・彼女は自分のポケットマネーで俺に花束をくれたのだ
『じゃあまた・・・』
それだけを言うのが精一杯で≪来夢生花店≫を出る
よくよく考えたら明日開催されるコンテストって・・・毎年我が社のミン秘書が優勝している
コンテストじゃなかったか?
きっと母も退院したその足で駆けつけるに違いない
俺も・・・行ってみようか
陰ながら応援するくらいなら邪魔にはならないだろう
明日に退院を控えた母の病室に行った時、母はいつもと違い何本もの薔薇が小さな花束になっているのを見て
嬉しそうにその花の香りを嗅いだ
『ん~~いい香りね♪ところでシン・・・あなた、このお花うちの店から持って来たんじゃないのね?』
『あぁうちの店のものじゃない。なぜわかった?』
『薔薇の棘が丁寧に処理されているし・・・何よりもラッピングが事務的じゃないわ。』
『そうだろう?くくくっ・・・』
『シン・・・もしかしてあなたの意中の相手って、≪来夢生花店≫にお勤めの方?』
『さあな。上手く行ったらいつか逢わせるよ。』
『楽しみに待っているわ。』
彼女に逢った事のない母は、コンテスト会場で彼女を見ても解らないかもしれない
だがその花を見て、彼女の人柄を理解しただろう母に・・・まだ俺と同じ感性を
持ち合せているのではないか・・・
だとしたらまだ見込みがあると密かに胸を撫で下ろした
(薔薇の画像は薔薇の奥様こと『花が好き』のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
お持ち帰りはご遠慮ください。)
相手の事を想っているのに・・・
逆に寂しい思いをさせてしまったり
青春ですな❤
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
逆に寂しい思いをさせてしまったり
青春ですな❤
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!