その日の帰宅時・・・車の中で私はコお兄さんにお願いをしてみる
『お兄さん・・・少し寄り道していってもいいですか?最寄りのスーパーに・・・』
『それはできませんチェギョン様・・・』
『えっ?なぜですか?』
『後をつけられているからです。』
『えっ?まさか皇室の車?』
『いいえ違います。もっと質の悪い輩です。』
『えっ?なぜ?』
そういいながら私は背後を振り返りつけて来る車を確認すると、今日の昼休みの事を思い出し声を上げた
『あっ!』
『どうかなさいましたか?』
『あの・・・今日ミン・ヒョリンさんと少しやり合っちゃったものですから・・・』
『ミン・ヒョリン様と?』
『はい~。』
『だとしたらきっとチェギョン様の事を調べようと追ってきているのでしょう。全力で巻かなければ・・・』
『でも・・・ミン家がそんな質の悪い人を使ったりしますか?』
『ええ。権力を手にしている人ほど、裏の顔は真っ黒なものです。ではちゃんとシートベルトをしてくださいね。』
『解りました、コお兄さん。』
確かにダークな企みを持つ一家だもの・・・黒い繋がりだってある筈
そんなのお手のものかも・・・
それから20分ほども走った頃、ようやくお兄さんは車の速度を緩めた
『やっと振り切りました。』
『お兄さんごめんなさい。』
『いいえ・・・チェギョン様のお気持ちもよく理解できます。ですがチェ・チュナであっても
このような行動に出るのですから、もし本当はシン・チェギョンだと知ったらどんな手段に出るか・・・』
『覚悟はしています。恐らく今度こそ息の根を止めてやろうと躍起になるでしょう。』
『もしも・・・今探っている証拠が手に入らなかった時にはどうなさいますか?』
『そうなった時には勝負に出るしかありません。お兄さん・・・手伝っていただけますか?』
『もちろん私は全面的にチェギョン様に協力いたします。』
『少し危険な賭けに出ても?』
『ええ、どんな危険が待っていようとチェギョン様を元の場所に戻します。』
この三年・・・すべてを犠牲にして傍にいてくれたお姉ちゃんとコお兄さん
この二人の想いに応えるためにも、私は必ずあの事件の真相を暴かなきゃならない
その夜から私はシン君やガンヒョンとマメに連絡を取り合うようになった
二人共学校ではあまり話ができない
人目のある時には・・・私はチュナになる
チェギョンであることを思い出した今、それは相当なストレスなのだ
私はそのストレスを発散するようにシン君の番号を押した
『シン君?』
『あぁ。』
『今・・・執務室?』
『いやもう自室に戻った。』
『そっか~♪じゃあ話せる?』
『あぁ。』
『今日ね・・・皇太子ルームから帰る時、ミン・ヒョリンさんに捕まっちゃって・・・』
『なにっ?それで何を言われたんだ?』
『なぜあなたが皇太子殿下のお部屋に出入りできるの?っていうから頭に来ちゃって・・・
≪なんでも~皇太子殿下の許嫁の方が私とそっくりだとかで、食事に招かれたんですの。
最初は興味なんか全くなかったんですが、ほら・・・あの通り素敵な方でしょう?
皇太子殿下と禁断の恋・・・なんてしてみたいですわ。うふふふふ~♪≫って言ってやった。』
『チェギョン・・・お前ってやつは火に油を注ぐ様なことを・・・』
『だって私がシン・チェギョンにそっくりだからって目の敵にされたらたまんない。まぁ本人だけどね。
ただでさえあの人・・・許せないのに・・・』
『それもそうだが・・・相手は何をするかわからない人種だ。少しは発言に気を付けてくれ。』
『私があの人を恐れる理由はないよ!いざとなったら私の手で、正々堂々と片を付ける!
だからシン君・・・その時は協力して。』
『あぁ、もちろん協力する。だが危険がないようにしてくれよ。』
『うん。』
そう答えたけどミン・ヒョリンと片を付けるのに、危険がない筈はない
でも今はシン君を安心させるために、敢えてそう答えた私だった
それから毎日のようにチェギョンはギョンやガンヒョンと共に俺に部屋に来て食事をした
その度にチェギョンは不可解なことを質問してくる
『ねえギョン君・・・写真に精通しているのは知っているけど、照明には詳しい?』
『チェギョン見くびるなよ。俺は演劇部の舞台の時は必ず、照明を依頼されるほどの腕前だぜ♪』
『そっか~照明係はギョン君ね♪』
『あぁ?チェギョン・・・一体何の話だ?』
『えへへ~こっちの話。今後秘密のミッションがありそうなの。その時はどうぞよろしくねギョン君。』
『おう!その辺りは俺に任せておけ!!』
胸を張るギョン・・・秘密めいたチェギョンの口ぶりが妙に気にかかる
『チェギョン・・・一体何をしようというのだ?』
『それは・・・確固たる証拠が掴めなかった時の保険♪』
俺に凭れかかり屈託のない笑顔を向けたチェギョン・・・そんなチェギョンを見てなんだか胸騒ぎを覚えた
チェギョンが何かを企んでいる時には、以前もこんな胸騒ぎがした
だが以前はほんの悪戯だったが今は違う
目が・・・笑っていないのだ
チェギョンは一体何をしようというのだろうか
俺はその真意がわからず、不安を募らせるばかりだった
そうして迎えた翌週の会合
皆それぞれの宮殿から皇太后様の別荘に何十台もの車が駆け付けた
以前と変わったことといえば女官や内官・・・イギサの数が増えたことだ
部屋に集まった全員はまずキム内官の報告に耳を傾けた
『三年前の事故の日のミン・ヒョリン様の発信履歴を調べてまいりました。
間違いなく・・・チェギョン様に電話をかけておいででした。ほんの10秒という短い時間ですが通話されていたと
記録されております。』
『そうか。キム内官ご苦労だった。ではハンイギサ・・・君の報告を聞こう。』
ハンイギサは少し浮かない顔をし発言し始めた
『以前東宮に短い間イギサとして勤務していたヨン・サンギュンですが、イギサを辞めた後高級別荘地に
住んでおりました。その別荘の所有は王族のミン家です。
ヨン・サンギュンはミン家の血縁であることも突き止めました。
私は知人をその別荘の管理人として勤務させ、ヨン・サンギュンの動きを見張らせておりました。
ところが・・・一か月前に姿を消したというのです。』
『なにっ?こちらの動きを悟られたのか?』
『いいえそうではありません。管理人には≪少し旅行に行ってくる。≫とだけ告げて大した荷物も持たずに
別荘を出て行ったそうですが・・・それから一カ月経っても戻らないということです。
小旅行だと思って私に連絡をしなかったことを、知人は詫びておりました。
それで私は出国者をしらみつぶしに調べましたところ・・・別荘を出たその日に海外に渡ったと記録がありました。
行先はフランスでした。その日の空港での監視カメラ映像を確認しましたところ・・・ミン家の当主様が
見送りに来ておいででした。
現在ヨン・サンギュンの居所を突き止めるために人を使って調べております。
ですが偽名を使っていれば・・・なかなか見つかりにくいかと・・・』
申し訳なさそうに告げたハンイギサ・・・皇帝陛下は落胆の表情を浮かべた
『電話の発信履歴だけではミン家があの事件の犯人であるとは断定できまい・・・
どうしたらよいのだ・・・』
皇后様も皇太后様も小さく溜息を吐いて俯いた
その時だった
俺の隣に座っていたチェギョンがいきなり立ち上がり発言したのだ
『皇帝陛下、私にひとつ考えがございます。』
『チェギョンや・・・一体どんな考えがあるのだ?言ってみなさい。』
『ミン家のお嬢様は、私の顔を相当お嫌いのようです。私が彼女を挑発して囮になるんです。』
『なにっ?チェギョンが囮に?』
とんでもないことを言い出す許嫁だ
そんなこと許せるはずないだろう?俺は思わず声を荒げた
『ダメだチェギョン!そんなこと絶対に許さない!』
『だったら私はずっとチェ・チュナのまま生きるの?漸く記憶が戻ったのに・・・もう我慢ができない!』
『気持ちはわかるが、三年前ミン家がお前にどんなことをしたかわかっているだろう?
また同じような目に遭ったらどうする!』
『同じような状況を作り出すんです。』
『まさか…また事故を?』
『そう・・・そう仕向けるんです。』
『待てよ。それは絶対にダメだ。そんなことここにいらっしゃる陛下たちもお許しになる筈がない。』
断固として反対する俺・・・だがチェギョンは揺らぐことのない信念を秘めた瞳で皇帝陛下に言い切った
『お願いです陛下。許可してください。コお兄さんも危険を覚悟で協力してくれると言いました。』
『だがチェギョン・・・また事故を起こすよう仕向けるなんて、お前の身が今度は無事でいられるかどうか
わからないではないか!そんなこと・・・許可するとは言えない。』
『いいえ陛下。今勝負に出ないと、腐りきった王族を排除できるチャンスはもう二度と来ません。
私やチェ尚宮お姉さん・コお兄さんも無駄に三年を過ごしてきたわけではありません。
確かに危険な掛けですが・・・今度こそミン・ヒョリンさんの口から悪事を全て白状させます。
ですので陛下・・・どうかお願いします!』
俺にはもう止めることなどでき居なかった
記憶を取り戻し真実を知った時、一番悔しい思いをしたのは他の誰でもないチェギョンだ
『絶対に・・・怪我をしたり、再び記憶を失くしたりしないと誓えるのか?』
『はい。誓います陛下。』
その自信はどこから来るのか・・・俺には到底理解できなかった
『だったら・・・許可しよう。』
苦渋の決断だろう
その後その場にいる全員で綿密な打ち合わせが行われ、決行はその週の金曜日と決まった
俺の許嫁はとんでもないモンスターになって戻ってきたのかもしれないな・・・
首に巻かれたギプスを外すチェギョンを見て、俺はそう思った
心配よりも不安よりも・・・今はジャンヌ・ダルクさながらに先頭に立って指揮を執るチェギョンを
勇ましく美しいとさえ感じる俺だった
あら~やだわ奥さん、また事故が起こるんですって(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
さてチェギョンは一体何を考えているんでしょうね。
次回どうぞお楽しみに~♪
ってそこまで書けるかわからないけど(爆)
さてチェギョンは一体何を考えているんでしょうね。
次回どうぞお楽しみに~♪
ってそこまで書けるかわからないけど(爆)