チェ尚宮から信頼のおける女官二名の名を聞き出し、俺は校内へはチョン女官とソン女官だけが
出入りするよう命じた
イギサはハンイギサが最も信頼できる者を配置した
今はまだチェ・チュナがシン・チェギョンであることを知られては拙い
三年前の事故の真相を知った俺は、用心に用心を重ねていた
ハンイギサは以前東宮に仕え事故の後辞めたイギサの様子を探りに行っている
皇帝陛下付きのキム内官も、ミン・ヒョリンの携帯の履歴を調べに向かっている
皇太子の許嫁の暗殺・・・それだけ大胆不敵なことを考えながら、意外と間抜けだなミン・ヒョリン
携帯番号を変えなかったなんて・・・
あとは・・・そうだ!昨日チェギョンが襲われた男たちを処罰しなければ・・・いや、襲われたのはチェ・チュナか
やることが山積みだ・・・だが今はチェギョンが無事戻ってきたことを素直に喜びたい
そんなことを思いテーブルの上に並んだ宮廷弁当を眺め笑みが零れた
今日もお前の好物ばかりだぞチェギョン・・・
<トントン>
あ・・・どうやら来たみたいだな
『皇太子・・・アタシよ。入るわよ!』
『どうぞ。』
ガンヒョンの声だ
ガンヒョンは扉を開け部屋の中にチェギョンを伴い入ってきた
そして扉が閉まった途端・・・
『シンく~~~ん♪』
あ・・・おい!
チェギョンは俺目がけて猛ダッシュで飛び掛かって来る
そして・・・<ガシッ!>と俺に抱きつくと、スカートであるにも拘らず足まで巻き付けた
つまり・・・木登りコアラの格好だ
首を負傷しているチェギョンが落ちないようにと、その身体をしっかりと受け止めた時・・・
入り口からギョンも登場だ
二人共啞然とした顔で立ち尽くしている
『シン・・・これは・・・』
『うん。これは・・・』
『まっ・・・まぁ座ってくれ。それからゆっくり話そう。』
『うん。』『ええ・・・』
もちろんギョンもガンヒョンもチェ・チュナがチェギョンであるとわかっていたわけだが、
あまりにも昨日と違うチェギョンの態度に、面食らったという感じだろうか・・・
『座るぞ。』
『うん~~♪』
チェギョンにそういうと、臆面もなく俺の膝の上に横座りしやがる
『あぁ・・・あのなギョンとガンヒョン・・・』
『やっぱりそうだったんでしょ?』
『だと思ったよ~♪どう見たってチェギョンだもんな。』
チェギョンは首が痛かったことを思い出したのか、仕方がないという風に俺の膝の上から降りると
正面を向いて座った
『あのね・・・ギョン君・ガンヒョン・・・お芝居していたんじゃないの。』
『えっ?芝居じゃないって・・・』
『どういう意味よ。ちゃんと説明しなさいよ。散々心配させておいて!』
ガンヒョンが怒るのも当然だ
ガンヒョンは成績が落ち込むほどチェギョンのことを気に掛けていたんだ
『怒らないで。ごめんね心配かけて・・・でもつい昨日まで記憶がなかったの。』
『えっ?記憶が?』
『うん。あの事故の時記憶を失くして・・・それから昨日まではチェ・チュナとして生きてきたんだ。』
『じゃあ・・・昨日倒れて目が覚めたら記憶が戻っていたという事?』
『うん。そうだよ。』
『だったら私たちの事は・・・知らない人だったの?』
『シン君の事は・・・新聞記事を見て≪私の男≫だって確信したの。ガンヒョンの事は・・・お姉ちゃんが渡してくれた
三年前の私の携帯の写真で知った。』
『うそ・・・アタシの事をすっかり忘れてたって言うの?アンタひどすぎる。』
『だからごめんってば・・・』
ガンヒョンの気持ちもよくわかる
実際俺も俺の事を忘れていたと知った時、すごくショックだった
だが・・・チェギョンには何の罪もない
命を狙われ・・・三年も籠城する羽目になったんだから・・・
『ガンヒョン・・・そんなこと責めるなよ。チェギョンだって好きで忘れたわけじゃない。』
あ・・・俺が言おうとしていた言葉をギョンに先を越された
『そうね・・・事故のせいだもの。でもなぜ・・・今まで帰ってこなかったの?』
『それは・・・私の命が狙われているからだよ。』
『えっ?・・・まさか!』
『だから記憶を失くして更に身の危険に晒されている私を、チェ尚宮お姉さんとイギサのお兄さんが
匿ってくれていたの。』
『じゃあ…イギリス帰りって言うのは?』
『あはは~嘘に決まってる。』
『そうだったの。それで犯人の目星はついたの?』
『うん。』
『えっ?犯人の目星がついているのに・・・皇室は放っておくの?』
ガンヒョンがさりげなく俺を睨みつける
『ガンヒョン・・・もちろん皇室も動いている。だが敵は皇室の中にも潜んでいる可能性がある。
なんといっても皇室警察署長を丸め込んで、チェギョンの事故を事件性がないとし
捜査を打ち切らせた大物が相手だ。下手に動くとまたチェギョンが危険な目に遭う。』
『皇室にも敵が潜んでいる?』
『あぁ。その可能性は十分にある。とにかくこの事件の黒幕を暴くまではチェギョンはチェ・チュナだ。
二人ともそのことを承知しておいてくれ。』
頷きながらギョンが問い掛けた
『なんだか物騒な話だね。そうだ!昨日の件はどうなったんだ?
チェギョン・・・お前を殴った生徒の顔・・・覚えてる?』
『うん。覚えてる。てか・・・休み時間に謝りに来たよ。』
『えっ?・・・』
『そうなのか?チェギョン・・・お前が暴力を受けた件でミン・ヒョリンを問い詰めなきゃならないだろ?』
『ちょっと待ってよ皇太子・・・何でそこでミン・ヒョリンの名前が出て来るのよ!』
『ヒョリンの差し金だったらしい・・・』
『なんてことを・・・ミン・ヒョリン、いいところのお嬢さんの仮面を被ったとんでもない性悪ね!』
そんな女が三年も傍にいたんアんて、今更ながらに公開する
『あぁ。チェギョン・・・その生徒の名前を聞いたか?』
『聞いてない。』
『聞かなきゃダメだろ?』
『でもさ・・・事情があるみたいよ。あの男子生徒たち・・・ミン家の支援を受けて、この学校に通っているんだって。』
『っつ・・・だが、暴力は良くないだろう?』
『まぁ・・・ちょっと待ってて。その件は何れ時が来るまで保留ということで・・・』
『保留だと?またお前が校内で危険な目に遭ったら・・・』
『もう恐らくあの男子生徒たちはしてこないと思う。』
『なぜわかる。』
『すごく反省していたもの。』
『反省したら何をしても許されるのか?・・・俺は断じて許さない!』
怒りに握りしめた拳が震えだしそうになるのを俺は必死に堪えた
だが・・・そんな俺の怒りの感情をギョンは呆気なく脱力させた
『でもさ~ある意味、記憶が戻ったんだから感謝するところもあるよな~♪』
ばっ・・・馬鹿な事を言うな!記憶を失うきっかけを作ったのも、取り戻すきっかけを作ったのも
ヒョリンということになるじゃないか
俺は事故の原因について話すべきか迷っていた
そんな時チェギョンが二人にそのことを告げたんだ
『確かにね・・・記憶が戻ったことは嬉しい。でも記憶を失ったきっかけもあの人なんだよね。』
『あの人・・・とは?』
『ミン・ヒョリンさんだよ。』
『ちょっと待ってチェギョン・・・あの時の事故にミン・ヒョリンが関与しているの?』
私はふぅ~っと深呼吸をして昨日思い出したことを口にした
『うん。実はあの事故の直前・・・番号非通知の電話があったの。明らかに私を威圧する言葉だった。
その直後・・・お兄さんの車のブレーキが利かなくなって・・・あの事故が起こったんだ。
お兄さんの運転操作ミスなんかじゃない。事故が起こるように細工されていたの。
その時に聞いた声・・・ミン・ヒョリンさんに間違いないんだ。』
『どうして・・・そんなことができるの?』
『恐らく皇太子の許嫁の私を抹殺したかったんでしょう。』
『つまり・・・皇太子妃の座を狙っての事?』
『うん。そうみたいよ。』
ギョン君とガンヒョンは愕然とし、同時に溜息を吐いた
その後ギョン君は思いがけない疑問を投げかけた
『でもさ・・・どうやってチェギョンの携帯番号を知ったんだろう。俺だって知らないのに・・・
シン、よく考えてみてくれよ。三年前誰かにチェギョンの携帯番号を教えた?』
『まさか!俺が教えるはずないだろう?』
そういいながらなにかをしきりと思い出そうとするシン君
『いや待てよ!一度体育の授業の時にインに携帯を預けたことがある。』
『キーロックしてあったのか?』
『いや・・・していない。』
『インか・・・厄介だな。インだったらヒョリンに頼まれれば、シンのアドレス帳からチェギョンのデータを
知ることも可能だったわけだろう?』
『っつ・・・そんな・・・ありえない・・・』
シン君が信じたくない気持ちもわかる
イン君はとても優しい人だ。頼まれたからといってそんなことをするとは思えない
でも・・・どこに敵がいるかわからない私だからこそ、疑ってかからないといけないのかも・・・
『後でインを問い詰めてみる。』
『あ・・・シン君待って!それは時期尚早じゃないかな?イン君にそんなことを聞いたら、
きっとヒョリンさんの耳にも入る。
そうしたら今ある証拠を隠滅にかかるかも・・・』
『あ・・・確かにそうだな。』
『とにかく今はミン・ヒョリンさんの携帯の履歴に私の番号があるかどうか・・・
そして車のブレーキに細工をしたと思われる人の確保。それが一番重要なんじゃないかな。』
『っつ・・・チェギョン、三年経ったら冷静さも身に着けたな。』
『うん。今の私は復讐の鬼だから・・・』
あの事故の後記憶を失くしていなかったら、真っ赤な炎に包まれた復讐の鬼と化していただろうけど
今は静かな蒼い炎を纏った復習の鬼よ
大事な私の三年間を奪った犯人を何としても突き止めなくっちゃ・・・
食事が終わった後、私は漸く安堵しシン君の膝の上に乗って首に抱きついた
『あ~~幸せ❤』
そんな私を見てギョン君とガンヒョンは呆れ顔で笑ってくれる
早くこのむち打ち治さなくっちゃね・・・次に何が起こるかわからないもの
身軽に動けるようにしておかなくっちゃ・・・
ギョン君とガンヒョンにチェ・チュナの携帯番号を教えた・・・今後はこの二人も私を助けてくれるだろう
とても美味しかった宮廷弁当はもちろん完食
私の好きな物ばかりが詰められていた
でも・・・トッポギが食べたい
そうだ!今日帰りにコお兄さんと一緒にお買い物に行こう
そしてトッポギの材料を買って帰るんだ
お姉ちゃんに・・・食べさせたい
そんなことを思いながらシン君の部屋から出て教室に戻ろうとした時、チョン女官お姉さんが
立っている事に気が付いた
懐かしいなぁ・・・そう思いながらも私は軽く会釈をし、宮廷弁当をご馳走になった礼を言う
『とても美味しかったです。ご馳走様でした。』
表向きまだチェ・チュナだ
馴れ馴れしく話しかけることなどできない
するとチョンお姉さんは私に何かそっと手渡した
『いいえ・・・どういたしまして。』
ガンヒョンと歩きながら手渡された紙を開くと、そこには短い手紙がしたためられていた
【チェ尚宮様から連絡をいただきました。ご無事で何よりです。
チェギョン様・・・ファイティン!!】
宮殿には潜む敵もいるかもしれないけど、味方もたくさんいる
よ~し頑張るぞ~~!と意気揚々と映像科の棟から出ていった
するとそこに・・・出たよミン・ヒョリン
あんた私を見張っているの?
私はミン・ヒョリンに当てつけるように、わざと首のギプスに手を当てた
『あ~首が痛いわ。』
ガンヒョンはそんな私に戸惑ったみたいだけど、お芝居に付き合ってくれる
『大丈夫?チュナさん・・・』
『ええ。でもこの首の怪我の原因がすぐそばにいらっしゃるのに、お詫びの言葉もないんです。
不思議で仕方がないわ。』
そんな私の言葉に答えることもなくミン・ヒョリンは私に食い掛った
『なぜあなたが皇太子殿下のお部屋に出入りできるの?』
あら・・・そんなことまでご存知で?売られた喧嘩は買うのが基本
『なんでも~皇太子殿下の許嫁の方が私とそっくりだとかで、食事に招かれたんですの。
最初は興味なんか全くなかったんですが、ほら・・・あの通り素敵な方でしょう?
皇太子殿下と禁断の恋・・・なんてしてみたいですわ。うふふふふ~♪』
『なっ・・・なんですって?あなた!!』
『ではごきげんよう~♪』
美術科の棟に入った時、ガンヒョンはこっそり言った
『アンタさ~あれじゃあ喧嘩売ってるも同然。』
『売ったんだも~~ん!』
そう・・・もしも証拠が揃わなかった時には、私はミン・ヒョリンと真向対決する覚悟が決まっていた
お久しぶりの創作で~時間とられちゃいました。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
お庭にね~スズメバチが出没するんです。
怖くて・・・多肉を愛でに行けない~~!
ブーンて音がしたら・・・
殺虫剤で格闘しますだ・・・
巣は・・・ありません。それだけが救い
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
お庭にね~スズメバチが出没するんです。
怖くて・・・多肉を愛でに行けない~~!
ブーンて音がしたら・・・
殺虫剤で格闘しますだ・・・
巣は・・・ありません。それだけが救い