俺は本当に女性と縁がない様だ
縁がないというか・・・縁を持続できない
努力していないわけではない
だが医者という職業柄、オフでも急な呼び出しには応じなきゃならないだろう?
そういう俺の立場を理解してくれない奴が多すぎるのだ
ただでさえ仕事で神経をすり減らしているというのに、俺を煩わせる女ばかりだ
もうしばらく・・・恋人はいらない
今までだって恋人と言えたかどうかわからない
一緒にいて・・・疲れるだけだった
医者=お金持ち=何でも好きな物を買ってくれる金ズル・・・くらいにしか思っていない女ばっかりだ
少々恋愛に嫌気がさしていた
今年・・・俺は彼女なるものを作らなかった
誘惑がなかったわけじゃない・・・ただ面倒だっただけだ
ギョンやみんなと楽しく飲み会でも・・・そう思った時、悪友たちにはクリスマスを過ごす相手がいた
まぁいいか・・・俺は喜んで当直を引き受けた
そうしたら・・・思わず哀しいお一人様が患者としてやってきた
過食で飛び込んできた彼女
なんとも哀れだな・・・だが俺も人の事は言えないか
彼女と俺は同類のような気がして妙に親近感が沸いてしまい、結局彼女をマンションまで送り届けてしまった
実に俺らしくない・・・親切さだった
それからも俺の忙しい激務は続き・・・明日は久しぶりに休みが取れることとなった
その日の勤務が終わった時、俺は久しぶりに街に繰り出した
とはいっても年末の忙しい時・・・友人数人に声を掛けたが、やはり都合のつく奴はいなかった
仕方がない・・・マンションに戻って一人酒でもするか
一人苦笑しながらハンドルを握っていた俺の車の前に、突然女性が飛び出してきたのだ
<キキーーーッ!!>
慌てて急ブレーキを踏み車を停車させた時・・・飛び出してきた女性の顔が俺の目に飛び込んだ
あれは・・・クリスマスイブの大食らい女じゃ?
どうやら彼女も俺に気が付いたらしい
動揺しながら彼女は助手席のドアを開けた
『い・・・イ・シン先生~~!!いいところでお逢いしました。あのっ・・・すみませんが車を出してください~!』
『はぁ?あ・・・あぁ・・・』
なにがなんだかわからないまま、俺は車を発進させた
一体何なんだ。それに車の前に飛び出すなんてなんて無謀な真似を!!
と・・・半分憤った気分でバックミラーに目を向けると、明らかに彼女を追ってきたと思う男が悔しそうに
地団太を踏んでいた
『誰ですか?彼氏?』
『ちっ・・・違いますよぉ。セクハラ上司です。』
『セクハラ上司?そんな奴は労働組合に訴えればいい・・・』
『ホントそうできたらどんなにいいか。でもそうできないのが現状です。
あ・・・イ・シン先生、すみませんでした。そこの角を曲がったところで降ろしてください。』
『あぁ?いや・・・だがさっきの上司が追ってくるかもしれませんよ。』
『あ~そうですね。じゃあもう少しだけ乗せてください。あ・・・今日はお仕事終わったんですか?』
『ええ。明日は非番なので久しぶりにゆっくりしようかと思いまして・・・』
『あ~~すみません。奥様がご自宅でお待ちですね。』
『私は未婚です。』
『えっ?そうだったんですか。じゃあ彼女を待たせているんじゃないですか?』
『生憎今はフリーなんです。あ・・・そうだ!シン・チェギョンさん、もし時間あるようでしたら、
一杯付き合ってもらえませんか?』
『えっ?それは構いませんが、車はどうするんですか?』
『代行を呼びますから大丈夫です。』
彼女と交渉成立し、俺はいつも一人で立ち寄るバーに彼女を連れて行くことにした
そこなら食事もできるし、美味しい酒も飲ませてくれる
落ち着いた時間が過ごせる店は、他にない
俺は彼女を伴ってそのバーに入って行った
マスターは満面の笑みで俺に告げた
『イ・シン先生が女性を連れて来るなんて珍しいですね。ひょっとして初めてじゃないですか?』
『そうですか?』
言われてみて初めて気が付いた。確かに付き合った女性をこの店に連れてきたことはない
なぜならここは・・・俺の隠れ家のような店だからだ
だったらなぜ・・・患者として知り合ったばかりの女性を、この店に連れてきたんだ?
そんな自問自答をするのも億劫なほど疲れていたらしく、俺はマスターから受け取ったボトルの酒をグラスに開け
彼女のグラスにも開けようとした
ところが彼女はそのグラスを手で塞いだ
つまり・・・飲みませんという意味だ
『私は・・・アイスティーを頂きます。』
『アイスティー?お酒を飲まないんですか?』
『あまり好きな方じゃないので・・・』
賢明な選択だな
彼女は氷の入ったアイスティーのグラスからストローを抜くと、そのまま直にグタスに口を付けた
『ほら・・・こうすると水割りを飲んでいるようでしょう?くすくす・・・』
あぁ確かに・・・
『ところでイ・シン先生・・・どうして彼女がいないんですか?先生のような職業でその容姿を持っていたら
彼女なんてすぐにできるでしょうに・・・』
『ええ。すぐにできますよ。でも長続きしないんです。』
テーブルの上に軽食が並ぶ
彼女はそれを美味しそうに食べながら俺に問い掛けた
『長続き・・・しない?』
『ええ。職業柄時間は不規則になりますし・・・ドタキャンも度々・・・』
『それは仕方ないですよ。人命を預かるのが先生のお仕事なんですから・・・』
なんだかとても気分がよくなってくる
一人で飲んでいる時より酒のペースが速いようだ
『ありがとう。なかなかそう言ってくれる人はいなくて・・・。
ドタキャンすれば≪あたしと仕事のどっちが大事なの?≫なんて言われてしまうものですから・・・』
『そうですか。彼女さんの気持ちもわからないではないですが、そこはやはり医者を彼氏に持ったことを
自覚しないとダメですよね。』
『そうでしょう?そう思うでしょう?はぁ・・・最終的に≪あなたは私なんか愛してない≫と去っていくんですよ。』
『ん~~~難しい問題ですね。でも・・・先生のお仕事を理解してくれないと、
ちゃんとしたお付き合いはできませんよね。』
『ええ。だからそういうのに疲れてしまって・・・今はフリーなんです。』
『フリーもいいじゃないですか。気が楽だし・・・自由だし。』
『その通り!私もそう思います。』
待て待て・・・彼女は患者だ
患者を相手になにをカウンセリングしてもらってるんだ?
そう思いながらも俺の心の奥に積もった不満は、次々と彼女の前で披露されていく
なぜこんなに話しやすいんだろうか・・・
知らない間に新しい軽食が次々とテーブルに並び、彼女はアイスティーの肴にそれらを食べ尽くす
俺などつまみはいらない方だから・・・ほとんど彼女が食べたといっても過言ではない
『チェギョンさん・・・あまり食べ過ぎは・・・』
『あ!そうですね~くすくす・・・でもそんなに食べていませんよ。許容範囲内ですから~。』
よく食べる子なんだな。だがこんなに美味しそうに食べる女性は初めてだ
むしろ清々しい
こんなに気分よく酒を飲んだのはどのくらいぶりだろうか
彼女はそうさせてしまう何かを持っていた
俺は相当酔ってしまったらしく、マスターに呼んでもらった代行に彼女と一緒に乗り込んだ
マンションに着いた時、代行の運転手に彼女を送ってくれるよう依頼し、俺は翌日久しぶりにぐっすり眠れた
翌朝起きてみて・・・気が付いた
代行の料金を支払った記憶がないのだ
ひょっとして彼女に支払わせた?つっ・・・なんて失態だ
俺は病院の事務員にシン・チェギョンさんの携帯番号を調べて貰い
昼休み時間を狙って彼女に電話を掛けた
あうっ・・・三話で終わる自信がなくなってきました。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!