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Channel: ~星の欠片~
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晩夏の熱風 47

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『チェギョンちゃん・・・三位だって~~!!チェギョンちゃん?しっかりして!!』

呆然としているチェギョンに義母ミンは満面の笑みで、チェギョンの肩を掴むと揺さぶった

我に返ったチェギョンはその場に立ち上がり、いきなり右手を大きく上げた

『は~い!!私がシン・チェギョンです!!』

高校時代の名残りなのか優等生気質のチェギョンの大胆な返事を受けて、司会進行役は必死に笑いを噛み殺し

チェギョンに告げた

【シン・チェギョンさん、どうぞステージにお越しください。】
『はっはいっ!!』

シンに背中を押されチェギョンは通路を歩き、ステージに向かった

今まで幾多の絵画コンクールで入賞したことがあるとはいえ、このような大きなコンクールに出たのは初めてで

てっきり隅に置かれている日の目を見ない作品の中に、自分の丹精を込めた絵が入っているものと

思っていたチェギョンだ

半ば信じられないような気持ちでステージに上がった

【シン・チェギョンさん三位入賞おめでとうございます。】

司会進行役から祝福を受け・・・そのうえ会場から割れんばかりの拍手を贈られ、チェギョンは感謝の気持ちで

客席に向かって深々とお辞儀をした

今まで自分の絵は受け入れられないと思い込んでいたチェギョンが、自分を認めてくれる人が

こんなにたくさんいると知った

審査員席から一人の審査員が立ち上がり、ステージに上がった

(あれっ?あの方ってこの国を代表する抽象画の大家・・・ソン画伯じゃ?)

チェギョン自身もテレビでしか見たことのないそのご老人は、鋭い眼光ながらチェギョンの姿を見ると

目尻を下げた

『シン・チェギョンさんおめでとうございます。』
『ど・・・どうもありがとうございます。ソン画伯・・・』
『まさかあなたのようなお若いお嬢さんが、この絵を描かれたとは思いませんでしたよ。
この絵の題材の手にはどのような想いがあるのですか?』
『恩師のお腹に宿った赤ちゃんを想い、この絵を描き上げました。
生まれてくる赤ちゃんの輝く未来・・・そしてその手に掴む大きな可能性を願い
この絵にこめました。』
『なんと・・・この手はお腹の中の胎児の手でしたか。まだ光の届かない羊水の中で生きる胎児に
果てしない未来への希望を贈ったんですね。』
『はい。幸せであるようにと・・・』
『とても温かく癒される絵です。その若さでこれだけの絵を描き上げるとは、素晴らしい!!
これからの作品も期待していますよ。』

賞状を受け取り盾を胸に抱きチェギョンは席に戻っていった


一位になった絵は・・・まさに天才と狂気の狭間にあるような絵で、絵画に関しての知識に疎いシンには

全く心を動かされない絵だった

授賞式が終わった時・・・落選者はその場で絵を返却された

誰の目にも留まることのなかった絵を、出品者は落胆の表情でそれでも大事そうに抱えて帰っていく

チェギョンはその様子を見て、やはり絵というものは見る側の主観が審査を左右すると理解した

落選して帰っていく人々の絵は、チェギョンにとって素晴らしい作品ばかりだったのだから・・・





『さぁ~今夜は祝賀会よ~♪』

ミンの号令でソウルでも指折りのレストランに向かったイ家の面々

入賞作品はしばらくホールのあった建物の一階展示場に飾られることとなり、チェギョンは自分の作品を

持ち帰ることができなかった

もちろん主催者側に≪時期が来たら返却してほしい≫と話を付けてきたチェギョンである

ギョンとガンヒョンに赤ちゃんが誕生した時・・・お祝いに持って行かなければならないのだから・・・

レストランに到着しVIP席に着いた時、ミンは誇らしげにチェギョンを見つめた

『本当にすごいわチェギョンちゃんたら。いきなり入賞したんですもの・・・』
『はい。自分でもびっくりです。何しろあんな大きな絵画コンクールに出したことがなかったので
まさか入賞できるとは思いませんでした。』
『これはひょっとすると会長室に飾ってあるあの絵も、コンクールに出したらいい線いったんじゃないのか?』
『お義父様~もうあれはお義父様の物ですからコンクールになど出しません。』
『っつ・・・(あれはチェギョンの俺に対する気持ちだ。いわば俺のものだ。)』

心の中で自分の所有権を主張してみるシンだったが、もう公然とあの絵は父の物となり会長室に飾られている

(いつか必ず取り返してやるっ!)

密かにそんなことを思うシンだった

『さぁ~チェギョンちゃん、何でも好きな物を注文して頂戴。ケーキだって全種類持ってこさせようかしら~♪』
『お義母様~そんなに食べられません~~!!』
『だって~嬉しいんだもの。レストラン中のお客さんにご馳走したいくらいだわ。』
『お義母様~くすくす・・・』
『ね♪チェギョンちゃん・・・いつか私にも・・・一枚ね♪』
『あ・・・はい!もちろんです。でも・・・肖像画とかは描かせない方がいいです。』
『おほほほ~わかっているわよ。チェギョンちゃんも目標ができてよかったわね。』
『目標ですか?』
『そうよぉ~あのコンクールで一位を狙わなきゃ~♪あのソン画伯だって見込みがあると言っていたでしょう?』
『あ~~んでもお義母様ぁ~一位の絵・・・見ましたでしょ?あ~ゆ~感じにはなれないんじゃないかと。』
『チェギョンは別に人の真似をする必要なんかない。お前のいいところを伸ばしていったらいい。』
『はい♪オッパ。』

和やかに祝賀会は進行していく

食事をしながらミンの頭の中には、チェギョンが子供を産んだ時・・・今住んでいる小さな家は

チェギョンのアトリエにしようと思いつき、一人口角を上げた





そしてその年の暮れ・・・チャン・ギョンとイ・ガンヒョン夫妻の間に男児が誕生した

チャン航空副社長であるギョンの妻だけあって、入院中は来客が非常に多く・・・シンとチェギョンは

ガンヒョンと子供が退院をしてから自宅にお祝いに駆け付けることにした

絵画コンクールの主催者に返却を申し入れ・・・お祝いの絵を持って二人はチャン家を訪れるのだった


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東北や北海道では大荒れのお天気だとか・・・
どうぞお気を付けください。

昨日はものすごい強風で
多肉ハウスの外にあった棚が倒れ・・・
哀れ多肉ちゃんが散乱・・・
今日はその後始末に大わらわでした~~!
寒さも怖いけど強風も怖い・・・


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