深夜・・・素肌の肩口に感じる肌寒さに目を覚ましたシンは、隣にいる筈のチェギョンの姿を探した
(あれ?チェギョンは?)
うっすら開けた瞳でベッドの空いているスペースを眺め、それから片手でその姿を捕まえようと探った
(帰ってしまったのか?)
誰もいないその空間・・・益々肌寒さを感じる
ベッドサイドの時計に目をやると、深夜2時を回ったところだった
さすがに電話をかけるには躊躇う時間である・・・翌朝電話しようと思い、シンは再び目を閉じた
温もりは消えていたが微かに残ったチェギョンの甘い香りに包まれ、シンは再び幸せな夢の中に落ちていった
まさか・・・もうチェギョンはシンに逢わないつもりだなんて・・・思いもせずに・・・
早朝再び目を覚ましたシンは、リビングに置かれたままになっているテイクアウトした食事と
淹れ掛けで放置されたコーヒーサーバーを見つめ苦笑する
そう言えば・・・食事もしないままだった
だが、決していい加減な気持ちで抱いたのではない
シンはスマホを取りだすとチェギョンに電話を掛けてみる
ところが電源は切られていた。。。
もしかしたらまだ眠っているのかもしれない・・・そう思ったシンはシャワーを済ませ、いつも通りの時間
チェギョンを迎えにホテルに向かったのである
約束の時間・・・普段なら時間通りに笑顔で手を振りながら、入口から駆け寄ってくるチェギョンなのに
今日はなかなか姿を現さない
5分・・・10分・・・そして30分経過した時、さすがに心配になったシンは、再びチェギョンに電話を掛けた
ところが・・・早朝電話した時と同じように、電源は切られたままだった
(チェギョンに・・・何かあったのか?)
シンは車のドアを開けるとホテルに入っていき、カウンターにいる人物に問い掛けた
『少しお尋ねしますが、こちらにシン・チェギョンさんという長く滞在している方がいらっしゃると思うのですが
お部屋を教えていただけますか?』
『シン。チェギョン様でございますか?あ・・・はい。そのお方でしたら
深夜にお部屋を引き払いお発ちになりました。』
『お発ちに・・・なった?』
『はい、そのように聞いております。』
『ありがとう・・・ございました。。。』
何がなんなのかよく理解が出来ないシン。。。ひとまず車を大学に走らせ、学生課に問い合わせてみる
やはりシン・チェギョンという学生は昨日付で退学届けが出されていたのである
(どうして・・・どうしてなんだよ!!俺を好きだと言っただろう?あれは嘘だったのか?)
講義に出る気にもなれず車に戻ったシンは、何度も何度もチェギョンの電話を鳴らしてみる
だが何度かけても・・・その電話は電源が切られたままだった。。。
『皇女様・・・もう少しお召し上がりになりませんと・・・』
帰国してから数日・・・チェ尚宮はチェギョンがまともに食事も摂れないことが心配で仕方がない
『もういいわ。下げてください。チェ尚宮さん・・・
食後にコーヒーを淹れて貰えますか?』
『はい。かしこまりました・・・』
帰国したチェギョンは心ここにあらずの毎日である・・・食事も満足に摂らず、一回り顔が小さくなったように
チェ尚宮には感じられた
たった一人の食堂で窓の外に揺らぐ木々を見つめ、チェギョンは今更ながらの後悔をしていた
(シン君が・・・折角淹れてくれたコーヒーも飲まなかった。テイクアウトしたお食事も・・手を付けなかった。
あれが最後だったのに、なんて惜しい事をしたんだろう私。
帰国したらきっとシン君は私の素姓に気が付くよね。酷い女だって思うよね。)
どうせ報われない恋なら、いっその事憎まれた方がいい・・・
そう思いながらもチェギョンの胸の中にはアメリカで出逢ったイ・シンという青年が、今も色鮮やかに息づいていた
病身の皇太子チェジュンに帰国の挨拶に行ったチェギョンは、チェジュンが床に伏しながらも
元気そうにしている事に安堵する
『ただいま・・・・チェジュン。』
『姉様・・・ごめん。僕の為に帰国が早まっちゃって・・・』
『いいのよそんなこと気にしなくて。』
『それに・・・皇位継承も姉様にお願いしなきゃならない僕で、本当にごめん。』
『チェジュンは自分の体を治すことだけを考えていればいいの。後のことは私に任せて。』
『ありがとう姉様。本当に申し訳ないって・・・思ってる。』
すまなそうな弟チェジュンを前に、本当は帰って来たくなかったなんてとても言えない
弟が皇位を継げない以上・・・やはりすべての責務は自分の肩に掛かってくるのだ
(忘れなきゃ・・・忘れよう。彼のことは…忘れよう。)
何かあるごとに頭に浮かんでくるその顔立ちを、胸の奥底の宝石箱にしまい込み決して開けられない鍵を掛ける
だが・・・感情というものは想うままにならないもので、その頑丈な鍵を掛けた筈の宝石箱から
度々イ・シンの笑顔は頭に蘇った
アメリカでは探す手立ても見つからず、帰国するのを早めたシンはその日祖国の空港に降り立った
『シン~~♪』
ゲートをくぐるとすぐに懐かしい声がシンに投げかけられ、その方向に目を向けたシンは
屈託のない笑顔で手を振る従兄弟の姿を目にする
『ユル!!迎えに来てくれたのか?』
『うん。叔父様も叔母様も・・・それに僕のお母様も忙しくってさ、暇な僕が迎えに来たよ。』
『くっ・・・すまないな。』
『車停めてあるから送るよ。』
『サンキュー。』
シンとユルは歩きながら話し始めた
『どう?アメリカ留学生活は楽しかった?』
『っつ・・・急な帰国で参ったよ。後二年向こうで勉強できる筈がさ。』
『あ~~それね、なんか事情があるらしいよ。』
『事情?』
『うん。なんだかそれでお前の両親もうちのお母様も忙しいらしい。』
『なんの事情か知らないが、俺もこれから真剣に人探しをするから、そんな騒ぎに巻き込まれたくはないな。』
『人探し?な~~んだシン。探したい人が居るの?男?それとも女?』
『・・・女・・・』
『へ~~~!!シンが女ね~~♪まぁ昔からモテてたけど、探したいほどの女が居るの?ほぉ~~♪』
『からかうなよユル。俺は今・・・≪銀の糸に囚われた憐れな蝶≫なんだからさ。』
『ふふふ・・・シン君がそんな純情なセリフを吐くなんてね。その女・・・見つけたら僕にも紹介してよ。』
『絶対しね~~よ!』
シン・チェギョン・・・その名前しか知らない。。。。携帯は相変わらず電源が切られたままだ
シンは何も言わずに去ったチェギョンの心を信じていた
なにか・・・言えない事情があった筈・・・その一念で自暴自棄を起こすことも無く、チェギョンを探そうと
帰国したその日から韓国中を駆け巡るシンだったのである。。。
さて~~いよいよ次回最終話です(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
二人の運命の糸は・・・どう結ばれるのか。
乞うご期待♪
尚、恐縮です。土日はお話の更新はお休みさせていただきます。
ふぅめる・マジカル通信をお送りいたします。
第一王子も明日帰ってくるしね~~~❤
二人の運命の糸は・・・どう結ばれるのか。
乞うご期待♪
尚、恐縮です。土日はお話の更新はお休みさせていただきます。
ふぅめる・マジカル通信をお送りいたします。
第一王子も明日帰ってくるしね~~~❤