大学の門の外に横付けされたシンの車・・・チェギョンはすぐにそれを見つけ駆け寄った
『オッパぁ~♪ごめんなさい。迎えに来てくれたなんて知らなくて、お待たせしてしまいました。』
シンは柔らかく微笑むとチェギョンに答えた
『いや。つい先ほど着いたばかりだ。早く乗りなさい。』
『はいっ♪』
チェギョンが乗り込むと車はすぐに発進した
イ家に車を走らせながらシンはチェギョンに問い掛ける
『それでチェギョン、入学一日目はどうだったんだ?』
『それが~~オッパ・・・私、なんだか有名人みたいで、みんなからジロジロ見られちゃいました。』
『だろうな。トップで合格した上に既婚者ときたらな。くくっ・・・
すぐにそんな好奇の目も向けられなくなるから心配するな。』
『はいぃ。でもちょっと居心地が悪かったですぅ。』
『サークルは・・・入ったのか?』
『あ・・・はい!!お義母様に勧められて・・・でも半ば強引に決められちゃいました。』
『強引に?強引な勧誘を受けたのか?』
『いや~~イ・ユル助教授が顧問をすることになった美術サークルに・・・』
『なに?ユルのやつ職権乱用だな。』
『それに・・・』
『どうした?何かあったのか?』
『その美術サークルで意外な人に逢ってしまいました。』
『誰だ?』
『オッパ・・・覚えていないとは思うんですけどぉ・・・二年前の夏に友人と海水浴に行ったじゃないですか。』
『あぁ・・・あのイカした(奇抜な)水着の時か?』
『そうです。あの水着の時です。あの時オッパが迎えrに来てくれたじゃないですか。』
『あぁ。そうだったな・・・(本当は警備していたんだがな。)』
『あの時、私を送っていくと言った男の人・・・同じ大学の四年生でした。』
『なにっ!』
急ブレーキをかけ停車したシンの車・・・その拍子にチェfギョンの身体は前に倒れそうになった
もちろんシートベルトをしているのだから倒れるはずもなく、反動でシートに身体が深く沈んだ
『きゃっ!!び・・・びっくりした・・・』
チェギョンは驚いて運転席に座るシンに視線を向けた
『オッパ・・・?』
『あ・・・あぁ・・・すまない。』
『どうかしましたか?』
『その男とどこで逢ったんだ?』
『美術サークルです。』
『まさかチェギョン!お前はそんな男のいるサークルに入ったというのか?』
『あ・・・オッパ、自分でも悩んだんです。でも四年生だからほとんど来ないって聞いて・・・。
それにイ・ユル助教授に入るよう・・・強く勧められて・・・』
『っつ・・・なんてことだ。あとで俺からユルに電話して、取り消してやろう。』
『えっ・・・?』
『お前もその方がいいだろう?別にそのサークルに魅力があったわけじゃないんだろう?』
『魅力は…ありました。』
『なにっ?』
『だってオッパぁ・・・高校の美術部とは使われている材料が雲泥の差だったんです。』
『絵を描きたいのか?』
『はい・・・』
『だが俺は・・・そんな男がいるサークルにお前を行かせることはできない。』
『もう・・・引退しているんですぅ・・・』
『馬鹿!引退していたって在籍している以上、いくらでも部室に顔を出せる!
怖い思いをしたじゃないか!なぜそれを忘れるんだ?』
『イ・ユル助教授も顧問に名前がありますし・・・安心かと・・・』
『安心できるかっ!』
珍しく声を荒げたシン・・・そんな怒った表情を初めて見たチェギョンは肩を竦め口をへの字に曲げた
そんなチェギョンの顔を見て、必死に冷静さを取り戻そうとするシンは再び車を発進させた
『とにかく・・・続きは家に戻ってからにしよう。』
『はい・・・』
無言のまま車を走らせるシン・・・チェギョンはシンの隣で座っていて、こんなに長く感じたことは
今までに一度もなかった
助手席に座っていられることだけで嬉しくて、またいつもシンは優しい笑みを向けてくれていた
自分に視線を向けてもくれずひたすら運転に集中するシンを、相当怒らせてしまったとチェギョンは深く反省した
『お帰りなさ~~い♪チェギョンちゃん、入学式どうだった?あら・・・?』
シンの不機嫌そうな顔つき、そしてチェギョンの困惑した顔を見たミンは、すぐに何か起こったことを察した
『さぁ夕食にしますからね、二人とも早く着替えてきなさい。』
『はい。』『あぁ・・・』
小さな家に向かって歩いていく二人・・・その二人の後姿をミンは心配そうに見つめた
小さな家に明かりが灯った時、チェギョンはシンの背中に抱きついた
『オッパぁ・・・私の考えが浅はかでした。オッパの言う通りサークルの入部は取り消します。
だからそんなに怒らないで・・・』
『はぁ・・・チェギョン、俺も少し感情的になりすぎたようだ。そのサークルはお前にとって魅力的なんだろう?
純粋にチェギョンの求めているものがそこにあるのだろう?』
『はい。でも・・・』
『わかった。俺が折れよう。ただしコンパの時は必ず迎えに行くから・・・
間違っても誰かに送られるようなことはするなよ。』
『オッパぁ・・・あの、私・・・人妻ですよ。しかも夫はイ財閥の後継者ですよ。
コンパになんか誘われませんって。』
『いや・・・お前も友達との付き合いもあるだろう。若くして結婚したんだ。それを阻むつもりはない。
ただし・・・必ず迎えに行く。それだけは譲れない。いいな。』
『はい。許してくれるんですか?』
『あぁ。お前も大学生のうちは精一杯楽しまないとな。そうしないとお前のご両親に申し訳が立たない。』
『オッパぁ~~♪』
チェギョンはシンの腰に巻き付けている腕の力を強めた
シンはそんなチェギョンの手をやんわりと解き、そして向かい合って抱き締めた
『いいか。大学生になってもよそ見するなよ。』
『そんなのするわけないです。うちには天下一品の旦那様がいるんですから~♪』
見上げたチェギョンの唇にシンはそっとキスを落とす
食事など後でもいいから、すぐにでも妻を食したい・・・そんな気分に陥ったシンだったが
さすがにミンが心配している気がして、慌てて着替えを済ませると母屋に向かっていった
先程までの気まずい雰囲気と打って変わった息子夫婦に、ミンは安堵し帰宅した夫と四人での食卓を囲んだ
『チェギョンちゃん・・・いいサークルは見つかった?』
『はい。イ・ユル助教授が顧問をされる美術サークルに入部しました。』
一瞬曇るシンの表情を見て、ミンはシンがあらゆる男性に嫉妬しているのだろうと察知した
『そう。ユルがいるのなら安心ね。困ったことがあったらユルに相談しなさい。』
『はい。』
『必要以上にユルと親しくならなくていいからな。チェギョン・・・』
『オッパぁ~わかっていますって♪』
従兄弟のユルに対しても牽制するシン・・・そんなシンを見つめミンは心の中で呟いた
(まったく・・・シンとユルは同じ年ってこともあるけど、昔から何かと張り合っていたからその名残もあるのね。
ユルはあの通り人当たりがいいし心配する気持ちもわかるんだけど・・・。
大丈夫よシン。あなたの不器用な愛情表現は、チェギョンちゃんもちゃ~~んと理解しているんだから。
おほほほ~♪)
不意にヒョンがチェギョンに向かって話しかけた
『そうだチェギョンちゃん!今度我が社の創立記念パーティーがあるんだよ。
その時は是非母さんとおめかししておいで。』
『えっ?お義父様・・・パーティーですか?はいっ!!是非伺います~~♪』
チェギョンにしてみれば冷たい視線を送った女性社員を牽制するいいチャンスにもなる
(よ~~し♪パーティーまでに頑張って女を磨こうっと~♪)
熱風娘チェギョン・・・シンの嫉妬も難なくかわし、いよいよ本領発揮となりそうな気配がする・・・
あぁぁ・・・ごめん。
嫉妬王子シン君、やっぱ大人だったわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
嫉妬王子シン君、やっぱ大人だったわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!