夏休みが終わり新学期がやってきた
早朝一緒に朝食を摂りシンが出社した後、そろそろ主婦生活も板についたチェギョンは洗濯物を干し
母屋のミンに声を掛けた
『お義母~行ってきまぁ~す。』
『はいはい。チェギョンちゃん気を付けてね。ハンカチは持った?』
『もちろんですぅ~♪』
『忘れ物はないわね?』
『はいぃ~♪』
『行ってらっしゃい。』
『行ってきまぁ~~す♪』
少し日焼けした肌をクリーニングから仕上がってきたばかりの制服に包み、チェギョンは意気揚々と
赤い自転車を漕ぐ
そして学校の正門が見えてきた時、チェギョンは声を掛けられた
『チェギョン~~待って~~!!』
『あ・・・ミスク~~♪おはよ。今年も置いてきぼりありがとう~~!』
別に嫌味で言ったわけじゃない
チェギョンも去年とは違い、シンが迎えに来てくれたのだからなんの心細さもなかったし嫌な思いも残っていない
『てか、なによ~!折角気を利かして二人にしてあげたのに、彼を振っちゃうなんて・・・』
『えっ?それ・・・どういう意味?』
『あたし達としてはあんたが≪彼氏いない歴17年≫を更新するのが心配でならなかったのよ。
だから彼と二人にしたのに・・・あんたったら男の人が迎えに来たって?』
『(ヤバい!オッパの存在をあの人・・・みんなにしゃべっちゃったんだ。)あ~~彼氏とかじゃなくて
親戚のお兄さんが近くにいたから迎えに来てくれたんだよ。(本当は夫だけど・・・)』
『そうなんだ。あたし達その話を聞いてびっくりしたよ。チェギョンがあたし達に内緒で彼氏を作ったってさ~。
なんだ親戚のお兄さんか・・・』
『くすくす・・・ご期待に沿えなくてごめんね~♪(けけけ)』
その時・・・一緒にいたホン・ミスクが自転車を急停止させた
『あぁっ!!あれ!!』
ミスクが指差す方向を見ると、シンが女性と一緒に黒塗りの車の後部座席に乗っているのが目に入った
『イ・シン先生だ~~!!なんか・・・一段と男上げてない?』
『うん。そうだね。』
チェギョンは隣に座っていた女性が気になって仕方がなかった
『そうそう!イ・シン先生ってイ財閥の後継者なんだってね。あのルックスで財力まで備わっているなんて
まさにパーフェクトよね。』
『確かに・・・』
『あの隣に座っている女性・・・恋人かな。』
『(ギクッ!!)そっ・・・そうかもね・・・』
『ああいう人が・・・イ・シン先生には似合うんだろうな。』
『(っつ・・・・)』
校内に自転車を乗り入れたチェギョンは、ホン・ミスクと別れ自分の教室にカバンを置くと
速攻で保健室に向かった
まぁもちろんそれは日常茶飯事の事なのだが、今日はいつにも増して気が急いていた
学生時代からの友人であるイ・ガンヒョンなら・・・あの女性の正体を知っているんじゃないかと思ったのだ
『ガンヒョン先生~~!!』
『お~チェギョン、日焼けしてきたわね。聞いたわよ。友達と海水浴に行ったんだって?』
『えっ?そんな話をオッパから聞いたんですか?』
『この間ギョンと三人で逢った時にね。ふふふ・・・』
『あ~そうじゃなくてガンヒョン先生~~お聞きしたいことがあるんです。
ついさっき学校の前でオッパが乗った車を見かけたんです。隣に綺麗な女の人が座ってたんです。』
『それって・・・イ・シンの車?』
『いいえ・・・会社の車かな。大きな黒い車でした~~~!!』
『ひょっとしてその女の人って、頭の上で髪を束ねていなかった?大きなお団子みたいに・・・』
『あ・・・そうです。そんな髪形をしていました~~!』
『ふっ・・・秘書よ。イ・シンの・・・』
『えっ❓秘書さん?』
『イ・シンの会社にギョンと行った時にお茶を出してもらったことがあるわ。
イ・シンの仕事のスケジュールを管理する人よ。』
『そっ・・・そうなんですか?』
『本人に確かめてみたらいいじゃないのぉ~~。ふふふ・・・』
『そんなこと~~聞けません~~!!』
『まぁイ・シンも状況が状況だから、家に秘書が来ることはないと思うけど・・・
不安になるなら自分で確かめなさい。』
『ふぅ~~~・・・・』
秘書と聞かされてもなんだか浮かない顔のチェギョン
ガンヒョンはその夜、恋人のチャン・ギョンとデートした時に、その話題を出してみる
『ねえギョン・・・チェギョンったら今日可笑しかったのよ。どうやら秘書を同行したイ・シンが乗った車を
見かけたらしく・・・ヤキモチ妬いてるの。おままごとみたいな暮らしをしていても、立派に夫婦なのね。』
『そりゃあそうだろう?俺だってガンヒョンが同僚の先生と一緒にいるのを見たら嫉妬で気が狂いそう。
なぁガンヒョン・・・そろそろ学校辞めて俺の嫁さんにならない?』
『ギョン・・・アンタ何言ってんの?アタシはあのシン・チェギョンが卒業するまでは見届けると約束したのよ。
まだ学校を辞める気はないわ。』
『え~~っじゃあ・・・挙式もあの二人の後ってこと?』
『別にいいじゃないの。何をそんなに急ぐのよ。』
『俺もガンヒョンと早く一緒に暮らしたい~~~!!』
『あと一年半の辛抱よ。それまで待ちな!!』
『ちぇっ・・・わかったよ。』
ガンヒョンと楽しくデートし家まで送り届けた後、ギョンは腹立ちまぎれにシンに電話を掛けた
『シン?』
『あぁ俺だ。どうした?こんな遅い時間に・・・』
電話がかかってきたのはチェギョンがちょうど入浴中の時だった
『ガンヒョンがさ・・・あと一年半は結婚してくれないっていうんだ。
お前の嫁さんが卒業するまではダメだってさ~~!!』
『それはすまない。だがガンヒョンには何とかチェギョンを見守ってほしい。』
『それは俺も重々承知しているよ。しかしいいな・・・お前は可愛い子猫ちゃんと一緒に暮らしているのに
俺は愛するガンヒョンに一年半も待たされるんだぜ~~!!』
『そんなことをいうな。一緒に暮らしていても、いろいろ大変なんだ。男として理性が保てない時だって
あるんだぞ。』
『あ・・・もしかしてシン・・・あの約束ってやつをまだ守っているんだ。』
『当り前だろう?約束を破ったりしたら祖父が化けて出そうだ・・・』
『確かにな・・・。あ・・・そうだ!今日チェギョンがお前と秘書の乗った車を見かけたらしい。』
『えっ?本当か?そんなことあいつ何も言わなかった・・・』
『ヤキモチ・・・妬いてたらしいぞぉ~♪』
『本当か?』
『聞いてみればいいだろう?』
『そうだな。あとで聞いてみるよ。じゃあギョン・・・結婚はあと一年半辛抱してくれ。
俺も耐えるから・・・』
『わかったよ~~~!!』
電話を切った後シンはキッチンでコーヒーを淹れ、それからチェギョンが愛飲しているココアを見よう見真似で
作ってみる
キッチンに甘い香りが広がりシンは胸やけがしそうになったが、それでも可愛い嫉妬心を必死に隠していた
チェギョンへのご褒美のつもりで作りチェギョンのマグカップに注いだ
<ガチャッ・・・>
入浴を済ませキッチンに入ってきたチェギョンは、漂う甘い香りに目を丸くする
『オッパ・・・私のココア作ってくれたんですか?』
『あぁ。冷めないうちにどうぞ。』
『わぁ~オッパの作ってくれたココアだ~~♪』
椅子に腰かけたチェギョンは、マグカップから立ち上る湯気に息を吹きかけ冷ましながら一口ココアを味わった
『お~~美味しい~~♪オッパって何でもできるんですね。』
『そんなことはない。』
チェギョンのこういう仕草や言葉は、シンの自尊心をくすぐるに十分すぎるほどだった
『今日は朝から忙しかったんだ。』
唐突にシンはチェギョンに仕事の話をしようとしていた
今まで一度としてしたことのない仕事の話・・・チェギョンがつまらない嫉妬心に幼い胸を痛めないようにとの
配慮だった
『取引先との打ち合わせが朝一番になって、秘書と一緒に取引先に向かったんだ。』
『秘書・・・さん?あ・・・あの・・・頭の上でお団子を作ってらっしゃる?』
『あぁ?なぜ知っているんだ?』
『今日学校の前を通りませんでしたか?見かけたんです。』
『あぁそうか。そうだその人が俺の秘書だ。ちなみに三歳になる娘さんがいるんだ。』
『えっ?結婚してらっしゃるんですか?』
『あぁ。今年の四月、俺の入社と同時に職場復帰したんだ。』
『そっそうだったんですかぁ~~♪そっか~~♪(人妻だったか~~♪)』
『ココア・・・甘すぎじゃないか?』
『ちょっといつもより甘いけど、すごく美味しいです~♪』
『どれ・・・』
シンは上体をチェギョンに近づけ、チェギョンの唇をそっと啄んだ
出逢ったその日にニアミスはあったが・・・これが二人の正式な初めてのキス
『くっ・・・甘すぎたかもしれないな。』
『お・・・オッパ///今のは・・・///』
『お前が高校を卒業するまでは清い関係・・・それが約束だ。だから・・・これは内緒だぞ。内緒にできるか?』
『でっ・・・できます~~します~~♪』
『俺の周りには女性が多いが・・・お前は何も心配しなくていい。これがその約束だ。わかったか?』
『は・・・はい~~///』
『俺も男だから・・・色々と大変なんだ。あまり挑発するようなことはするな。』
『えっ?挑発なんかしていません~~!!』
『パジャマ姿の時に≪ぎゅ~≫はな・・・』
『えっ?ダメですか?』
『あぁ・・・感触が残って眠れなくなる。』
『ひっ///ひぃ~~~・・・そうだったんですか?ご・・・ごめんなさい~~!!』
『今後≪ぎゅ~≫の催促はパジャマじゃない時にしてくれ。』
『わっわかりました~~///』
女子高生妻シン・チェギョン・・・パジャマ姿の自分が、今までいかにシンを挑発していたのかを
初めて知った夜だった
そうして・・・二人は日々おままごとのような暮らしをしながらも、夫婦として家族として
気持ちを深めていくのだった
ん~~なんとも鬱陶しいお天気の一日でしたね。
明日からしばらく快晴になるみたい❤
お日様~~大好き~~♪
明日からしばらく快晴になるみたい❤
お日様~~大好き~~♪