なんとなく俯きがちにずっと助手席に座りながらも、口だけは絶えず動いているチェギョンも
街並みがあまり見慣れない場所まで来ると、目を輝かせ外の景色を眺めた
『はぁ~~いいお天気♪オッパ、きっとシーツもよく乾きますね?』
『あぁそうだな。あと少しで到着だ。まずは腹ごしらえとするか?』
『は・・・はいぃ~~~♪』
シンと二人きりの外食などもちろんしたことのないチェギョンは、嬉しそうにスマホを操作し
早速そのショッピングモールの情報を入手する
『わっ!オッパ、美味しくて有名なソフトクリームのお店が入っています。
ここのチョコレートソフト・・・ベルギーチョコレートが使われていて、すんご~~~く濃厚なんですって!
あっフードコートがあるから、そこで思い思いの物を食べましょう~~♪』
『あぁ。わかった。』
『お・・・おぉぉぉ・・・私の憧れの食器のお店があるぅ~♪ここのお茶碗・・・欲しかったんだなぁ~♪』
『くっ・・・わかった。』
興奮状態のチェギョンを乗せ、車はショッピングモールの駐車場に入って行った
『わぁ~~~なんて広いんだろう。』
郊外にあるショッピングモール。チェギョンは目を見開き口角を上げた
『ちょっと入り口まで遠いが、この先はどうやら車が停められそうにない。この辺りに車を停めよう。』
『はい~♪』
『少し歩くけどいいか?』
『大丈夫です。若いんだもんっ♪』
シンが車を停めるとチェギョンは嬉しそうにドアを開け外に出る
『行きましょうオッパ♪』
『あぁ。』
手を繋ぐでもなくただ並んで歩く・・・そんなことがチェギョンにとってはこの上なく幸せだった
『あっ!!オッパ・・・ほら~♪』
自然と早足になるチェギョン
『ソフトクリームのお店~~♪』
駐車場であることも忘れ走り出しそうなチェギョンの手を、シンは咄嗟に捕らえた
『チェギョン・・・ソフトクリームは食後だ。』
『ちぇっ・・・』
握られた手をそのまま繋いで欲しいと思ったチェギョンだったが、シンはその手を放すと何事もなかったように
歩きだした
店内に入り少し歩くとチェギョンは目を輝かせウィンドウを覗き込んだ
『オッパ・・・ここです。私の憧れの食器の店~~♪あぁ~あの夫婦茶碗可愛い~~~♪』
『っつ・・・そうか?』
『可愛いじゃないですかぁ。ほらオッパ、あのお揃いのマグカップも素敵~~♪』
『あとでな。』
『ちぇっ・・・』
フードコートに入り、二人は各々好きなものを注文した
チェギョンはハンバーガーのセット・・・シンはオープンサンドのセットを向かい合って食べる
(オッパと二人でランチなんて・・・それだけで美味しい~♪)
満面の笑みで大口を開けるチェギョンに、シンは呆れ顔で呟いた
『ほらチェギョン・・・口の周り。』
『えっ?・・・』
『タルタルソースが髭になってる。』
『えぇ~~っ・・・』
慌てて紙ナプキンで口の周りを拭ったチェギョンを、シンは目を細めて呟いた
『ったく…子供だな。』
『そんなことありません。こう見えても人の妻ですよ~~♪』
『あぁ確かにな。さぁ食べ終わったら、食料品を見に行こう。』
『はい~♪』
朝食はいつも小さな家で摂っている二人
この店は嗜好品やジャムなどの種類が豊富なのだ
『オッパ・・・見てください~練乳のジャムだって!美味しそう~~♪』
『練乳?甘すぎるだろう・・・・』
『あっ!!試食があるぅ~♪』
『チェギョンやめなさい!!』
シンが止めるのも聞かず、チェギョンは小さくカットされたパンに試食のジャムを塗り口に放り込んだ
『ん~~~っ♪メチャ美味っ!!オッパにも~♪』
そうして同じように試食のジャムを塗ったパンを、シンの口元に運んだ
『あ・・・俺はいい。』
『あっ妻に恥をかかせる気ですかぁ?』
『っつ・・・わかったよ。』
シンはチェギョンの手から試食のジャムが塗ってあるパンを口に入れられ、仕方なしに食べてみる
『う~~ん、確かに美味いが…やはり甘い。』
『じゃあ買っちゃあダメですか?』
『いいよ。お前が使えばいい。』
『わ~~い♪』
嬉しそうに練乳のジャムをカゴに入れたチェギョン。
『オッパ…果物も買いましょう。お義母様がお好きだから~♪』
『そんなこと言ってお前が食べたいんだろう?』
『まぁそれもありますけど、やっぱりお義母様にお土産買って帰らないとぉ~♪』
『そうだな。じゃあ何がいいんだ?』
『んっと~これとこれ・・・あっ!お葡萄も~~♪それと・・・栗っ♪』
チェギョンが栗の置いてあるワゴンに向かったその時だった
『シン先輩~~!!』
その声色を聞いた時、チェギョンの心臓は天井まで跳ね上がりそうだった
(げっ!盛りブラお化け出た~~!!なんでこんなところに?)
俯いて手に持った栗をワゴンに戻し、チェギョンはその状態のまま様子を窺った
『ヒョリン…どうしてこんな場所に?』
『あ~イン先輩と買い物に来たんです。イン先輩が欲しいものがあるっていうから・・・
でももうお買い物は終わりましたし、私・・・シン先輩の車で帰ろうかしら。』
ヒョリンがチラとインに視線を向ける前から、インはシンが女性と一緒にいることに気が付いていた
『ヒョリン・・・まだ買い物が終わっていないだろ?お前にバッグを買ってやる約束・・・』
『そんなの次でいいです。シン先輩いいでしょ?』
栗のワゴンの前にいたチェギョンは三人に背を向けそそくさと逃げ出した
(盛りブラお化けのせいで・・・折角のお買い物デートがぁ~~~馬鹿ぁ~~~!!)
そして三人が見えなくなった場所で、シンにメールを送った
≪オッパ・・・車のところで待っています。≫
結婚しているというのになぜ逃げ隠れしなきゃならないの?と憤慨する気持ちもあったが
ミン・ヒョリンに万が一結婚の事実が知られてしまったら、即学校に報告されて退学処分になってしまうだろう
校長や教頭がいくら知っているとはいえ、それは秘密の話なのだ
校則上生徒が在学中に結婚するなど、許されるはずはないのだ
チェギョンは肩を落とし先ほど入ってきた入り口から出ていき、トボトボと駐車場を歩いてシンの車の
運転席のドアの前で蹲った
もしミン・ヒョリンがシンの車を見つけて近寄ってきた時に、見つからないために・・・
(あ・・・憧れのお茶碗。マグカップも・・・見られなかった。
オッパとお揃いの物、欲しかったのになぁ・・・)
初めてのデートに邪魔が入りチェギョンは口元を歪め哀しそうに膝を抱いた
『俺は母と来ているからこれで失礼する。』
チェギョンのメールを見たシンは、二人に背を向け歩き出す
もちろん通りがかりに置いてあるワゴンから、栗を一袋カゴに入れるのを忘れなかった
折角楽しそうに買い物をしていたチェギョンが、思うものをすべて買うことができず車で待っているというのだ
チェギョンが手に取った栗くらい買っていきたいと思った
会計を済ませ出口から出ようとしたその時、帰りに寄ろうとしていた食器店があることに気が付いたシンは
そのウィンドウから見える位置にある夫婦茶碗と、先程チェギョンが凝視していたマグカップも購入した
じっくり選ばせてあげたかったが、ここにまたミン・ヒョリンが来たら大変だと慌てて商品を選び
それを包装してもらった
きっとこんな些細なプレゼントでもチェギョンなら喜んでくれるだろうと思い外に出た時、またシンは
思い出してしまった
(そうだ。ソフトクリームが食べたいと言っていたな。だが・・・ソフトクリームのコーンを持ち歩くのは大変だ。)
そう思ったシンは店員に注文した
『チョコレートソフトをひとつ。カップにしてくれ。』
『かしこまりました。』
袋に入れられたカップのチョコレートソフト・・・それを持ってシンは車に向かった
これで少しはチェギョンの気も晴れるだろう・・・そう思ったのだ
『チェギョン・・・?』
車の近辺に姿が見えないことに不安になったシンは、もう一度チェギョンの名を呼んでみる
『チェギョン!』
『ここですオッパ・・・』
『そんなところに・・・』
運転席のドアの前で蹲っているチェギョンを見て、シンはなんだかチェギョンが可哀想になる
『早く立ちなさい。』
『ミン・ヒョリン先生…いませんか?』
『あぁ。大丈夫だ。』
そう思いながらもシンは一応周辺を目視し、いないことを確認している
こんな場面をヒョリンに見つかったら命とりだ
『さぁ車に乗って。荷物を積む間、これでも食べていな。』
『えっ?わぁ~~~♪ソフトクリーム買ってくれたんですか?』
『あぁ。これを食べないと気が済まないだろう?』
『えへへ~そうなんですよ。』
シンはチェギョンを助手席に座らせ、それからトランクに荷物を積んだ
チェギョンの欲しがっていた食器は、こっそり後部座席に置いた
『オッパ・・・このソフトクリーム、やっぱりすごく美味しいです~~♪オッパも一口どうですか?』
『おっ・・・俺はいい。さぁ帰るぞ。』
『はい~~♪』
ここに来るまでの笑顔には程遠いが、少しだけ機嫌の直ったチェギョンを乗せシンは車を走らせるのだった
うちの次男君、昨晩から強歩大会でして
昨晩9時半に家を出て
今朝9時過ぎに帰宅しました~♪
真夜中の山を歩くわけですから
完走には至らずタイムアップになってしまったのですが
お疲れの次男君・・・
帰宅してお風呂に入り、爆睡しております。
怪我もなく無事に帰ってきて安心しました~~❤