『話も済んだことですし~お食事にしましょう♪シンご夫妻、よろしいでしょう?』
『いえいえそんな・・・厚かましい・・・』
『いやですわ~何を仰るの?何れ家族になるんですから~おほほほほ♪』
ミンのそんな言葉に苦虫を噛み潰した顔になるのは、やはりシン家のナムギルだった
先代同士が決めた縁とはいえ、本心はチェギョンが16歳になった時シンが留学中でよかったと
胸を撫で下ろしていたのだ
それがまさかこんな形で話が再燃されようとは・・・
(チェギョンの事だから、きっとシン君が出した条件を完璧にクリアするだろうな。
あのチェギョンの顔を見ていれば、結果など見なくてもわかる。
やる時は必ず結果を出す娘だ。だがなぁ・・・父さんはまだ嫁になどやりたくない。)
チェギョンはまるで大好物を目の前にした猫のように、真ん丸な目を輝かせシンを見ながら食事をしている
今朝まで元気がなかったチェギョンと比べると、その生き生きとした表情は別人のようだった
(はぁ・・・)
気の重い許嫁の話が、もうすでに目前に迫ってきているのを感じナムギルは寂しさに押し潰されそうだった
イ家で食事を済ませ帰宅したシン家の家族は、リビングでお茶を飲みながら必然的に家族会議が始まったようだ
『チェギョン・・・別にそんなに早く嫁ぐことはないんだ。テストなんか頑張らなくていいぞ。』
『もぉ~何言ってるの?お父さん!!おじいちゃんたちが決めたことに逆らうなんて
おじいちゃんが化けて出て来るよ!!』
『そんな・・・』
『お父さん、とにかく私はあの家にお嫁に行く。イ・シン先生のお嫁さんになる~~~!!
頑張るっきゃないっ♪さ~~勉強しようっと❤』
意気揚々と部屋に戻ったチェギョンは早速机に向かった
『数学以外は~~勉強する必要ないか。』
そう思い数学の教科書とノートを開いた時だった
先程イ家で交換してきた新たなナンバーからの電話がかかってきたのだ
『あっ♪イ・シン先生だ。いや・・・許嫁?にょほほほ~~♪』
チェギョンは大きく深呼吸をし、それから電話を取った
『はい~~♪』
『はいじゃないだろう?なぜあんな書状の言いなりになる!』
『えっ?だってイ・シン先生・・・おじいちゃん方のお約束ですよ。それを簡単に破れます?』
『いや・・・それにしたってむちゃくちゃな話だろう?お前はまだ16歳なんだぞ。』
『でも法律で結婚は認められています。』
『だが・・・学校側は許さないだろう。』
『そんなのもちろん内緒ですよ~♪』
『お前・・・そんなに自信があるのか?学年トップになる自信が!!』
『もちろんです。自信がなければあの条件はのみません。』
『自力で・・・頑張るんだろうな。』
『えっ?自力ってことは、今度のテストが終わるまで数学の勉強を見て貰えないってことですか?
そんなの・・・横暴です。』
チェギョンにとってみれば、ミン・ヒョリンの監視の目があるから学校ではあまり話ができない
なのに折角お膳立てされた個人授業の時間を失うとなると、シンと話せる時間が愕然と減るのだ
それはチェギョンにとって得策ではなかった
チェギョンは食い下がった
『勉強を見てくれるって・・・仰ったじゃないですかぁ~~~!!イ・シン先生にとって私が学年トップになるのは
嬉しくないことなのかもしれませんが、私は真剣なんです!だから・・・見捨てないで下さいよぉ~~!!』
『チェギョン・・・お前はどうして俺と結婚したいんだ?』
『イ・シン先生が好きだからに決まっているじゃないですか。結婚すれば学校であまり話せなくても
家では一緒にいられるし、私の事も知って貰えるでしょう?』
『だが・・・結婚という形が必要か?俺はハン先生が復帰したらお前と付き合うと約束しただろう?』
『それまで…待てません。花の命は短いんです。傍にいたいんです。』
チェギョンのあまりの熱意に、さすがのシンも折れるしかなかった
チェギョンが数学さえ克服したらソウル大学も楽勝と言われるほど優秀な生徒だと、ハンの残していった覚書を
見れば一目瞭然だった
(ここはチェギョンの頑張りを応援するべきだろう。)
祖父同士が決めたこととはいえ、好意を持った女の子である
許嫁であると知る前にあまりの放っておけなさに自分の想いを口にしたシンの、自分なりのけじめのつけ方だった
翌日からちょうどテスト前期間になり、生徒全員部活動は休みとなった
なのでミン・ヒョリンに監視されることもなく、チェギョンは授業が終わると同時に学校を飛び出しイ家へと向かった
学校では許嫁と知った後でも、今までと変わらない担任とルーム長の顔で接する二人
誰に訝しく思われることもなく、ただ職員室にチェギョンがやってきた時に感じるミン・ヒョリンの視線が
チクチクと皮膚を突き刺すのを感じていた
(っつ・・・ミン・ヒョリン先生って本当に怖い。でも今に見てろ~~!ヒョリン先生に何も言わせない関係を
築くんだから~~!!えへへっ♪)
イ家の敷地の中に自転車を乗り入れ家の邪魔にならない場所に自転車を止めると、
チェギョンは意気揚々とインターフォンを押した
<ピンポ~~ン♪>
『こんにちは~♪シン・チェギョンです。』
すぐさまミンは玄関に現れ、チェギョンを家の中に招き入れた
『いらっしゃいチェギョンちゃん♪でもシンはまだ帰っていないのよ。』
『あ・・・はい。知っています。リビングで勉強しながら待っていてもいいですか?』
『ええ構わないけど~、その前におやつはいかがかしら?』
『えっ?おやつ?』
『そうよ~バナナのいい香りがするでしょう?バナナ蒸しケーキを作ったのよ。』
『わぁ~~♪』
『食べる?』
『はい~~いただきますっ♪』
チェギョンはミンの煎れてくれた紅茶を飲みながら、出されたバナナ蒸しケーキにかぶりついた
『お・・・おば様~めちゃ美味しいです♪甘さもちょうどよくてバナナの香りがほんわかとして~~♪』
チェギョンはまだたくさん載っている皿に目を向けた
『チェギョンちゃん、おやつだからひとつだけよ。あとは持ち帰ってお夜食にしなさい。
たくさん食べると眠くなってしまうでしょう?』
『あ~~そうです。寝不足なので眠くなってしまいます。お持ち帰りオッケーですか?』
『もちろんオッケーよ~♪チェギョンちゃんの為に作ったんだもの。包んでおきますからね。』
『ありがとうございます♪』
おやつを食べ終えたチェギョンは、早速リビングのテーブルの上に教科書とノート…それから問題集を開いた
シンが戻るまでに今日質問したいことを絞っておくつもりだった
集中して質問事したい事を絞りこむ
そんな様子をミンはキッチンから楽しそうに眺め、それから食事の支度に取りかかった
暫くするとシンが帰宅し、いよいよイ家での個人授業が始まった
チェギョンは真剣そのものでシンに質問を投げかけ、シンはそれに親切丁寧に答えた
しかしそれから一時間もした頃、真剣に勉強に取り組んでいる二人にミンは声を掛けた
『夕食にしましょう。』
『えっ?』『母さん・・・そんなことをしていたらチェギョンの帰宅が遅くなってしまうだろう?』
『だったらシンが送り迎えをしたらいいのよ。チェギョンちゃんが帰るまで、どうせ心配で仕方がないでしょうし。』
『そうもいかないだろう?』
『なぜ?もう日が短いのだからすぐに暗くなってしまうでしょう?
それに雨が降った日は自転車じゃあ危ないわ。』
『それはそうだが・・・』
『とにかく食事にしましょう。今夜はDHAがた~~っぷり入ったお魚料理よ♪』
『母さん!チェギョンをけし掛けるのはやめてくれ!!』
『あらやだ。けし掛けているつもりはないわ~♪たまたまよ。た・ま・た・ま♪』
そう言いながらこの先のテスト前期間、ミンは魚料理中心の夕食をチェギョンに振る舞い、
そしてシンも放っておけない心配性が災いし、翌日からは暗くなった頃にチェギョンを迎えに行き
夜遅くシン家に送り届けるようになった
さてチェギョンはテスト一日目に難関の数学に立ち向かうこととなった
シンに豪語した≪学年トップの座≫を獲得できるのだろうか
そしてチェギョンの思惑通りに結婚へと話が進むのだろうか・・・
いよいよ秋雨前線の到来のようです。
シトシト雨が降ってきましたよ~~!!
こちらのチェギョンには熱風を巻き起こしていただきますか❤
シトシト雨が降ってきましたよ~~!!
こちらのチェギョンには熱風を巻き起こしていただきますか❤