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Channel: ~星の欠片~
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晩夏の熱風 5

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『イ・シン先生、大変お待たせいたしました~♪』

車に乗り込むとチェギョンはシンにペコリと頭を下げた

『ほら・・・』
『えっ?なんです?』

シンから手渡されたフェイスタオルを不思議そうにチェギョンは見つめた

『肩が濡れている。髪もだ・・・。風邪をひいたら困るだろう?使うといい。』
『あ・・・すみません。』

チェギョンはそのフェイスタオルで肩や髪に着いた雨の雫を拭った

フワリとそのフェイスタオルはとても良い匂いがして、チェギョンは思わずシンに問い掛けた

『あの・・・イ・シン先生は一人暮らしなんですか?』

この問いにYESと答えれば恋人がいる証明となる

さりげなくチェギョンは探りを入れたのだ

『いいや。俺は実家住まいだ。まだ留学先から帰って間がないからな。』
『おぉ~そうでしたか。(よかった~♪』
『なぜそんなことを聞く?』
『あ・・・このタオルがすごくいい匂いがするから、洗剤は何を使っているのかな~って思って・・・』
『くくっ・・・そうか。今度母に聞いておこう。ところでハン先生はお元気だったか?』
『はい。とてもお元気そうでした♪あ・・・あのぉ・・・イ・シン先生に送っていただいたこと
言ってしまったんですけど・・・≪ここまで来たのになぜ顔を見せない?≫って不思議がってましたよ~!』
『なっ!!俺が送ったことを話したのか?』
『は・・・はい。行きがかり上仕方なく・・・』
『っつ・・・そうか。』

シンは放っておけなくて送迎を申し出たことを、願わくばハンには知られたくなかった

自分という人間をよく知っているハンなら、きっと自分の気持ちの疚しさも感じ取ってしまった筈だ

それがわかるだけに困惑し顔を顰めた

もちろんその表情を見て、すぐに自分の行いの過ちに気が付いたチェギョンはシンに詫びた

『あ・・・イ・シン先生、余計なことを言ってしまいごめんなさい。』

助手席から漂う深い反省オーラにシンは顰めた顔を緩めるとチェギョンに笑顔を向けた

『くくっ・・・気にしなくていい。こっちの話だ。それよりシン・チェギョン・・・あの時の話だが・・・』
『あの時とは?』
『お前と初めて逢った時の事だ。』
『あ・・・はい。』
『あの日お前は、何人で海水浴に行ったんだ?』
『五人です。』
『同じクラスの女子とか?』
『あ・・・その辺りの事は内緒です。』
『だったらその辺りの事は聞かないが、なぜお前ひとりだけあの駅にいたんだ?』
『あ・・・えっと・・・気が付いたらみんなどこかに行っちゃったんですよぉ~~!!』
『置いてきぼりにされたのか?』
『ん~~そういう意識はなかったと思います。恐らくあの場所を去る時点で、私の事など眼中になかった・・・
のではないかと・・・』
『あぁ・・・なるほど・・・つまり友人たちは海水浴で知り合った男子にお持ち帰りされたってことだな?』
『ん~~多分・・・そうではないかと。』
『お前だけ・・・持ち帰られなかった理由がわかるか?』

チェギョンは胸を張って答えた

『それはきっと水着のせいだと思います。海水浴に行く寸前まで、私・・・秋の芸術祭の為の作品を
描いていたんです。それで~海水浴に新しい水着を購入する時間なんかなくて~~
いざ現地に到着してみたら、み~~んなボン・キュッ・ボン!のすごいビキニとか着ていて
私だけスクール水着だったんですぅ。まるでイルカのような私の周りに~人魚姫がいっぱい
並んでいるわけですよぉ。しかも胸元に名札までついていたというのに~~
知り合った男子に名前さえ覚えてもらえませんでしたぁ。やはり・・・色気のない水着で海水浴に行ったのは
大失態でしたぁ。』

チェギョンのその返事にシンは笑いを噛み殺した

なぜなら見ようによってはスクール水着の方がより一層・・・男心をくすぐるアイテムだ

だからチェギョンがお持ち帰りされなかった理由は水着にあるわけではなく、その天然なキャラクターに

問題があるとシンは推測した

『くっ・・・そうだったのか。』
『はい~~!!しかもみんなで使ったビーチボールや浮き輪を片付けている間に、いなくなっちゃうんですから
酷いと思いませんかぁ?』
『くくっ・・・確かに酷いな。だが・・・そうまでして出逢いが欲しかったのか?』
『えっ?そんなことありません。ただ私は・・・自分だけが置いてきぼりにされたのが悔しいんです。
だけど置いてきぼりにされたおかげでいい事もありました。』
『いい事?』
『はい。あの場に一人取り残されていなかったら、イ・シン先生に送って貰うこともなかったから・・・。』
『あぁ。それだけは本当によかったと思っている。だがもう二度と・・・あんなことはするな。』
『はい。もう友人との海水浴なんか行かないって決めました。』
『たとえスクール水着じゃなくてもやめておけ。』
『は~~い♪』

あの日偶然シンに出逢ったことに心から感謝し、チェギョンはシンの横顔に見入った

(やっぱりイ・シン先生はイケメンだな。あの海で彼氏ができた友達の半分は、イ・シン先生に心を奪われて
できたばかりの彼氏と別れたなんて・・・人生皮肉なものだな。
でもお生憎様~私の方が先に出逢ったんだからね~♪)

出逢いが先だからといってチェギョンが優位に立てることはない

教師と生徒・・・そのことは十分わかっていながら、チェギョンは出逢った日よりもずっとずっと

シンに惹かれている自分を持て余していた

そしてそれはシンも同様で、チェギョンを前回と同じ場所で降ろしチェギョンの帰っていく後姿を見送った後

再び車を走らせながら呟いていた

『しかし・・・今時の女子高生はそんなにお手軽なのか?みんなシン・チェギョンを見習うべきだろう?
くっ・・・一人でレンタルしたボールを片付けているスクール水着の女子高生って、
俺だったら絶対に放っておかないが・・・。あぁっ!そうだ。ハン先輩になんて言おう。
いや・・・言い訳になど行く方が却って変だ。ほとぼりが冷めるまで顔を出すのはやめておこう。)

先程のチェギョンとの会話を思い出しながら、シンは鼻歌交じりで帰宅した





とても気分よく翌日学校に向かったシンは、机に座るなりミン・ヒョリンの襲撃に遭う

『シン先輩~昨日どちらに行かれたんですか?』
『あぁ?なぜだ?』
『ハン先輩が入院なさっている病院の駐車場から出ていくのを見かけました。
あの生徒・・・シン・チェギョンって言いましたっけ?先輩のクラスのルーム長でしたよね?
いいんですか?教師が生徒を助手席なんかに乗せて・・・』
『あぁっ?ただハン先輩の見舞いに行っただけだ。』
『そうですか?でもこんな話、人に聞かれたら拙いですよね~~!!』
『別に疚しいことは何もない。おかしな言い方はよしてくれ!!』

明らかに嫉妬しているその表情に、シンはそれ以上何も言わずにいた

恐らくハンは≪一緒に見舞いに来た。≫と誤魔化してくれたのだろう

そんな気配りのできる人だからこそ、留学を中断してまでハンのやめに帰国したのだ

余計なことを言ってしまい、さらに厄介なことになるのだけは避けたかった

するとヒョリンは嫉妬の表情から媚びるような表情でに一転しシンに告げた

『あ・・・そうだわ先輩。今日先輩と私の歓迎会をするそうです。主役ですから欠席などできませんよ。
20時に駅の近くの料亭だそうです。楽しみですね。ふふふ・・・』

シンはミン・ヒョリンに気づかれなよう小さく溜息を吐く

なぜならミン・ヒョリンには大学時代に散々、泥酔して絡まれた経験があったからだ

(今日もこいつを送る羽目になるのか・・・。)

車で来ているのだからもちろん酒は飲めない

シラフで酒に酔った人間と会話するのは、あまり得意としないシン

折角気分の良かった朝が、夜の事を考え一気に沈んでしまうシンだった



その日部活が終わった後、チェギョンの個人授業をしている時にシンはチェギョンに話した

『今日は俺の歓迎会があるそうなんだ。だから早めに勉強を終わらせよう。』
『そうなんですか?どこのお店でやるんですか?』
『駅前の料亭だそうだ。』
『ほぉ~でもイ・シン先生は車だから、お酒飲めないでしょう?疲れそうですね。』

まさに自分が思っているそのままをチェギョンに言い当てられ、シンは驚き苦笑する

『くくっ・・・よくわかったな。あぁ・・・食事だけして帰ろうかと・・・』
『まぁ人付き合いの上でお酒の席は必須科目ですから~頑張ってください!』
『あぁ。そうするよ。』

チェギョンと共に過ごす時間を削ってまで、歓迎会に行きたいとは思わなかったが

これも人生勉強だとシンは会場になっている料亭に向かっていった




シンから歓迎会の情報を得たチェギョンは、なんとなく気になってその料亭に入って行く人物をこっそり探っていた

『おぉ~コン校長にチェ教頭~あっ!イ・ガンヒョン先生も入って行ったぞ~♪
いいな~~私も行きたい。あれっ?あの人ってこの間私を睨みつけた先生。
ん~~なんだっけ?ミン・ヒョリン先生だっけ?げっ・・・何?あの格好。
あの開いた胸元って教師にあるまじき姿。あれって…今流行りの盛りブラでメチャ盛ってる胸だよね。
けっ!!!気味悪い~~~!!
あ・・・イ・シン先生だ♪隣の駐車場に車を停めたんだ~。おぉ~普段は脱いでいるけどスーツの上着を着ると
益々カッコいい~~~❤うっ・・・あの盛りブラお化け・・・まさかイ・シン先生に色目使う気じゃ?』

シンが店内に入って行くときに、自分の姿に気づかれないよう身を隠したチェギョン

だがシンはそんなチェギョンの姿を、しっかり視界に収めていた

(シン・チェギョン・・・こんな場所で一体何をしているんだ?)

開始時刻が迫っているため慌てて入って行った店内。だがシンは店の外にいるチェギョンがどうしているのか

気になって仕方がなかった



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また新しい造語を作ってしまったような・・・
 ≪盛りブラお化け≫って・・・(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

そして主要キャストコン校長・チェ教頭登場です。(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

台風の被害はありませんでしたか?
管理人地方は先ほどまで暑かったけど
今はいい風が吹いています❤





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