歓迎会の会場である料亭に入って行きながら、シンは困惑していた
(さっき俺が歓迎会の事を漏らしたから、偵察にやって来たのか?シン・チェギョン・・・
ここは繁華街だから制服姿の女子高生が、いるのに相応しい場所じゃない。
早く帰れ。チェギョン・・・)
笑顔を浮かべ会場となっている部屋に入って行ったシンは、ミン・ヒョリンが手招きするのを気づかない振りをし
コン校長の座る場所に向かった
『コン校長・・・今日はこのような席を設けていただきありがとうございます。』
『いやイ・シン先生、あなたの帰国をお待ちしていましたよ。』
『えっ?』
『ハン先生から評判は聞いていたのですが、何よりあなたの父上が私の古い友人でしてね。』
『そうでしたか。それは存じ上げませんでした。』
『大きくなられた。ははは・・・。今日は無礼講です。美味しい料理とお酒を楽しんでください。』
『あ・・・それが校長先生、私は車ですので料理だけたくさんいただきます。』
『そうでしたか。では早速歓迎会を始めるといたしましょう。』
全員が席に着いた時、コン校長の挨拶のあと教師たちは乾杯のグラスを鳴らした
正直・・・シンにとっては病気療養中のハンの代理なのである
乾杯などあまりしたいとも思わなかった
落ち着いて料理に手を付けだした時、ふと先ほど外でこっそり覗いていたシン・チェギョンの事が頭をかすめた
(あいつ・・・帰ったんだろうな。)
繁華街ゆえ酒に酔った人も大勢いる。そのような輩がチェギョンを見て、おかしな行動に出はしないか
また警察官に補導などされたりしていないか・・・
考えれば考えるほど、外の様子を見に行きたくなってしまう
隣に座ったイ・ガンヒョンがシンのそんな様子に気が付き、訝し気に問い掛けた
『イ・シン・・・何か心配事?』
『あぁ?いや・・・別に・・・』
『あら・・・ヒョリンったら困ったわ。もうあんなにお酒を空けて・・・』
見るとミン・ヒョリンは、両隣を男性教師に囲まれ勧められるままに酒を飲んでいる
『元々酒が好きな女だ。飲ませておけばいい。』
『だけどイ・シン・・・最終的にあの酔っぱらいが送れっていうのはアンタよ。』
『だろうな。』
それを考えると気が重くなる
なぜなら過去に車を汚されたこともあれば、後部座席から抱きつかれ危うく事故になりそうだった経験もある
『アンタにとっては疫病神だものね。』
『その通りだ・・・』
二人でヒョリンに視線を向けると、ヒョリンはその胸元まで真っ赤に染め・・・寄せ集めた偽物を見せつけるように
胸元を煽ったりしていた
二人して呆れかえり、料理に手を付けだしたが・・・シンはヒョリンの偽物の胸元よりも、
終了時間など知らないのに外で待っているかもしれない子猫が、どうにも気になって仕方がない様だ
(もしあいつが待っていたら・・・また腹を空かせているんじゃないか?)
そんなことを考えると、自然と料理に手を付ける気も失せてしまうシンだった
歓迎会に予定されていた時間の半分も過ぎた頃だった
いきなりヒョリンはシンに向かって手を振り、大きな声で呼んだ
『シン先輩~こっちで飲みましょう。』
シンは小さく手を振り、拒絶の意思を示した
『見てみろガンヒョン・・・ヒョリンの隣に座ってるイム先生が俺を睨んでいる。』
『あの子って昔からそうだった。男受けはいいんだから・・・』
そのうちミン・ヒョリンは徐にその場から立ち上がり両隣の教師を振り切ると、シンの元にやってきた
『先輩~♪私酔っちゃいました~。』
『だろうな。』
『帰り・・・前みたいに家まで送ってくれるでしょう?』
その様子を見ていたチェ教頭は、そっと手招きをしてイ・ガンヒョンを自分のところに呼び寄せた
『イ・ガンヒョン先生・・・今日の帰りはどうなさるんです?』
『あ~チェ教頭、私は友人が迎えに来てくれる約束になっているんです。』
『そうですか。できればイ・シン先生の車に乗ってお帰り頂けないかと思ったんですが・・・。』
『えっ?』
『実はイ・シン先生のご両親とは付き合いがありまして、≪悪い虫≫が付かないよう見張ってほしいと
奥様から頼まれているものですから・・・』
『(悪い虫…確かにね。)そうでしたか。わかりました。友人にはミン先生の家に来て貰うようにしましょう。』
『助かります。』
長かった歓迎会の時間がようやく終わった時、先生方に挨拶をしたシンは腕にしがみついて来るヒョリンを
引きずるようにして店内から出て行った
すると二時間前にいた場所でシン・チェギョンはこっそりこちらを窺っていたのだ
(あいつ・・・まだいたのか!!)
すぐさまにでも傍に行って、帰るよう教育的指導をしたいところだが・・・ヒョリンにしがみつかれているため
それもできない
駐車場まで歩いていき、愛車の後部座席のドアを開けるとヒョリンに乗るように促した
『早く乗ってくれ!!』
『え~~シン先輩。助手席がいいわ。』
本音を言って、後部座席に乗せるのも助手席に乗せるのも怖い状態のヒョリンだ
何とかヒョリンを押し込もうとしていたその時、シンに救世主が現れた
『ヒョリン早く乗りなさいよ。』
イ・ガンヒョンが助っ人に現れたのだ
『えっ?ガンヒョン先輩~~ギョン先輩が迎えに来るって言ってたじゃないですか~~!』
『あ~ギョンね、ギョンならアンタんちの前で待っているそうよ。いいから早く!!』
『もぉ~~折角シン先輩と二人で帰ろうと思ったのに、邪魔するんですから~~!!』
シンにとっては救いの神にしか思えないガンヒョンの存在
二人が乗り込んだのを確認し、シンは運転席に座るとアクセルをふかした
先程・・・こっそり覗いていたチェギョンの姿は、もうどこかに消えていた
『さぁ着いたわ。ヒョリン降りるわよ。』
二人が車から降りた時、シンはガンヒョンを迎えに来ていたギョンに挨拶をした
『よぉ!ギョン久しぶり。』
『シン~変わってないな。近々逢おう。』
『あぁ。時間を作ってくれ。』
『うん。楽しみにしているよ~♪』
シンはガンヒョンにヒョリンが家に入るのを見届けさせて、そのまま車をUターンさせた
繁華街からチェギョンの家までは自転車で30分はかかるだろう
通るだろうと思う道を走り・・・そして制服姿のチェギョンを見つけた時シンは心から安堵した
(よかった。無事で・・・。全くあんな場所で二時間も待っているなんて、お前は刑事か?)
そう心の中で毒づき、一定の距離を保ちながら自転車あの後を走行した
『あ~~もぉ~ホント大人の飲み会って時間かかるんだな~っ。
もう二時間だよ?あっ!イ・シン先生が出てきた~~♪
うげっ・・・盛りブラお化けが・・・取り憑いてる~~~!!あ~~なんなの?ブラウスのボタン外しちゃって・・・
あれじゃあただのいやらしい女じゃん!!
イ・シン先生送っていくのかな。まさかテイクアウトなんかしないよね?ヤダヤダそんなの絶対に嫌~~っ!
あ?イ・ガンヒョン先生も一緒に車に乗った~♪
よかった~これで安心して家に帰れるぞっと。
しかし・・・コンビニで買ったサンドイッチ食べたけどお腹空いた~~!!
さぁ~帰ろうっと♪』
安堵して自転車を漕ぐチェギョン
家までの道のりは遠いが、それでもシンガミン・ヒョリンと二人で帰らなかったことが確認できて
ペダルを漕ぐ足は軽い
だが・・・しばらく走っていくうちに、遥か後ろでゆっくりと走っている車がいることに気が付く
『ひっ・・・まさか人さらい?パトロールに回っている警察官?少し急ごうっと!!』
チェギョンは自転車の速度を上げ夜道を必死に走った
しかしその車は近づいてくる気配がない
なんとなく自分の進行方向をその車のライトが照らしてくれているような気がした
『あれっ?ちょっと待って・・・この車の音って・・・イ・シン先生じゃ?』
さすがに振り向くことなどできず、チェギョンは曲がり角で一瞬だけ後ろからずっとついて来る車を確認した
『イ・シン先生だ~♪ひょっとして・・・私が覗いていたの知ってて、心配して見に来てくれたとか?
きゃ~~~っ♪』
そのまま車に駆け寄り話をしたい気持ちはあったが、やはりあんな場所で二時間も偵察していたことを
咎められるのが怖くてそのままチェギョンは家に帰っていく
だがそんなシンの行動が、チェギョンの気持ちをさらに大きくさせてしまった
(先生ももしかして・・・私の事が心配なのかな?同じ気持ち・・・なのかなぁ・・・きゃっ♪)
チェギョンの想いはもう歯止めが利かないところまで来てしまったようだ
実は・・・今回のタイトルの≪熱風≫とは
チェギョンの事なんです。
暴走しまくりのチェギョンになりますが
どうぞ楽しんでくださいね❤
ちなみに・・・シン君のチェギョンに対する呼び方が
君・・・からお前やあいつになったの
気が付いていましたか?(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
チェギョンの事なんです。
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どうぞ楽しんでくださいね❤
ちなみに・・・シン君のチェギョンに対する呼び方が
君・・・からお前やあいつになったの
気が付いていましたか?(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!