(チェギョンside)
皇太子殿下付きのイギサに部屋の前まで送られ、私はインターホンを押してガンヒョンに
部屋の鍵を開けて貰った
そう・・・舞台から降りそのまま病院に連れて行かれた私は、自分の荷物一切を劇場に置いてきたままだった
それはもちろん気を利かせた後輩がマンションまで届けてくれたのだけど、それを届けたついでに
その日に起こったアレコレもしっかりガンヒョンに報告していったようだ
ガンヒョンは私が部屋に入るなり問いかけた
『チェギョン・・・アンタ、怪我の様子は?』
『あ・・・心配かけてごめんね。縫うほどじゃなかったけどテープ貼られてる。』
『傷・・・残りそうなの?』
『先生は恐らく大丈夫だろうって言っていたけど・・・』
『ならよかったわ。ところでチェギョン・・・アンタ、皇太子とはどういう仲なの?』
『えっ?どういう仲って・・・』
ガンヒョンの鋭い追及の視線に私は絡めとられた
『単なる気の迷いよ。恐らくこんな事・・・長くは続かないわ。ただ私たちみたいな人種が珍しいだけよ。』
『馬鹿ねアンタ・・・珍しいとか気の迷いで、皇太子が暴漢の前に飛び出すかしら?
しかし困ったことになったわね。』
『うん。正直戸惑ってる。劇団もすごい騒ぎになっているだろうし・・・』
『当然よ。まぁ詳しい話はあとで聞くとしてシャワーしてきなさいよ。舞台メイクも落とさなくちゃ、
肌荒れするわよ。』
『うん、そうするわ。』
私は一旦ガンヒョンの追求から解放されシャワーを済ませた
ところが・・・シャワーを済ませ寛いでいる時に、事態は更なる苦境に私を追い込んだ
『ちょっとチェギョン・・・テレビで皇太子殿下が緊急会見するって!!』
『うん。ただの友人ですってマスコミに言ってくれと頼んだの。』
『あ・・・始まったわ。』
二人で彼の会見の様子を見ていた
えっ?未来の皇太子妃?好きな女性?・・・・なっ何を言っているの?冗談でしょう?
テレビに釘付けになりながら、私もガンヒョンも完全に思考停止状態だった
『チェギョン・・・』
やっとの思いでガンヒョンが先に口を開いた
本気で言っているの?まさか本気だなんて思わなかったわ・・・
『どうすんの?アンタは・・・』
『どうしよう・・・困ったことになっちゃった。』
『アンタ・・・敵は真剣よ。アンタも真剣に考えないと拙いでしょう?』
『う・・・ん。ひとまず彼に電話してくるね。』
『うん。それがいいわ。』
私はガンヒョンと寛いでいたリビングから自室に入り、ひとつ深呼吸をしてから彼の携帯に電話を掛けた
あの記者会見を目の当たりにしても、今ひとつ私には実感がなかった
彼に文句のひとつも言ってやろうと、息巻いて彼が電話に出るのを待った
『チェギョンか?』
『そうです。今・・・記者会見を拝見しました。なんですか?あれは・・・
あれじゃあ更に事を大きくしちゃったじゃないですか!』
『シン・チェギョン・・・言っておくが俺は皇族だ。正式な記者会見で嘘など言えない。』
『だからって・・・嘘も方便っていうでしょう?』
『あの場で嘘を言うことのほうが俺にとっては難しい。』
『殿下は・・・ご自分の事しか考えていない。私の置かれた立場や私の将来を少しでも考えていただけました?』
『考えている。だからこそあの会見になった。』
『えっ?・・・私は女優です。スキャンダルはご法度なんです。お分かりになりませんか?』
『俺だってスキャンダルなどご法度だ。』
『だったら・・・なぜ・・・』
自分の将来を思い私は涙声になってしまっていた
『シン・チェギョン・・・よく聞いてくれ。君が女優を続けたいというなら、気が済むまで続けてくれて構わない。
だが・・・美貌や名声など何れは衰えていくものだ。』
『そんなことはわかっています!!』
『君がソウル歌劇団男役トップスターの座にいる限り、その座につけないまま劇団を去ることになる
役者も少なくないはずだ。』
『・・・確かにそうです。』
『君も以前言っていただろう?娘役のトップが降板すると・・・』
『ええ。』
『君はそうなる前に・・・劇団から降板を言い渡される前に辞めろ。』
『あなたに・・・何の権利があってそんなことまで言えるんです?』
『君の女優としての就職先を世話したいからだ。』
『えっ?』
『勤務先は東宮殿。役名は皇太子妃だ。もちろん何れは皇后に昇格する。』
『ちょっちょっと待って!!』
『長く男役を演じてきた君だ。トップレディーを演じるのだって容易いだろう?
なかなかやりがいのある職場だと思うが?
報酬は・・・そうだな皇族だからと言って国民の手本となる立場だ。それほど贅沢はできないが・・・
一生ものの名声と消えることのない愛情を君に贈ることを約束する。』
ぐうの音も出ない・・・この人は本気だ
『新しい職に就くのは急がない。ただ返事は早く欲しい。』
確かに自分が存在することで日の目を見ない後輩がいることも事実
また、劇団を退団し女優になったからといって、自分を最大限に生かしてくれる仕事があるとは限らないのだ
『少し・・・考えさせて。』
『あぁ。よく考えて返事をくれ。
あ・・・そうだ。これからはお忍びではなく堂々と芝居を見に行くことにする。
コソコソしたら却っておかしいからな。』
『ええ。じゃあまた・・・連絡します。』
『待っている。』
電話を切った後、私はもう逃げ道のない袋小路に迷い込んでいることを知った
(シンside)
チェギョンとの電話を切った後すぐ、まるで示し合わせたかのようにチャン・ギョンから電話が入った
『シン~~記者会見見たよ。まさかそんなことになっていたとは・・・。
チェギョンの怪我は本当に大したことないのか?』
『あぁ。医者も心配いらないといっていた。』
『それでシン・・・本気なのか?』
『俺が会見で嘘を吐くとでも?』
『いやぁ~そんなことは思ってないけど、あまりにも衝撃的だったからさ。
あのさ・・・上手くいきそう?』
『どうだろうな。まだ彼女の返事待ちだ。』
『う~~ん、そっか~~揺れるお年頃だからさ~。チェギョンもガンヒョンも・・・。
ここはひとつシンに頑張ってもらって、チェギョンを皇太子妃にしてもらえると・・・
俺も先に進みやすいんだけどなぁ・・・。』
『先に進みやすいとは?』
『ガンヒョンだよ~♪恐らくシンはチェギョンの家系とか調べたんだろうけど、チェギョンもガンヒョンも
本当に一般的な家庭の子だから、チェギョンが皇太子妃になった暁にはガンヒョンも俺との事
真剣に考えてくれるかな~~って。』
『いや・・・どうだろうな。もしチェギョンがいい返事をくれたとして、同じ時期に男役2トップの片割れのガンヒョンが
その話を受けるとは思えないんだが・・・』
『えっ?あ・・・そうか。そうだった・・・うわ~~それは困ったな。』
『くっ・・・そう言わずに頑張れ。誠心誠意気持ちを伝えたら、もしかして上手くいくかもしれないだろう?』
『わかった。俺は今まで通りガンガン押す作戦で行くよ。ただ俺もそろそろ・・・先の約束が欲しくなったんだ。
お前に負けないよう頑張らないとな。』
『あぁ。そうしてくれ。』
また四人で食事する事を約束しギョンとの電話を切った
少し強引すぎる話の持っていき方だったが、もう俺の目にはシン・チェギョンしか見えていないのだから
他の女性を妃に迎えるつもりは毛頭ない
まぁ王族会にはしっかりアピールしておいたので大丈夫だと思うが・・・
そう思ったのが間違いだった
翌日・・・王族会から緊急招集が掛けられ、俺と皇帝陛下は会議に向かうこととなった
会議室に向かいながら皇帝陛下は俺に問いかけた
『太子・・・昨日の騒ぎの事を追及されることだろう。』
『ええ恐らくそうでしょう。』
『チェギョンさんの傷は本当に軽傷だったのか?』
『はい。厚手の衣装を着ていたのが幸いしました。』
『そうか。怖い思いをしただろうな。』
『いや、毅然とした態度でした。あんな事態に陥っても女優なんですね。』
『いい返事は貰えそうなのか?』
『はい。いい返事をくれると信じています。』
『しかし・・・あれほど演技者として情熱を燃やしておるのだから、皇室に入ろうなどと思うだろうか。』
その陛下のまるでチェギョンの演技を見たことのあるような言葉に、俺はつい問いかけた
『陛下・・・まさか芝居を・・・』
『実は行ってきたのだ。先日皇后と二人でな。』
『そうでしたか。なかなか男前だったでしょう?』
『ああ。あれでは妻を盗られたと嫉妬する夫がいてもおかしくはないな。ははは・・・
しかしけしからん男だ。あの事件の犯人は・・・。厳重に処罰を下さないと・・・』
『恐らく会見のもようを警察官から聞いて震え上がっている事でしょう。
あの時は私を皇太子だなんて思っていない顔をしていましたから・・・』
あの男の行く末を思うと少し気の毒になる
刃を向けた相手が悪かったな。ただの傷害事件では終わらせない
会議室に入っていくと・・・やはり王族界の重鎮たちが顔を顰めて俺に苦言を呈す
『皇太子殿下・・・昨晩の騒ぎは一体何のおつもりですか!
皇太子殿下ともあろうお方が、女優に熱を上げるなどとんでもないことです。』
開口一番こう言いながら俺を威圧してくるパク家の当主
あのパーティーに来ていたメンバーたちは、どちらについてよいのかわからずうろたえている
『女優に熱を上げる?くくっ・・・私も一人の男ですから、あってもおかしくない話でしょう?』
『ですが皇太子殿下・・・皇太子妃問題は話が別です。ここにいる王族の娘の中から
どうか選出してください。』
それはもう済んだ話だろう?そう思いながら俺は口角を上げた
『いいえ、皇太子妃には昨日騒ぎになった女優シン・チェギョンを任命します。』
『何を仰っているのですか!そのようなことを王族会が賛成するとでもお思いですか?』
『反対…する理由がありますか?私が自ら選んだ女性です。』
『しかしそのようなことは前例が・・・』
よし・・・かかったな
『前例?それだったらあるじゃないですか。故孝烈皇太子殿下が婚姻されたのは、確か女優出身の
恵政宮様でしたよね?
パク家は恵政宮様の宮殿入りを諸手を挙げて賛成したと・・・王族会議の記述にはありましたが?』
『そっ・・・それは・・・』
『他の誰でもない私の婚姻です。ここにおられる王族会メンバーにも多数賛成をいただいておりますよ。』
『しっ・・・しかし・・・』
『まさか・・・婚姻が決まる際に、故孝烈皇太子殿下から何かリベートでも受け取られましたか?
でしたら私も・・・何かお贈りしたほうがいいでしょうか?』
もちろんそんなことをする気はない
皇太子妃選出の折に賄賂が発生するなどあってはならないことだ
『反論がなければ、この話はこれで打ち切りといたしましょう。
念のため申し上げておきますが、私はシン・チェギョンを皇太子妃にいたします。これは決定事項です。』
ここまで強気に話を進めてしまったからには、チェギョンからの返事は必ずYESでなければならない
何の確信もない
なのに俺は彼女が≪皇太子妃を演じるために入宮すること≫を願い、このまま突き進む道を選んだ
(画像は近所の薔薇屋敷のクレマチスだったと思う)
なんかね~10に勝手に更新されちゃってから
変換が変なの~!
あ・・・もちろん今までも変換ミス多かったけど
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
シン君が神君になっちゃうんだもんなぁ。
困っちゃう・・・