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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 44

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19歳のクリスマスを境に二人は徐々に旅行などにも出掛けるようになり、最初は渋い顔をしていたナムギルも

次第にそれを黙認する様になっていった

シンとチェギョンも順調に想いを育んでいき、同じ様に回りの友人達も其々の相手と仲睦まじく

お付き合いしていた

ギョンとガンヒョンに至っては付き合いが長いせいもあり、大学四年の夏に婚約を交わした

大学を卒業と同時にガンヒョンはチャン航空の社員になると同時にチャン家に嫁ぐ・・・

そんな風に皆が其々の幸せを掴もうとしていた大学四年のクリスマスイブ・・・二人はイ家の一番大きな別荘に

出掛けた

以前の様にミンや管理人の手を煩わせることなく・・・二人で買い物をして食事を作り

楽しいクリスマスイブを過ごしていた

普段であれば食事の後クリスマスケーキを食べながらプレゼント交換をするのが常である

チェギョンは今年のクリスマス・・・ネクタイとネクタイピンを用意しシンに手渡した

ところが・・・シンは≪俺からはちょっと待ってて。後で渡すから。≫そう言ったまま

二人きりのクリスマスパーティーは終わってしまった

(ん~~~?おかしいなぁ・・・)

いつもなら微笑みながら自分よりも先にプレゼントを出して来るシンなのに・・・チェギョンは少し不思議に思ったが

その後にはお待ちかねの溶岩大浴場での入浴が待っている

(きっとあとでくれるでしょう♪)

あまり深く考えずチェギョンはシンに促がされ浴室へと向かった

毎年クリスマスはこの別荘で過ごすと決めていた二人・・・もう身も心も許せる間柄になって三年

チェギョンは着衣を脱ぐと先に浴室に入っていった

『シン君~~先に行っているね♪』
『あぁ。』

身体を洗い髪も洗い上げ・・・溶岩でできた浴槽に入っていったチェギョンは、天井にある開閉式の扉が

リニューアルされている事に気がついた

『あ!!シン君、天井のゲートが変わってるよ。開けてもいい?』
『わ~~~!ダメだ。すぐに行くから、ちょっと待っていろ。』
『うん解ったよ。ぱぁ~~相変わらずいい湯加減♪』

湯の水面を両手で掬ってチェギョンはその温泉成分を顔にもいきわたらせようと顔を湯に浸した

そんなチェギョンを気が気じゃない想いで何度も振り返りながら、シンは慌てて身体と髪を洗い上げ

それから浴槽の中に入っていく

三年前は互いにタオルを身体に纏った姿だった

だが・・・今の二人の間には温泉があるだけだった

漸く安堵した面持ちでシンは暫く目を閉じじっと温泉に浸かり、それからチェギョンに指示を出した

『チェギョン・・・上の扉を開けるから、ちょっと移動してくれ。』
『えっ?どこに?』
『真ん中辺りだ。あ・¥・・もっと右・・・・それじゃあ行き過ぎだ。そこだ!!そこでストップ!!』
『へっ?ここ?』
『あぁ。今開けるから夜空を堪能してくれよ。』
『う・・・うん。』
『ほら!俺じゃなくて上を見てろ!』
『えっ?・・・上を見ていればいいの?』
『あぁ。じゃあスイッチを押すぞ。』
『うん。』

シンがスイッチを押すと、すぐに天井の扉は開き始めた

<ゴゴゴゴゴーーーーッ!!>

その瞬間・・・チェギョンの視界には真っ赤な薔薇の花びらが雪のように降り注いだ

『うわぁ~~♪』

甘い香りを伴い降ってくる花びら

『すごくいい香り~♪』

その時・・・薔薇の花弁と一緒に不思議な物体が降りてくるのに気がついたチェギョンは、じっと目を凝らした

(ん?なんだろう・・・)

それはパラシュート・・・いや落下傘の様な物をつけゆっくり下りてくる

チェギョンはつい引き寄せられるようにそれをキャッチしようと、湯の中を移動した

そして広げた両手の上にその落下傘はふわりと舞い降りた

掌の上にメッセージカードが広がった

≪俺と結婚しよう≫

落下傘の先にはキラリと輝くリングがついている

『シン君・・・これって・・・』
『あぁそうだ。返事は?』
『うん!!結婚する。シン君と一緒に暮らしたい!!』

漸く安堵した表情になるシンはチェギョンの元へ移動し、その落下傘にしっかり結んであったリングを外すと

チェギョンの左手薬指にはめた

『本当だな。』
『うん。シン君しかいない。』
『じゃあ明日、おじさんとおばさんに挨拶に行く。』
『えっ?もう?』
『あぁ。善は急げだ。』
『だったら早い時間の方がいいよ。ヒョリンもどうやらイン君を連れてくるみたい。』
『先手必勝だな。明日は早くここを出よう。だから今夜は控えめに・・・』
『んっ・・・』

重なり合った唇はキスの深さを増していく・・・

自分が必要な人間であると教えてくれた人・・・自分の道標になってくれる人

そんな相手と結婚の意思を固めた二人

甘い薔薇の香りに包まれて二人の甘いクリスマスイブは更けてゆく

認められているとはいえ長く一緒に暮らせなかった娘の結婚を、恐らく快諾できないだろうナムギルの

説得に誠心誠意尽くす為・・・二人は互いの絆をしっかり結び合うのだった



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皆様もどうぞ
素敵なクリスマスイブになりますように❤

しかし・・・若いっていいのぉ・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

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