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蜃気楼の家 45

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『クシュンっ!!』

二人きりのクリスマスイブを過ごしシン家に向かう二人・・・チェギョンは助手席で大きなくしゃみをする

『チェギョン、風邪ひかせちゃったか?』
『だってシン君・・・いくらなんでも花びらの量が大量だったでしょう?』
『少し・・・やりすぎたか?』
『いや・・・そうは思わない。とても嬉しかったよ。くすくす・・・』
『ところでチェギョン・・・あの拾った薔薇の花びら、どこに捨てたんだ?見当たらなかったが?』
『捨てる?捨てる筈ないよ。ちゃ~~んとネットに入れて風に飛ばされない様に干してきたの。』
『あぁ?花びらをか?』
『うん。プロポーズの記念にポプリにしようかなって思って~~♪』
『くくっ・・・大した女だな。お前は・・・』
『ところでシン君、あの仕掛けはどうやったの?』
『あの仕掛けとは・・・風呂場の事か?』
『うん。』
『前日に天井の扉の上に上がって、一枚一枚摘み取った花びらと落下傘を風に舞わない様に
細かい網で固定して来たんだ。』
『それで一昨日は逢えなかったんだね。』
『あぁ。俺は非常に忙しかったからな。』
『天井がリニューアルしていたのもシン君の仕業?』
『いや・・・あれは母さんにお願いした。さすがに俺にはコストが掛かり過ぎる。くくっ・・・
母さんはあの上に上りたいと言ったら、二つ返事であの天井を強化してくれたよ。』
『もぉ・・・おば様にも迷惑かけちゃったのね。』
『お前をイ家の嫁に貰う為なら、母さんはなんだってするだろうな。くくっ・・・』

やがて車はシン家の敷地内に入っていき、二人は車を停めると屋敷に向かって歩く

『お母さんただいま~♪』

帰って来た娘を出迎えに出てきたスンレは、いつ物クリスマス名が自分一人で家に入ってくるチェギョンが

シンを伴って来た事に驚き問い掛けた

『チェギョン・・・お帰りなさい。シン君も一緒なの?』
『うん。シン君がお父さんとお母さんに話したい事があるって。』

チェギョンのその言葉でスンレはピンと来たようで、咄嗟にチェギョンの指に視線を向けると

その指に見慣れない指輪が薬指に輝いていることを確認した

『そう。チェギョン・・・だったら、お父さんのところに行く前に、ほら・・・あれ。
ミンさんから四年前にいただいたプレゼントを覚えている?』
『えっ?うん。』
『どうやらあれの出番が来たようだわ。今すぐ部屋に行ってして来なさい。右手のできる場所で構わないわ。』
『えっ?あれの出番?ん~~~??』

ミンから贈られた指輪の事は覚えている

貴金属の価値など分からないチェギョンでさえ躊躇する輝きを持ったあの指輪だ

(出番かぁ・・・♪)

チェギョンは一旦自室に戻り荷物を置いた後、宝石箱の中からミンの四年前のプレゼントを取り出すと

それを右手の中指にはめ、家族とシンがいるリビングへ向かった

どうやらシンはもう既に話し始めているようだ

『おじさんおばさん・・・大学を卒業したらチェギョンと結婚することをお許しください。』
『ああ?シン君・・・それはいくらなんでも早すぎる。チェyゴンはまだこの家に来て四年と少ししか経っていない。
せめて後三年は手元に置いておきたいんだ。』
『ですがおじさん、チェギョンはおじさんの会社に入社が決まっていますよね?
もちろん仕事をする事は反対していません。でもそろそろチェギョンと一緒に暮らしたいんです。』
『だがシン君・・・チェギョンはまだ22歳だ。君だってお父さんの下で仕事を覚える時期だろう?
結婚なんて早すぎる。』
『俺は結婚したからといって仕事に私情など持ち込みません。
仕事はしっかりしてみせます。』
『いや・・・そうはいかないだろう。仕事がおろそかになった時、チェギョンが悪く言われるんだよ。
チェギョンだって仕事を始めるのに、家事と仕事の両立じゃあ・・・チェギョンが可哀想だろう?』
『っつ・・・おじさんっ・・・』

哀願するシンの声がリビングに響いた時・・・それまでじっと黙っていたスンレが口を開いた

『あなた・・・チェギョンはシン君から指輪を貰ったみたいですよ。
それってチェギョンも結婚したいってことでしょう?チェギョン・・・お父さんに見せてあげなさい。』
『はい。』

おずおずとチェギョンは両手の甲を上にしナムギルに自分の手を見せた

ナムギルの視線はまず左手の薬指にある小さなダイヤモンドのついた指輪に釘付けになり

その後右手の中指にしている≪青龍の微笑み≫を目に留め大きく目を見開いた

『な・・・なぜチェギョンが≪青龍の微笑み≫を・・・』
『あなた・・・もう四年も前に、チェギョンはミンさんからこれをクリスマスプレゼントとして
受け取っていたんですよ。』
『なんという・・・ことだ。』

両手で顔を覆うナムギル

その様子を固唾をのんで見守っている三人である

そして漸くナムギルが顔を上げた時、その目にはうっすらと涙が光っていた

『解った。先代同士が固く約束したことを、私が反故にすることはできない。
結婚を・・・認めることとしよう。』
『本当ですか?おじさん!!』
『ああ。本当だ。』
『お父さんありがとう!!』
『いいや・・・』

チェギョンの手元に既に≪青龍の微笑み≫があることを知り、ナムギルはやりきれない思いを抱えながらも

どうにか自分の気持ちに折り合いを付けようとしていた



そんな時だった

『パパ~~ママ~~ただいま~~♪』

玄関で驚くほどの大きな声が響き、スリッパの音を轟かせヒョリンとインが到着した

大学に入ってから一度も帰ることのなかったヒョリン

リビングに入ってきたヒョリンは健康的に日焼けし、以前の生まれついてのお嬢様風ではない格好をしていた

『ヒョリン・・・久し振りじゃないか!!ずっと帰らないで・・・』
『ヒョリン元気にしていたの?うんうん。見た目は元気そうだけど、少し痩せたんじゃないの?』
『パパママ・・・私はとっても元気よ。座ってもいいかしら?』
『ああ座ってくれ。イン君もどうぞ座ってくれ。』
『はい。』

ヒョリンとインの登場でシンとチェギョンはソファーの隅に場所を移動した

『それで・・・ヒョリン、卒業を目前にして今回の帰国は一体どんな理由なんだい?』
『パパ・・・そんなに身構えないで。イン・・・』

ヒョリンはインに次の言葉を託した

『あの・・・おじさん、大学を卒業したら帰国します。帰国したらすぐに、ヒョリンと結婚させてください!!』
『はぁ~~~・・・』

明らかに落胆する表情を隠そうともしないナムギル

『パパ・・・インとはもう四年、ほとんど同棲状態だったのよ。今更別々になんか暮らせないわ。』
『だがヒョリン・・・お前の夢はどうなる?世界一のプリマドンナになるんだろう?
結婚したらそんなに自由はきかないんだ。もう少しあとでもいいんじゃないのかな?』

必死に結婚を先送りにしたいと提案するナムギルに、ヒョリンは首を横に振った

『パパ・・・そんな悠長なことを言っている場合じゃないのよ。子供が生まれちゃうわ。』
『あ?』『えっ?』

ナムギルとスンレばかりでなく、シンやチェギョンも一瞬にしてその視線はヒョリンの腹部に向けられた

『ヒョリン・・・あなたまさか!』
『そうなの。ママ・・・今四カ月に入ったところよ。
迷ったの。私の未来の為だと、産んですぐ私をママに託した人の血を引いているのよ。
私も同じ様な事・・・するんじゃないかって怖かった。
でも・・・そうじゃないってことを証明したいの。今はこのお腹の中に居る子を無事産んで、立派に育てるのが
私の生きる目標になったわ。プリマドンナの夢は・・・子供が物心ついてからまた再出発したらいい。
だから・・・どうか認めて!!パパママ・・・』

この家を出て四年という月日が、ヒョリンを人間としていかに成長させたかを目の当たりにした思いの両親

『そうか。イン君・・・君の御両親は賛成してくれたのかい?』
『はい。俺の両親は認めてくれました。』
『だったら・・・私達も許そう。何よりも生まれてくる子供の為に、一生懸命頑張りなさい。
あ・・・そうだイン君!』
『はい。』
『帰国して君はきっとお父さんの会社に入社するつもりなのだろう?』
『いえ・・・俺は次男ですから、会社内で派閥を作る原因にはなりたくないので
事業を起こそうかと思っています。』
『だったら・・・私の会社に来ないかね?』
『えっ?・・・』
『どうやらチェギョンもイ家に嫁ぐ日が近そうだ。そうなると私の会社の跡継ぎがいなくなってしまう。
どうだろう。何れは私の後を継いで貰う心づもりで入社して貰えないか?』
『それは・・・』

インにしてみたら願ってもない話なのだが、やはりヒョリンの立場を考えると快諾もできないインである

『この家は・・・何れ私達が居なくなった時にはチェギョンに譲ろうと思っている。
チェギョンはこの家に余り住んでいないからね。
ヒョリンが一番気に入っている別荘は・・・ヒョリンに譲ろう。どうだい?ヒョリン・・・』
『パパ・・・あの別荘の維持なんか私達の経済力でできる筈がないでしょう?要らないわ。』
『いや・・・私達が居なくなってからの話だ。ずっと先だよ。お前はあの別荘が大好きだろう?』
『確かに好きだけど・・・』
『だったら・・・この条件をのんで欲しい。イン君、ヒョリンと同時に私の会社を引き受けて貰えないだろうか?』
『・・・解りました。一生懸命頑張らせていただきます。』
『そうか。よかった。これで安心したよ。
シン君とチェギョン・・・二人の結婚式はイン君とヒョリンのあとでいいな?
なんたって子供が生まれてしまっては困るからな。ははは・・・』
『解りましたおじさん。従います。』

寂しげな表情を浮かべながらも、どこか安堵した顔のナムギル

四人がリビングから出ていったあと、スンレはナムギルに問いかけた

『あなた・・・あなたの一番気に入っている別荘を、ヒョリンにあげてしまって本当に良いんですか?』
『スンレ・・・よく考えてみなさい。世代交代した時・・・あの別荘は隣り合っているんだ。
チェギョンとヒョリンは年末年始をあの場所できっと過ごすようになる。
ずっと仲の良い姉妹でいられるだろう?』
『あ・・・そういう考えでしたか。さすがですわ。ふふふ・・・』

夫ナムギルがただ会社の跡継ぎを欲さんが為に、おまけのように別荘を付けたのかと勘違いしていたスンレ

夫の考えは自分達が亡きあとも、チェギョンとヒョリンが仲良く付き合っていけるようにと配慮したものだった

いつかそんな光景も・・・きっと見られる事だろう


クリスマスに結婚の決まった二組のカップルは、きっと近い未来のその日に想いを馳せて

幸せな夢を見るに違いない




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皆様~~年内のお話の更新は
今回が最終です。

まだ年賀状も作ってないし、大掃除もまだだし
なにせ明日からDさんがお休みなんですよ~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

後日・・・多肉通信とふぅめる通信
および年末のご挨拶をさせていただきますね❤

でも一応・・・今年も~星の欠片~に足をお運びいただき
どうもありがとうございました❤

感謝感謝です~❤


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