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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 25

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有無を言わさず車に乗せられたシンは、動き出した車の中で母に問い掛けた

『母さん!!一体どこに行くんだよ!』
『シン・・・あなた、大学に合格したらチェギョンさんとお付き合いする約束をしたんですって?』

チェギョンと二人だけの約束の筈・・・それを母であるミンが知っていることに驚きシンはうろたえた

『あぁっ?なぜ・・・それを・・・』
『馬鹿ね・・・そういうことになっているならなっていると、私くらいには報告しておけばいいのに・・・。
ユルがシン家でそれを暴露したそうよ!あなた・・・ユルにその事を言ったでしょう?』
『えっ・・・ユル兄貴が?っつ・・・と言うことはつまり、ユル兄貴はチェギョンを諦めなかったということか。』
『その通りよ。ナムギルさんに≪チェギョンさんとお付き合いしたい≫とお願いに行ったそうよ。』
『それで・・・おじさんはまさかそれを許したのか?』
『してないわよ。だから腹いせのようにユルは、あなたとチェギョンさんの約束を暴露したんでしょう?
シン・・・ナムギルさんは相当ご立腹よ。』
『っつ・・・参ったな。大学に合格してからと決めていたのに・・・。』
『男だったらきっちりこの一件に、けじめを付けなさい。』
『母さんは・・・反対しないよな?』
『反対?する筈ないわ。二人の交際に反対なら一緒に来ないもの。ほほほほほ・・・
いいわね。しっかりナムギルさんを説得するのよ。』
『あぁ。すこし番狂わせだが、おじさんを必ず説得するよ。』
『それでいいわ。じゃあ・・・いざ出陣~~♪』

ミンは安心してアクセルを踏み込んだ



『こんにちは~~♪』

スンレに招き入れられ二人が応接室に入っていくと、チェギョンはナムギルの前に座り

困惑の表情を浮かべていた

『おじさん、俺に説明させてください。』
『シン君、呼びつけて悪かったね。だが君の口からもちゃんと話を聞きたくてね。』
『はい!おじさん失礼します。』

シンはチェギョンの隣に腰をおろし、それからチラとチェギョンに視線を向けた

チェギョンはシンの顔を見て安堵したように少しだけ口角を上げた

『俺達はまだ受験生ですしこの時期に言うつもりはありませんでした。
でも・・・少し時期が早まっただけですので今言わせてください。
大学に合格したら・・・チェギョンと正式にお付き合いをさせてください!!』
『ふむ・・・一体いつからそういうことになったんだね?』
『いつから・・・それを言ってしまうと顰蹙を買うかもしれませんが、正直な気持ちを言います。
チェギョンがこの家の娘だと知る以前からです。』
『だがその時には・・・ヒョリンとの婚約話が持ち上がっていた筈だ。』
『ええそうです。だから俺は自分の気持ちを封印していました。だけどチェギョンが・・・この家の本当の娘だと
知って以来、その封印は解かれてしまいました。
自分の気持ちを閉じ込める必要がなくなったからです。』
『だがシン君・・・同じ家から二度も縁組を進めることはできない。』
『ヒョリンとはまだなんの約束も交わしていなかったじゃないですか。』
『だが・・・君はヒョリンとの縁談を断っただろう?その断られた相手と今度はチェギョンが・・・なんて
世間が許さないだろう。』
『世間?俺は世間からなにを言われようと構いません。』
『君は構わなくても断られたヒョリンの気持ちも考えてくれ。』
『ヒョリンの気持ち?だったらおじさん!!実の娘のチェギョンの気持ちはどうなるんです?
今まで何もかも我慢を強いられてきたチェギョンに、ここでも我慢しろと言うんですか!!』

穏便に説得する筈が、シンはつい感情的になっていく・・・

そんな様子を見兼ねたミンは、シンに助け船を出した

『ナムギルさん・・・元々シン家とイ家の縁組は両家の孫達が一緒になって欲しいという
先代方の遺志があってのことでしょう?シンのお相手は元々ヒョリンじゃなくチェギョンさんなんですよ。』
『だが・・・』

それでも渋い表情を崩さないナムギル

今更許嫁の話を持ち出したところで、通用しないと考えたシンは母の言葉を遮った

『母さん・・・許嫁の話はもうどうでもいいんだ!!
おじさん・・・そんなことは関係なく俺とチェギョンは互いを必要としています。
彼女に今までできなかった事をさせてあげたいんです。その気持ちはおじさんやおばさんも同じでしょう?
俺だったらおじさんやおばさんが出来ない事も、チェギョンにしてあげられます。
縁組とかそういう話は、もっとずっと先の事です。今は堂々とチェギョンと友達以上の関係を築きたいんです。
どうかおじさん・・・おばさん、俺達を認めてください!!』

両膝の上に両手を置き、シン夫妻に向かって深々と頭を下げたシン・・・

ナムギルはそんなシンをじっと見つめ、それから隣で心配そうにシンを見つめている娘のチェギョンに

視線を向けた

そしてチェギョンに問いかけた

『チェギョン・・・シン君はこう言っているが、チェギョンの正直な気持ちはどうなんだい?』

そう問い掛けられたチェギョンは、シンからナムギルに視線を移しきっぱりと言い切った

『お父さん・・・私は今まで男の子とお付き合いなんかしたことがありませんでした。
もちろんそんな時間や気持ちの余裕もなかった・・・。
そんな私なのにシン君は友人達と出掛ける時、いつでも私を気に掛けてくれた。
行けないって解っていても必ず誘ってくれました。
今まで何かを選択する余地などなかった私です。お付き合いする男の子は自分で決めたいです。
お父さん・・・どうか許して下さい。』

シンと共にチェギョンも深々と頭を下げた

そしてずっと黙ったまま頭を下げ続けている

出来る事なら暫くは娘の恋人は自分でありたいと願っていたナムギル

だが娘は立派に女性として成長して、知らぬ間に恋をしていたことを知る

『ふぅ・・・』

がっくりと前に座る二人と同じ様に、ナムギルも項垂れた

そして漸く決心がついたかのように頭を上げると、二人に向かって頷いてみせた

『いいだろう。解ったよ。二人共・・・もう顔を上げなさい。』

ナムギルのその言葉で二人は深く下げていた頭を上げ、ナムギルを見つめた

『二人が同じ気持ちなら反対はできないだろう。認めてあげよう。
ただし・・・二人が公然とお付き合いを始めるのは、ヒョリンが再び海外に旅立ってからにしてくれないか?』

確かに合格発表の後すぐ交際をスタートさせるのと、ヒョリンが旅立ってからではかなりの開きがある

だがシンにとっては渋々ながらも貰えた承諾・・・その条件をのまないとは言えない

『解りました。』
『チェギョンもそれでいいかい?ヒョリンはああ見えて、シン君との縁談に乗り気だった。
それを諦めたヒョリンの気持ちも考えてやってくれないか?』
『もちろんです!お父さん。そうします。』
『そうと決まったらシン君もチェギョンも、受験に向けて勉強をしなさい。
もし万が一不合格の場合は・・・この話は無かった事にするから、そのつもりで頑張りなさい!!』
『『はい!』』

シン家で和やかにお茶をいただいた後、ミンとシンは自宅に戻っていく

なんとかナムギルを納得させたことで二人共安堵の表情を浮かべていた

(シンったら・・・知らない間に随分大人になったこと♪
二人が好き合っている事も解ったし、先代はさぞかし安堵したことでしょう~♪
私の出る幕・・・なかったわ。おほほほほ・・・ちょっと活躍の場が少なくて残念だわ。)

ミンがそんなことを思っている時、シンは胸の中で合格後の事を考えていた

(っつ・・・合格発表の後にはクリスマスも控えているんだ。
その時はまだ友達のままだなんて・・・はぁっ・・・
まぁ、物は考えようだ。今までだって友人達とのクリスマスパーティーが開かれたしな
今年はきっとチェギョンと一緒に過ごせる。)

友人達との集まりにチェギョンを連れ出せる嬉しさに、シンは胸を躍らせた

たとえ形は友達でも、心はすっかり恋人気分なのは事実

ヒョリンの傷心をそれ以上深くしないためにも、ナムギルの出した条件をのむことにした二人だった





そしてミンとシンが去って、チェギョンも自室に引き上げた頃・・・

ナムギルの元に電話が掛かってくる

『旦那様・・・カン様と仰られる方からお電話です。』
『カン?解った。かわろう。』

ナムギルはその電話を取った

『はい。シン・ナムギルですが・・・』
『シン社長、ご無沙汰しております。カン電子のカンです。』
『おぉ~カン社長!!お元気でしたか?』
『ええ。シン社長もお元気そうで・・・。』
『はい。ところで今日は一体・・・どのような・・・・?』

ナムギルが訝しく思ったのも無理はない。カンとは家に電話が掛かってくるほど親しい間柄ではない

仕事がらみで数回顔を合わせた程度の人物だ

『実は・・・うちの次男のインが、シン家のヒョリンさんと一緒に海外に行きたいと言い出しまして・・・』
『えっ?あの・・・それはどういうことでしょうか。
ヒョリンは確かに海外の大学に行くと決めましたが、カン家のイン君と一緒に行くだなんて一言も・・・』
『あ・・・ご存知ありませんでしたか。あの・・・こういう言い方をしては失礼ですが、経済界に広まった噂は
私の耳にも届いておりまして・・・≪どこの馬の骨とも解らない≫娘と、海外に行くなどとんでもないと
猛反対しているところです。』

ナムギルは愕然とした。ヒョリンが急に海外の大学に行きたいと言い出したのには、共に留学する相手が

いたからなのだと初めて知ったのである

そしてそうまでしてこの家を出て行こうとする理由は、やはりそのプライドの高さゆえ実の娘と同居することが

我慢ならないのだろうと察した

『カンさん・・・噂を聞いているのでしたら、そう考えるのも無理はないと思います。
ですが・・・ヒョリンは血こそ繋がっていませんがこの家の娘です。
縁があってこの家に来た娘です。なのでヒョリンの事に関してはすべて私が責任を負います。
≪どこの馬の骨とも解らない≫などと仰らずに、どうかイン君の気持ちを信じてやってください。
ヒョリンは確かに我儘な子ではありますが、私達夫婦が18年間大切に育てて来た娘なんです。
どうかお願いです。二人を行かせてやって貰えませんか?』
『そう・・・ですか。シン社長の出方次第では断固反対を貫くつもりでおりましたが
シン社長にそこまで言われてしまっては・・・反対できませんね。
幸いインは次男ですから、会社の経営の事など気にせずに自分の道を選ぶ自由があります。
解りました。二人を行かせてあげることにしましょう。』
『カン社長・・・ありがとうございます。気持ちを汲んでくださり感謝します。』

ひとまずカン・インの父を説得できて安堵するナムギル

カン家に頭を下げることになっても、親としてヒョリンにしてあげられる事はすべてしてあげよう

それが今後苦労を背負わねばならないヒョリンへの最大限の愛情のように、ナムギルには思えるのだった



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本日のナムギルパパは・・・非常にお疲れのご様子
二人の娘が・・・同時に手を離れそうな予感で
寂しくて泣いちゃうかもね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

ところでさ・・・奇●后の王様と
霜●店の王様って・・・同じ役者さんだったのね。
今日気がついたわ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!





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