三人でイ家の中に入りながら、ミンはチェギョンが頬を染めて動揺していることに気がついた
(チェギョンさんたらなぜ・・・あんなに頬を赤くするのかしら?
シンが何か言った?ん~~手当てして貰ったって言っていたわね。
ん~~?なんだか怪しいわね。おほほほほ・・・
まっいいわ。今はそっとしておきましょう~♪)
三人でお茶を楽しんだ後、ミンのマナーレッスンが始まる
『あらシン?あなたも見ているつもり?』
『あ?あぁ俺も何か参考になるかと思って。』
『だったら私服に着替えて来て頂戴!制服がシワになるでしょう?』
『あぁ、じゃあ先に着替えて来るよ。』
シンがリビングから出て行った後、ミンはチェギョンを誘いリビングの入り口に立った
『じゃあまずは入場から。私をスンレさんだと思ってついて来て♪』
『はい。』
しゃなりしゃなりと歩くミンの後を、チェギョンもその動作を真似して歩く
『あ!!チェギョンさんダメよ。そんなに辺りをきょろきょろ見渡しては!!視線は私の足元を見るような
気持ちで口角は上げてね。』
『はい!!おば様こんな感じですか?』
『いいわよ~~♪その調子でね。』
『はい~♪』
『じゃあ次はご挨拶ね。ナムギルさんやスンレさんがチェギョンさんを紹介してくれるから、
その後思うまま挨拶してみて♪じゃあ行くわよ~♪
≪この子がうちのチェギョンです。以後お見知りおきを。≫さぁ続けて・・・』
『シン・チェギョンです。よろしくお願いいたします。』
深々と頭を下げたチェギョン。ミンはそこでもダメ出しをする
『チェギョンさん。お辞儀する角度が深すぎるわ。ちょっと軽く会釈する程度でいいのよ。
その時微笑むのも忘れないでね。』
『これでいかがですか?』
ミンの言う様に会釈し満面の笑みを浮かべるチェギョン
(あら・・・ダメよ。そんな愛らしい顔をしちゃあ・・・経済界の若い男に目を付けられてしまうわ!!)
『ちぇ・・・チェギョンさん、笑顔はもっと薄く微笑む程度でいいの。あまり微笑みを強調すると品がないわ。』
思ってもいない事をミンは口走る
品がないどころか目が離せなくなる笑顔を、余り世間に振り撒いて欲しくない・・・
そんな願望から出た言葉だった
着替えを済ませたシンがリビングに入って来る
シンはソファーに深く座り足を組むと、二人のマナーレッスンを見守っていた
『次は飲み物を受け取る時の作法ね。大概が足のついたグラスに入ってくるわ。
アルコールが入っていない物を受け取ってね。』
『はい。』
『グラスの足の上辺りを右手の指先で軽く持つの。左手はグラスの底に添えてね。』
『はい。こんな感じですか?』
チェギョンはミンに言われた通りにやってみる
『とても上手よ。もし喉が乾いていても一気に飲み干す様な真似はしないのよ。あくまでも上品に・・・』
『はい。』
イ家で和やかにマナーレッスンが遂行されている頃、シン家の自室に居るヒョリンは、
声も掛けずに家に帰ってしまったインに電話を掛けていた
『イン!!酷いじゃないの。私に挨拶も無く帰るなんて・・・』
『悪かったヒョリン。お前の家庭の事情を詳しく聞いたよ。』
『えっ?誰から?』
『うちの親・・・』
『そう・・・』
『お前の言っていたことは間違っていないが、随分脚色されていたな。』
『私はそう感じたのよ。でも・・・それでもインだけは私の味方になってくれるでしょう?
シン家の娘じゃないって知ったら、私の崇拝者たちはみんな居なくなったわ。
まさかインまで私に背を向けるつもり?』
『まさか・・・俺はヒョリンの味方でいるよ。何があってもずっと・・・』
『安心したわ。少し落ち込んでいたの。もう誰も私の周りにはいないのかなって・・・』
『俺がいる。ヒョリンには俺がいる。』
『良かった。』
いつも女王気取りで仲間の中心にいなければ気が済まなかったヒョリン。そのヒョリンの弱気な言葉に
インは胸を痛めた
たとえそれがポーズで自分を騙そうとしていても、自分だけは知らない顔をしてだ騙されてやる・・・
そんな盲目的なヒョリンへの想いをインは抱いていた
インと電話で話し少し気分が浮上したヒョリンは、リビングに居るスンレの元に向かった
『あら?ママ・・・チェギョンは?部屋に居るの?』
『いえ、お友達の家に行くと言っていたわ。お夕飯に間に合わないかもしれないと言っていたから
帰りは遅くなると思うわ。』
『そう。なんだかいい気なものね。お嬢様だとわかったら遊び呆けるなんて・・・』
決して遊び呆けているのではない
自分達にパーティーで恥をかかせない為に、イ家でレッスンを受けている事も重々承知しているスンレである
そしてスンレはヒョリンのその言葉が癇に障ったようだ
『いいじゃないの。チェギョンは今までお友達と遊ぶこともできずに、学校が終わるとアルバイトをしていたの。
少しくらい羽を伸ばしても・・・罰は当たらない筈よ。
あなたに・・・チェギョンを咎める事なんかできやしないわ。』
『・・・』
学校でもシン家でもなんだか自分が迫害されている様な気がして、ヒョリンはさらに
被害者意識を募らせるのだった
『あ・・・おば様、そろそろ私、帰らないと・・・』
『えっ?折角気分が乗って来たのにもう帰っちゃうの?』
『はい。おば様のお宅ももうお食事時ですし・・・』
『あら~~食べて行けばいいのよ。』
『お母さんが・・・私の分を取っておいてくれてあるので帰ります。』
『そうなの~?残念だわ・・・じゃあシンに送らせるわね。』
『あ・・・おば様、まだ明るいので大丈夫です。』
『シン家に着く頃にはすっかり暗くなってしまうわ。シン~ちゃんとチェギョンさんを送り届けるのよ。』
『あぁ解ったよ。母さん・・・』
二人並んでイ家の私道を走りだしたシンとチェギョン
シンは自転車を漕ぎながらチェギョンに話しかけた
『なあ・・・今日は緊張でもしていたのか?』
『えっ?なぜ?』
『笑顔がぎこちなかったから・・・』
『えっ?うそっ・・・ぎこちなかった?』
『あぁ。なんか固いって言うかいつものチェギョンの笑顔じゃなかった。』
『あ・・・それはね、満面の笑みって奴をやってみたら、おば様に≪もっと薄く微笑む程度でいい≫って
言われちゃって・・・その通りにしてみたけど変だった?』
『あぁ。なんかぎこちなかったな。』
『そっか~~微笑む練習なんかしたことないからなぁ。』
『いつも通りでいいだろう?』
『でもぉ・・・おば様に叱られちゃう。』
『俺がフォローしてやる。』
『ホント?じゃあ安心していようっと♪』
『ところで・・・』
『ん??』
『お前の≪傷の手当て≫についてだけど・・・』
『ひっ・・・ひぃ~~//またその話を蒸し返すの?///』
『いや・・・誰にでもあんな事するのか?と思って・・・』
『しっ・・・しません~~///』
『だったらいいが。他の奴にあんな事するなよ。』
『///しないって~~///』
『家に着いたな。じゃあまた明日な。』
『うん。また明日。送ってくれてどうもありがとう~♪』
シンが後ろを振り返り走り去っていくのを見送って、チェギョンもシン家の敷地内に入っていく
するとその後を追う様に再び門扉が開き、車が敷地内に入って来る
(あ・・・お父さんが帰って来た。)
『チェギョン・・・遊びに行っていたのかい?』
『はい。お父さんお帰りなさい♪』
『ああ、ただいま。早く家に入って食事にしよう。』
『はいっ♪』
チェギョンとナムギルは共に愛車を駐車スペースに停め、家の中に入っていった
『お帰りなさいませ。』
メイドに迎えられ二人揃ってリビングに入っていく
『母さんただいま。』
『お母さん、今戻りました~♪』
『まぁ・・・二人共一緒だったの?すぐに食事にしましょう。』
着替えを済ませ食卓に座ったナムギルは、チェギョンとスンレ・・・そしてメイド達で食卓の上に料理を運ぶ姿を
嬉しそうに眺めている
『母さんもまだだったのかい?』
『ええ。もう帰ってくる頃かと思って待っていましたわ。』
『ヒョリンは?』
『ヒョリンはもう食事を済ませて自分の部屋に行きましたわ。』
『そうか。じゃあチェギョン食事にしよう。』
『はい!いただきま~~す♪』
ナムギル・スンレ・チェギョン・・・其々に食事に手を付け始める
『チェギョン・・・学校はどうだったかね?』
『あ・・・なんとなく皆が受け入れてくれたみたいです。』
『そうか。名前が変わって意地悪される様なことがあったら、私に相談しなさい。』
『そんな~~大丈夫です。あ・・・今日のサラダのドレッシング絶品~♪』
『あら♪私のお手製よ。』
『お母さんの・・・お手製・・・美味しい筈です♪』
幸せな食卓・・・だがヒョリンがいなければいないで、なぜか心配になってしまうチェギョンだった
やだわ・・・上流階級のマナーなんて
存知あげなくってよ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
軽くこんなところで
許してたもれ❤
存知あげなくってよ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
軽くこんなところで
許してたもれ❤