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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 20

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それから一カ月の間・・・チェギョンはイ家でマナーのレッスンを受けた

最終のレッスンはシンをパートナーにしてのダンスの特訓だった

もちろんチェギョンにはダンスの心得などない

今までダンスを覚える必要性も無ければ、それとはまったく無縁の世界に生きて来たのだ

当日はもちろんヒョリンも参加する。経済界の若き後継者たちが競ってダンスを申し込む女性の座は

ここ数年ヒョリンが守ってきたのだ

ここで後れを取るわけにはいかないと、ミンはそれは念入りにチェギョンの指導に当たる

時にはスパルタであり・・・そして時には褒め殺しのセリフを並べ立てたりしながら

なんとか一カ月でチェギョンをパーティーに出席するにふさわしいレディに仕上げたのである

だが・・・その頃にはシンも不思議とミンと示し合せたかのように指導方針を同一とし、 

≪ダンスをする時には相手の目を見るな≫とか・・・

≪そんなに身体を密着させず、相手と一定の距離を保つのが望ましい≫だとか・・・いい

挙句の果てにはダンスのレッスンの最中に『おい!舐めるなよ!!』などとチェギョンを動揺させることを

言うものだから、チェギョンはその度に頬を赤く染め、シンから慌てて一定距離を置くようになった

いわゆる≪パブロフの犬≫作戦である

パーティーでダンスを申し込まれた際、相手といい雰囲気にならせないが為の刷り込みなのである

基本はしっかり押さえながらもメチャクチャ自分達に有利な指導をするミン・シン親子なのであった


レッスン最終日・・・ミンは敷地内のトランクルームにチェギョンを連れて行き、その中にぎっしりと入っている

ドレスを見せ話しかけた

『これが私のパーティー用ドレスよ。』
『すごい!!おば様すごいですね。ちょっとした高級ブティック並みです~♪』
『あなたもすぐに沢山のドレスを持つようになるわ。』
『まさかぁ・・・』
『何を言っているの?ヒョリンなど私以上に持っている筈よ。あの子は一度着たドレスは着ないから・・・』
『えっ?こんな高そうなドレスを一度着るだけなんですか?』
『そう。あの子はそうして今まで来たの・・・』
『じゃあヒョリンのドレスルームにはこれ以上のドレスがあるということですか?』
『ええそうよ。あなたもドレスを購入しなくちゃね。近々スンレさんと一緒に買い物に行きましょう♪』
『あ・・・でも・・・ヒョリンがそんなにドレスを封印しているなら、私はそれを作り直して
リサイクルした方がいいんじゃないですか?』
『チェギョンさん!!』

いきなり声を荒げるミンに、チェギョンは驚き背筋をピンと伸ばした

『はいっ!!』
『あなた・・・ここに何をしに来ていたの?パーティーに出席できるマナーを習得しに来たんでしょう?
プライドを持ちなさい!!ドレスは女のプライドよ。あなたもシン家の娘なら堂々と新しいドレスを
仕立てて貰いなさい!』
『あ・・・はい。ごめんなさいおば様・・・つい習性でリサイクルなんて・・・言っちゃいました。』
『いいのよ。そういう謙虚なところがあなたの長所よ。でもね・・・そこは譲る所じゃない。
スンレさんの気持ちも考えて行動しなくちゃダメよ。解ったわね?』
『はい!おば様にはなにからなにまで教えていただいて・・・本当にありがとうございました。』

ミンにパーティーでのマナーのレッスンを、シンにシン家の娘らしくなる方法を教えて貰いに来ていたのだが

二人同時にそれを教えて貰った様な形のチェギョン

シン家に戻る手伝いから始まりなにからなにまで、この二人には世話になり

感謝の想いを募らせるチェギョンだった





その週の休日・・・ミンは車を走らせシン家に向かった

さすがにチェギョンだけにドレスを新調してあげたいと言えないスンレは、ヒョリンも誘うことにした

当然ながらチェギョンにヒョリンが張り合う姿を見たくないと思ったシンは、

買い物に付き合わず家に残ることとなった

ミンの車は助手席にスンレを乗せ後部座席に二人の娘を乗せ走り出した

『スンレさん・・・今日はどこのお店に行こうかしら・・・』
『そうね・・・あ!あのお店にしましょう。』

スンレがそう提案した時だった

後部座席に座るヒョリンが、運転席に身を乗り出しミンに話し掛けたのだ

『おば様!!私もう・・・ドレス決めて来ちゃったんです。いつも私が購入するお店にお願いできます?』
『そう?解ったわヒョリン・・・』

そう口ではいいながらも(私は運転手じゃないのよ!!)と心の中で毒づくミンであった

やがて車は高級ショッピングタウンに到着し、駐車場に車を止めた四人はその界隈でも

一番高級なドレスを扱う店に辿りついた

『ママ~~これよこれ!!』
『まぁ・・・素敵なドレスね。』

ウインドウに飾られたパーティードレスは、誰もが足を止めるほど鮮やかな真紅で

ヒョリンの≪自分の存在を誇示したい≫という願望がありありと窺えた

『じゃあヒョリン、試着してみましょう。』
『あ・・・ママ、もう試着は済んだわ。私にぴったりだったの。』
『じゃあこれに決めましょう。』

そう言いながら店内に入っていったスンレとヒョリン・・・

ミンとチェギョンはまるで付属品のようにあとからついて行く

『あ~ママ!!このネックレス素敵ね。このイヤリングとお揃いだわ。
やはりこの深紅のドレスにはこの位華やかな物じゃないとダメだわ。これも・・・いいでしょう?』

有無を言わさずショップの店員にアクセサリーを手渡すヒョリン

その合計金額は・・・チラとみただけのチェギョンが腰を抜かしそうな金額だった


『じゃあ・・・私は用事があるのでこれで失礼するわ♪』
『えっ?ヒョリン・・・あなた、どこかに出掛ける用事があったの?』
『ええ。インと逢う約束をしているから。じゃあここで・・・』

自分の欲しい物だけ要求し手に入れた途端、ヒョリンはその場を去っていった

あとに残された三人は呆気にとられ、溜息を吐いた後歩き始めた

『チェギョンのドレスはこのお店じゃない方がいいわ。』
『そうねスンレさん、チェギョンさんにはこのお店のドレスは好みじゃないと思うわ。』

その通りだと頷くチェギョンは黙って二人の母の後に続く

『ここに入りましょう。』

スンレとミンは微笑み合いながら、そのドレスショップに入っていく

先程の店とは違った趣だが、チェギョンには十分すぎるほど高級品を扱う店であることがわかった

『さぁチェギョン・・・ドレスを選びましょう。』
『はい!!』

気後れしたり値段を気にしたり・・・そういうことはしない様にと、ミンからきつく言われたチェギョンは

一目見て気に入った物を手に取ると鏡の前で自分に当ててみる

『これなんかいかがでしょうか。長さも足首までだし・・・ダンス初心者でもドレスの裾を踏む様な失敗を
しなくてすみそうです。』
『まぁ・・・素敵じゃないの♪』
『ちょっと試着してみたら?チェギョンさん・・・』
『はい!ではそういたします♪』

そして試着をしてみるチェギョン・・・薄紅色のそのドレスは胸元がVにカットされているがレースをあしらい

胸元を隠すようになっているので決して下品ではない

だが・・・

『ひ・・・ひぃ~~~!』

突然チェギョンが悲鳴を上げ、スンレとミンはその声に驚き試着室を慌てて開けてみる

『あら・・・とってもよく似合っているじゃない。』
『本当に・・・素敵なドレスだわ。』
『いや・・・あ・・・あの・・・これが・・・・』

チェギョンは二人に後ろ姿を見せた

ドレスはバックスリットになっており、太腿の半分ほどが歩く度に見え隠れする

『まぁ・・・セクシー♪』
『本当だわ。いいんじゃないの?これ・・・』
『えっ?あ・・・でも・・・あのっ・・・品が・・・』
『下品になどならないわ。大丈夫よ。』
『そうよチェギョンさん。折角綺麗な脚をしているんだから見せなくっちゃ♪おほほほ~~♪』
『あ・・・本当に・・・大丈夫ですか?』
『『大丈夫よぉ~~♪』』

二人の母に後押しされチェギョンは一目惚れしたそのドレスに決めた

『チェギョン・・・アクセサリーはどうする?』
『あ・・・要らないです。まだ中身が育ってませんから・・・くすくす。』

いけないと思いながらもやはりチェギョンはそのドレスの金額を見てしまったのである

そのドレスに合わせたハイヒールだけで・・・付属品はもう充分だった

(あとは・・・まだ育ってないけど中身で勝負!!)

何に勝負するのか分からないが、一人気合を入れるチェギョンなのであった




その夜遅く・・・スンレはチェギョンの部屋を訪れた

『チェギョン・・・もう寝てる?』
『いいえ。まだ起きています~♪』
『良かった。ちょっとお邪魔していいかしら?』
『はいっ♪』

チェギョンの部屋のドアを閉め洋服ダンスを開けたスンレは、今日買って来たばかりのドレスの首元に

パールのネックレスを飾って見せた

『チェギョン・・・あなた、アクセサリーを買わなかったけど、これなんかどうかしら?
お父さんからあなたを産んだお祝いにいただいた物なんだけど・・・』
『えっ?そんな大切な物をいいんですか?』
『あなたにあげるわ。』
『ありがとうございます。すごく嬉しいです♪大切にします。』

スンレにとってみれば今は本当の娘が帰って来たのだ

このネックレスをその娘が身につけてくれることを考えると、胸が震えるほどの喜びだった



そうして運命の分かれ道のパーティーの日は刻一刻と迫るのだった


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次回はチェギョンの社交界デビューです❤
一話では終わらないかもしれません。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

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