シンに不満をぶちまけて興奮冷めやらぬまま教室に戻っていったインは、机に座り右手の拳を
左手でさすりながら少し痛む拳を見つめていた
そんなインにチャン・ギョンは屈託なく話し掛けて来る
『イン~♪シンはチェギョンの教室にいただろう?』
『ああ。』
『あれっ?イン・・・その手、どうしたんだ?』
『ああこれはちょっと・・・』
『まさかと思うけどシンを殴ったの?』
『掠った程度だ。』
『なぜだよ。なぜお前にシンを殴る資格がある?』
『俺にはシンを殴る資格があるだろう?俺がヒョリンを好きな事を知っていて、ヒョリンにあんな仕打ちだ!
俺が好きな女を冒涜し、掌を返したようにチェギョンに乗り換えるなんて、到底許せる話じゃない!!』
怒りに顔を染めて訴えるイン・・・ギョンはそんなインに窘めるようにいい含める
『あのさイン・・・お前シン家の事情をちゃんと知ってるの?』
『ヒョリンから聞いた。』
『ヒョリンから聞いただけ?』
『ああ、俺にはそれがすべてだ。それ以外は必要ない。』
『(っつ・・・完璧にヒョリンに毒されていやがる。)
あのさ・・・イン。それじゃあ片手落ちだって。どうせヒョリンの事だから、お前に泣きついたんだろう?』
『ああ。頼りのシンにさえ拒絶されているんだ。俺が味方になってやらないくてどうする。』
『家に帰ってご両親に聞いてみなよ。ご両親は知っている筈だよ。もう経済界にも噂は広まり尽くしたからね。
今回の事件の首謀者は誰か知ってる?』
『もちろん知っているさ。ヒョリンを産んだ人だろう?』
『そう・・・利己的な考えでヒョリンとチェギョンを入れ替えたのはヒョリンの生みの母だ。
ヒョリンは今までどう生きて来た?贅沢で我儘で・・・そう言う印象はなかったか?』
『それも魅力の内だろう?』
『(あばたもえくぼかよ!)じゃあ・・・その半面チェギョンはどうだった?』
『あ・・・チェギョンは・・・』
『同じグループの中に居ながら、チェギョンはいつだって遊びには参加しなかっただろう?
いや・・・それさえもできなかったんだよ。』
『それはヒョリンのせいじゃない!』
『ヒョリンのせいじゃないにしてもだ!!その間チェギョンはずっと普通の女の子らしい楽しみも知らず
必死に生きて来たんだぞ!』
『・・・・』
『シンの事だってそうだ!確かにシンは夏休み前までは必死にヒョリンを受け入れようと努力していた。
だけど知ってたか?俺達の誰もが、遊びに行くのにチェギョンを誘わなくなっても、シンだけはいつも
断られることを知っていながらチェギョンに声を掛けていた。これがどういう意味か解るか?』
『チェギョンを・・・気にしていたってことか?』
『俺はそう思ってる。以前はヒョリンとの婚約を控えた身だったから抑制してきたかもしれないけど
もう待ったなしだろう。シンにしてみれば・・・チェギョンを堂々と誘うのにもう何の障害も無いんだから!!
そんなシンが今回の事件の発覚に関わって来たんだ。チェギョンに親身になるのは当然だろう?
ヒョリンとのことは元々許嫁だから仕方がない・・・そんな風に俺には見て取れたけど?
お前にはシンがヒョリンを弄んだように見えていたか?』
『いや・・・』
『ヒョリンの口車に乗せられて友情まで壊すな!少しは公平な気持ちになって考えろ!
もう二度とシンに手を出すなよ!』
『解ったよ・・・』
鼻息も荒くギョンがインの元を離れた時、教室の扉を開けシンが戻って来る
ギョンはすかさずシンの元へ駆け寄り、そして唇の左端が切れていることに気がつき心配そうに話しかけた
『シン・・・どうしたの?その傷・・・大丈夫?』
もちろんインに殴られたことを知っていたギョンだったが、敢えてそう尋ねた
『あぁ大丈夫だ。こんなのなめ・・・(舐めておけば治ると言って、ギョンにまで舐められたら大変だ!)
ただの・・・かすり傷だ。』
『そう?絆創膏貼っておく?』
ギョンはポケットから取り出した絆創膏をシンに手渡そうとする
『いや・・・平気だから。』
シンは唇の左端を隠すようにして席に戻る
(てかシン・・・な~~んで殴られた事を聞いただけなのに、顔が赤くなるんだ?変なシン・・・)
ギョンはシンがチェギョンから手厚い手当てを受けたことなど知らず、首を傾げると自分の机に戻っていった
シンが映像科に戻った頃、チェギョンは隣の席のガンヒョンに名前が変わった経緯を追及されていた
『つまり・・・チェギョンは本当はシン家の娘で、ヒョリンと入れ替わったってこと?』
『うん。そんな事情・・・』
『じゃあ・・・アンタの母親だった人は、赤の他人だったってわけ?』
『そうなんだ・・・』
『なるほどね~それで納得がいったわ。アンタ・・・小学校の頃、運動会にも親が来ていなかったでしょう?』
『えっ?気づいていたの?ガンヒョン・・・』
『気づいていたわよ!!人に隠れるようにしてお弁当食べてるアンタ・・・印象的だったもの。』
『そっか・・・ガンヒョンは知ってたんだ。』
『シン家はどう?』
『どうって?』
『アンタの本当の両親なわけでしょう?優しくしてくれている?』
『うん!!すごく優しい両親だよ。自転車買って貰っちゃった~洋服も一杯・・・。
でも、その分ヒョリンの事が気にかかるんだ。』
『ヒョリン?アンタね・・・アンタをこんな目に遭わせた人の娘よ!何を人のいい事言ってんの!!
もっとアンタは堂々としていたらいいのよ。≪私が本当の娘だ!≫ってね・・・
どうせアンタの事だから家に帰れば、ヒョリンの我儘に振り回されているんでしょう?』
『そんなこと・・・ないよ・・・』
そんなことないと言いながら、やはり気持ちは穏やかではないチェギョンである
ヒョリンが癇癪を起こす度に胸が痛む。自分が悪いわけでもないのに、自分が悪い事をした様な気がするのだ
早くこの環境に慣れて、シン家の娘らしくならなければ・・・そう思うチェギョンだった
姓が変わっただけで周りの目も変わって来る
シン家の娘だという事実がこれほど自分に大きな影響を与えるとは思ってもいなかったチェギョンである
今まで話し掛けても来なかった人から、気軽に挨拶を受けたり戸惑うことも多いチェギョンだったが
なんとか新学期初日を終えヒョリンと共に迎えの車に乗り込むとシン家に戻っていく
隣に座ったヒョリンはずっと無言のままで、機嫌の悪さを漂わせる
チェギョンはそんなヒョリンに敢えて話し掛けることはせず、黙ったまま家に帰りついた
家に帰りついたチェギョンは自室に入り、制服を脱ぎ自転車に乗るのにふさわしい格好に着替えると
母の元を訪れた
一応母スンレにはイ家に通う事を話しておきたかったのである
『お母さん・・・あの・・・』
『あら、チェギョン出掛けるの?』
『はい。あの・・・ミンおば様からパーティーの事を聞いたんです。おば様がマナーのレッスンをしてくださると
仰るので暫くイ家に通おうかと思います♪』
『そう。それはいい考えね。じゃあ車を出させるわ。』
『いえっ!!お父さんに買って貰った自転車がありますから~それで行って来ます。』
『えっ?イ家まで自転車で行くのは遠いわ。それに帰りは暗くなってしまうから危ないでしょう?』
『あ・・・シン君が送ってくれるので大丈夫です。あの・・・お夕飯の時間に戻れない事もあるかもしれませんが
帰ってからいただきますので、私の分・・・取っておいてください♪』
『ふふふ・・・心配しなくてもちゃんと取っておくわ。』
『じゃあ!お母さん行って来ます。ヒョリンにはお友達の家に遊びに行ったと、言っておいてください。』
『解ったわ。行ってらっしゃいチェギョン。』
正直を言うとヒョリンと食卓で顔を合わせずに済むのは、チェギョンにとって非常に嬉しいことだった
まるで重箱の隅をつつくようなヒョリンの干渉は、チェギョンにとって決して居心地のよいものではなかった
今日もパールピンクのポル●ェ号を飛ばしてチェギョンはイ家に駆けつける
インターン越しに応対してくれtらメイドは、すぐにその門扉を開けチェギョンはイ家の屋敷の前で自転車を降りた
『こんにちは~♪』
『いらっしゃいチェギョンさん。』
丁度その時シンが帰宅したようだ
『ただいま。』
『あらっ!!シン・・・どうしたの?その顔・・・』
『あぁ・・・ちょっとな。』
『手当てしなくっちゃ・・・』
『チェギョンがが・・・手当てしてくれたから大丈夫だ。なっ!チェギョン・・・』
『う・・・///はい~~!!///』
思わずとってしまった行動に、今更ながらに赤面するチェギョンであった
しばらくシン君から<ぺろり>をネタに
苛められそうですね~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
苛められそうですね~~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!