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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 6

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チェギョンとの親子鑑定結果を手にし、会社に戻っていったシン・ナムギルは自分の部屋の机に辿りつくと

両手で顔を覆った

(やはりあの子が・・・私達の本当の娘。なんてことだ!なぜこのような事が起こったのだ!!
実の娘にあの様な大変な想いをさせていたなんて・・・。
そしてヒョリンに・・・なんと告げたらよいのだ・・・)

ついこの間まで実の娘ではないと疑う余地などなかったヒョリン

目に入れても痛くないほどの可愛がりようだったナムギル・・・

だが、真実を突きつけられ我に返った時・・・ヒョリンに対して違和感を覚えることが多いのに気がついた

金に糸目を付けず好きな事は何でもやらせて来た

そのヒョリンの強欲さは果てがなかった

短期海外留学中でもどれだけの仕送りをしてきた事か・・・

(そう育ててしまったのは・・・私達なのか・・・)

それに比べて実の娘は実につつましい生活を自分の力でやりくりしている

アルバイト先での評判も上々。チェギョンの笑顔見たさに▼■食堂に通うサラリーマンが多いのも頷ける

(だが・・・このままにはしておけない・・・)

ナムギルは電話を手に取ると妻であるイ・スンレに電話を掛けた

『母さん・・・』
『あらあなた、こんな時間に珍しいですね。』
『ああ。今夜・・・外で食事をしないか?』
『えっ?お食事ですか?』
『少し遅い時間になってしまうが、一緒に行きたいお店があるんだよ。』
『解りました。迎えをお待ちしていますわ。』

シン・ナムギルはチェギョンとヒョリンのことで頭がいっぱいの状態で、なんとか仕事を済ませ

それからスンレを迎えに行った



夜9時を回った頃ナムギルは▼■食堂の前に立っていた

『あなた・・・お食事ってこのお店ですか?』

驚いて目を丸くするスンレ・・・もちろんミンからの情報でチェギョンがその店でアルバイトをしていることは

知っていた

だが夫であるナムギルまでもが知っているとは思いもしなかったのである

『ああ。とても美味しい定食を出してくれる店なんだ。それに何より店員さんの感じがいい・・・』

そうスンレに告げ店の扉を開けたナムギル

中から元気の良い声が響く

『いらっしゃいませ~~♪あ!こんな時間に珍しいですね。お連れ様もご一緒ですか?どうぞこちらへ~♪』

すっかり顔馴染みになってしまったナムギルを笑顔で迎え、席を案内するチェギョン

だがナムギルの後から入って来た≪連れの女性≫がイ・スンレである事を知り、驚愕の表情のまま立ち尽くした

『あっ・・・』

つまりこのところランチタイムになると現れる様になった男性が・・・イ・スンレの言うところの≪主人≫であると

悟ったからである

そのまま動けなくなっているチェギョンにナムギルは笑顔を浮かべ話し掛けた

『そこに掛けてもいいかい?』
『あ・・・はいっ!!すぐにお水をお持ちいたします。』

チェギョンは早足で二人分の水を取りに行く

その姿を見つめながらイ・スンレはナムギルに問い掛けた

『あなた・・・ここに通ってらしたんですか?』
『ああ。実によく気の回る気立てのよい子だ。』
『驚きました。ふふふ・・・』

スンレはこの食堂に通い詰めていたナムギルが、自分の素情をチェギョンに明かそうとした理由は

恐らく親子鑑定の結果が出たからだろうと判断したようだ

チェギョンは慌てて水の入ったコップを二人の前に置き、相当戸惑った様子で問い掛けた

『あ・・・ご注文は・・・』
『あ~いつもの≪おすすめ定食≫を二つ頼むよ。
それと・・・ここのアルバイトが終わってから少し話せるかな?』
『あ・・・はい!大丈夫です。』

二人にぺこりと頭を下げ、チェギョンは仕事に戻った

いつもより緊張している感じはあるが、それでも仕事帰りのサラリーマンに笑顔を振りまき頑張っている姿は

二人の胸を熱くした

『まだ高校生だというのに・・・大した働き者だ。』
『本当に・・・良く働く子ですね・・・』
『このところずっと見てきたが・・・とても胸が痛む。今までできなかった事をすべてしてあげたいのだ・・・』
『はい。』

チェギョンは二人の前に≪おすすめ定食≫を運び、再び頭を下げた

『どうぞごゆっくり召し上がってください。』
『ああ。食事が済んだら店の前で待っているよ。』
『はい!!』

二人はその店の決してご馳走とは言えない≪おすすめ定食≫を、美味しそうに食べた

ナムギルに至っては漸く味わって食事が出来る気分だっただろう

この店に来る度にチェギョンの姿に胸を痛め、チェギョンの笑顔に胸を締め付けられ食べた気は

とてもしなかったのだから・・・



夜10時少し過ぎ・・・後片付けを済ませたチェギョンは店の裏口から出て、店の前に向かう

シン・ナムギルとイ・スンレ夫妻はチェギョンの姿を見て安堵する

『お待たせしてしまいました。』
『うちに・・・来るかい?』
『あ・・・いえ!今夜はこんな時間ですから、狭いところですが私のアパートにお越しいただけますか?』
『ああ。ではお邪魔しよう。』

▼■食堂から歩いて10分程の距離にあるチェギョンの住むアパート

スンレにしてみてもチェギョンの生活の場をナムギルに見て貰えてよかったと思う

どんな場所でどんな風に生きて来たのか・・・垣間見えるだけでも十分切なかった

二人を誘いチェギョンはアパートの階段を上り、そしてその狭い部屋に招き入れた

『散らかっていますがどうぞ。』
『あ・・・ああ。お邪魔するよ。』

やはりナムギルはスンレが最初訪れた時と同じ様に、相当驚いた様だ

『どうぞお掛けください。今、お茶を煎れてきます。』
『ああ。』

チェギョンがお茶を煎れている間にナムギルは部屋の中を見渡した

勉強机もない。衣類ダンスの類もない。ビニールロッカーが二つ置かれた狭い部屋

チェギョンがお茶を煎れ二人の前に座った時、思わずナムギルは問い掛けた

『君の部屋は?』
『私の・・・部屋ですか?あ・・・ひと間だけなんです。』
『そうか・・・』

チェギョンがどれほど物質的に恵まれない生活をしていたのかが解る

ナムギルはそれでも育ての母に一縷の望みを抱いてもう一つ問いかけた

『君の・・・アルバムを見せて貰えるかい?』

その問いかけにチェギョンは相当驚いた様だ

『えっ?アルバム・・・あの・・・卒業アルバムとかですか?』
『いや、幼い頃からの写真が入っているアルバムだ。』
『ありません。』
『えっ?・・・』

チェギョンもだがナムギルとスンレも相当戸惑ったようだ

その戸惑いを感じ取ってしまったらしく、チェギョンは必死にいい訳をする

『あ・・・あの・・・写真が嫌いだったんです。だから写真はありません・・・』

二人はチェギョンのその返答に項垂れた。本当はそうではない事も解っていた

こんな愛らしい容姿をしているのに、写真を嫌がる筈がない

恐らく・・・育ての母、つまりチェギョンとヒョリンをすり替えた女性は、チェギョンになどまったく興味も関心も

示さなかったということになる

『『はぁっ・・・』』

我慢しようにもしきれず二人の瞳に涙が浮かぶ

こんな酷い話があっていいものかと、二人共胸を締め付けられる思いである

泣きたい気持ちを必死に堪え、ナムギルはチェギョンの顔をじっと見つめた

『チェギョン・・・と呼んでもいいかい?』
『はい。』
『君は・・・間違いなく私と家内の子供だ。』
『そうでしたか・・・』
『今まで苦労かけてしまったな。』
『いいえ・・・』
『明日からシン家で暮らそう。』
『えっ?』
『元々君の家だ。もう生活の心配などさせない。好きな事を学んで伸び伸びと暮らして欲しい。』
『あ・・・でもヒョリンがまだ留学中で・・・不在の時に家に入るなんてことできません。』
『ヒョリンは明日戻って来る。』
『えっ・・・そうだったんですか?』
『本来なら君とヒョリンをすり替えた憎むべき人の産んだ子だ。
母親が生きているのであったら、ヒョリンをここに返すことも考えただろう。
だが・・・もう母親は亡くなっている。ヒョリンには身寄りがない。
私達にも18年娘として育てて来た情がある。ヒョリンを見捨てるわけにはいかない。
だから生まれた日付は違うが、二人を姉妹として暮らしていきたいと思っている。』
『でも・・・ヒョリンはまだこの事を知らない訳で・・・』
『ああ、だから明日帰国したら打ち明けようと思う。その場でチェギョンを紹介する。いいね。』
『ヒョリンが・・・納得するのなら私は構いません。』
『解った。明日早速迎えに来よう。君の名前は明日からシン・チェギョンだ。』
『シン・チェギョン・・・』

今まで18年間呼ばれていた姓よりもしっくりくるような気がして、チェギョンは嬉しさに胸を震わせた

帰り際・・・外まで見送らなくていいという二人を玄関先で見送った時、スンレはもう我慢が出来ないとばかりに

チェギョンの身体をきつく抱き締めた

『チェギョン・・・私の子・・・明日から一緒に暮らすのよ。』
『はい・・・』

ナムギルも負けじとチェギョンの両手を握り締めた

『明日迎えに来るからね。荷物なんかまとめなくていい。必要なものはなんでも用意する。』
『ありがとうございます。』

まだ父母とは呼べないチェギョンであったが、胸の真ん中がとても温かくなる

もう孤独ではない。きっとこの二人は自分を愛してくれる・・・

だがその半面・・・心配なのは帰国してくるヒョリンの事

今まで何度となく≪貧乏人≫と蔑まれてきたチェギョンである

そのヒョリンと人生が逆転するとしたら、プライドの高いヒョリンの激昂ぶりは如何ほどのものか

(どうしよう・・・)

嬉しさのあまり浮かれてしまいそうになる気持ちの半面襲ってくる恐怖に耐えかね、チェギョンは唯一この事を

相談できる相手イ・シンに電話を掛けていた



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あわわっ!!
今回もシン君・・・名前が出ただけ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
次回からはレギュラーメンバーだから
許してたもれ~~❤

てか・・・一応主役なんすけどね
シン君とチェギョンが・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!








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