ユル君の主治医の許可を得て病室に入っていった私達
ユル君は青白い顔を少し擡げて、面目なさそうに微笑む
『二人共・・・無事でよかった・・・』
シン君はそんなユル君に噛み付かんばかりの勢いで怒鳴った
『馬鹿かっ!!なぜ先に言わない。何も自ら毒を煽る様な真似をしなくても・・・
他にいくらでも方法があった筈だ!』
あ・・・シン君、いくらなんでも病み上がりの人に怒鳴るなんて・・・
私はそんなシン君の態度に潜む思いを理解していながらも、静かに窘めた
『シン君・・・そんな言い方しなくてもいいじゃない。それにここは病室だよ。もうちょっと静かに話さなきゃ・・・』
そんな私の声に目を細め、ユル君は首を横に振った
『いいんだチェギョン。シンのいうことが正しい。
だけど・・・シン、僕は咄嗟にどう行動したらいいのか解らなくて、この方法しか思いつかなかったんだ。』
『だったらその前に一言俺に言えばいいだろう?そうしたら未然に防げた話だ!!』
従兄弟同士の真剣な会話に、私は口を挟むことなどできず二人を交互に見つめ黙って話に耳を傾けた
『シン・・・解ってないな。母は証拠なんて残さない完璧主義者タイプだよ。
今までだって実行犯から母の名は語られなかった筈だ。
僕がその証拠になるしか・・・母の罪を暴く方法がなかったんだ。』
『それにしたって・・・』
シン君は悔しそうに拳を握り締め、それから悲しそうな目をユル君に向けた
『今回の一件で母は恐らく主犯とみなされた事だろう。』
『あぁ。』
『自白は・・・してくれた?』
シン君はさらに苦悩の表情を浮かべユル君に答えた
『いや・・・。自白は・・・』
『こんな事態になってもまだ自分の罪を認めないのか。僕の母は・・・』
ユル君の胸の内を思うと胸が痛くなる。シン君は恵政宮様の状態を話すのだろうか・・・私はシン君の
返事を待った
『伯母上は・・・自白などできる状態ではない。』
『それは・・・どういう意味?』
『自分の仕掛けた罠に、ユル・・・お前が自ら落ちたと知って・・・正気でいられなくなった。』
『正気でいられない・・・?』
『あぁ。自分の世界に引きこもってしまい、取り調べのできる状態ではなく・・・
今は警察病院に入っているそうだ。』
『そんな・・・。じゃあ僕のしたことは無駄骨になってしまったというのか?』
『いや・・・お前が倒れ伯母上が拘留された時点で、実行犯に依頼した元尚宮や、東宮に潜り込んだ女官が
すべて伯母上の指示だったと自白したことから、伯母上の自供は得られないが主犯であると確定された。』
『そうか。母さんは卑怯者だな・・・』
そう言って一旦目を閉じたユル君。自らの手で自らの母を陥れた悲しみはいかほどのものだろう
母の暴走を止めるにはこの方法しかなかったにせよ、悲しすぎる結末だ
私は思わず涙がこみ上げそうになるのを必死で堪えた
『とにかくシン・・・そしてチェギョン。本当にすまなかった。チェギョンには痛い思いをさせてしまって・・・。
でも君がシンを助けてくれた上に治療を頑張ってくれたから、母は殺人者にはならずに済んだ。感謝・・・してる。
本当にごめん・・・。』
私は長年のシン君の苦しみを聞いてきただけに、安易に許すとは言えない
だけどユル君にはなんの罪もない
シン君はそんなユル君にぶっきらぼうに答えた
『詫びなら伯母上からして貰う。ユル・・・お前が謝る事ではない。
早く回復して伯母上に逢いに行ってやろう。お前を見たら伯母上も正気を取り戻すかもしれないだろう?』
『うん。』
恐らくシン君は病床のユル君に希望を持たせようとしているのだろう
警察関係者からの連絡では、恵政宮様は≪責任能力を問えない≫状態だと聞いた
もちろん私は日中ユル君に付き添っていたし、シン君は事件の解明に走り回っていたのだから
恵政宮様の面会になど行っていない
ユル君が回復したら恐らくシン君はユル君と一緒に恵政宮様に逢いに行くだろう
ユル君に逢えば正気を取り戻す
もちろんそれは、罪を償う場所に送る事になってしまうのだけど、それでも曖昧なままよりよほどいい
その日を最後に私はユル君に付き添う事をしなかった。シン君の勧めもあり自分の体調を最優先させたのだ
ユル君はそれから一週間後、元気な姿で退院をした
ユルの退院の日・・・俺はユルを迎えに行った
ずっと心の支えにしてきた母が家に戻ってもいないのだ。宮殿に連れて帰るのが妥当だろうと考えていた
ところがユルは車に乗り込むなり俺に告げた
『シン・・・母さんのところに行っても構わない?』
ユルがそう言うのも当然だろう。ソ・ファヨンがいくら強欲な悪女だったとしても、ユルにとっては
たった一人の母親なのだ
それに俺自身もソ・ファヨンの状態を知っておきたかった
『あぁ。それがいいだろう。』
『ありがとう。』
俺達を乗せた公用車は護衛の車を伴い皇室警察病院に向かった
初めて足を踏み入れた警察病院・・・そこは意外なほど明るい雰囲気の病院だった
いくつもの個室のある廊下を通り、一番奥まった部屋の鍵を主治医は開けた
その間小さな格子からそっと中を覗き込むと、ソ・ファヨンはベッドに腰掛けているようだった
『母さん・・・』
俺とユル二人が部屋に入ると、主治医は外に出ていきその扉を閉めた
ユルの呼び掛けに振り向こうともしないソ・ファヨンは、何やらハンカチのようなものをポケットチーフの形に折り
それを見つめ微笑んでいた
『母さん!!僕だよ!!』
漸くソ・ファヨンはユルに視線を向けた。そして訝しげな表情で問い掛けた
『どなたです?私のユルを早くここに連れて来てくださいませんか?
殿下とお庭に遊びに行ってしまいましたの。
もう皇帝陛下もご高齢ですしね・・・いつ何時殿下が即位なさるか解りませんわ。
そうしたら・・・ユルは皇太子になりますの。身なりをしっかり整えて、
どこに出しても恥ずかしくない子にしないと・・・ふふふ・・・』
ソ・ファヨンの記憶は退行しているのか・・・その口ぶり話の内容では自身が皇太子妃として生きていた頃に
心を彷徨わせているようだ
孝烈皇太子殿下が御存命の頃・・・こんな穏やかな顔で幸せそうにしていながらも、先帝の崩御を心待ちにし
自分自身が宮の女帝として君臨することを望んでいたのか・・・
俺は背筋が凍る思いだった
『しっかり・・・しっかりしてください!!僕がわからないんですか?』
『さぁ・・・存じ上げませんわ。』
堪え切れずその足元に蹲り涙を零したユル
俺はそんなユルを抱きかかえ落ち付かせようと背中を撫でた
『僕です。僕がユルです。なぜ解って貰えないんですか?母さん・・・』
『ユル?私のユルはまだ幼いんです。冗談はやめてください!!
誰か~~変な人が部屋に入って来たわ。追いだして!!』
ソ・ファヨンの助けを呼ぶ声に、すぐさま医師は部屋に駆けつけた
『殿下・・・ユル殿下・・・今日はもうお帰り下さい。患者が興奮状態ですので・・・』
『解りました。』
ユルを支えながら部屋を出て行こうとした時、ユルはもう一度ソ・ファヨンの方を振り返り≪母さん・・・≫と
悲しげに呻いた
警察官から報告を受けていた以上に深刻なソ・ファヨンの状態に、ユルばかりではなく俺も相当ショックだった
ユルにしてみれば母親をここまで追い込んだ張本人が自分だと解っているだけに、やりきれない思いだろう
と・・・言う様なソ・ファヨンの現状
今後ユル君の身の振り方は
どうなっていくのかな・・・
次回金曜日楽しみにしていてくださいまし❤
あぁラスト二話。
今宵も楽しみですね。
ハッピーエンド熱望します❤
追記※
あと二話って言うのは・・・ドラマの話で
ここのお話はまだ続きます~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ユル君は青白い顔を少し擡げて、面目なさそうに微笑む
『二人共・・・無事でよかった・・・』
シン君はそんなユル君に噛み付かんばかりの勢いで怒鳴った
『馬鹿かっ!!なぜ先に言わない。何も自ら毒を煽る様な真似をしなくても・・・
他にいくらでも方法があった筈だ!』
あ・・・シン君、いくらなんでも病み上がりの人に怒鳴るなんて・・・
私はそんなシン君の態度に潜む思いを理解していながらも、静かに窘めた
『シン君・・・そんな言い方しなくてもいいじゃない。それにここは病室だよ。もうちょっと静かに話さなきゃ・・・』
そんな私の声に目を細め、ユル君は首を横に振った
『いいんだチェギョン。シンのいうことが正しい。
だけど・・・シン、僕は咄嗟にどう行動したらいいのか解らなくて、この方法しか思いつかなかったんだ。』
『だったらその前に一言俺に言えばいいだろう?そうしたら未然に防げた話だ!!』
従兄弟同士の真剣な会話に、私は口を挟むことなどできず二人を交互に見つめ黙って話に耳を傾けた
『シン・・・解ってないな。母は証拠なんて残さない完璧主義者タイプだよ。
今までだって実行犯から母の名は語られなかった筈だ。
僕がその証拠になるしか・・・母の罪を暴く方法がなかったんだ。』
『それにしたって・・・』
シン君は悔しそうに拳を握り締め、それから悲しそうな目をユル君に向けた
『今回の一件で母は恐らく主犯とみなされた事だろう。』
『あぁ。』
『自白は・・・してくれた?』
シン君はさらに苦悩の表情を浮かべユル君に答えた
『いや・・・。自白は・・・』
『こんな事態になってもまだ自分の罪を認めないのか。僕の母は・・・』
ユル君の胸の内を思うと胸が痛くなる。シン君は恵政宮様の状態を話すのだろうか・・・私はシン君の
返事を待った
『伯母上は・・・自白などできる状態ではない。』
『それは・・・どういう意味?』
『自分の仕掛けた罠に、ユル・・・お前が自ら落ちたと知って・・・正気でいられなくなった。』
『正気でいられない・・・?』
『あぁ。自分の世界に引きこもってしまい、取り調べのできる状態ではなく・・・
今は警察病院に入っているそうだ。』
『そんな・・・。じゃあ僕のしたことは無駄骨になってしまったというのか?』
『いや・・・お前が倒れ伯母上が拘留された時点で、実行犯に依頼した元尚宮や、東宮に潜り込んだ女官が
すべて伯母上の指示だったと自白したことから、伯母上の自供は得られないが主犯であると確定された。』
『そうか。母さんは卑怯者だな・・・』
そう言って一旦目を閉じたユル君。自らの手で自らの母を陥れた悲しみはいかほどのものだろう
母の暴走を止めるにはこの方法しかなかったにせよ、悲しすぎる結末だ
私は思わず涙がこみ上げそうになるのを必死で堪えた
『とにかくシン・・・そしてチェギョン。本当にすまなかった。チェギョンには痛い思いをさせてしまって・・・。
でも君がシンを助けてくれた上に治療を頑張ってくれたから、母は殺人者にはならずに済んだ。感謝・・・してる。
本当にごめん・・・。』
私は長年のシン君の苦しみを聞いてきただけに、安易に許すとは言えない
だけどユル君にはなんの罪もない
シン君はそんなユル君にぶっきらぼうに答えた
『詫びなら伯母上からして貰う。ユル・・・お前が謝る事ではない。
早く回復して伯母上に逢いに行ってやろう。お前を見たら伯母上も正気を取り戻すかもしれないだろう?』
『うん。』
恐らくシン君は病床のユル君に希望を持たせようとしているのだろう
警察関係者からの連絡では、恵政宮様は≪責任能力を問えない≫状態だと聞いた
もちろん私は日中ユル君に付き添っていたし、シン君は事件の解明に走り回っていたのだから
恵政宮様の面会になど行っていない
ユル君が回復したら恐らくシン君はユル君と一緒に恵政宮様に逢いに行くだろう
ユル君に逢えば正気を取り戻す
もちろんそれは、罪を償う場所に送る事になってしまうのだけど、それでも曖昧なままよりよほどいい
その日を最後に私はユル君に付き添う事をしなかった。シン君の勧めもあり自分の体調を最優先させたのだ
ユル君はそれから一週間後、元気な姿で退院をした
ユルの退院の日・・・俺はユルを迎えに行った
ずっと心の支えにしてきた母が家に戻ってもいないのだ。宮殿に連れて帰るのが妥当だろうと考えていた
ところがユルは車に乗り込むなり俺に告げた
『シン・・・母さんのところに行っても構わない?』
ユルがそう言うのも当然だろう。ソ・ファヨンがいくら強欲な悪女だったとしても、ユルにとっては
たった一人の母親なのだ
それに俺自身もソ・ファヨンの状態を知っておきたかった
『あぁ。それがいいだろう。』
『ありがとう。』
俺達を乗せた公用車は護衛の車を伴い皇室警察病院に向かった
初めて足を踏み入れた警察病院・・・そこは意外なほど明るい雰囲気の病院だった
いくつもの個室のある廊下を通り、一番奥まった部屋の鍵を主治医は開けた
その間小さな格子からそっと中を覗き込むと、ソ・ファヨンはベッドに腰掛けているようだった
『母さん・・・』
俺とユル二人が部屋に入ると、主治医は外に出ていきその扉を閉めた
ユルの呼び掛けに振り向こうともしないソ・ファヨンは、何やらハンカチのようなものをポケットチーフの形に折り
それを見つめ微笑んでいた
『母さん!!僕だよ!!』
漸くソ・ファヨンはユルに視線を向けた。そして訝しげな表情で問い掛けた
『どなたです?私のユルを早くここに連れて来てくださいませんか?
殿下とお庭に遊びに行ってしまいましたの。
もう皇帝陛下もご高齢ですしね・・・いつ何時殿下が即位なさるか解りませんわ。
そうしたら・・・ユルは皇太子になりますの。身なりをしっかり整えて、
どこに出しても恥ずかしくない子にしないと・・・ふふふ・・・』
ソ・ファヨンの記憶は退行しているのか・・・その口ぶり話の内容では自身が皇太子妃として生きていた頃に
心を彷徨わせているようだ
孝烈皇太子殿下が御存命の頃・・・こんな穏やかな顔で幸せそうにしていながらも、先帝の崩御を心待ちにし
自分自身が宮の女帝として君臨することを望んでいたのか・・・
俺は背筋が凍る思いだった
『しっかり・・・しっかりしてください!!僕がわからないんですか?』
『さぁ・・・存じ上げませんわ。』
堪え切れずその足元に蹲り涙を零したユル
俺はそんなユルを抱きかかえ落ち付かせようと背中を撫でた
『僕です。僕がユルです。なぜ解って貰えないんですか?母さん・・・』
『ユル?私のユルはまだ幼いんです。冗談はやめてください!!
誰か~~変な人が部屋に入って来たわ。追いだして!!』
ソ・ファヨンの助けを呼ぶ声に、すぐさま医師は部屋に駆けつけた
『殿下・・・ユル殿下・・・今日はもうお帰り下さい。患者が興奮状態ですので・・・』
『解りました。』
ユルを支えながら部屋を出て行こうとした時、ユルはもう一度ソ・ファヨンの方を振り返り≪母さん・・・≫と
悲しげに呻いた
警察官から報告を受けていた以上に深刻なソ・ファヨンの状態に、ユルばかりではなく俺も相当ショックだった
ユルにしてみれば母親をここまで追い込んだ張本人が自分だと解っているだけに、やりきれない思いだろう
と・・・言う様なソ・ファヨンの現状
今後ユル君の身の振り方は
どうなっていくのかな・・・
次回金曜日楽しみにしていてくださいまし❤
あぁラスト二話。
今宵も楽しみですね。
ハッピーエンド熱望します❤
追記※
あと二話って言うのは・・・ドラマの話で
ここのお話はまだ続きます~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!