皇太后様の震える手から受け取ったユルの手紙・・・俺はその握り締められた手紙を封筒から取り出し
中身を開いて黙読した
ユルが倒れたショックで相当気が動転しているようだ
そしてその手紙の内容は、更に俺の気持ちをざわつかせた
【皇太后陛下
僕は物心ついた頃より、母から≪あなたは皇位を継ぐ人間だ≫とずっと言われ続けてきました。
そしてそれが当然のことだと思っていました。今はシンにその座を預けているだけ・・・そんな気持ちで
いつかは僕が皇太子になると信じて疑わなかったんです。
なので学校で一目惚れした女の子シン・チェギョンが、シンの許嫁だと聞いた時・・・
チェギョンは僕と婚姻するべきだと思い上がった考えに達し、チェギョンをシンから救い出そうと考えていました。
二人の間に波風を立て、離婚に追いこもう・・・そう企みマスコミに情報を流したのは僕の仕業です。
ですが・・・皇太子であるシンの命を奪いその座に就こうなど、僕には考えも及ばない事でした。
何かとライバル視されてきた僕らですが、僕はシンをライバルだと思っていませんでした。
自分が優位に居ると錯覚していたんです。これも母の刷り込みなのかもしれません。
今回の皇太子狙撃事件について、一部報道やネット内で色々な噂が飛び交いました。
でも・・・僕には信じられない情報ばかりでした。
なぜなら一番信頼していた母を、マスコミやネットユーザーは犯人であると推測していたからです。
僕にとってはたった一人の母で一番尊敬する女性です。
これは何かの陰謀に違いない・・・そう信じていたかった・・・
僕は母が宮殿に仕える誰かと電話しているのを聞いてしまいました。
詳しくは気が動転していて覚えていませんが≪皇太子暗殺を邪魔した皇太子妃を始末せよ・・・≫という
耳を疑うような内容でした。
僕には常に優しく愛情を注いでくれた母だったのに、シンの狙撃事件も母の差し金だったのです。
皇太后殿下・・・僕のおばあ様
僕には母の暴挙を止めることができません。
チェギョンがシンを命がけで守った様に、今度は僕がチェギョンとお腹の中に宿った皇孫を守ります。
始末したのが一人息子である僕だったと知ったら・・・母は目を覚ましてくれるでしょうか。
おばあ様・・・こんな形でしかシンとチェギョンに償えない僕を、どうかお許しください。 ユル】
俺はその手紙を読み終え、力なくチェギョンに手渡した
チェギョンは俯きながら必死にその内容を読んでいる
俺は食堂にチェギョンと皇太后様を残し、すぐにコン内官に指示を出した
今日の夕食の準備に携わった者すべてを皇室警察で取り調べを受けるようにした
その頃には皇室警察署員も駆けつけ、食堂の立ち入り調査が行われた
皇太后様は苦悩の表情のまま、そのユルの手紙を皇室警察署員に証拠品として提出した
もちろん・・・その証拠品によってソ・ファヨンは任意ではなく重要参考人として
今度は取り調べを受けることとなるだろう
紛れもなくユル直筆の手紙が残されている限り、もう・・・言い逃れは出来まい
愛息の命を懸けた告発だ
言い逃れするどころか、ユルがすべてだったソ・ファヨンは心の箍が外れてしまうかもしれない
警察とのやりとりが一段落した時・・・私とシン君は公用車に乗り込み今日退院したばかりの王立病院に
向かった
車の中で私はユル君の書いた手紙を思い返し、後悔の気持ちを募らせていた
つい勝手な思い込みでユル君を疑って、ユル君を悪者扱いしていたなんて・・・
そんなユル君が私とお腹の子の為に、命まで投げ出したことが哀しくて堪らない
ユル君の気持ちは純粋だった・・・
なのに色眼鏡で見ていた私。ごめんねユル君・・・
病院に到着した時、主治医の話を聞くと、まだ意識は戻らないが命に別条はないだろうという
使用された毒物は、もしそれを口にしたのが病み上がりの私だったとしたらひとたまりもないが
健康体のユル君だったら、時間が経てば体内に入った毒は解毒され意識を取り戻すだろうと言われた
私は憔悴しきった表情でシン君にお願いをしてみる
『シン君・・・ユル君の意識が戻るまで看病しちゃあダメかな。』
『あぁ。きっとユルはお前が傍に居てくれれば喜ぶだろう。だが泊まり込みはダメだ。
お前はまだ自分の身体を回復させるのが先決だろう?
夜は東宮に戻ってちゃんと休むんだ。約束できるか?』
『うん。ありがとうシン君。』
そう・・・体力の回復もだけど、それより重要なのは妊娠中の身ってことだ
それは私も重々承知している
翌日から朝晩は東宮でシン君に消毒をして貰い、それからチェ尚宮さんと病院に通う日々が始まった
日に一度は必ずシン君は病室に顔を出し、事件解明の進行状況を話してくれる
それによると恵政宮様は、ユル君の手紙を読んでユル君自らが毒に侵された事を知り、尋常な状態では
居られなくなったらしい
おかしなことを呟いてみせたり突然暴れ出したり・・・つまり自分の心の中に逃げ込んでしまったようだ
だけど一連の事件に加担した人達の証言が次々と浮上して、恵政宮様の自白は無いままほぼ主犯と
みなされたみたい
ユル君が倒れてから一週間・・・まだ目を覚まさないユル君を見つめ、私とシン君は互いに溜息を吐いていた
『どうして目覚めないんだろう。ユル君・・・
先生が言うことには、そろそろ目覚めてもいい頃って・・・』
『そうだな。ユルにしてみたら、俺やチェギョンに申し訳が立たなくて目を覚ませられないのかもしれないな。』
『そんなこと・・・』
『このまま目覚めないなんて許さないからなユル。早く目を覚ませよ。
いくらなんでもこのままって言うのはダメだ。ユル・・・』
シン君があまり良く眠れていないのは知っていた
シン君が疲れているその瞳にうっすら涙を浮かべたその時だった
『うぅっ・・・う・・・』
『ユル君っ!!』
『ユルっ!!』
ユル君はうっすらと目を開けた
シン君が押したナースコールで医師達が駆け付け、ユル君の診察をしている
やがて病室の外で待っていた私達の元に、主治医が顔を出した
『皇太子殿下・妃殿下・・・ユル殿下がお話したいと申されています。』
ユル君が漸く意識を取り戻した
私はずっと胸の中にあった申し訳なさから、やっと解放された様な気がした
呆気なく・・・目覚めました~(爆)
てか長引かせるの嫌だし(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
てか長引かせるの嫌だし(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!