その日から私はあのダサダサ皇太子をどんないい男に仕上げてやろうかと、コンセプトを絞り始めた
なんと言ってもあれほどの手強い素材は無いだろう。きっと難航することが予想された
背がめちゃくちゃ高い癖にあのおどおどした態度。なのに変なところが俺様・・・
あぁ私の理解の範疇を超えている
大体にしてああいう前髪もっさりした男って・・・おでこが酷いのよね
ニキビの巣窟みたいになっているに違いない・・・なんて汚らしい・・・
あぁぁ・・・あいつをいい男に変身させられたら、きっと私のイケメンメーカーのキャリアにも箔がつくよね
余り気は進まないけど引き受けたからにはこのシン・チェギョン後には引けない
やるっきゃないっ!!
コンセプトはクールで涼しげな男♪ミン・ヒョリンもメロメロにしちゃうようなね
よしっこれに決まりっ!!
数日後私は、大きな鞄を持って映像科にある≪皇太子ルーム≫に向かった
ガンヒョンとギョン君も一緒に来てくれるかと思ったら、『チェギョンあとの事はよろしく~♪』って私に丸投げだ
あぁ・・・彼氏を前にして女の友情って儚いもんなのね・・・
途中部屋の手前で黒のスーツを着た≪いかにも宮殿に仕える身≫オーラを纏ったお姉さんがいたので
私は話しかけてみる
『あの・・・皇太子殿下にお仕えしている方ですか?』
『はい。尚宮のチェと申します。』
『あ・・・すみません。私はシン・チェギョンです。
皇太子殿下からビジュアル大改造依頼を受けたんです。
チェ尚宮さんにひとつお願いしたい事があるのですが・・・。』
『あ・・・はい、殿下から伺っております。私にお願いとは一体何でしょう?』
私は鞄の中からデジカメを取り出し、チェ尚宮さんに手渡した
『殿下のクローゼットの中に入っているスーツを・・・これで撮ってきていただけませんか?』
『はい。かしこまりました。明日お持ちすればよろしいですか。』
『はい。お手数掛けますがよろしくお願いします♪』
よし!これでとっちゃん坊やみたいなスーツを、排除する第一歩が踏み出せた
皇太子のお出ましの様子をテレビで見た事があるけど、ありゃ~~酷いもんよ!!
どうしてあんなスーツを着るのかな・・・まさかアレが好みとか?だとしたらかなり厳しい
今時の新入社員だってもうちょっとましな着こなしをするよっ!!
あぁ・・・あのむさくるしいマッシュルームカットと向き合うのかと思うと、少々重い気持ちになりながら
私はドアをノックした
<トントン>
『失礼しま~~す♪』
ドアを開けると前回来た時と同じ様に、椅子に座り俯いている皇太子
暗い・・・暗すぎる!!あんたがそんなことでこの国の未来はどうなんのよっ!!
『ども!!』
あまり歓迎されていない雰囲気に、私のテンションはガタ落ち。ぶっきらぼうに挨拶してやった
『あぁ。』
あぁ・・・ってそれが挨拶か?
こいつに言葉は通じない。さっさと仕事に取り掛かろう!!
私は皇太子の座っているソファーの隣に座り、鞄から必須アイテムを取り出すと徐に行動を起こした
『失礼しま~~す♪』
皇太子のもっさりした前髪に手を伸ばし、それをむぎゅっと握ると・・・必須アイテム髪ゴムで結わえた
『なっ!何をするんだっ!!』
断固としてそれを拒もうとする皇太子・・・あっ・・・皇太子の大声で先程のチェ尚宮さんと
護衛の怖~~いお兄さん方が来ちゃったじゃないか
私は臆することなく、私を咎める視線を向ける人達に言ってやった
『皇太子殿下の額をなんとかするだけですっ!!黙って見ていてくださいっ!!』
おっ?抵抗するか?皇太子・・・
皇太子はその結わえた前髪噴水を解こうと必死だ
あぁぁ・・・見てみなさいよ。やっぱりね・・・
『殿下・・・いい男がこんなニキビ面でよいと思ってるの?不潔にしておくからこんなに酷くなっちゃって!!』
『ふっ・・・ふっ・・・不潔だと?無礼者めっ!!』
『無礼者はあなたの方でしょう?こんな汚いデコ初めて見た!!これに触る私の身にもなって!!』
私は片手でその前髪噴水を掴んだまま、鞄の中からコットンとメンズ用ニキビ対策拭き取り化粧水を取りだした
<パタパタパタ・・・・>
額に感じるメントールの香り・・・こいつ・・・俺に一体何をしているんだっ!!
『スースーする・・・』
『ニキビを治す化粧水だよ。こんな長い前髪してるからこうなっちゃう。
それにこれは美白効果もあるの・・・』
『俺は色白だから美白など必要ない。』
『まぁね・・・確かに≪もやし≫みたいだもん。頭は≪きのこ≫だけど~~ぎゃはははは・・・』
こいつ言いたい放題だ。なんて無礼な女だ!!
俺は今まで上げた事のない視線をこっそり上げてみる。あぁっ?ミン・ヒョリンほどじゃないが決して悪くない
真ん丸な目にぽってりと肉感的な唇。口紅を付けているのか?高校生のくせに不良だな!!
『お前・・・口紅つけてるのか?』
『はぁっ?まさかっ・・・普通のメントール系のリップだけだよっ!!
元がいいから~そんなの必要ないんだよ~~♪えへへ~~んだっ!!』
まぁ不細工とは・・・決して言えないレベルだ
シン・チェギョンのパタパタ攻撃はかなりしつこく繰り返された
そして漸く縛られた前髪を解放してくれた
『ひとまず今日はここまで・・・時間かかりそうだなぁ・・・』
『それは困る。俺には時間が無いんだ。』
『だったらもっと協力してよ!!なんなら今日はこう言う物も持って来たんだけどぉ?』
シン・チェギョンは鞄の中から鋏を取りだした。おいっ・・・俺に刃物を向ける気か?
『それで・・・何をしようって言うんだ。』
『なにって・・・その髪をなんとかしていいんでしょう?カットする。』
『あぁ?まさかここで・・・か?』
『うん。他に場所がある?』
『皇太子である俺に鋏を向ける以上・・・ここでは無理だ。』
『だったらどこで?』
『東宮殿まで来いっ!』
『来い?今・・・来いって言った?無償でこんな事やらされているのに、命令なわけ?』
『いや。是非来て欲しい・・・』
ちっ・・・なんて勝気な女だ!!だが昼休みに髪形が変わるなんて、あまりにも唐突過ぎるだろう?
それに髪だって洗いたいし・・・
東宮に呼ぶしかないじゃないか。
『殿下・・・この商品名覚えて!』
チェギョンは先程俺にパタパタした化粧水とやらを見せつけた
『これを持って帰っていいんじゃないのか?』
『これは私の~必須アイテムなのよ。あげないよっ・・・』
『ケチくさい・・・』
『皇太子だったらお金持ちでしょう?この位買いなさいよっ!!』
『解ったよ。それでそのパタパタするのは・・・』
『チェ尚宮さんに言えば買って来てくれる筈だよ。』
『そうか解った。とにかく今週の土曜の午後、迎えに行かせるから東宮に来てくれ。』
『は~~い。わかりましたよぉ~~・・・』
チェギョンは不貞腐れた顔をし部屋を出ていった
俺は早速チェ尚宮を呼びつけ、先程の化粧水とパタパタを買って来るように命令した
しかしチェ尚宮は首を傾げ俺に聞き返す
『殿下・・・化粧水は解りましたが、パタパタとは一体・・・』
『あぁ・・・綿みたいなやつでこの位の大きさの四角い物だ。』
『あ・・・コットンでございますね?かしこまりました殿下。』
コットン・・・そのままじゃないかっ!!
シン・チェギョンめちゃんと商品名くらい教えていけ!!
果たしてこれで額のニキビが綺麗になるのかどうか半信半疑だったが、俺は朝晩チェギョンの言いつけ通り
パタパタするのだった
ついでに顔全体もしてやった
素材がいい俺だから美白なんて必要ないと思ったが・・・額だけが白くなったら・・・嫌だからな。
まぁいい男をこれ以上いい男にするって言うなら、チェギョンの言う事も聞いてやるかと思う俺だった
髪を切ったんです。
マッシュルームカットにしようかと思ったんだけど
この時期暑すぎて・・・シャギー入れちゃったよ。
シン君にも・・・シャギー入れちゃおうっと(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
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