『何か話せよ。』
シンがそう言うとチェギョンは驚いた顔で答える
『シン君が・・・話したいからここに来たんじゃないの?』
『だったらお前は、俺に逢いたくなかったというのか?』
思わず声のボリュームを上げるシンの口を、今度はチェギョンが手で塞いだ
『シン君・・・声が大きいって!!逢いたくない訳ないじゃん。でも不公平になるのが嫌だったし・・・』
シンは自分の口を塞いだままのチェギョンの手をやんわりと解くと、その手を握り締めた
『不公平って何だ?俺達は公然とプロポーズをし・・・それを受けた仲だろう?』
『そうだけど・・・隣の部屋のシム・ウンジュさん、一生懸命なんだよ。
王族のお嬢さんは何もできない人ばっかりと思っていたけど、彼女だけは違うのかも・・・』
『だから?それが俺達の何を変えると言うんだ?』
『シン君は端っから王族のお嬢さん方を見ていないでしょう?毛嫌いするみたいに・・・
でもそれは違う様な気がしてきちゃった。ちゃんと見たら・・・シン君を幸せにできる人も
いるんじゃないかって・・・』
『そんな言葉を聞きたくてここに来たんじゃない!!』
思わずシンから大声が上がるのを再び阻止しようとしたが、チェギョンの手はシンに捕えられている為
それもできない
『シン君・・・』
シンはチェギョンの手を握り締めたまま、チェギョンの狭いベッドに寝転んだ
必然的にチェギョンはシンの身体の上に乗っかる形となる
『シン君っ!!』
声を潜めてチェギョンはシンに問い掛けるが、シンの目は悲しそうにチェギョンを見つめているだけだ
『たとえ私の立場が元に戻っても、それでもずっと宮殿に居るって約束したでしょ?
その気持ちは全く変わらないよ。だから・・・』
シンはチェギョンが何を言わんとしているのか察し、その後の言葉を遮った
『もう寝ろっ!!』
『えっ?でもっ・・・』
『お前が眠ったら東宮に戻る。だからもう何も話さずに寝ろ!!』
チェギョンの心が揺らいでいる・・・隣室の王族会令嬢の存在に同情すら抱いているようだ
シンは自分の身体に乗ったチェギョンをベッドの隣に下ろし、チェギョンの眠りを誘う様に優しく髪を撫でた
そうしていたら少しは不安が収まってきそうな気がした
きつく結いあげられたチェギョンの髪を解き、シンはその髪に指を差し入れ梳いてやる
チェギョンの緊張は徐々に和らいでいくようで、次第に抱き締めている身体が温かくなって来る
スーーッ・・・スーーーッ・・・
規則正しいチェギョンの寝息が自分の首筋を擽るようになった時、シンは静かにベッドから身を起こし
チェギョンの唇に啄ばむ様なキスを一つだけ落とした
そして何の屈託も無く眠りに落ちたチェギョンの寝顔をじっと見つめ、それからベッドサイドの明かりを落とした
静かに部屋のドアを開け出て行ったシン
隣室の前を通る時、自分にとってあまりにも印象の薄いそのシム・ウンジュの顔を思い出そうとしてみたが
やはりどうにも思い出せない
つまり・・・シンには自分に接触して来たという印象が、余りにも薄いのだ
(この部屋の娘・・・本気で皇太子妃狙いなのか?余りにも印象が薄いが・・・
まぁ俺は、接触などされない方がありがたいが・・・)
心の中でそんな事を呟き去っていったシン
その足音が小さくなった頃、シム・ウンジュの部屋の扉が薄く開き・・・そしてシンの後姿を確認し再び静かに
扉が閉まった
王族会ご令嬢達による女官見習いの試練・・・丁度10日目のことだった
今までなんとか女官見習いの修行を続けて来たチャン・チムが、とうとう音を上げリタイヤを申し出たのだ
もちろん皇室側にとって願っても無い事である
チャン・チムは晴れ晴れとした顔つきで、高級車に迎えに来て貰い宮殿を去っていった
残ったのはたった一人シム・ウンジュのみである
王族の期待を一身に背負ったシム・ウンジュは、チェギョンの指導の成果もあり随分肩揉みの腕を上げたようだ
『陛下・・・いかがですか?』
『あ・・・あぁ。うぐぅっ・・・チェギョンと引けを取らないほど上達したな。』
『ありがとうございます。』
満面の笑みを浮かべるシム・ウンジュ。その向かい側では、チェギョンが誠心誠意皇后に尽くしていた
『あっ・・・チェギョン、そこをもっと強く。そうそう!!あ~~もぉ~~~極楽だわぁ♪』
ここは本当に宮殿か?と思えるような光景である
陛下はシム・ウンジュにちらと視線を向け話し掛けた
『いよいよ明日で女官見習いは終了だ。シム・ウンジュ・・・君は本当によく頑張ってくれた。』
『ありがとうございます陛下。』
『明日、君の両親や王族も集まるが、その時に今回の女官見習いの感想を聞かせてもらおう。』
『はい。』
王族の令嬢にとってとても耐えられないと思われた今回の女官見習い期間
それをクリアしたシム・ウンジュはすなわち皇太子妃に名乗りを上げる資格があると認められた事になる
もちろん皇太子殿下イ・シンの気持ちはチェギョンにしかないのだが、ここまで食い下がってきたシム・ウンジュも
一考の価値があると言えよう
シム・ウンジュの女官見習いが明日で終わると言う日・・・チェギョンが元気がない事を心配したチョン女官や
慈慶殿の尚宮達はチェギョンを元気づけようと密かに何か準備をしたようだ
そしてその日の食事の時・・・チェギョンに提案してみる
『チェギョンさん・・・明日、例のアレ・・・やっちゃう?』
『えっ?お姉さん・・・例のアレとは?なんですか?』
『ふふふ・・・もう残りのキムチも少ないのよ。』
『あ~~キムチ漬け♪』
『既に材料は調達できているのよ。今回は皇太后様がスポンサーよ♪』
『えっ・・・皇太后様がですか?はいぃ~~♪漬けましょう❤
そうだ!!シム・ウンジュさんも一緒にどう?楽しいわよ?』
『私もいいの?』
『うん~~♪』
『確かにこのキムチは匂いもしないしすごく美味しいわ。私も是非参加したいわ。』
『じゃ・・・決まりね~~♪』
王族会の面々がやってくるのは午後の事
午前中はシム・ウンジュの女官見習い最後のイベントとして、キムチ漬けをすることとなった
さてさて・・・次回、一体どうなる事やら
またシム・ウンジュの本心はどこにあるのだろうか・・・
今日は瞳孔を開く検査なかったのよん♪
なので無事更新です~~★
次回・・・一体どうなるのか楽しみにしていてね~~♪
土日はいつもの如く、多肉通信やふぅめる通信を
お送りいたします❤
あ・・・斑入りポーチュラカ(シャイニーピンク)がやってきたので
お見せしますね~~★