『はぁっ・・・随分早いですね。』
まだ誰も来ていないだろうと思われた会議室に入っていくと、既にハン・チョルスが一番前の席に陣取っていた
『ええ。他でもないシン・チェギョンさんの一大事ですから・・・』
通常であればハン家の当主が来る筈なのだが、やはり度重なる失態で皇帝陛下と顔を合わせづらいのだろう
ハン・チョルスは初めてハン家の代表としてこの場にやって来ていた
『まだ皆さんがお集まりになるには時間があるかと思います。殿下・・・少しばかり私に
説明していただけませんか?』
『説明とは?』
『皇太后様がシン家の借金を肩代わりしたのは、こういう筋書きが最初から出来でいたからですか?』
『いいや違う。チェギョンはお父上の借金を返すべく、女官見習いとして宮殿に入った。
それは間違いない。』
『でしたらなぜこんな事態になるんです?殿下が御自身の想いを押しつけたのではないですか?
借金がある事を理由に婚姻を迫ったのではないですか?』
『ハンさん・・・君は、パーティーの事を誰からも聞いていないのか?』
『そんな事を聞く必要はありません。その結果がすべてですから・・・』
『違うだろう?そうなったプロセスも知らないで勝手な想像をめぐらさないでくれ!』
『だったら・・・どうしてこんなことになったのですか?』
『君も知っている通り、私はチェギョンが好きだ。そしてチェギョンも私が好きだ。
ただそれだけだ。』
『チェギョンさんが・・・殿下を?信じられません。』
『君が信じようが信じまいが、チェギョンはあのパーティーで私を好きだとはっきり言った。
同じ気持ちなら私の手を取って欲しいと、手を差し伸べてくれた。その手を掴んだだけだ。
自分が思う相手からあの様な公式な場所でそこまで言われて、その手を払いのける様な事が
出来る筈はない。』
『あのパーティーでチェギョンさんから?あり得ません。あの場所には皇帝陛下もいらした筈です。
一介の女官見習いが、そのような振舞い・・・信じられません!!』
『どうしたら・・・納得して貰えるのだ?』
『チェギョンさんに逢わせてください!!』
『チェギョンに?彼女は今、熱を出して休養中だ。』
『そう言ってチェギョンさんを隠すおつもりですか?彼女と話をさせていただけないなら僕にも考えがあります。』
『ほぉ・・・どのような?』
『マスコミにリークします。』
『くっ・・・マスコミを味方につけようと言うのか?私は別に何を言われても構わないが、今回の一件で
チェギョンが叩かれるのは、非常に気分が悪い。
君の脅しに屈する訳ではないが、この会議が終わったらチェギョンの元へ案内しよう。』
『本当ですか?』
『あぁ。チェギョンの口から・・・すべて聞いたらいい。』
チェギョンに逢わせて貰えると約束し、ハン・チョルスは漸く怒りを収めたようで大人しくなった
その後会議室には続々と王族が集まり、その後皇帝陛下ばかりか皇太后・皇后までもが
珍しく会議室に入って来る
『さて・・・皆さんお揃いの様だな。会議を始めよう。』
皇帝陛下が会議の開始を宣言すると、早速王族の一人が挙手をすると発言を始めた
『皇帝陛下・・・昨日のパーティーの件ですが、あれは一体どういうことなのでしょうか。
皇太子妃は王族の中から選出されるのが慣例となっておりますのに、昨日皇太子殿下が手を取った相手は
平民ではありませんか!
これはあってはならない事です。どうか昨日の宣言を御取り下げいただき、もう一度皇太子妃の選出を
お願い申し上げます。』
『『お願い申し上げます。』』
『それにあの娘は、公式な王族のパーティーに女官見習いの身でありながら、
堂々と乗り込んできたそうじゃないですか!そのような礼儀知らずの娘を、王族会が許すとお思いですか?』
『そうですとも!!思い返せば前回のパーティーの時には、ハン家の子息の婚約者として参加していました。
そのような身持ちの悪い娘を皇族にするなどあってはなりません。どうぞお考え直しください!!』
『『どうぞお考え直しください。』』
皇帝陛下はじめその場にいた皇族四名は、思った通りの反応を示す王族達に若干辟易した思いを抱きながら
ここを切り抜けねば・・・と強い気持ちを持った
『そうだ。確かに前回のパーティーでシン・チェギョンは、ハン家の子息と一緒に来ていた。
だが婚約者ではないと聞いているが・・・ハン君?その辺りの真偽を答えなさい。』
『はい陛下。確かに僕の婚約者ではありませんでした。ですが・・・彼女が望めば婚約する気でおりました。』
余計な事を・・・そんな顔つきでシンはハン・チョルスをひと睨みした
だがそんな想いは次の陛下の一言で払拭されていった
『彼女が望めば・・・の話だろう?望まなかった。ただそれだけだ。
ハン家の件はこれでよいな。今回の一件は当人同士が深く想い合っている。
私は皇帝である以前に皇太子の父親だ。
皇太子がこれからどう国を治めて行くかも、選んだ伴侶で決まる様なものだ。
だから私はシン・チェギョンが望むなら・・・と二人を認めることにした。
諸君もそのように一緒に見守って貰えないものだろうか?』
『そんなことはできません。』
『そうですとも!シン・チェギョンは宮殿に居たのですから、陛下や皇后様も情が移ったのかもしれませんが
私どもの娘も同じ様に宮殿に居れば、絶対に陛下や皇后様のお考えも変わると思います。』
『どうか私達の娘にも同じ様なチャンスをお与えください!!』
(同じ様な・・・チャンス?)
思わずその言葉を聞いた時、含み笑いをするしかなかった皇帝陛下である
王族の娘達がチェギョンと同じ様な事が出来る筈はないと察したからである
陛下は・・ちらと皇太后に視線を向け呟いた
≪皇太后様・・・暫く少し騒がしくなってもよろしいでしょうか?≫
それを聞いていた皇太后・・・そして皇后も思わず笑い出しそうになるのを必死に堪えた
≪おぉ・・・構わぬ。では・・・制服をたくさん用意せぬとな。ほほほほ・・・・≫
シンだけは一体何が始まるのだろうかと、困惑しているようだった
皇帝陛下は笑みを浮かべ王族に向いて言い放つ
『そうか。そこまで言うのであれば・・・一週間後の正午、慈慶殿に娘を連れて来るがよい。
これを不公平と言うのなら、同じ環境でそなた達の娘の様子を見せてもらおう。』
『かしこまりました陛下。』
『どうぞよろしくお願いいたします。』
王族達の顔は満面の笑みで溢れ返り、この機会を絶対に逃すまいと必死の様子だ
そんな様子に陛下は、一言付け加えた
『ちょうど夏休み期間だ。暫く娘達を預かろう。ただし脱落者はすぐさま家に戻す。
そしてその脱落した娘の家の当主は、今回の皇太子の婚礼に関して物申す事は許さぬ。よいな!』
『『かしこまりました。陛下・・・』』
もちろん三陛下の頭の中には、チェギョンと同様に女官見習いをさせられる王族の娘達の姿が
映し出されていた
チェギョンの様に・・・できる娘がいる筈はない
もし万が一いたとしても、皇太子殿下イ・シンの想いを知って尚横やりを入れようとする者は
一人としていないだろう
王族の娘達が逃げ出す様を想像し・・・可笑しくて堪らない三陛下だった
<トントン>
『はい・・・』
『チェギョン俺だ。客人が一緒なんだが、入ってもいいか?』
『どうぞ・・・』
慈慶殿・・・皇太后の部屋の隣へシンはハン・チョルスと共に入っていった
『チェギョンさん!!』
『あ・・・ハン・チョルスさん・・・』
『どうしたのですか?』
『一度に色々なことがあったので、頭が混乱してしまったみたいです。子供みたいに発熱しました~♪』
チェギョンのベッドサイドの反対側から、シンはこれ見よがしにチェギョンの額に手を当てた
『まだ熱いな。ちゃんと寝ていたのか?』
『うん。ちゃんと寝ていたよ。
それで・・・ハン・チョルスさんはどうして?』
『あぁ・・・俺が無理やりお前に結婚を迫ったんじゃないかと心配しているようだ。
チェギョンから説明を聞かないと、納得できないと言われてな・・・』
『あ・・・そっか。くすくす・・・チョルスさん、納得できないのも無理はありません。
私は平民だし女官見習いだし・・・あり得ないって思ったんですよね?』
『そうです・・・』
『でも陛下が許してくださったから、私も皇太子殿下に対する気持ちに嘘を吐く必要がなくなったんです。
だから・・・何も心配要りません。私が選んだんです。この人を・・・』
『本当・・・なのですね?』
『はい。本当です。チョルスさんが私を心配してくださるお気持ちには感謝します。
でもこの一件で皇太子殿下を責めるのはやめてください。
私達は昨日まで・・・お互いずっと気持ちを押さえこんできました。
漸く・・・素直な自分の気持ちを出すことが出来たんです。
チョルスさんの気持ちを知りながら、本当に申し訳なく思っています。
でも・・・皇太子殿下の・・・シン君の手しか取れないんです。』
『ふっ・・・そうですか。漸く気持ちが落ち着きました。僕も男なので潔く諦めます。
でも殿下に一言言わせてください。もしチェギョンさんを泣かせるようなことがあったら、
王族とか皇族とか関係なく・・・チェギョンさんを浚いに来ますから。それだけはどうかお忘れなく。』
『肝に銘じておこう。』
『ではチェギョンさん、どうぞお大事に・・・そしてお幸せに・・・』
苦しい心の内を必死で隠そうと笑みを浮かべたハン・チョルス・・・だが去っていくその彼の肩は
どことなく寂しそうだった
お薬飲んだら~~昨日より体調がいいっす♪
今日は暑いくらいの気温でした。
皆様もどうぞお風邪に気をつけてくださいね❤
ちなみに多肉のビニール外しました。
軒下で皆お日様浴びていますよ~❤