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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 26

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呼び止められたチェギョンは、その呼び止めた人物を目の当たりにし≪これは非常に困ったことになった≫と

動揺する

『きっ・・・君はシン・チェギョンさんだね?』
『あ・・・はい。コン内官様・・・』

声を掛けて来た人物は、あろうことか皇太子殿下イ・シン付きの内官だった

『なぜ女官の格好をしている?君は確か皇太后様が直々に用意なさった制服を着ている筈だが?』

年配のコン内官にはメイド服と言う発想は無いらしい

『あ・・・はい。そうなのですが・・・』

怪しまれずに東宮に潜入する為とはとても言えないチェギョンである

コン内官の追及はさらに続いた

『それにその上着の中に隠しているものはなんだね?出しなさい。』
『あ・・・これは別に・・・なんでもありません。』
『出しなさい!!』

さすがに皇太子付きの内官だけあり、物腰は穏やかだが威厳のある声でそう命令するコン内官

チェギョンは仕方なく制服の上着の下に忍ばせた≪エッグタルト≫をおずおずと出した

『それは何かね?』
『エッグタルトです。』
『君!!宮殿に居る以上、食品や薬剤の持ち込みは禁止されていると知っている筈だろう?これは没収だ。』
『えっ?それは困ります。シンく・・・あっ・・・皇太子殿下が御所望なんです。』
『皇太子殿下にこれをお渡しするつもりだったのか?』
『・・・はい・・・。あの・・・勉強を教えていただいているお礼がしたくて、勝手に持ち込みました。』
『殿下も・・・ご存知なのか?』
『はい。』
『う~む・・・だったらいたしかたない。だが一つ毒見をさせてもらおう。』

コン内官はエッグタルトの箱を取り上げて、その箱を開けると中から1個摘まみだした

それを今にも口に運ぼうとするコン内官・・・しかしチェギョンはそれを遮った

『こっ・・・コン内官様っ!!あのっ・・・毒見なら私がいたします。』
『なぜだ?私が毒見をしては何か都合が悪いのかね?』
『はい。大変都合が悪いです。シンく・・・違った皇太子殿下は平気で3個は召し上がってしまわれます。
私・・・本日昼食抜きなんです。コン内官様にそれを毒見されてしまうと、夕食までもちません。
なのでお願いです!!どうか私にお毒見役を~~~!!』

既にチェギョンの思考回路は、宮殿に食物を持ち込んで咎められる事よりも自分のお腹の虫が

鳴いている切羽詰まった状態を回避したいと思っていた

さすがのコン内官も苦笑せずにはいられない事態に、摘まんだエッグタルトをチェギョンの手に委ねた

『それなら仕方がない。君が毒見をしなさい。』
『はいっ♪』

1個食べて幸せそうな顔をするチェギョン・・・それからコン内官に向けて、思い切り体操をしてみせた

『ほら・・・コン内官様、毒など入っておりません。こんなに元気です。』
『くっ・・・』

苦笑から思わず顔が綻んでしまいそうになるのを、コン内官は必死に堪えた

なんとなくではあるが皇太子であるシンがこの娘に惹かれた理由がわかる様な気がした

『行きなさい。』

コン内官はエッグタルトの箱をチェギョンの腕に戻しそう言った

『あ・・・はい!どうもありがとうございます♪』

チェギョンは笑顔を浮かべコン内官に頭を下げると、東宮の裏庭へと急いだ



『遅いっ!!』

裏庭に到着するとシンは東屋に腰掛けチェギョンに話し掛けた

『ごっ・・・ごめん!!ちょっと時間取られちゃって・・・。コン内官さんに見つかっちゃったの。』
『コン内官に?』
『うん。これも見つかっちゃって没収されるところだったよ。』

チェギョンが女官服の上着からごそごそとエッグタルトの箱を取り出すのを見て、シンはさりげなく

遠くに視線を彷徨わせてみる

やはりいる・・・一人二人・・・コン内官を始めチェ尚宮、そして女官達やイギサまでもが

遠巻きに二人を監視していた

(っつ・・・)

忌々しそうにシンはチェギョンに座るよう促した

『そこに掛けろ。』
『うん。あ・・・これエッグタルト♪どうぞ~♪日頃のお礼です。安いけどね・・・くすくす・・・』

シンはエッグタルトの箱を受け取りそれを膝に載せ箱を開けてみる

『本当だ。あの時食べたエッグタルトだな。だが・・・なぜ4個しか入っていないのだ?』
『えぇっ?えっとぉ・・・それはですね・・・シン君のところに届ける為に、お毒見が必要だったわけですよぉ。
コン内官に食べられそうだったから私が1個食べた♪』
『くっ・・・そう言う事か。さあ食べよう。』
『えっ?私も食べていいの?だってシン君はあの時3個も食べたでしょう?』
『あの時だったら一箱全部平らげられそうなほど空腹だったが、今は食後のデザートだからな。』
『あ・・・そっか。シン君はお昼ごはん食べたんだ。じゃあ私もいただこうっと♪』
『チェギョンは昼食を食べていないのか?』
『うん。これを買いに行って戻った後、女官のお姉さんが制服借りるには≪シャワー浴びないとダメ≫
って言うからさ、大慌てでシャワー浴びて来たんだ。だからお昼ごはん抜きなの。』
『そうだったのか・・・』

そう言われてみれば先程から何かいい香りがすると思ったのは、チェギョンの洗い髪の匂いだったのかと

シンは改めてチェギョンを意識する自分に戸惑う

それを誤魔化すかのように、シンは彼方の方向に声を掛けた

『チェ尚宮!チェ尚宮は居るか?』

その声に驚いたのはチェギョンである

『しっ・・・シン君、尚宮さんを呼んだりしたら、私がいるのばれちゃう。』
『コン内官に見つかっているんだ。東宮の人間は既にみんな知っている。』
『えっ・・・・』

すぐさまその東屋にチェ尚宮と女官が駆け付けた

『お茶をここに持って来てくれ。二人分だ。』
『はい。かしこまりました殿下。』

すぐさまチェ尚宮と女官がその場を去っていくと、チェギョンは非常に困った顔をする

『シン君・・・私はさ~慈慶殿の女官見習いなんだよ。東宮の尚宮様にお茶を持ってこさせるなんて困るよ。』
『今日お前は仕事は休みで、俺の客だ。』
『でもこの格好なのにぃ・・・』
『構う事はない。俺が指示した事だ。』
『くぅ~~~ん・・・・』

再びチェ尚宮と女官達は東屋に二人分のお茶を用意し去っていく

『うっ・・・遠くに皆さん・・・お揃いでいらっしゃる。』
『気にするな。さぁ食べよう。あの時の借りを返さないとな。この4個は半分にしよう。』
『えっ?いいよ~~!!シン君あんなに食べたがっていたじゃん。』
『いや・・・今はお前が腹ペコなんだろう?くくっ・・・さぁ。』
『うん♪』

チェ尚宮が用意してくれたお茶を飲みながらエッグタルトを食べる二人

非常に居心地の悪い場所ではあったが、チェギョンは屈託なくそのエッグタルトを口に運んだ

『美味しいね。』
『あぁ美味しいな。』

まさか最初に出逢った日の笑顔が東宮で見られるとは思っていなかったシン

ますます叶わぬ夢に想いを馳せてしまうシンなのであった

『じゃあまた明日ね♪』
『あぁ。今日はゆっくり休めよ。』
『うん♪』

ほんのわずかな時間で東宮裏庭から去っていったチェギョン

そのチェギョンの後姿をシンはいつまでも見つめていた




チェギョンが慈慶殿の女官宿舎に戻り、女官服から私服に着替えた時・・・先輩女官が慌てた様子で

チェギョンの部屋を訪れた

『チェギョン大変よ!!』
『えっ・・・何かあったんですか?お姉さん・・・あ!!制服ありがとうございました。』
『あ・・・サイズが合ってよかったわ。そうじゃなくて・・・宿舎の玄関に樽が届けられたわ。』
『えっ・・・もう?』
『随分早いわね。あ・・・そう言えばあなた、皇太后様にキムチを漬ける事お話した?』
『あっ・・・していません。』
『ダメじゃないの。早くお伺いを立てて来なさい。』
『はい!!あ・・・普段着で構いませんか?』
『あなたは今日お休みなんだから構わないわ。』
『じゃあ行って来ま~~す!!』

チェギョンは慌てて皇太后の部屋に向かい、尚宮に承諾を貰い部屋に入っていった

<トントン>
『皇太后様シン・チェギョンでございます。』
『おぉ入るが良いぞ。』
『失礼いたします。』
『今日はお休みだと言うのにどうしたのだ?』
『あ・・・あのぉ・・・皇太后様にお願いしたい事があって参りました。』
『願いとな?言ってみなされ。』
『あの・・・事後承諾で申し訳ありません。あのぉ・・・女官宿舎でキムチを漬けたいのですが・・・』
『なにっ?キムチを?』
『はい。キムチがないと食欲が湧かなくて・・・』
『ふむぅ・・・そなたが食欲を失くすのは困ったことだが、キムチを漬けると言うのはすごい匂いが漂う。
宮殿内でそれは承諾できぬのぉ・・・』
『あ・・・あの皇太后様、匂いと言うのはニンニクの事を言っておいでですか?』
『もちろんそうだ。』
『あ・・・それでしたら無臭ニンニクを取り寄せました。』
『無臭ニンニクとな?』
『はいっ!!ニンニクの美味しさはそのままで、匂いが無いんです。だからキムチを漬ける時も
ご迷惑になりません。』
『ほぉ・・・そんな物があるとは、チェギョンは物知りだのぉ。』
『でなければ・・・宮殿で食べることなどできません。』
『おほほほ・・・なかなか感心な娘だな。そなたは・・・
よいだろう。キムチ漬けを許可しよう。その代わり・・・私にも味見させて貰えるのだろうな?』
『もちろんです♪皇太后様には特別にマイルドタイプをお作りいたします。』
『楽しみにしておるぞ。』
『はいっ!!』

活発なチェギョンハリケーンに巻き込まれ、次第に慈慶殿は賑やかに様変わりして行くようであった





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ドキドキさせた割りにどうってことなかったり(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
しかし長雨嫌ですね。
早く雨が上がらないかな~~!!


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