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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 18

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食事が済んだ後、シンは慈慶殿へチェギョンを送らなければと思いながらもなかなか送れずにいた

なぜなら今後女官見習いとして宮殿に住みこむチェギョンが、東宮を訪れることなど周りの目もあり

できないだろうと思われたからだ

食後のお茶をお替わりしながら、チェギョンと共に過ごせる時間をなんとか引き延ばそうとするシンである

『ところで・・・女官宿舎と言うのはどこにあるのだ?』
『えっ?知らない。シン君も知らないの?』
『あぁ。女官宿舎などに用など無いからな。』

そう・・・確かに今までは興味などまったく無かった。だかこれからは宮殿の中で一番気になる場所となるだろう

シンはコン内官にその場所を確認しようと、コン内官を呼びつけた

『コン・・・いるか?』
『はい殿下。』
『調べて欲しい事があるのだが・・・』
『かしこまりました。殿下、エントランスに皇太后様がお越しになっております。』
『あ・・・もうそんな時間か?解った。すぐにチェギョンを連れて行く。』
『はい。調べものはその後でいたします。』
『あぁ頼む。』

非常に名残惜しい思いを胸に秘め、シンはチェギョンを見つめ微笑みかけた

『皇太后様がお前を送っていかれるようだ。さぁ行こう。』
『うん。でも両親は驚いちゃうよね。きっと皇太后様とお逢いした事も無いと思うんだ。』
『かもしれないが、お前の両親ならきっと大丈夫だろう。くくっ・・・』

エントランスでシンはチェギョンを皇太后に託し、シン家に向かう車を見送った

そしてその後執務室で山と積まれた王族の娘の釣り書を確認し始めた

何も目に入って来ない・・・それは以前にも増して酷くなっているようだ

<トントン>
『殿下失礼いたします。』

ノックをして入って来たのはコン内官だった

『ああすまない。調べて欲しい事だが、女官宿舎と言うのはどこにあるのだ?』
『女官宿舎でございますか?それは担当部署の宮殿の裏手にございます。』
『そんなに遠いのか・・・』

つい本音を呟いてしまったシンに、その言葉の真意を痛いほど解っているコン内官は窘めた

『殿下・・・皇太子殿下が女官宿舎に出入りするなど、あってはならない事でございます。
宮殿は陛下の目もございますので、くれぐれも配慮の無い行動はお控えください。』
『解っている!!』

自分の心を見透かされた気がして、シンは非常に苛立った

外でも自由にはならない。宮殿の中でさえ自由がない。

シン・チェギョンが宮殿内に居ても、逢いに行く事すら叶わない

常に学校と宮殿という同じ場所に居るにもかかわらず、その状況さえ知ることが出来ないのは

シンにとって苦しみでしかないだろう





東宮を出た公用車は、皇太后とチェギョンを乗せてシン家に向かって行く

『チェギョン・・・本当に住み込みでよいのか?家から離れるのは寂しかろう。』
『いいえ皇太后様、住み込みの方がきっと両親も安心すると思います。
遅い時間に帰ったりしなくて良いのですから・・・』
『そうか?しっかり頼むぞ。』
『はい。至らないところはなんなりと仰ってください!!』
『おぉ。おほほほほ・・・・』

孫と同じ年の娘が自分の世話を焼いてくれる。しかもそのシン・チェギョンは実にしっかり者だ

皇太后は明日からが楽しみで仕方がないようである

やがてシン家の前に公用車は到着し、チェギョンは皇太后を伴い敷地の中に入っていく

シン家では見知らぬ人間がチェギョンの自転車を届けに来た事で、チェギョンの安否をとても心配していた

『ただいま~♪』

チェギョンが玄関の扉を開けると、両親は揃って玄関に駆けつけた

『チェギョンあなた一体・・・えっ?』
『チェギョン・・・うおっ・・・』

チェギョンと共に家の中に入って来た皇太后の姿を一目見て、二人は腰を抜かさんばかりに驚いた

『こっ・・・皇太后様・・・』『チェギョン・・・なぜ・・・・』
『あ・・・事情は中で説明するよ。皇太后様、どうぞお上がりください。』

チェギョンに先にそう言われ、スンレとナムギルも慌てて皇太后を招き入れた

『あ・・・どうぞお上がりください。』 
『むさくるしいところですがどうぞ。』

皇太后をリビングのソファーに掛けるよう勧め、チェギョンはその向かいに両親と共に座った

『突然お邪魔してすまないのぉ。』
『あ・・・いえ、とんでもございません。あの・・・うちのチェギョンとは一体どのような・・・』
『そなたの父上と先帝が友人だった事は知っているだろう?』
『はい。もちろんそれは聞いておりました。』
『先帝がそうだったように皇太子もチェギョンと友人になったのだ。』
『えっ?まさか・・・。いや、同じ高校とは聞いておりましたが・・・』
『そんな縁もあってな、実はハン家が肩代わりしているこちらの借金を、私が清算させて貰った。』
『えっ?あ・・・あの、またそれは一体どのような理由で・・・』

知人に踏み倒された借金が巡り巡って皇太后の元に渡ったと聞かされれば、さすがに驚く事だろう

『まぁチェギョンの友人である皇太子の願いでもあり、先帝とこちらの御爺さんの生前の友情を考えたら
おかしくはないだろう?』
『えっ・・・・ですが皇太后様・・・』
『私はこれでチェギョンを自由にしてやろうと思ったのだが、チェギョンが聞かなくてな・・・
宮殿の下働きをしてくれると言う話になったのだ。
帰りが遅くなればご両親も心配するだろう?私が責任を持って預かる事にしたので、ご両親に挨拶をせねばと
思ってやってきた次第だ。』
『つ・・・つまり、チェギョンは私の背負った借金の為に宮殿で働くと言うのですか?』
『そうだ。異存はないな?』
『うぅっ・・・』

ナムギルは俯きしばらく考え込んでしまった。そしてその顔を上げた時、父ナムギルの目にはうっすら涙が

浮かんでいた

『皇太后様・・・あの・・・娘にこの様な苦労を掛けているのは、何を隠そう私が至らないからなのです。
安易に知人の借金の連帯保証人になどなってしまい、その人に逃げられ・・・追い打ちを掛けるように
仕事は解雇され・・・今は職に就きたくとも全くない状態で・・・
皇太后様・・・厚かましいと思いますがお願いがございます。娘一人にそのような大変な思いはさせられません。
調理士や栄養士・食品管理の資格などすべて所持しております。
どうか宮殿で私も雇ってください!!少しでも早くチェギョンが自分の道を見つけられるよう、
私も働かせてください。もちろんその給与は・・・すべて皇太后様への返済に当てさせていただきます。』
『それでは・・・奥さんが困るじゃろう?』

ナムギルの涙ながらの決心を聞き、スンレは皇太后に向かって首を横に振りそれから深々と頭を下げた

『皇太后様、我が家の家計でしたら私の収入でなんとかやりくりできます。
私からもお願いいたします。どうか主人に仕事をさせてあげてください!!』

人の借金を背負い職場も解雇となってからのナムギルの姿は、妻として見ているのも辛い程だった

たとえ収入が借金の返済に消えようとも、生き生きと働くナムギルの姿がみたい・・・そう心から願うスンレだった

『そうか・・・奥さんまでもがそう言うのなら、聞いてみようかのぉ。』

皇太后はそう言うなりスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めた


『もしもし?仕事中にすまないな。聞きたい事があるのだが、今・・・料理人の人手は足りておるか?
おっ?足りておらぬと申すか♪一人いい人材が居るのだが・・・・
おぉ~もちろん身元もしっかりして居る。覚えておらぬか?先帝の友人だったシン氏・・・
そうだ~あの家の息子じゃよ。おほほほほ~~♪
そうか!明日から早速?解った。明日10時にそなたの元へ行かせる。
おぉ・・・よろしく頼んだぞ。おほほほほ~♪』

電話を切ったあと皇太后は目を輝かせ夫婦二人に告げる

『良かったなぁ。料理人が辞めてしまって人手が欲しいところだそうだ。
明日10時に料理長の元を訪ねてくれ。そうだ・・・明日チェギョンも引っ越しだから、一緒に来ると良いだろう。』
『ありがとうございます皇太后様。』
『なんとお礼を言ったらよいか。これでチェギョンも身近に感じられます。』
『うむうむ。よいのだ。ではチェギョン・・・今日は荷造りをして、明日に備えなさい。
今夜は家族水入らずでゆっくり過ごすのだぞ。』
『はい。皇太后様。感謝いたします。』

その夜・・・シン家では節約生活を続けてきた母が、一生懸命に腕を振るった料理が食卓に並び

チェギョンを送り出す寂しさを必死で紛らわせた

いよいよ明日・・・チェギョンは宮殿入りをする

だがそれはあくまでも女官見習いと言う一番低い身分であった



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さて・・・チェギョンの宮殿入りは
色んな事が待ち構えていそうです。
学校内の事もあるしね・・・
ちなみにヒョリンは・・・同じ高校に居たりしてね~~
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!







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