誰もいないシーズンオフの薔薇園の中・・・たった二人きり、私達だけの世界が広がる
オッパのポケットの中で握り締められた私の手は解放され、オッパは驚くほど強い力で私を抱きしめた
私もそんなオッパに応える様にオッパの腰に腕を回した
その行為自体はすごく優しいのに、抱きしめる力はものすごく強い
息もできないほどの力強さに、気を失わんばかりになった時・・・漸くオッパは唇を離した
でも・・・目を閉じたままでもオッパの顔がすぐ近くにある事を感じ、私はうっすらと目を開けてみる
至近距離でオッパが微笑んでいる。冷たい鼻先が私の鼻先を突く
私は目を見開いて瞬きをする。睫毛がオッパの睫毛とぶつかりそうな距離だ
『チェギョン・・・雪が降って来た。』
『えっ・・・?』
先程まで雲ひとつない青空だったと言うのに、驚いてオッパから空に目を向けると灰色の空から
雪がチラチラ舞い降りてくる
『どうりで寒いと思った。』
『こうしたら寒くない。』
オッパは私の背後に回るとコートで私を包み込んだ
すごくあったかい・・・
『でもオッパ・・・これじゃあ歩けませんよぉ。』
『歩けるさ・・・はい左足・・・右足・・・左足・・・右足・・・』
オッパに言われるままオッパと同じ方の足を前に踏み出す私・・・
運動会の競技に出ている気分でなんだか楽しくなって来る
くくっ・・・くすくす・・・繰り返される含み笑いの中、私はオッパに報告しなければならない事が
あるのを思い出した
『あ・・・そうだオッパ、昨日の朝・・・ユル先生が≪来人生花店≫に来てくれたんです。』
『あぁ?ユルが?一体何の用事で・・・』
『ソ・ファヨンさんの一件のお詫びと・・・それから≪来夢生花店≫の修繕費用を置いて行かれました。』
『そうか・・・ユルもせめてもの償いにと思ったのだろう。』
『両親にすごく丁重に詫びていました。もちろん私にも・・・』
『息子として当然の事をしただけだろう。』
『でも・・・いいんですか?ソ・ファヨンさん・・・執行猶予が付かないかもって・・・』
『罪は罪だ。それにチェギョンは命さえ危うかったんだ。君が心配する事じゃない。』
あの日の事を思い出したのだろうか・・・私の腰の前で交差された腕に一瞬力がこもった
私は少しだけオッパに顔を向け微笑んで見せる
『オッパ・・・もう忘れましょう。』
『いや、そう言う訳にはいかない。』
『もう新しい年になったんですよ~~♪』
あの時の恐怖はずっと消えないだろう。でもそんな事をいつまでも気にしていては、私達は前に進めない
私はご機嫌を取る様にオッパの胸に頭を擦りつけた
『くっ・・・そうだな。』
灰色の空から次々と舞い降りてくる雪を蹴散らすように、私達は不自由な状態に密着し散歩を楽しんだ
漸く薔薇園を一周した私達・・・その頃にはお昼の時間になっていた
『そろそろ昼食にしよう。』
『はい。』
春になったらまた来ようと名残惜しく何度も振り返りながら、私達は薔薇園を後にした
薔薇園を出て車に乗り込み向かった先は、最寄りのカフェだった
この近所には参拝できる神社もある
まずは昼食を摂ろうと俺はチェギョンをその店に誘った
向かい合い軽食を頼みチェギョンはカフェラテ・・・俺はブラックコーヒーを飲む
『オッパ・・・これからどうします?』
『近くの神社に参拝しよう。』
『初詣ですね?はいっ♪』
『その後は家に行こう。家族も待っている。特に母がな・・・くくっ。』
『えっ・・・新年早々いいんですか?』
『あぁ・・・みんなお待ちかねだ。ご馳走が待っているらしい。』
『はいっ♪』
向かい合って軽食を頬張るチェギョンは実に健康的で愛らしい
テーブルの片隅に置かれた一輪挿しから漂う薔薇の香りを堪能しながら、俺達は昼食を済ませた
その後出向いた神社はすごい人出で、俺達ははぐれないようにと常にどこかを捕まえ合いながら
参拝を済ませた
混雑する神社でもみくちゃになったチェギョンは、少し疲れてしまったようだ
家に向かう車の中・・・チェギョンは眠そうな目を必死に開けようと努力している姿が見られた
今にも閉じてしまいそうなその目は、首が時折ガクッと項垂れる度・・・はっと目を見開く
昨日も遅くまで仕事だったんだ。きっと疲れているのだろう・・・
『チェギョン・・・俺の家に着くまで眠ったらどうだ?』
『えっ?大丈夫ですっ・・・』
『くくっ・・・今にも溶けそうな目をしているぞ。少し眠ったらいい・・・』
『本当ですか?じゃあ・・・お言葉に甘えて♪』
遠慮して必死に我慢していた割には、俺の承諾を得られたらあっという間に眠りに落ちるチェギョン
なんて・・・警戒心のない奴なんだ
俺が向かう先はイ家だと信じ切っている。いや・・・本当にそうなのだが・・・
少しは警戒してくれてもよさそうなものだと思いながら、俺はチェギョンの寝顔に時折目を向け自宅に戻って行く
『おい・・・着いたぞ。』
『えっ・・・・あ!!オッパ・・・熟睡してました。すみません~~!』
熟睡していたのは知っている。スヤスヤと寝息が聴こえてきたからな・・・
『さぁ降りよう。』
『はいっ♪』
どうやら寝起きはいい様だ
チェギョンを伴って玄関に向かって歩くと、車の音を聞きつけたのか母が玄関を開け出迎えに来ていた
『チェギョンさん~~久し振りっ♪』
『おば様・・・あけましておめでとうございます。』
『そんな挨拶はいいから~~さっ・・・中に入って♪ご馳走作って待っていたのよ~♪』
チェギョンが来る事がそんなに嬉しかったのか、母はまるで娘の様に頬を染めて興奮状態だ
母に促がされ玄関を入りリビングに向かうチェギョン。
俺は自分のコートを置きに一旦自室に戻った
『まぁ~~初詣に行って来たの?』
『はい~~♪』
母とチェギョンの楽しそうな声が聞こえる
俺もチェギョンの隣に腰掛け、そのうちには祖母も自室から出て来て何やらみんなが楽しそうに談笑する
『そうだチェギョンさん・・・今度、チャン家の婚礼のアレンジメントを引き受けたそうだね?』
父がそう話し掛けると、チェギョンは満面の笑みで頷いた
『はい!そうなんです。パク先生がお出ましくださらないって言うから責任重大です。』
『なんのなんの~~チェギョンさんにはスンレさんが居るではないか。ほほほほほ・・・
二人で力を合わせて成功させなさい。』
『はいっ。』
ギョンの挙式の件で一つ言い忘れたことがあった俺は、慌てて口を開いた
『あ・・・そうだチェギョン、花の大量手配はそちらに任せるのは大変だから、我が社で手配するよ。』
『あ~~そうですよね。うちとイ・コーポレーション別々に花を持ち込んだのでは、何だかややこしくなります。
手配する時は私の要望も聞いてください。』
『もちろんだ。』
新年早々仕事の話をしている俺達に、母は呆れた様な顔をしながらチェギョンにワインを勧めた
『さぁ~~チェギョンさん飲んで飲んで~~♪
ほら・・・シン、あなたも飲みなさい。折角のお正月なんだから~~おほほほほ~♪』
『いや母さん・・・俺は運転があるから・・・』
『いいじゃないの~~チェギョンさんは明日もお休みでしょう?泊ってっちゃえばいいのよぉ~。
なんなら私が電話してあげるわ~~おほほほほ』
『ばっ・・・何を馬鹿な事を・・・
そんな事を言ったらきっとチェギョンのお父さんが迎えに来てしまうに決まってる。』
『えっ?そうなの?チェギョンさん・・・』
チェギョンは可笑しそうに笑いながら答えた
『はい。きっと迎えに来てしまいます。』
『うんまぁ~そうなのぉ・・・・』
残念そうな母の顔を見て父も祖母も笑っている
だが、そんな楽しい団欒の席で俺は従兄弟のユルの事を思い出してしまった
きっと寂しい正月を過ごしている事だろう。うちに来たらいいのに・・・そう思いながらも、
もし俺がユルの立場なら、きっとこの家に顔を出せる筈はないだろうと思ってしまう
ユルは今・・・孤独と戦っているのだろう
そう思うと胸が痛んだ
オッパのポケットの中で握り締められた私の手は解放され、オッパは驚くほど強い力で私を抱きしめた
私もそんなオッパに応える様にオッパの腰に腕を回した
その行為自体はすごく優しいのに、抱きしめる力はものすごく強い
息もできないほどの力強さに、気を失わんばかりになった時・・・漸くオッパは唇を離した
でも・・・目を閉じたままでもオッパの顔がすぐ近くにある事を感じ、私はうっすらと目を開けてみる
至近距離でオッパが微笑んでいる。冷たい鼻先が私の鼻先を突く
私は目を見開いて瞬きをする。睫毛がオッパの睫毛とぶつかりそうな距離だ
『チェギョン・・・雪が降って来た。』
『えっ・・・?』
先程まで雲ひとつない青空だったと言うのに、驚いてオッパから空に目を向けると灰色の空から
雪がチラチラ舞い降りてくる
『どうりで寒いと思った。』
『こうしたら寒くない。』
オッパは私の背後に回るとコートで私を包み込んだ
すごくあったかい・・・
『でもオッパ・・・これじゃあ歩けませんよぉ。』
『歩けるさ・・・はい左足・・・右足・・・左足・・・右足・・・』
オッパに言われるままオッパと同じ方の足を前に踏み出す私・・・
運動会の競技に出ている気分でなんだか楽しくなって来る
くくっ・・・くすくす・・・繰り返される含み笑いの中、私はオッパに報告しなければならない事が
あるのを思い出した
『あ・・・そうだオッパ、昨日の朝・・・ユル先生が≪来人生花店≫に来てくれたんです。』
『あぁ?ユルが?一体何の用事で・・・』
『ソ・ファヨンさんの一件のお詫びと・・・それから≪来夢生花店≫の修繕費用を置いて行かれました。』
『そうか・・・ユルもせめてもの償いにと思ったのだろう。』
『両親にすごく丁重に詫びていました。もちろん私にも・・・』
『息子として当然の事をしただけだろう。』
『でも・・・いいんですか?ソ・ファヨンさん・・・執行猶予が付かないかもって・・・』
『罪は罪だ。それにチェギョンは命さえ危うかったんだ。君が心配する事じゃない。』
あの日の事を思い出したのだろうか・・・私の腰の前で交差された腕に一瞬力がこもった
私は少しだけオッパに顔を向け微笑んで見せる
『オッパ・・・もう忘れましょう。』
『いや、そう言う訳にはいかない。』
『もう新しい年になったんですよ~~♪』
あの時の恐怖はずっと消えないだろう。でもそんな事をいつまでも気にしていては、私達は前に進めない
私はご機嫌を取る様にオッパの胸に頭を擦りつけた
『くっ・・・そうだな。』
灰色の空から次々と舞い降りてくる雪を蹴散らすように、私達は不自由な状態に密着し散歩を楽しんだ
漸く薔薇園を一周した私達・・・その頃にはお昼の時間になっていた
『そろそろ昼食にしよう。』
『はい。』
春になったらまた来ようと名残惜しく何度も振り返りながら、私達は薔薇園を後にした
薔薇園を出て車に乗り込み向かった先は、最寄りのカフェだった
この近所には参拝できる神社もある
まずは昼食を摂ろうと俺はチェギョンをその店に誘った
向かい合い軽食を頼みチェギョンはカフェラテ・・・俺はブラックコーヒーを飲む
『オッパ・・・これからどうします?』
『近くの神社に参拝しよう。』
『初詣ですね?はいっ♪』
『その後は家に行こう。家族も待っている。特に母がな・・・くくっ。』
『えっ・・・新年早々いいんですか?』
『あぁ・・・みんなお待ちかねだ。ご馳走が待っているらしい。』
『はいっ♪』
向かい合って軽食を頬張るチェギョンは実に健康的で愛らしい
テーブルの片隅に置かれた一輪挿しから漂う薔薇の香りを堪能しながら、俺達は昼食を済ませた
その後出向いた神社はすごい人出で、俺達ははぐれないようにと常にどこかを捕まえ合いながら
参拝を済ませた
混雑する神社でもみくちゃになったチェギョンは、少し疲れてしまったようだ
家に向かう車の中・・・チェギョンは眠そうな目を必死に開けようと努力している姿が見られた
今にも閉じてしまいそうなその目は、首が時折ガクッと項垂れる度・・・はっと目を見開く
昨日も遅くまで仕事だったんだ。きっと疲れているのだろう・・・
『チェギョン・・・俺の家に着くまで眠ったらどうだ?』
『えっ?大丈夫ですっ・・・』
『くくっ・・・今にも溶けそうな目をしているぞ。少し眠ったらいい・・・』
『本当ですか?じゃあ・・・お言葉に甘えて♪』
遠慮して必死に我慢していた割には、俺の承諾を得られたらあっという間に眠りに落ちるチェギョン
なんて・・・警戒心のない奴なんだ
俺が向かう先はイ家だと信じ切っている。いや・・・本当にそうなのだが・・・
少しは警戒してくれてもよさそうなものだと思いながら、俺はチェギョンの寝顔に時折目を向け自宅に戻って行く
『おい・・・着いたぞ。』
『えっ・・・・あ!!オッパ・・・熟睡してました。すみません~~!』
熟睡していたのは知っている。スヤスヤと寝息が聴こえてきたからな・・・
『さぁ降りよう。』
『はいっ♪』
どうやら寝起きはいい様だ
チェギョンを伴って玄関に向かって歩くと、車の音を聞きつけたのか母が玄関を開け出迎えに来ていた
『チェギョンさん~~久し振りっ♪』
『おば様・・・あけましておめでとうございます。』
『そんな挨拶はいいから~~さっ・・・中に入って♪ご馳走作って待っていたのよ~♪』
チェギョンが来る事がそんなに嬉しかったのか、母はまるで娘の様に頬を染めて興奮状態だ
母に促がされ玄関を入りリビングに向かうチェギョン。
俺は自分のコートを置きに一旦自室に戻った
『まぁ~~初詣に行って来たの?』
『はい~~♪』
母とチェギョンの楽しそうな声が聞こえる
俺もチェギョンの隣に腰掛け、そのうちには祖母も自室から出て来て何やらみんなが楽しそうに談笑する
『そうだチェギョンさん・・・今度、チャン家の婚礼のアレンジメントを引き受けたそうだね?』
父がそう話し掛けると、チェギョンは満面の笑みで頷いた
『はい!そうなんです。パク先生がお出ましくださらないって言うから責任重大です。』
『なんのなんの~~チェギョンさんにはスンレさんが居るではないか。ほほほほほ・・・
二人で力を合わせて成功させなさい。』
『はいっ。』
ギョンの挙式の件で一つ言い忘れたことがあった俺は、慌てて口を開いた
『あ・・・そうだチェギョン、花の大量手配はそちらに任せるのは大変だから、我が社で手配するよ。』
『あ~~そうですよね。うちとイ・コーポレーション別々に花を持ち込んだのでは、何だかややこしくなります。
手配する時は私の要望も聞いてください。』
『もちろんだ。』
新年早々仕事の話をしている俺達に、母は呆れた様な顔をしながらチェギョンにワインを勧めた
『さぁ~~チェギョンさん飲んで飲んで~~♪
ほら・・・シン、あなたも飲みなさい。折角のお正月なんだから~~おほほほほ~♪』
『いや母さん・・・俺は運転があるから・・・』
『いいじゃないの~~チェギョンさんは明日もお休みでしょう?泊ってっちゃえばいいのよぉ~。
なんなら私が電話してあげるわ~~おほほほほ』
『ばっ・・・何を馬鹿な事を・・・
そんな事を言ったらきっとチェギョンのお父さんが迎えに来てしまうに決まってる。』
『えっ?そうなの?チェギョンさん・・・』
チェギョンは可笑しそうに笑いながら答えた
『はい。きっと迎えに来てしまいます。』
『うんまぁ~そうなのぉ・・・・』
残念そうな母の顔を見て父も祖母も笑っている
だが、そんな楽しい団欒の席で俺は従兄弟のユルの事を思い出してしまった
きっと寂しい正月を過ごしている事だろう。うちに来たらいいのに・・・そう思いながらも、
もし俺がユルの立場なら、きっとこの家に顔を出せる筈はないだろうと思ってしまう
ユルは今・・・孤独と戦っているのだろう
そう思うと胸が痛んだ
(薔薇の画像は薔薇の奥様こと『花が好き』のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
ガラ携ユーザーの為・・・猫座に招待できない方へのお詫びとして
後日・・・こちらで猫座のお話の
スピンオフをはじめさせていただきますね。
それでどうか許してね❤
お持ち帰りはご遠慮ください。)
ガラ携ユーザーの為・・・猫座に招待できない方へのお詫びとして
後日・・・こちらで猫座のお話の
スピンオフをはじめさせていただきますね。
それでどうか許してね❤