食事が済んだ後すぐに彼女を家に送ることにした俺・・・彼女は温室の中を眺めたいと言ったが、
今日は一秒でも早く家に送り届けた方がいいと俺は考えた
あの事件のあとだ・・・もちろんうちに来ている事は御両親も知っているだろうが、彼女が無事家に帰るまでは
生きた心地がしないだろう
彼女の家の前に車が到着した時、俺は彼女と一緒に車を降りた
『シンさん?』
俺のそんな行動に驚き彼女が問い掛けて来る
『挨拶して帰るよ。』
もちろん送り届けた挨拶だけじゃなく、彼女の御両親にお付き合いを認めて貰うつもりだった
『はい。』
彼女は少しはにかみながら俺と一緒に玄関に向かって歩く
そして驚くほど大きな声で帰って来た事をアピールする
『ただいま~~♪』
彼女なりの気遣いなのだろう。元気である事を知らせるかのような大きな声だ
その声を聞いた御両親は、玄関に駆けつけて来る
『お帰りなさいチェギョン。』
『チェギョン・・・体調は・・・』
彼女のお父さんは俺が玄関に立っている事に気がつき、徐に顔を背けた
明らかに・・・歓迎されていない顔つきだ
『こんばんは。』
俺はチェギョンさんの御両親に頭を下げた
『まぁ・・・送っていただいてありがとうございます。あの・・・どうぞおあがりください。』
『はい。では失礼いたします。』
通されたリビング・・・彼女と並んでソファーに腰掛けた
俺の前には苦虫を噛み潰したようなチェギョンさんのお父さんがテーブルの一点を見つめている
お母さんは微笑みながら俺にお茶を出してくれた
『チェギョン食事は?』
『あ・・・お母さん、シンさんのお宅でご馳走になったわ。』
『まぁ~イ・シンさん、フラワーアレンジメントもお世話になっていると言うのに、お食事まで申し訳ないわ。』
『いえとんでもありません。今夜はお願いしたい事があって伺いました。』
『まぁなにかしら?』
お父さんはチラチラと何度か俺に視線を向けるが、絶対に俺の目を見ようとはしない
父親の野生の勘か?
『あの・・・今日みたいな日にこんな事を言い出すのもなんですが、チェギョンさんと交際することを
お許しいただきたいのです。』
『えっ?』
お父さんが初めて俺に視線をしっかり向けた
『交際とは?』
『正式にお付き合いしたいのです。』
『今朝警察で話した時には・・・そんなことは一言も・・・』
『はいその通りです。その後チェギョンさんと話し合い、お付き合いすることになりました。』
『そんなことを勝手に決められても困る!!それに・・・あの事件の責任が君にあるって言うのは
どういう意味かね?』
チェギョンさんのお父さんはその事がずっと気に掛かっていたのだろう
俺は掻い摘んでチェギョンさんのお父さんに説明をした
『つまり・・・うちの娘はお宅の骨肉の争いのとばっちりを受けたってことなのか?』
『はい・・・そう言う事になります。申し訳ありません。』
『そんな危険な家の息子と娘が縁を結ぶのを喜ぶ親はいないだろう?帰ってくれ!!』
受け入れていただける気配すら感じない。俺は唇を噛みしめて俯いた
帰れと言われて帰るわけにはいかない
するとそんな光景を見かねたのか、チェギョンさんが助け船を出してくれた
『お父さん・・・別に結婚する訳じゃないんだから、お付き合いするくらいいいでしょう?』
『お付き合いするだけなのか?』
お父さんはまた俺に問い掛けた
『いえ、28と25の大人ですから、この先結婚と言う事も十分にあり得ます。』
『絶対に許さんっ!!君の家は名家だ。それなりの家から嫁を貰ったらいい。うちの娘は諦めてくれ!』
随分嫌われてしまったものだ。あの時・・・病院でいきなり抱き締めたのがいけなかったのか・・・
『お父さん・・・私、もう25歳よ。立派な大人よ。男性とのお付き合いを反対するなんておかしいわ。』
『だがなチェギョン・・・お父さんはお前が、この人と付き合う事になったらもっと危険な目に
遭うんじゃないかって心配で・・・』
『お父さんそれなら心配ないわ。事件解決するまで女刑事が私の護衛をしてくれるのよ♪
ほら・・・覚えてない?ガンヒョン・・・ガンヒョンが刑事になったの~♪』
『なにっ?ガンヒョンちゃんが?あの子はどこか普通の子とは違うと思ったんだ。
そうか~ガンヒョンちゃんが~♪』
彼女のお父さんが表情を崩した。ここで攻め入るしかないだろう
『チェギョンさんを二度と危険な目に遭わせないと約束します。ですので・・・どうか交際を認めてください。』
『うむぅ・・・だったら清く正しい交際をしなさい。病院で見たような抱擁は・・・実にけしからん!』
あぁ?28の男に清く正しい交際・・・俺は思わず溜息を洩らした
するとやはり見かねたお母さんが、助け船を出してくれた
『お父さん、もういい加減にしてください!本人同士が好き合っているならいいじゃないの。』
お母さんとチェギョンさんに窘められ、お父さんも観念したようだ
『・・・くぅ~仕方ない。シン君・・・本当にチェギョンに危険なことが起こらない様にしてくれるか?』
『はい!お約束します。』
『だったら・・・仕方がない・・・母さん、私は先に失礼するよ。』
彼女のお父さんは項垂れてリビングを出て行ってしまった
父親って言うのは・・・実に寂しい存在なのだな
彼女のお父さんを見て、俺は娘の父親にはなりたくないと正直思ってしまった
なんとか父をなだめて交際を承諾させたシンさんは、≪じゃあ・・・お母さんに伝言を頼んだよ。≫と言い残し
家に帰って行った
シンさん疲れただろうな・・・今日は色々なことがあったから。でもそれは私も同じだった
シンさんが帰った後、私は母にパク先生からのお願い事を話す事にする
『お母さん・・・パク先生がお母さんにお願いしたい事があるから、近々家に来て欲しいって言ってるの。』
『えっ?私がイ家に?』
『うん。嫌かな・・・』
『ふふふ・・・別にそんなことないわ。もう昔のことだしね。』
シンさんの家に行った時、パク先生の言っていた言葉で母が完全なる片想いだった事を私は実感した
シンさんのお父様は≪妹のように≫母を可愛がっていたのだ。それを母は勘違いしてしまった
『それよりチェギョン・・・良かったわね。あなたはシンさんのことが好きなんじゃないかと思ってはいたけど
彼の気持ちがあなたに向いていて。』
『私も何度も勘違いしてるかな?って思ったの。
でもあのハグは・・・やっぱり勘違いで済ませられなくて、彼に聞いちゃった♪』
『それでお付き合いすることになったの?』
『うん。そうよ。あ・・・お母さん、パク先生のところにいつ行く?』
『≪来夢生花店≫の車両販での売はまだ準備が整わないし、明日・・・早速行きましょうか?』
『私も一緒に行くわ。』
『そうね。あなたも一緒の方が心強いわ。少し敷居が高いのよ。ふふふ・・・』
翌日先に連絡を入れて、私と母はイ家を訪れた
母がこの場所に通っていた頃にはまだ温室は無かったそうで、敷地内を歩きながら母は驚きの表情をし
その一方で若き頃を思い出すかのように目を細めた
『こんにちは~パク先生。チェギョンです。』
『いらっしゃい~♪』
玄関に出迎えに来てくれたのは彼のお母様だった
それにはさすがの母も動揺したようだ
『あ・・・あの、はじめまして。シン。チェギョンの母でイ・スンレと申します。』
『まぁ~良くお越しくださいました~♪どうぞおあがりください。義母も待ちかねておりますよ。』
『はい。失礼いたします。』
奥にあるパク先生のお部屋に向かう間・・・母はものすごく緊張した顔をしている
不義理をしていきなり辞めてしまった事への申し訳なさだろうか
『パク先生失礼いたします。』
私が扉を開けると、母は深々と頭を下げパク先生の元へ駆け寄った
『先生!!ご無沙汰してしまい本当に申し訳ございません。』
『おぉぉ・・・スンレさん、少しも変わっておらん。相変わらず可愛らしいのぉ・・・』
見ると母もパク先生もうっすらと目に涙を浮かべている
ひとしきり再会の喜びに浸った二人。私はその様子を少し離れて見守っていた
『ところでパク先生・・・本日私をこちらに呼んだ理由は何でしょう?』
『おぉ・・・そのことなのだが、実は・・・現フラワーアレンジメント協会の理事長を解任したいと思ってな。』
『先生・・・私はもう随分、フラワーアレンジメントの世界から離れておりまして、現理事長がどなたなのかを
知らないのですが・・・』
『ファヨンだ。ソ・ファヨン・・・知っておるだろう?』
『えっ?ファヨンさんが・・・もしかしてファヨンフラワーと言うのは・・・』
『もちろんそうじゃ。ソ・ファヨンが社長をして居る。』
『あまりにもこの業界の表に出ない様にしていたものですから、全然気がつきませんでした。
では・・・ファヨンさんはパク先生のお嫁さんと言う事になりますでしょう?』
『あぁそうだ。だが長男が亡くなり夫が亡くなってから、ファヨンは変わった。
アレンジメントも私とは全然違うものだったが、金の亡者になってしまったようだ。
今回の事件もどうやら黒幕はファヨンらしい。』
『そんな・・・』
『あなたの家の大事な一号店を壊し、大切なチェギョンさんに怪我を負わせた女だ。
とにかく前理事長の権限で理事たちをこちら側に取りこむ。
ひとまずファヨンを引きずりおろして私がその椅子に座る事になるが・・・私は見ての通り高齢だ。
そこでスンレさん・・・お願いがあるのだ。またフラワーアレンジメントの世界に戻っては貰えないか?
チェギョンさんに次期理事長を譲ろうにも、まだ年齢も若く経験も浅い。
私にいつ何があっても困らない様に、スンレさんに理事の席に着いて欲しいのだ。』
『パク先生・・・私はもう随分フラワーアレンジメントの世界から離れています・・・
店でも一切アレンジメントはしていないんですよ。そんな私が理事になれる筈ありません!』
『いや・・・スンレさん、あなたしかお願いできる人がいないのだ。
今・・・ファヨンを理事長の座から降ろさないと、ファヨンが逮捕でもされた折には
フラワーアレンジメント協会自体が危うくなってしまう。
あなたならきっとすぐに、昔の勘を取り戻せるだろう。どうか年寄りの最後の願いだと思って
聞いてはくださらぬか?』
深々と母に頭を下げたパク先生・・・先生にここまで言われたら母も断るに断れない状況なのは
娘の目にも明らかだった
かなり長い間俯き考えこんでいた母・・・漸く顔を上げパク先生の目をしっかり見つめその手を握り締めた
『解りました。パク先生・・・今日から猛特訓してフラワーアレンジメントの世界に戻ります。』
『おぉ・・・私の願いを聞いてくれるか。ありがとう・・・ありがとう・・・』
ご高齢でありながら、身内のスキャンダルに心を痛める先生・・・
私も二人の先生と共に、フラワーアレンジメントの世界で頑張らないと・・・そう強く心に誓った
今日は一秒でも早く家に送り届けた方がいいと俺は考えた
あの事件のあとだ・・・もちろんうちに来ている事は御両親も知っているだろうが、彼女が無事家に帰るまでは
生きた心地がしないだろう
彼女の家の前に車が到着した時、俺は彼女と一緒に車を降りた
『シンさん?』
俺のそんな行動に驚き彼女が問い掛けて来る
『挨拶して帰るよ。』
もちろん送り届けた挨拶だけじゃなく、彼女の御両親にお付き合いを認めて貰うつもりだった
『はい。』
彼女は少しはにかみながら俺と一緒に玄関に向かって歩く
そして驚くほど大きな声で帰って来た事をアピールする
『ただいま~~♪』
彼女なりの気遣いなのだろう。元気である事を知らせるかのような大きな声だ
その声を聞いた御両親は、玄関に駆けつけて来る
『お帰りなさいチェギョン。』
『チェギョン・・・体調は・・・』
彼女のお父さんは俺が玄関に立っている事に気がつき、徐に顔を背けた
明らかに・・・歓迎されていない顔つきだ
『こんばんは。』
俺はチェギョンさんの御両親に頭を下げた
『まぁ・・・送っていただいてありがとうございます。あの・・・どうぞおあがりください。』
『はい。では失礼いたします。』
通されたリビング・・・彼女と並んでソファーに腰掛けた
俺の前には苦虫を噛み潰したようなチェギョンさんのお父さんがテーブルの一点を見つめている
お母さんは微笑みながら俺にお茶を出してくれた
『チェギョン食事は?』
『あ・・・お母さん、シンさんのお宅でご馳走になったわ。』
『まぁ~イ・シンさん、フラワーアレンジメントもお世話になっていると言うのに、お食事まで申し訳ないわ。』
『いえとんでもありません。今夜はお願いしたい事があって伺いました。』
『まぁなにかしら?』
お父さんはチラチラと何度か俺に視線を向けるが、絶対に俺の目を見ようとはしない
父親の野生の勘か?
『あの・・・今日みたいな日にこんな事を言い出すのもなんですが、チェギョンさんと交際することを
お許しいただきたいのです。』
『えっ?』
お父さんが初めて俺に視線をしっかり向けた
『交際とは?』
『正式にお付き合いしたいのです。』
『今朝警察で話した時には・・・そんなことは一言も・・・』
『はいその通りです。その後チェギョンさんと話し合い、お付き合いすることになりました。』
『そんなことを勝手に決められても困る!!それに・・・あの事件の責任が君にあるって言うのは
どういう意味かね?』
チェギョンさんのお父さんはその事がずっと気に掛かっていたのだろう
俺は掻い摘んでチェギョンさんのお父さんに説明をした
『つまり・・・うちの娘はお宅の骨肉の争いのとばっちりを受けたってことなのか?』
『はい・・・そう言う事になります。申し訳ありません。』
『そんな危険な家の息子と娘が縁を結ぶのを喜ぶ親はいないだろう?帰ってくれ!!』
受け入れていただける気配すら感じない。俺は唇を噛みしめて俯いた
帰れと言われて帰るわけにはいかない
するとそんな光景を見かねたのか、チェギョンさんが助け船を出してくれた
『お父さん・・・別に結婚する訳じゃないんだから、お付き合いするくらいいいでしょう?』
『お付き合いするだけなのか?』
お父さんはまた俺に問い掛けた
『いえ、28と25の大人ですから、この先結婚と言う事も十分にあり得ます。』
『絶対に許さんっ!!君の家は名家だ。それなりの家から嫁を貰ったらいい。うちの娘は諦めてくれ!』
随分嫌われてしまったものだ。あの時・・・病院でいきなり抱き締めたのがいけなかったのか・・・
『お父さん・・・私、もう25歳よ。立派な大人よ。男性とのお付き合いを反対するなんておかしいわ。』
『だがなチェギョン・・・お父さんはお前が、この人と付き合う事になったらもっと危険な目に
遭うんじゃないかって心配で・・・』
『お父さんそれなら心配ないわ。事件解決するまで女刑事が私の護衛をしてくれるのよ♪
ほら・・・覚えてない?ガンヒョン・・・ガンヒョンが刑事になったの~♪』
『なにっ?ガンヒョンちゃんが?あの子はどこか普通の子とは違うと思ったんだ。
そうか~ガンヒョンちゃんが~♪』
彼女のお父さんが表情を崩した。ここで攻め入るしかないだろう
『チェギョンさんを二度と危険な目に遭わせないと約束します。ですので・・・どうか交際を認めてください。』
『うむぅ・・・だったら清く正しい交際をしなさい。病院で見たような抱擁は・・・実にけしからん!』
あぁ?28の男に清く正しい交際・・・俺は思わず溜息を洩らした
するとやはり見かねたお母さんが、助け船を出してくれた
『お父さん、もういい加減にしてください!本人同士が好き合っているならいいじゃないの。』
お母さんとチェギョンさんに窘められ、お父さんも観念したようだ
『・・・くぅ~仕方ない。シン君・・・本当にチェギョンに危険なことが起こらない様にしてくれるか?』
『はい!お約束します。』
『だったら・・・仕方がない・・・母さん、私は先に失礼するよ。』
彼女のお父さんは項垂れてリビングを出て行ってしまった
父親って言うのは・・・実に寂しい存在なのだな
彼女のお父さんを見て、俺は娘の父親にはなりたくないと正直思ってしまった
なんとか父をなだめて交際を承諾させたシンさんは、≪じゃあ・・・お母さんに伝言を頼んだよ。≫と言い残し
家に帰って行った
シンさん疲れただろうな・・・今日は色々なことがあったから。でもそれは私も同じだった
シンさんが帰った後、私は母にパク先生からのお願い事を話す事にする
『お母さん・・・パク先生がお母さんにお願いしたい事があるから、近々家に来て欲しいって言ってるの。』
『えっ?私がイ家に?』
『うん。嫌かな・・・』
『ふふふ・・・別にそんなことないわ。もう昔のことだしね。』
シンさんの家に行った時、パク先生の言っていた言葉で母が完全なる片想いだった事を私は実感した
シンさんのお父様は≪妹のように≫母を可愛がっていたのだ。それを母は勘違いしてしまった
『それよりチェギョン・・・良かったわね。あなたはシンさんのことが好きなんじゃないかと思ってはいたけど
彼の気持ちがあなたに向いていて。』
『私も何度も勘違いしてるかな?って思ったの。
でもあのハグは・・・やっぱり勘違いで済ませられなくて、彼に聞いちゃった♪』
『それでお付き合いすることになったの?』
『うん。そうよ。あ・・・お母さん、パク先生のところにいつ行く?』
『≪来夢生花店≫の車両販での売はまだ準備が整わないし、明日・・・早速行きましょうか?』
『私も一緒に行くわ。』
『そうね。あなたも一緒の方が心強いわ。少し敷居が高いのよ。ふふふ・・・』
翌日先に連絡を入れて、私と母はイ家を訪れた
母がこの場所に通っていた頃にはまだ温室は無かったそうで、敷地内を歩きながら母は驚きの表情をし
その一方で若き頃を思い出すかのように目を細めた
『こんにちは~パク先生。チェギョンです。』
『いらっしゃい~♪』
玄関に出迎えに来てくれたのは彼のお母様だった
それにはさすがの母も動揺したようだ
『あ・・・あの、はじめまして。シン。チェギョンの母でイ・スンレと申します。』
『まぁ~良くお越しくださいました~♪どうぞおあがりください。義母も待ちかねておりますよ。』
『はい。失礼いたします。』
奥にあるパク先生のお部屋に向かう間・・・母はものすごく緊張した顔をしている
不義理をしていきなり辞めてしまった事への申し訳なさだろうか
『パク先生失礼いたします。』
私が扉を開けると、母は深々と頭を下げパク先生の元へ駆け寄った
『先生!!ご無沙汰してしまい本当に申し訳ございません。』
『おぉぉ・・・スンレさん、少しも変わっておらん。相変わらず可愛らしいのぉ・・・』
見ると母もパク先生もうっすらと目に涙を浮かべている
ひとしきり再会の喜びに浸った二人。私はその様子を少し離れて見守っていた
『ところでパク先生・・・本日私をこちらに呼んだ理由は何でしょう?』
『おぉ・・・そのことなのだが、実は・・・現フラワーアレンジメント協会の理事長を解任したいと思ってな。』
『先生・・・私はもう随分、フラワーアレンジメントの世界から離れておりまして、現理事長がどなたなのかを
知らないのですが・・・』
『ファヨンだ。ソ・ファヨン・・・知っておるだろう?』
『えっ?ファヨンさんが・・・もしかしてファヨンフラワーと言うのは・・・』
『もちろんそうじゃ。ソ・ファヨンが社長をして居る。』
『あまりにもこの業界の表に出ない様にしていたものですから、全然気がつきませんでした。
では・・・ファヨンさんはパク先生のお嫁さんと言う事になりますでしょう?』
『あぁそうだ。だが長男が亡くなり夫が亡くなってから、ファヨンは変わった。
アレンジメントも私とは全然違うものだったが、金の亡者になってしまったようだ。
今回の事件もどうやら黒幕はファヨンらしい。』
『そんな・・・』
『あなたの家の大事な一号店を壊し、大切なチェギョンさんに怪我を負わせた女だ。
とにかく前理事長の権限で理事たちをこちら側に取りこむ。
ひとまずファヨンを引きずりおろして私がその椅子に座る事になるが・・・私は見ての通り高齢だ。
そこでスンレさん・・・お願いがあるのだ。またフラワーアレンジメントの世界に戻っては貰えないか?
チェギョンさんに次期理事長を譲ろうにも、まだ年齢も若く経験も浅い。
私にいつ何があっても困らない様に、スンレさんに理事の席に着いて欲しいのだ。』
『パク先生・・・私はもう随分フラワーアレンジメントの世界から離れています・・・
店でも一切アレンジメントはしていないんですよ。そんな私が理事になれる筈ありません!』
『いや・・・スンレさん、あなたしかお願いできる人がいないのだ。
今・・・ファヨンを理事長の座から降ろさないと、ファヨンが逮捕でもされた折には
フラワーアレンジメント協会自体が危うくなってしまう。
あなたならきっとすぐに、昔の勘を取り戻せるだろう。どうか年寄りの最後の願いだと思って
聞いてはくださらぬか?』
深々と母に頭を下げたパク先生・・・先生にここまで言われたら母も断るに断れない状況なのは
娘の目にも明らかだった
かなり長い間俯き考えこんでいた母・・・漸く顔を上げパク先生の目をしっかり見つめその手を握り締めた
『解りました。パク先生・・・今日から猛特訓してフラワーアレンジメントの世界に戻ります。』
『おぉ・・・私の願いを聞いてくれるか。ありがとう・・・ありがとう・・・』
ご高齢でありながら、身内のスキャンダルに心を痛める先生・・・
私も二人の先生と共に、フラワーアレンジメントの世界で頑張らないと・・・そう強く心に誓った
(薔薇の画像は薔薇の奥様こと『花が好き』のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
土日は【ふぅめる通信】および『多肉通信』を
お送りいたします。
お話の更新はまた月曜日にね~~❤
お持ち帰りはご遠慮ください。)
土日は【ふぅめる通信】および『多肉通信』を
お送りいたします。
お話の更新はまた月曜日にね~~❤