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Channel: ~星の欠片~
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≪来夢生花店≫ 8

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イ・シンさんと残念会をした翌朝、私は又母の追及を受けていた

『ねえチェギョン・・・昨日送って下さった方はどなた?ユル先生の車じゃなかったみたいだけど・・・』
『あ~うん。ユル先生じゃないわ。イ・コーポレーションの専務さんよ。』
『えっ?なんですって?イ・コーポレーションの専務・・・』

母は私を送ってくれた人物を知り相当驚いた様だ

『うん。そうなの・・・』
『一体どうしてあなたが、イ・コーポレーションの専務さんと知り合ったの?』
『う~~んそれは、お客様の個人的なことだから話せない。』
『お客様って・・・同業者じゃないの。お客様になるなんてありえないわ。』
『でも事実よ。』
『チェギョン・・・あなたもお年頃なんだから気をつけなくちゃダメよ。
イ・コーポレーションの専務と噂になどなったら、あなた・・・この業界では嫁の行き手がないわよ。』

なぜ母は、ユル先生に送られた時にはけし掛けるような事を言っていたのに・・・

相手がイ・シンさんだとこんな事を言うのだろう。なんだか納得できない

『もぉ!そんなんじゃないから安心して!!それとお母さん、私・・・ユル先生の教室辞める。』
『えっ?どうして?長年通った教室なのに・・・』
『ユル先生の下ではもう私は伸びないと思うからよ。』

それだけ告げると私は出勤の準備をし、家族より早く家を出た

昨日の無残な結果を話すのは・・・あまりにも惨めな上説明も面倒だ

まだ誰も来ていない店内で私は早めに掃除を済ませ、そして売り物にならない花とわずかばかりの自己負担で

昨日の屈辱を晴らそうとアレンジメントフラワーを作った

黄色とピンクの薔薇のはなをアレンジし、クリスマスムードではない温かな春の日差しを想わせる

アレンジメントフラワーを作った

出来上がってみてやはり、私は昨日のコンテストではどう足掻いても入賞しない事を知った

あまりう派手なのは私の気性に逢わないのだ

そうしているうちにウナやユリンも出勤し・・・私にはいつも通りの日常が戻ってくる

今までと違う事と言えば、閉店間際に訪れたイ・シンさんが今日から来ない事だけ・・・

元気出して頑張ろう!!そう自分に言い聞かせ仕事に没頭する

来客がひと段落し漸く手が空いて休憩しようと思った時、ポケットの中でマナーモードにしてある携帯が振動した

ポケットから携帯を取り出し、電話の発信者を見る

そこには昨日登録されたばかりの≪イ・シン≫さんの名前があった

『もしもし?』
『チェギョンさん・・・今、何していた?』
『何って仕事です。シンさんは?』
『俺も仕事中だ。』
『もぉ~ちゃんとお仕事してくださいっ!』
『くくっ・・・解ったよ。元気にしているならそれでいい。じゃあ・・・』
『あ!ちょっと待ってください。』
『なんだ?』
『ユル先生に、教室を辞めるって言って来ようと思っています。』
『いつ?』
『今夜です。』
『俺も一緒に行こうか?』
『えっ?』
『昨日の今日だし・・・ただでさえ逢い難いのに一人じゃ心細いだろう?』
『あ・・・大丈夫ですよ~♪』
『いや・・・俺が心配だからついていく。何時に行ったらいい?』
『何時に行ったら?とは?』
『店まで迎えに行く。』
『本当にいいんですか?では早めに片付けを済ませますので8時半に・・・』
『解った。8時半に店の前で待っている。じゃあまた後で・・・』
『はい。』

正直な気持ちを言うと、一人でユル先生に逢いに行くのは怖かった

だからシンさんの申し出は本当にありがたかった

ここまで甘えてしまっていいのだろうか・・・と言う思いよりも、今日も逢えると言う気持ちの方が強かった

閉店後、私はいつもより手早く在庫管理と片付けをし8時半よりも少し前に店内の電気をすべて消して

外に出て行った

するともう・・・昨日の高そうな車は店舗の前の道路に横付けされていた

『シンさんこんばんは~♪』
『こんばんは。寒いから早く乗って。』
『はいっ!!』

私が助手席に乗り込みシートベルトを締めると、イ・シンさんの車はユル先生の教室目指して走り出した

『シンさん・・・あの・・・昨日私が話したことは言わないでくださいね。』
『あぁ?なぜ?』
『平和に終わらせたいんです。だから・・・お願いできますか?』
『そうだな。あまりいい気分はしないがユルとは従兄弟だから、これからも顔を合わすことになるし・・・
君が穏便に辞められるよう協力するよ。』
『ありがとうございます。』

ユル先生の教室のあるビルの駐車場に到着し、私とイ・シンさんはエレベーターに乗り

教室のある階に向かった

ユル先生の教室の前に到着した時・・・ユル先生の声が聞こえた

どうやら誰かと電話中のようだ

【だから母さん!シン・チェギョンには振られたんだって!!
シン・チェギョンを上手く抱きこんで≪来夢生花店≫を僕の物にできたら
この業界ナンバー1に≪ファヨンフラワー≫がなること間違いなしだったのに・・・。
そうだよ。融通の利かない女さシン・チェギョンは・・・。
僕のネームバリューで有名にしてあげようと思ったのに・・・なびきもしなかった。』

ユル先生の電話のお相手は、恐らくユル先生のお母様だろう

そう言うことだったんだ・・・そう言う魂胆があるなんて知らずに、ユル先生の言った言葉に振り回されていた

自分が滑稽で哀れで笑いがこみ上げてきそうだ・・・

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、隣でその会話を聞いていたイ・シンさんは

大きな音を立ててドアを開いた

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ユルの電話の相手・・・それはファヨン伯母さんだろう。その内容を耳にしてしまい、俺は怒りで頭に血が上って

しまったようだ

真剣にシン・チェギョン嬢の事を想っていると信じ、宣言までした俺が馬鹿だった

こんなやつに遠慮などする必要はどこにもなかった

俺はユルに走り寄り、その胸倉を掴んだ。もちろんその先はユルの左頬にパンチをお見舞いする予定だった

ところが・・・

『イ・シンさんやめてください!』

チェギョンさんの悲痛な声が俺の行動を止めた。ここで止めたら男が廃るだろう?

だが彼女はそんなことは全く望んでいないようだ

何度も哀願する彼女に根負けし、俺はユル野胸倉を掴んでいた手を離した

『ユル先生・・・今まで大変お世話になりました。今日限りで教室を辞めさせていただきます。
それと・・・何か誤解なさっているようですが、私は≪来夢生花店≫の店長と言うだけの存在です。
生憎ですがあの店は私の物じゃありません。お付き合いしなくて良かったですね。
では失礼します。シンさん・・・行きましょう。』

彼女はまだユルに掴みかかりそうな俺の腕を掴むと、引っ張る様にして教室から出した

そして・・・俺の前を肩を落とし歩いていく

俺はすぐに彼女の横に並び、その肩を抱くとエレベーターに一緒に乗り込んだ

『何を信じたらいいのか分からない・・・』

俯いた彼女がポツリと呟く

俺は何も言わず彼女の肩に回した手で、ポンポンと肩を叩いた

一緒に来て良かった。彼女を一人でユルの元へ行かさなくて本当に良かった

また今日も俺は彼女を慰めるべく・・・違う店に彼女を誘うのだった

昨日よりも小さな店に彼女を連れて行った俺・・・俺達は向かい合い食事を摂った

彼女に今日もワインを勧めたが、彼女は首を横に振った

『悪酔いしそうなのでやめておきます。』

昨日からの度重なるショックな出来事は、彼女から食欲を奪っていく

『フラワーアレンジメントの先生を失ってしまいました。これからどうしよう・・・』

おどけた様に首を傾げる彼女・・・その時俺の頭の中に、浮かんでくる人物がいた

彼女の良き先生になりそうな人物が俺には一人だけ思い当たったのだ

『チェギョンさん・・・一人だけいい先生を知っているんだ。』
『えっ?本当ですか?紹介していただけますか?』
『あぁ・・・フラワーアレンジメントの第一人者と言われた人だ。』
『そんな方とお知り合いなんですか?』
『あぁ。恐らく君の感性と似た人だろうと思うが・・・かなりの年配なんだ。』
『ご年配の方ですか?教えて下さるでしょうか・・・』
『教えてくれるか聞いてみるか?』
『はい!是非お願いします。』
『じゃあ・・・行こう。』
『えっ?もう遅い時間ですよ?』
『大丈夫だ。まだお着てらっしゃる筈だ。お願いに行こう。』
『はい!』

食事を終えた俺は彼女を車に乗せ、自宅へと向かって行った

俺の言うフラワーアレンジメントの第一人者だった人・・・それは俺の祖母だ

恐らく祖母も彼女に逢えば、快くフラワーアレンジメントの師となる事を引き受けてくれるだろう

彼女はまさかその行く先が俺の家だとは知らない・・・到着したらどんな反応をするのかが楽しみだ。くくくっ・・・


(薔薇の画像は薔薇の奥様こと『花が好き』のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)

イメージ 2

え~と、今回のお話において
ユル君を予想外にブラックにしてしまった事を
ユル君ファンの皆様・・・お詫び申し上げます。

なお・・・土日は【ふぅめる通信】および【多肉通信】を
お送りいたします~♪

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