朝、店に出勤して掃除を済ませた私は、仕入れた花を店に並べ・・・まだ時間が余った時には
前日に点検し売り物にならなくなってしまった花を見繕い、小さなアレンジメントフラワーを作る
葉や花弁の痛んでしまった部分を取り除き、自己満足のアレンジをするのだ
それはその時々によって大きな作品になったり、また飾れるほどの物は作れなかったりだが
大きなものは店先のショーケースに置いたりもする
もちろん飾れるほどのものじゃない時は、作業台の上にちょこんと置かれる
あくまでも自己満足なのだが、それでも私はとても気分が良い
その花の持っている美しさを全うさせられるのだから・・・
少し折れてしまったからと・・・少し痛んでしまったからと、捨ててしまえばそれで終わってしまう生命
そうしないのが私の主義だ
今日もちょっと大きめのアレンジメントフラワーが作れ、ショーケースを華やかにしてくれている
あ・・・でもその分確かに売り上げは減ってしまうんだけど・・・
忙しかった一日を癒してくれる時間がやって来る
そろそろあのお客様が訪れる時間だ
そう思った時・・・ショーケースの向こうにお客様の姿が見えた
あ・・・私の作ったアレンジメントフラワーをじっと見ている
なんだか恥ずかしい・・・私が見つめられているわけでもないのに、照れてしまう自分に呆れる
ドアベルを鳴らしながらお客様が入って来る
『いらっしゃいませ♪』
今日のネクタイも素敵ですね・・・と心の中で言ってみる
するとお客様はいつもとは違う言葉を私に投げかけた
『こんばんは。そこに飾ってあるアレンジメントはいくらなんだ?』
『えっ?』
『ほら・・・そこの籠に飾ってある物だ。』
『あ・・・すみません。それは売り物じゃないんです。』
『売り物じゃない?なぜ?』
『あれは売り物にならないお花を使って作った物なので、お売りできないんです。』
『つまり・・・非売品と言う訳か?』
『はい。申し訳ありません。』
『そうか。黙って売ってしまえば分からないのに・・・』
『くすくす・・・そんなことできません。信用第一ですから♪』
お客様は楽しそうに笑い、それから目に留まった薔薇を指差した
『じゃあ今日はこれを貰おう。』
『アンジェラですね。はい、かしこまりました。』
このお客様とこんなに話すのは初めてだ。私の作ったアレンジメントが話すきっかけを作るなんて、
とても幸せな気分・・・
『大変お待たせいたしました。』
『どうもありがとう。』
お客様は口角を上げて微笑むともう一度ショーケースに目を向け、店から出て行った
お花の神様が・・・私を見守ってくれているのかな
お客様のそんな反応が私の胸の中をあっためてくれた
その日はアレンジメントスクールの日だった
私の通う夜の部は夜の8時からの授業だ。でも私は閉店後片付けをしてから帰るので・・・どんなに急いでも
一時間遅れの授業になる
その頃にはすっかり作品が出来上がっている仲間もいて・・・いつも非常に肩身が狭い思いをしながら
教室に入る
『大変遅くなりました。』
おずおずと教室に入って行くと、ユル先生はいつも通りの笑顔で迎えてくれる
『遅刻はいつものことだからね。ふふふ・・・チェギョン、じゃあ僕のお手本を見てアレンジしてみて。
解らないところがあったら教えてあげるよ。』
『はいっ!!』
人よりも一時間遅れの分・・・必死に取り組む私。
でも私が作品を作っている間、仲間は一人帰り二人帰り・・・いつも最後に残るのは私とユル先生だけだ
『ユル先生・・・いつもすみません。』
『いいよチェギョン。君の事情は知っているしね。ふふふ・・・
でもここはもっと大胆に飾った方がいいんじゃない?』
ユル先生は私のアレンジメントの欠点を指摘する
『あ・・・でも、私この方が好きなんです。』
『保守的なんだなチェギョンは。ふふふ・・・』
優しいユル先生。どこか保守的な私のアレンジメントも、仕方がないと笑ってくれる
こうして出来上がったアレンジメントフラワーを全部オアシスから引き抜き、穴だらけになったオアシスを見ながら
私はセンスがないんじゃないかって少し・・・気弱になるのだ
『送って行くよチェギョン。』
『あ・・・いえ大丈夫です。』
『通り道だからさ・・・』
毎回言われてしまう母のセリフを聞くのが嫌で、最近ユル先生に送られるのが億劫になっている私
でも断るのも失礼かと思い厚意に甘えることにする
もうそろそろクリスマスシーズンだ。今年のクリスマス・・・私にサンタクロースはやって来るのかな・・・
仕事を終えて彼女の店に立ち寄る時間・・・その時間は俺にとって非常に大切なひと時となっていた
仕事はクリスマス商戦で非常に忙しく、ライバル社に負けないようにと社内はピリピリした空気に包まれている
そんな俺の疲れた心を癒してくれるのは、≪来夢生花店≫のシン・チェギョン嬢だった
その店の前に立っただけで気持ちが安らぐ。店内に彼女の姿が見えると胸の中が温かくなる
そんなある日・・・表のディスプレーにアレンジメントフラワーが飾られているのに気がつき、俺は足を止めた
きっと彼女がアレンジしたんだろう
華美ではない可憐なその花籠を見ていて、つい買って帰ろうかという衝動に駆られた俺は金額を尋ねた
ところが・・・それは売り物ではないと言う
そうか・・・売り物にならない花にこうやってもう一度命を吹き込んだのか
幸せだな・・・
俺はそのアレンジメントフラワーを見ながら心の中で呟いた
それだけ大事に手を掛けてもらえれば、花だって幸せだろう
彼女のそんな姿勢を目にして、俺は母のお気に入りのミン秘書の事を思い出した
会社で彼女がアレンジメントフラワーを作っているところを目にしたことがあるのだが、傍らにゴミ箱を置いて
気に入らない花はごみ箱の中に投げ捨てる
そんな様子に不快感を持った自分がいた事を思い出した
一輪の花でもその花を手にした人間次第で随分の違いだ
確かに・・・会社のフロアーを飾る彼女の作品は豪華で人の目を引く
誰もが足を止め、その作品を褒めたたえる
だが本質は・・・そんなところだ
俺の目にはそんな彼女が魅力的には映らない
母は・・・彼女と俺を結婚させたいのだろう。以前そんな言葉を聞いた気がする
もちろん俺は一笑に付した
感動を与えて貰えない女と生涯を共にするなんてまっぴらだ
いくら彼女が会社にとって有益な人間だとしても、それと俺の結婚は別だ
俺は自分の感性と心の琴線に触れてくる女性がいい・・・
そう思った瞬間・・・≪来夢生花店≫のシン・チェギョン嬢の顔が脳裏に浮かび上がった
恋を・・・しているのか?俺は・・・
相手が相手なだけにユルとの関係も壊しそうだ
だけど相手から言い寄られることには慣れている俺が、自分から近づいていくなんて初めてのことだ
こんな貴重な機会は滅多にない
一生に一度かもしれない
俺はこれから毎日少しずつ、彼女の事を知る為に会話を繋げようと思った
(薔薇の画像は薔薇の奥様こと【花が好き】のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
前日に点検し売り物にならなくなってしまった花を見繕い、小さなアレンジメントフラワーを作る
葉や花弁の痛んでしまった部分を取り除き、自己満足のアレンジをするのだ
それはその時々によって大きな作品になったり、また飾れるほどの物は作れなかったりだが
大きなものは店先のショーケースに置いたりもする
もちろん飾れるほどのものじゃない時は、作業台の上にちょこんと置かれる
あくまでも自己満足なのだが、それでも私はとても気分が良い
その花の持っている美しさを全うさせられるのだから・・・
少し折れてしまったからと・・・少し痛んでしまったからと、捨ててしまえばそれで終わってしまう生命
そうしないのが私の主義だ
今日もちょっと大きめのアレンジメントフラワーが作れ、ショーケースを華やかにしてくれている
あ・・・でもその分確かに売り上げは減ってしまうんだけど・・・
忙しかった一日を癒してくれる時間がやって来る
そろそろあのお客様が訪れる時間だ
そう思った時・・・ショーケースの向こうにお客様の姿が見えた
あ・・・私の作ったアレンジメントフラワーをじっと見ている
なんだか恥ずかしい・・・私が見つめられているわけでもないのに、照れてしまう自分に呆れる
ドアベルを鳴らしながらお客様が入って来る
『いらっしゃいませ♪』
今日のネクタイも素敵ですね・・・と心の中で言ってみる
するとお客様はいつもとは違う言葉を私に投げかけた
『こんばんは。そこに飾ってあるアレンジメントはいくらなんだ?』
『えっ?』
『ほら・・・そこの籠に飾ってある物だ。』
『あ・・・すみません。それは売り物じゃないんです。』
『売り物じゃない?なぜ?』
『あれは売り物にならないお花を使って作った物なので、お売りできないんです。』
『つまり・・・非売品と言う訳か?』
『はい。申し訳ありません。』
『そうか。黙って売ってしまえば分からないのに・・・』
『くすくす・・・そんなことできません。信用第一ですから♪』
お客様は楽しそうに笑い、それから目に留まった薔薇を指差した
『じゃあ今日はこれを貰おう。』
『アンジェラですね。はい、かしこまりました。』
このお客様とこんなに話すのは初めてだ。私の作ったアレンジメントが話すきっかけを作るなんて、
とても幸せな気分・・・
『大変お待たせいたしました。』
『どうもありがとう。』
お客様は口角を上げて微笑むともう一度ショーケースに目を向け、店から出て行った
お花の神様が・・・私を見守ってくれているのかな
お客様のそんな反応が私の胸の中をあっためてくれた
その日はアレンジメントスクールの日だった
私の通う夜の部は夜の8時からの授業だ。でも私は閉店後片付けをしてから帰るので・・・どんなに急いでも
一時間遅れの授業になる
その頃にはすっかり作品が出来上がっている仲間もいて・・・いつも非常に肩身が狭い思いをしながら
教室に入る
『大変遅くなりました。』
おずおずと教室に入って行くと、ユル先生はいつも通りの笑顔で迎えてくれる
『遅刻はいつものことだからね。ふふふ・・・チェギョン、じゃあ僕のお手本を見てアレンジしてみて。
解らないところがあったら教えてあげるよ。』
『はいっ!!』
人よりも一時間遅れの分・・・必死に取り組む私。
でも私が作品を作っている間、仲間は一人帰り二人帰り・・・いつも最後に残るのは私とユル先生だけだ
『ユル先生・・・いつもすみません。』
『いいよチェギョン。君の事情は知っているしね。ふふふ・・・
でもここはもっと大胆に飾った方がいいんじゃない?』
ユル先生は私のアレンジメントの欠点を指摘する
『あ・・・でも、私この方が好きなんです。』
『保守的なんだなチェギョンは。ふふふ・・・』
優しいユル先生。どこか保守的な私のアレンジメントも、仕方がないと笑ってくれる
こうして出来上がったアレンジメントフラワーを全部オアシスから引き抜き、穴だらけになったオアシスを見ながら
私はセンスがないんじゃないかって少し・・・気弱になるのだ
『送って行くよチェギョン。』
『あ・・・いえ大丈夫です。』
『通り道だからさ・・・』
毎回言われてしまう母のセリフを聞くのが嫌で、最近ユル先生に送られるのが億劫になっている私
でも断るのも失礼かと思い厚意に甘えることにする
もうそろそろクリスマスシーズンだ。今年のクリスマス・・・私にサンタクロースはやって来るのかな・・・
仕事を終えて彼女の店に立ち寄る時間・・・その時間は俺にとって非常に大切なひと時となっていた
仕事はクリスマス商戦で非常に忙しく、ライバル社に負けないようにと社内はピリピリした空気に包まれている
そんな俺の疲れた心を癒してくれるのは、≪来夢生花店≫のシン・チェギョン嬢だった
その店の前に立っただけで気持ちが安らぐ。店内に彼女の姿が見えると胸の中が温かくなる
そんなある日・・・表のディスプレーにアレンジメントフラワーが飾られているのに気がつき、俺は足を止めた
きっと彼女がアレンジしたんだろう
華美ではない可憐なその花籠を見ていて、つい買って帰ろうかという衝動に駆られた俺は金額を尋ねた
ところが・・・それは売り物ではないと言う
そうか・・・売り物にならない花にこうやってもう一度命を吹き込んだのか
幸せだな・・・
俺はそのアレンジメントフラワーを見ながら心の中で呟いた
それだけ大事に手を掛けてもらえれば、花だって幸せだろう
彼女のそんな姿勢を目にして、俺は母のお気に入りのミン秘書の事を思い出した
会社で彼女がアレンジメントフラワーを作っているところを目にしたことがあるのだが、傍らにゴミ箱を置いて
気に入らない花はごみ箱の中に投げ捨てる
そんな様子に不快感を持った自分がいた事を思い出した
一輪の花でもその花を手にした人間次第で随分の違いだ
確かに・・・会社のフロアーを飾る彼女の作品は豪華で人の目を引く
誰もが足を止め、その作品を褒めたたえる
だが本質は・・・そんなところだ
俺の目にはそんな彼女が魅力的には映らない
母は・・・彼女と俺を結婚させたいのだろう。以前そんな言葉を聞いた気がする
もちろん俺は一笑に付した
感動を与えて貰えない女と生涯を共にするなんてまっぴらだ
いくら彼女が会社にとって有益な人間だとしても、それと俺の結婚は別だ
俺は自分の感性と心の琴線に触れてくる女性がいい・・・
そう思った瞬間・・・≪来夢生花店≫のシン・チェギョン嬢の顔が脳裏に浮かび上がった
恋を・・・しているのか?俺は・・・
相手が相手なだけにユルとの関係も壊しそうだ
だけど相手から言い寄られることには慣れている俺が、自分から近づいていくなんて初めてのことだ
こんな貴重な機会は滅多にない
一生に一度かもしれない
俺はこれから毎日少しずつ、彼女の事を知る為に会話を繋げようと思った
(薔薇の画像は薔薇の奥様こと【花が好き】のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
もうさ・・・寒くなったからね
温かいお話をね♪
管理人地方霜が降りてまして
温室にプチプチ掛けてます。
その上から段ボールって・・・なかなかシュールな光景よ
その上今日は、県民の日でね
お子達がお休みなのぉ・・・
温かいお話をね♪
管理人地方霜が降りてまして
温室にプチプチ掛けてます。
その上から段ボールって・・・なかなかシュールな光景よ
その上今日は、県民の日でね
お子達がお休みなのぉ・・・