木枯らしが店先に落葉の渦を作り、クルクル・・・クルクルと回転しながら踊る
誰もが皆、心躍る季節の到来だ。
その日出勤した私は、店の倉庫からクリスマスツリーを出し飾り付けを始めた
目の前に大学病院があるから、世間よりも早めにクリスマスツリーを出すのだ
病室の窓からそれを見た入院患者さん達が、少しでも温かい気持ちになればいいなと思い飾り付けをする
≪来夢生花店≫のクリスマスツリーは、他のお店ほど華やかではないし点滅もしない
それはなぜかと言うと・・・使っている電飾がすべてソーラー電球なのだ
華やかさには欠けるけど・・・どこかエコでありクリスマスツリーのせいで火災が起こるなんて事も絶対にない
そして店の経費にも優しい。いい事尽くめだ
クリスマスツリーに飾りつけた残り物のまつぼっくりを、今日のアレンジに添えてみた
ただそれだけでクリスマス気分になるからとっても不思議だ
今日もあのお客様は、私の作ったアレンジメントフラワーを見てくれるだろうか
そんな期待に胸を膨らませ、一日仕事を頑張る私
張り合いって・・・こう言う事を言うのかもしれない
あっ・・・あのお客様だ。やっぱりアレンジメントフラワーを見てくれている・・・
そう思ったら今度はクリスマスツリーを凝視する
ドアベルを鳴らしてお客様が入って来た。それだけでこの店の雰囲気が格段上がるから不思議だ
『いらっしゃいませ♪』
『こんばんは。クリスマスツリーが出ているね。』
『はい。今日飾り付けました。』
『でも電飾が点滅しないのはなぜ?』
『あ・・・それはソーラー電球を使っているからなんです。くすくす・・・』
『ソーラー電球?・・・そうか!!すごいな。くくっ・・・』
お客様の含み笑いを初めて聞いた気がする
『今日は何になさいますか?』
『そうだな。その黄色い薔薇を・・・』
『サプライズですね。かしこまりました。』
『あぁそうだ!私は明日出張があってここに来られない。すまないが・・・明日もこの薔薇を前の大学病院に
届けて貰えないだろうか?』
『構いません。お任せください。』
お客様は私を見て何か言い掛けたが、何も言わずに薔薇を受け取ると、提示された料金とさらに
一枚お札を私に手渡した
『あ・・・あの・・・これは?』
『配達料金だ。』
『いいえ、それは受け取れません。お得意様ですし・・・お届け先はすぐお向かいですから。
ではこちらに部屋番号とお客様のお名前を記入してください。』
そのメモには●●大学病院308号室・・・ご依頼主にイ・シンと明記されていた
『あ・・・あのお届け先の方のお名前は?』
『個室だからその人しかいない。じゃあすまないがよろしく頼む。』
『かしこまりました。お任せください。』
お客様の名前を・・・初めて知った
イ・シンさんって言うんだ。名前を知ることが出来て嬉しい気持ちと裏腹に、いつも薔薇の花を携えて
お見舞いに行っているイ・シンさんのお相手を知ることが少し怖かった・・・
いやいや・・・これはお仕事だから、しっかりしなくちゃダメでしょう?
沈んだ気分になりながら、翌日私は8時でお店を閉めた後向かいの大学病院の入院病棟を尋ねた
308号室・・・ここだ
<トントン>
『失礼いたします。向かいの≪来夢生花店≫ですが、イ・シン様からご依頼のお花をお届けに上がりました。』
病室の扉を開け声を掛けると、スレンダーな美しい女性が訝しげな顔をしてその花を受け取った
『そう。どうもご苦労様。』
『失礼いたします。』
扉を閉めた時・・・私は自分の気持ちが底なし沼に沈んでいくような感覚に陥った
あの方が・・・イ・シンさんの恋人
毎日薔薇の花を持ってお見舞いに訪れるくらいだもの、恋人か奥様なのだろう
大学病院の廊下を足を引き摺るようにして歩きながら、私は胸の中に何か詰まってしまった様な気になり
握りこぶしで何度も胸を叩いた
お客様の恋人に嫉妬するなんて、私どうかしてる・・・
良く考えてみたら今日お届けしたのは黄色い薔薇・・・まるで私の心の現れのようだった
その日病室を訪れた時、母はいつも異常にミン秘書を俺に押して来る
『ねえシン・・・ミン秘書って美人でしょう?スレンダーだし・・・あなたと並んだら似合いの夫婦になるわ。
それにミン秘書のアレンジメントフラワーの腕は大したものよ。あんな子滅多にいないわ。
あなたももう28歳。そろそろ家庭を持ってもいいんじゃないの?
早く結婚して私を安心させて頂戴な。』
今日は面倒なミン秘書も来ていない。俺は家に居るのと同じ口調で返事を返す
『母さん・・・俺は今、気になっている女性がいるんだ。だから少し放っておいて貰えないか?』
『えっ?シン・・・それはどんな女性なの?』
『まだ・・・逢ったばかりだからお付き合いもしていないが、近々逢わせるよ。
きっと母さんは気に入ると思う。』
『本当?ミン秘書より素敵な女性なの?』
『あぁ。母さんが俺と同じ感性の持ち主だったら、間違いなく彼女を気に入ると思うけどな。』
『うふふ~~楽しみだわ♪』
そんな事を母と話した翌日、俺は急な出張に出かけることとなり・・・普段している≪業務連絡≫と言う名の
見舞いに行けない事情が出来た
そうだ・・・シン・チェギョン嬢に俺の代わりに花を届けて貰おう。そして母に逢って貰おう
そうしたら母もきっと・・・俺の気持ちが理解できる筈だ
そう思って依頼した花の配達。翌日≪来夢生花店≫を訪れると、いつもより元気のない彼女がいた
『いらっしゃいませ。』
『こんばんは。昨日はどうもありがとう。』
『いっ・・・いえどういたしまして。とても素敵な女性ですね・・・』
『くっ・・・若作りなだけです。』
クリスマスイブの夜・・・デートしませんか?そんな言葉は唐突過ぎるだろうか・・・
なにせ自分から女性を誘った経験はない。この年になって見た目の派手さと裏腹に純朴すぎる俺には
なんて誘ったらいいのか分からない
結局いつも通り薔薇の花を一輪買って、なんの収穫もないまま店を出た俺だった
母の病室に到着し、俺はシン・チェギョン嬢に受けた印象を聞いてみることにする
『母さん・・・昨日俺の代わりに花が届いただろう?』
『えっ?あぁ・・・いただいたわよ。サプライズね。』
『それだけか?』
『他に何があるって言うの?』
『どんな人が届けに来てくれたとか・・・?』
『さぁ・・・。私はちょうど洗面所に行っていて、ミン秘書がお花を受け取ってくれたのよ。
だから私は知らないわ。』
っつ・・・もしかして彼女と逢ったのはミン秘書か・・・
<とても素敵な女性ですね・・・>
これはミン秘書の事を指した言葉だったのか?だとしたら彼女に・・・とんでもない誤解をされたことになる
俺が毎日薔薇の花を贈っているのはミン秘書だと思っている筈だ
なんの前触れもなく母とシン・チェギョン嬢を引き逢わせてしまおうとの目論見は、見事に外れてしまい
逆に俺には彼女がいると誤解させてしまった
俺は自分自身の取った行動を呪いたい気分になった
大人だって・・・誤解があったり
擦れ違っちゃったりするものです。
シン君・・・誤解を解かないとね❤
なお・・・土日はふぅめる・多肉通信をお送りします。
月曜日は更新できたらにさせてね~~♪
誰もが皆、心躍る季節の到来だ。
その日出勤した私は、店の倉庫からクリスマスツリーを出し飾り付けを始めた
目の前に大学病院があるから、世間よりも早めにクリスマスツリーを出すのだ
病室の窓からそれを見た入院患者さん達が、少しでも温かい気持ちになればいいなと思い飾り付けをする
≪来夢生花店≫のクリスマスツリーは、他のお店ほど華やかではないし点滅もしない
それはなぜかと言うと・・・使っている電飾がすべてソーラー電球なのだ
華やかさには欠けるけど・・・どこかエコでありクリスマスツリーのせいで火災が起こるなんて事も絶対にない
そして店の経費にも優しい。いい事尽くめだ
クリスマスツリーに飾りつけた残り物のまつぼっくりを、今日のアレンジに添えてみた
ただそれだけでクリスマス気分になるからとっても不思議だ
今日もあのお客様は、私の作ったアレンジメントフラワーを見てくれるだろうか
そんな期待に胸を膨らませ、一日仕事を頑張る私
張り合いって・・・こう言う事を言うのかもしれない
あっ・・・あのお客様だ。やっぱりアレンジメントフラワーを見てくれている・・・
そう思ったら今度はクリスマスツリーを凝視する
ドアベルを鳴らしてお客様が入って来た。それだけでこの店の雰囲気が格段上がるから不思議だ
『いらっしゃいませ♪』
『こんばんは。クリスマスツリーが出ているね。』
『はい。今日飾り付けました。』
『でも電飾が点滅しないのはなぜ?』
『あ・・・それはソーラー電球を使っているからなんです。くすくす・・・』
『ソーラー電球?・・・そうか!!すごいな。くくっ・・・』
お客様の含み笑いを初めて聞いた気がする
『今日は何になさいますか?』
『そうだな。その黄色い薔薇を・・・』
『サプライズですね。かしこまりました。』
『あぁそうだ!私は明日出張があってここに来られない。すまないが・・・明日もこの薔薇を前の大学病院に
届けて貰えないだろうか?』
『構いません。お任せください。』
お客様は私を見て何か言い掛けたが、何も言わずに薔薇を受け取ると、提示された料金とさらに
一枚お札を私に手渡した
『あ・・・あの・・・これは?』
『配達料金だ。』
『いいえ、それは受け取れません。お得意様ですし・・・お届け先はすぐお向かいですから。
ではこちらに部屋番号とお客様のお名前を記入してください。』
そのメモには●●大学病院308号室・・・ご依頼主にイ・シンと明記されていた
『あ・・・あのお届け先の方のお名前は?』
『個室だからその人しかいない。じゃあすまないがよろしく頼む。』
『かしこまりました。お任せください。』
お客様の名前を・・・初めて知った
イ・シンさんって言うんだ。名前を知ることが出来て嬉しい気持ちと裏腹に、いつも薔薇の花を携えて
お見舞いに行っているイ・シンさんのお相手を知ることが少し怖かった・・・
いやいや・・・これはお仕事だから、しっかりしなくちゃダメでしょう?
沈んだ気分になりながら、翌日私は8時でお店を閉めた後向かいの大学病院の入院病棟を尋ねた
308号室・・・ここだ
<トントン>
『失礼いたします。向かいの≪来夢生花店≫ですが、イ・シン様からご依頼のお花をお届けに上がりました。』
病室の扉を開け声を掛けると、スレンダーな美しい女性が訝しげな顔をしてその花を受け取った
『そう。どうもご苦労様。』
『失礼いたします。』
扉を閉めた時・・・私は自分の気持ちが底なし沼に沈んでいくような感覚に陥った
あの方が・・・イ・シンさんの恋人
毎日薔薇の花を持ってお見舞いに訪れるくらいだもの、恋人か奥様なのだろう
大学病院の廊下を足を引き摺るようにして歩きながら、私は胸の中に何か詰まってしまった様な気になり
握りこぶしで何度も胸を叩いた
お客様の恋人に嫉妬するなんて、私どうかしてる・・・
良く考えてみたら今日お届けしたのは黄色い薔薇・・・まるで私の心の現れのようだった
その日病室を訪れた時、母はいつも異常にミン秘書を俺に押して来る
『ねえシン・・・ミン秘書って美人でしょう?スレンダーだし・・・あなたと並んだら似合いの夫婦になるわ。
それにミン秘書のアレンジメントフラワーの腕は大したものよ。あんな子滅多にいないわ。
あなたももう28歳。そろそろ家庭を持ってもいいんじゃないの?
早く結婚して私を安心させて頂戴な。』
今日は面倒なミン秘書も来ていない。俺は家に居るのと同じ口調で返事を返す
『母さん・・・俺は今、気になっている女性がいるんだ。だから少し放っておいて貰えないか?』
『えっ?シン・・・それはどんな女性なの?』
『まだ・・・逢ったばかりだからお付き合いもしていないが、近々逢わせるよ。
きっと母さんは気に入ると思う。』
『本当?ミン秘書より素敵な女性なの?』
『あぁ。母さんが俺と同じ感性の持ち主だったら、間違いなく彼女を気に入ると思うけどな。』
『うふふ~~楽しみだわ♪』
そんな事を母と話した翌日、俺は急な出張に出かけることとなり・・・普段している≪業務連絡≫と言う名の
見舞いに行けない事情が出来た
そうだ・・・シン・チェギョン嬢に俺の代わりに花を届けて貰おう。そして母に逢って貰おう
そうしたら母もきっと・・・俺の気持ちが理解できる筈だ
そう思って依頼した花の配達。翌日≪来夢生花店≫を訪れると、いつもより元気のない彼女がいた
『いらっしゃいませ。』
『こんばんは。昨日はどうもありがとう。』
『いっ・・・いえどういたしまして。とても素敵な女性ですね・・・』
『くっ・・・若作りなだけです。』
クリスマスイブの夜・・・デートしませんか?そんな言葉は唐突過ぎるだろうか・・・
なにせ自分から女性を誘った経験はない。この年になって見た目の派手さと裏腹に純朴すぎる俺には
なんて誘ったらいいのか分からない
結局いつも通り薔薇の花を一輪買って、なんの収穫もないまま店を出た俺だった
母の病室に到着し、俺はシン・チェギョン嬢に受けた印象を聞いてみることにする
『母さん・・・昨日俺の代わりに花が届いただろう?』
『えっ?あぁ・・・いただいたわよ。サプライズね。』
『それだけか?』
『他に何があるって言うの?』
『どんな人が届けに来てくれたとか・・・?』
『さぁ・・・。私はちょうど洗面所に行っていて、ミン秘書がお花を受け取ってくれたのよ。
だから私は知らないわ。』
っつ・・・もしかして彼女と逢ったのはミン秘書か・・・
<とても素敵な女性ですね・・・>
これはミン秘書の事を指した言葉だったのか?だとしたら彼女に・・・とんでもない誤解をされたことになる
俺が毎日薔薇の花を贈っているのはミン秘書だと思っている筈だ
なんの前触れもなく母とシン・チェギョン嬢を引き逢わせてしまおうとの目論見は、見事に外れてしまい
逆に俺には彼女がいると誤解させてしまった
俺は自分自身の取った行動を呪いたい気分になった
(薔薇の画像は、薔薇の奥様こと『花が好き』のkakoさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。)
お持ち帰りはご遠慮ください。)
大人だって・・・誤解があったり
擦れ違っちゃったりするものです。
シン君・・・誤解を解かないとね❤
なお・・・土日はふぅめる・多肉通信をお送りします。
月曜日は更新できたらにさせてね~~♪