思いもかけないところから恋は始まるものだ。残念ながら今はちょうど夏休み・・・彼に逢えるチャンスもなかった
不良グループの彼が、夏休み中に部活の為に登校する・・・なんて事はある筈もない
何一つ知らない彼の事が、日々心の中で大きくなっていく
そして訪れた≪ひょっとしたら彼に逢えるかもしれない夏休みの登校日≫・・・私は意気揚々と登校して行った
前日に作ったお礼のクッキーを携えて・・・
教室に入っていくと親友のイ・ガンヒョンが参考書を読んでいた
『ガンヒョン~~登校日まで勉強?』
『まあね。アタシの狙ってる学部・・・レベル高いから・・・』
私とガンヒョンは同系大学に進むつもりだ。だけど行きたい学部によっては非常に競争率が高い
ガンヒョンは一番競争率の高い学部を狙っている訳で・・・秀才のガンヒョンでも頑張らずにはいられない感じだ
ガンヒョンとおしゃべりをしていた時・・・
<バウン・・・バウバウーーー!!>
いきなり大きなバイク音が教室内にも響いて来る。私とガンヒョンは窓際に走り寄りその様子を見に行った
『はぁっ・・・またあいつら?まったく芸高の恥さらしね。』
登校を禁じられている大型バイクに乗り颯爽と現れた彼のグループ・・・もちろんこんな事ができるのは
彼のグループの生徒だけだ
数台のバイクが次々と正門をくぐって来る
私の目は自然と彼の姿を探す・・・でも遠くからではヘルメットを被った生徒の人相までは解らない
『やだ!イ・シン・・・ノーヘルじゃない!!』
咎めるように言うガンヒョンのイ・シンの名前に反応し、私は正門を凝視した
彼だ!!サラサラの髪を風になびかせて校内に入って来る彼のバイク
ふと・・・私は彼のバイクだけ・・・他のメンバーと違っている事に気がついた
後ろに・・・誰か乗っている。しかもそれは私達と同じ制服を着た女子生徒。
その女子生徒の顔はヘルメットを被っているから解らない・・・
胸の中に・・・もやもやした物が広がっていく
『ガンヒョン・・・あれ・・・誰?』
『あれ?』
『イ・シン君のバイクに一緒に乗っている人・・・』
『あぁ。舞踏科のミン・ヒョリンでしょう?』
『ミン・ヒョリン?』
『アンタ知らないの?この学校一番のオルチャンよ。』
そう言えば見たことがある。確かに綺麗な人だった
『でもどうして・・・イ・シン君のバイクに乗ってるの?』
『ん?アンタ・・・イ・シンが気になるの?』
『い・・・いや、そんなんじゃないけど・・・』
『あの二人付き合っているのよ。』
『・・・・・』
ガンヒョンから二人の関係を知らされている時、彼は彼女をバイクから降ろしヘルメットを脱がせると
乱れた彼女の髪を梳いていた
目の前が霞む・・・胸の奥が痛い
まだ日の浅い想いだけど、心の中は≪どうしてあなたの隣にいるのが私じゃないんだろう。≫と叫んでいた
結局お礼が言いたくて持って行ったクッキーは、ガンヒョンと二人で食べた
ガンヒョンは美味しいと言ってくれたけど、私には涙の味しかしなかった
そして待ちに待った花火大会の日・・・私とガンヒョンは二人で花火大会に出掛けた
夜空に咲き誇る大輪の花火の競演に、私もガンヒョンも時間を忘れて見惚れていた
あの日助けてくれた彼の事を、少しでも忘れようとがむしゃらに部活と勉強に勤しんだ
だけど事あるごとに思い出してしまう彼の横顔・・・
そんな時・・・私の胸を焦がすあの声が・・・聞こえた
確かに聞こえた・・・
私は視線を泳がせて彼の姿を探した・・・そして見つけてしまった
手の届くほど近い場所に彼がいた。そしてその隣には彼女がいた
彼は彼女の肩を抱き、彼女は彼を見上げ何かを話し掛けている・・・
すると彼は見た事もない様な笑顔を彼女に向け返事をする
<ドーーーン・・・パラパラパラパラ・・・・>
夜空に打ち上げられた花火の音と一緒に、私の一方通行な恋は終わりを告げた
次々と上がる花火を見つめながら、私の瞳が大雨洪水警報を発令しているのを知ったガンヒョンは
優しく私の肩を抱きその場から離れると、私を慰めようとアイスキャンディーを握らせた
一度知ってしまった想いは、失恋したからって綺麗に消えて無くなるものじゃない
私は彼への想いを引き摺ったまま高校を卒業し、やがて大学生になった
花火のおサジンはペロンさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。
いやぁ・・・見事にヒョリンに夢中なシン君です。
さて次回・・・短編最終話
ぶっ飛ばしますのでついて来てね~~♪
もちろんお約束は守るわ❤