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Channel: ~星の欠片~
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あの夏の夜の花火 1

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あの夏の夜の花火を・・・私は忘れない
伝えられず報われない想いを知ったと同時に
胸に響いた花火の音は
今も私の胸の中に小さな痛みとなって残っている




着崩した制服・斜に構えた態度・頭髪検査に絶対に通らない髪形・・・

彼の名前はイ・シン・・・いい子ちゃんだった私には、とても縁遠い人だった

縁遠いどころか、その・・・人を寄せつけないオーラを纏った彼とその取り巻きは、先生方からも一目置かれ

生徒には怖がられる存在だった

同じ高校三年生でありながらどこか大人びた彼・・・彼の取り巻き達は全員がいいところの御子息で

学校にも大口の寄付をしているらしく、先生方も注意すらできない様な存在だった

なんの接点もない・・・同じ高校でも科も校舎も違う人

もちろん私にはなんの興味もない人だった



そんなある日の事・・・夏休みの部活で遅くなった私は、すっかり暗くなった道を必死に自転車を走らせていた

あと数百メートルで家に着くと言う時・・・突然私の自転車の前に数人の男の人が飛び出し道を塞いだ

<キキーーーッ!>

急ブレーキを掛け止まった私の自転車・・・私は驚いて自転車の前に立ちはだかる人の顔を凝視した

知らない人だ・・・全く知らない人だった

その瞬間私の全身は恐怖に包まれた

『あ・・・あのっ・・・なにか・・・?』

震える声で漸く問い掛けた時には、前に立ち塞がっている人以外は私を取り囲んだ

自転車が動けない様に荷台を押さえている人もいるってことは・・・四人?

『彼女~~どこいくの?』
『かっ・・・帰るんです。』
『こんなに遅い時間まで遊んでいたんでしょ?俺達と遊びに行こうよ~。』

私の心は凍りついた。両サイドに立った男が二人、私の手を引っ張る

<ガシャン!!>

倒れてしまった私の自転車・・・

自転車から引き離された私は、恐怖のあまり声も出せず身体を強張らせた

『すぐそこに車が止まっているからさ~。騒がない方が身のためだよ。』

薄ら嗤いを浮かべる男達・・・なんとか逃げようと思うのだが、声を上げるどころか足さえも自由に動けない

まるで操られるままのマリオネットになった気分だ

そして・・・その男達の物と思しき車の後部座席のドアが開いた時、私はその恐怖心から逃れようと

きつく瞳を閉じた

ところが・・・

『ぎゃっ!!』『うおぉーーー!!』

急に私の身体が自由になったと思ったら、男達の叫び声と聞き慣れない衝撃音が私の耳に届いた

そして辺りに静寂が訪れた時、恐る恐る私は瞼を開けてみる

私を取り囲んでいた男達は、アスファルトの上でのた打ち回っていた

一体何が起こったのだろう・・・逃げなきゃと思いながらも、私はまだ呆然とした状態でその光景を眺めていた

すると・・・低い低い・・・地獄の底から響いて来るような声が、その男達に向けて放たれた

『お前ら・・・隣町の高校の奴らだな?うちの学校の生徒を拉致ろうなんていい度胸だな。』
『お・・・お前は・・・芸高のイ・シン!!』

慌てた様にアスファルトに転がっていた男達は、車に乗り込み脱兎の如く走り去って行った


イ・シン・・・聞いた事のある名前だ。私は暗がりの中にそびえ立つ、その背の高い男を凝視した

そして同じ高校のいわゆる不良グループのボス的存在である事に気がついた

『あ・・・あのっ・・・』
『こんな時間まで制服で遊んでいるなんて無防備すぎるだろう?』
『あ・・・いえ違います。部活で遅くなったんです・・・』

彼に言い訳をする必要はないが、助けて貰った恩はものすごく感じている

彼は倒れた私の自転車を起こし、それを私は両手で支えると彼に頭を下げた

『私は美術科の三年シン・チェギョンと言います。今日は助けてくれて本当にありがとうございました。』

彼の風貌がそうさせるのか、自然と敬語を使っている自分に気がつく

『別に・・・自己紹介なんかいらない。ただ通り掛かったから助けただけだ。
お前の家・・・遠いのか?』
『いえ・・・あと数百メートルです。』
『またこんなことがあったら困るから、家まで送ってやる。』
『ありがとうございます。』

正直・・・あんな怖い目に遭った後で、私も不安でいっぱいだったからその申し出はありがたかった

自転車を引いたままその彼と並んで歩く・・・

会話など一言もない。話す事も何もない。ただ偶然出逢ってしまったから助けてくれただけの存在

だけど私の視線は何度も彼の顔を見上げ、そして彼がとんでもないオルチャンである事に気がついた

胸の鼓動が・・・普段の倍速で音を響かせる

いい子ちゃんの私が、学校一の不良に恋をしてしまった瞬間だった


『じゃあな。これからは気をつけろ!』
『あ・・・はい。どうもありがとうございました。』

にこりともせず去っていく彼の後姿を自宅前で見送った私・・・

その日から私の胸の中の99%は彼で占められるようになって行った


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花火のおサジンはペロンさんからお借りしております。
お持ち帰りはご遠慮ください。

最近・・・大人なシンチェばかり書いていたので
ちょっと甘酸っぱくて切な目テイストで気分転換~♪
三話くらいで完結です。
次回はいつになるのか未定・・・(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!


なお・・・健全なる女子中高生諸君
夏はこんな輩が多いんです。
暗くなる前にお家に帰りましょう。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

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