※このお話は≪メリーゴーランド≫の続編です※
フラワーシャワーを浴びながら教会の階段を下りていくギョンとガンヒョン・・・
ガンヒョンは不思議そうな顔でギョンに問い掛け
『ねえギョン・・・今チェギョンと話しているのって、確かアンタの友達だったわよね?』
『えっ?・・・』
ギョンは先ほどガンヒョンがブーケトスした方向に目を向けた
『んっ?なぜシンがチェギョンと親しそうに話してる?うん。アイツはつい最近留学先から
帰国してきたばかりのイ・シンだよ。』
『ああ・・・あれが噂のイ・シンね。アンタの友達の中で一番の有望株。』
『違うだろ?ガンヒョン・・・一番の有望株は俺♪』
『じゃあイ・シンがチェギョンをナンパしているのかしら?』
『まさか~!シンは留学先で付き合っていた彼女と別れたばかりだ。アイツはそんないい加減な奴じゃない。』
『そっか。でもチェギョンだって初対面の相手と、親しく話せるような子じゃない。なんだか不思議だわ・・・』
『ホント不思議だな。』
たった今挙式を終えた新郎新婦のギョンとガンヒョンは、横目で二人を見つめながら階段を下りると
披露パーティー会場に向かうリムジンに乗り込んだ
思わぬところでシンと再会できたチェギョンは、呆然とした状態のままパーティー会場に入り
友人たちの追及を受けていた
『チェギョン・・・アンタ普段はぼぉ~っとしているくせに、なぜ新郎の友達で一番のイケメンに手を出してるのよ。』
『ちっ・・・違うよぉ。あの人は四月から私の上司になる人。』
『えっ?上司に・・・なる人?』
『うん。そうだよ、だからご挨拶しただけ・・・』
本当は違う
欲しかったのは上司と部下などという無粋な関係ではない
四年も写真のシンに片想いして、頭の中で妄想だけが広がっていたチェギョンは・・・実際に逢ったイ・シンが
妄想以上の男性だったことを知る
逢えたら逢えたでチェギョンが置かれた立場は、自分の気持ちを辛くさせる一方だった
パーティーが終わった後・・・チェギョンはシンと約束した通り会場のホテル玄関口で待っていた
するとそこに黒塗りの高級車が横付けされ窓が開いた
『乗って。』
『うん。』
それでも四年恋焦がれたシンの運転する車の助手席に座っていることは、チェギョンにとって胸が痛むほどの
幸せな出来事だった
『まだ入社前だからシン君でいいよね?』
『あぁ構わない。』
辺りはもう真っ暗になっていた
ワールド遊園地の閉園時間は20時だと知っていたチェギョンはシンに問い掛けた
『もう・・・閉園時間じゃない?』
『そうだな。』
『そうだなって~~閉園しているのに行ってどうするの?』
『くくっ・・・俺は代表だ。心配はいらない。』
やがてシンの車は明かりも消え真っ暗になった遊園地の駐車場に入っていった
そして遊園地の出入り口の前で車を停め、二人は車から降りて行った
『シン君…ほら…真っ暗・・・』
『あぁ。』
シンはポケットの中から鍵を取り出し、出入り口を開けた
そしてスマホのライトを頼りにメリーゴーランドの場所まで歩いていく
『中には入れたけど・・・なんだか怖い。』
『何も出ないから安心しろ、くくっ・・・』
『あっ!メリーゴーランドだ♪』
幼い頃に乗った時にはずいぶん大きく感じたメリーゴーランドは、今のチェギョンにはかなり小さく見えた
シンはチェギョンを待たせてメリーゴーランドの明かりを点けた
『懐かしい・・・』
『チェギョンはこれが大好きだったよな?』
『うん。あの時、シン君が一緒に乗ってくれなかったら乗りそびれていたかも。』
『くくっ・・・そうだな。乗ろうか?』
『乗ってもいいの?』
『あぁ。馬車に座ってろよ。今電源を入れてくる。』
チェギョンが馬車に乗るのを見計らってシンは電源を入れ、すぐにチェギョンの隣の馬に乗った
幼い時と同じように・・・
そしてシンはどこか遠くを見つめている
チェギョンもあの頃のようにシンと一緒にメリーゴーランドに乗っている嬉しさよりも、
なんとなく寂しげなシンの表情が気にかかった
四年間恋焦がれた人と一緒にいるのに、その人は写真で見ていた人より遠い人のような気がした
軽快な音楽が止みメリーゴーランドが動きを停めた時、二人はなんだか照れくさそうに馬車と馬から降りた
『やっぱり・・・大人になったからかな?すごく小さく感じる。』
『そうだな。フォーマルを着て遊園地で遊ぶ大人もあまりいないしな。くくっ・・・
チェギョン・・・付き合ってくれてありがとう。』
『いいえどういたしまして。』
『家まで送るよ。』
『あ・・すみません。』
『いきなり敬語か?』
『だって~~入社したら、こんな言葉遣いはできないでしょ?』
『まぁそうだな。だが俺は会社の中にあまり気心の知れた人がいない。二人の時は無礼講だ。』
また真っ暗な遊園地をスマホのライトで戻っていく二人・・・
車に乗り込んだ時、チェギョンはシンに問い掛けた
『シン君・・・さっきメリーゴーランドに乗った時、すごく寂しそうだったけど・・・何かあったの?』
『今日出席した結婚式で、新法新婦に当てられたからかな。』
『それだけ?』
『くっ・・・実は留学先でずっと付き合っていた女性と別れて帰国したんだ。』
『えっ?どうして?』
『彼女とは国籍も違うし俺はイ・グループを継がなきゃならない立場だ。
もちろん俺の両親が国際結婚など許すはずもないし、彼女も俺についてくる気はなかった。それだけだ。』
『そう・・・だっやの・・・。シン君、新入社員と代表という立場の違いはあるけど
私は幼馴染みたいなものでしょう?寂しくなった時にはメリーゴーランドにも付き合うし、
お酒だって付き合っちゃう。
寂しくなったら…気持ちを吐き出して。私・・・シン君の気の置けない友達になるから。』
『くっ・・・ありがとう。心強い部下と友達が同時にできたな。』
恋焦がれた人には、忘れることのできない女性がいた
それでもチェギョンはシンの心の友になろうとその日心に誓った
少しでも恋を失ったシンの寂しさに寄り添える人になりたいと思った
続投させていただきます❤
これがこのブログの最後のお話となります。
寂しくて・・・たまりません~~!
GW前には完結させますので
短い間ですがどうぞお付き合いくださいね❤