デザイン部の部屋に戻っていったチェギョンは、敢えてその場で皆に頭を下げた
『あの・・・黙っていてすみませんでした。誤解されるような行動をとってしまって・・・』
先程絡んできた先輩社員は非常にバツが悪そうに自分っも頭を下げた
『私も悪かった。変な風に勘繰っちゃって・・・』
『あ・・・いえ。』
そこにデザイン部の部長が、場の空気を和ませようと言った
『そうか・・・チェギョンさんは代表と幼馴染だから、何かと肩入れしたんだね?』
『あ・・・いいえ~違います!』
『チェギョンさんにそんなつもりはないかもしれないけど、きっとそうだと思うよ。
でもチェギョンさんは間違ったことは言っていなかったからね。これからもこの部署のみんなが誤ったことをしたら
正してくれよ。』
『あ・・・鶯宿です。』
少しデザイン部の中で浮いた存在になってしまったことを感じるチェギョン・・・
部長は・・・
『そうか~チェギョンさんがいたから、会長は飲み会に心づけなど用意してくれたんだなぁ。
ははははは・・・』
豪快に笑うと自分の席に戻っていった
漸く日常の職場に戻った・・・そう思ったチェギョンだったが、昼休みに例の先輩社員から呼び出された
『あの・・・先輩私になにか?』
『チェギョンさんは代表と幼馴染なんでしょう?』
『はい。』
内心違うと答えながらもチェギョンはそう言って頷いた
もう会社内でそのことを知らない人はいないだろう
幼馴染ではないが嘘を吐きとおすことに決めた
『だったら・・・協力して貰えるわよね?』
『は?なにをですか?』
『私と代表の仲を取り持ってほしいと言っているのよ。ただの幼馴染なんでしょう?』
(あ~やっぱりそんな相談か・・・)
落胆する想いを抱えながらチェギョンは首を横に振った
『それは・・・できかねます。』
『幼馴染なんでしょう?彼に興味があるわけじゃなく・・・だったら協力してくれても・・・』
『興味が無いはずありません。ずっと片想いしてきましたから・・・』
『はぁっ・・・結局あなたも代表狙いなんじゃないの。』
『いいえ。私は自分の気持ちを代表には言うつもりはありません。
代表が選んだ人と幸せになることを願っているんです。
身の程は・・・痛いほど知っています。だから協力はできません。
じゃあ先輩・・・協力できなくてすみません。そう言うことですので失礼いたします。』
そう言ってその場を去り、昼食に出かけたチェギョンだったが・・・やはり心は重く食欲もなかった
午後からはワールド遊園地に出向いて、何枚も書いたメリーゴーランドのデザイン画を
担当者に見てもらう予定だった
(なんか・・・気が重い。)
大好きなメリーゴーランドに逢いに行けるのに、チェギョンの気持ちは非常に重かった
『では部長・・・ワールド遊園地に行ってまいります。』
『この時間から行くのなら直帰していいからね。タクシー使っていきなよ。』
『はい!』
デザイン画のスケッチブックを抱え、意気揚々とイ・グループ本社ビルから出て行ったチェギョン・・・
すると何の因果かタクシー乗り場の手前に止まっている車から、シンが声を掛けた
『シン・チェギョンさん!!』
『あ・・・代表、お出かけですか?』
『あぁ。どうせ行先は一緒だろう?乗って!』
『あ・・・でも・・・』
『幼馴染だし気にしなくていいだろう?』
『はい。では失礼します。』
あまり一緒にいるところを見られると、またおかしな噂が流れてしまう・・・
そう思いながらも上司であるシンの厚意を拒むこともできない
『さっきは・・・ありがとう。』
『まさか見られていたとは思わなかったな。』
『うん。すごくびっくりして・・・何も言えなくなっちゃって・・・』
『父さんを呼び出して正解だったな。』
『うん。おじ様には助けていただいた。』
『いや・・・感謝するのはうちの方だろう?チェyゴンには本当に感謝している。』
『そんなこと・・・いいんだって。』
ワールド遊園地に向かう車の中・・・窓から入り込んでくる風が心地いい
『今度・・・昨日のお礼に食事でも・・・』
そうシンが言いかけた時だった
シンの携帯が鳴り響いた
携帯に表示された名前を見て、シンは顔色を変えた
チェギョンは咄嗟に問い掛けた
『シン君・・・電話鳴ってるよ。出なくていいの?』
『・・・別れた彼女だ・・・』
その言葉でチェギョンの心臓は凍り付いた
『別れた…彼女?・・・電話に出なきゃ!』
『・・・すまない・・・』
シンはイヤホンマイクを付けるとその電話を取り、会話を始めた
そして会話の合間に、チェギョンに状況を説明する
『この国に・・・来ているそうだ。逢いたいと言っている。』
『だったら…行かなきゃ・・・私はここで降りるから。』
『馬鹿を言うな!今は仕事中だ。』
『代表だもの…そのくらい融通は利くでしょう?早く行ってあげて!』
チェギョンは路肩に車を停めさせると車から降りた
『ちゃんと逢って来てね。おば様にはシン君の選んだ人を認めてくれるように話してある。
きっと大丈夫だよ。行ってらっしゃい♪』
心の内を隠しチェギョンは笑顔を浮かべると手を振った
そして通りがかりのタクシーに乗り込んでワールド遊園地に向かった
シンはタクシーが見えなくなった後、別れた彼女が現在いる場所に向かっていった
まあね・・・これでシン君が
元カノとよりを戻したなんて言ったら
バカヤローものですな(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!