今日は皇后様に同伴しての公務
宮殿に戻る車の中で皇后様は私に問い掛けた
『妃宮や・・・太子とは上手くいっているのか?』
『えっ?は・・・ぃ・・・』
そう答えながら次第に語尾が小さくなる
上手くいっているも何も私達の間に会話はない
シン君は民間から嫁いだ私を認めていない
『妃宮・・・言葉を交わさずに相手の気持ちが分かるなんて・・・それは何かの幻想だ。
そんなことはあり得ない。そなたたちは失敗するでないぞ。』
そう寂しそうに仰った皇后様・・・ん?会話がないなんて口に出して言っていないのに・・・
皇室に嫁いで何カ月経つだろう
私は私なりにシン君に歩み寄ろうと努力してきた
現にバレンタインデーにだって、生まれて初めてチョコレートケーキを作った
料理長さんが手伝ってくれたけど、超初心者が綺麗なデコレーションなどできるはずもなく
見るも無残なチョコレートケーキを私は祈るような想いでシン君に渡した
≪近づきたい…≫
でもシン君は・・・それを一瞥しあからさまに顔を顰めた
きっと・・・一口も食べて貰えず捨てられたんだ
高校の卒業式を終えて私達は顔を合わす機会も増えた
先日も
『ねえシン君・・・お庭を散歩しない?』
『一人で行けばいい。』
こんな調子だ
いくら私が歩み寄ろうと必死に頑張っても、シン君は私を寄せ付けようとはしない
こんな生き地獄のような日々はいつまで続くのだろうか
それともこれが一生続くのだろうか
苦痛だ・・・はぁ・・・
そう言えばシン君・・・自分はヒョリンからチョコレートを貰ったくせに、私がユル君に小さいチョコレー著上げたら
いい顔しなかった
おかしいよね。自分は良くて私はダメだなんて・・・
それにユル君に贈ったのは、料理長さんに準備して貰ったチョコレートなのに・・・
あ・・・もしかしてその方が喜ばれたのかもなぁ・・・
はぁ・・・私って最悪・・・
ふと窓の外に見えるデパートに目が向く
ああ・・・今日はホワイトデーなんだ
まぁ私には縁のない話
あのチョコレートケーキのお返しが貰えるとしたら、嫌味以外の何物でもないだろうね
世間一般の女の子たちは今日きっと笑ったり悲しんだり悲喜こもごもなんだろうな
私は・・・きっと今日も≪東宮のお地蔵さん≫になるんだろうな
そんなことを考えていた時、マナーモードにしてあるスマホにLineのメッセージが送られて来たことを知らせた
もちろんシン君であるはずがない
シン君は友達にさえなっていないもの・・・
隣りには皇后様が座ってらっしゃる
私はこっそりとスマホを開き、内容を確認してみる
あっ!ガンヒョンからだ
≪ちょっと~アンタの旦那、ホワイトデーを用意してたわよ。≫
えっ?用意してたって・・・どうしてガンヒョンが知ってるの?しかもあの劣悪なケーキにお返し?
やはりお返しじゃなく仕返しかな・・・
皇后様が隣に座ってらっしゃるから返信はできない
するとまた続きが送られてきた
≪メチャクチャ美味しいチョコレートケーキだって。ギョンが毒見させられたのよ。≫
チョコレートケーキに対して・・・チョコレートケーキで仕返しかぁ・・・
≪でもどこで買ったのか教えて貰えなかったのよ。アンタから店名聞き出しといてね♪≫
私はスタンプだけ送り返した
ギョン君が毒見させられた?そしてわざわざ自分で購入したいほど美味しいケーキ?
シン君・・・一体誰に頼んで買ってきて貰ったんだろう
なんだかとても暗い気持ちで、私は≪仕返しのお返し≫が待っている東宮殿に戻っていった
東宮に到着した私は、まず執務室に立ち寄りシン君に公務から戻った報告をしなければならない
『シン君・・・ただいま戻りました。』
『あ?あぁ。ご苦労様。』
それで終わり~?ひょっとしてギョン君が毒見したチョコレートケーキは、ヒョリンへのお返しで
私が留守の間に渡したとか?
もういい・・・自室に戻ろう
自室に戻った私は外出着から普段着に着替えて、ソファーに寝そべった
もうすぐ夕食の時間だ
そうしたらまた、何のおしゃべりもせずに黙々と食事をするのだろう
世間向きは夫婦なのに、私とシン君の間は友達よりもずっとずっと遠い関係だった
<トントン>
誰だろう。チェ尚宮さんかな
なんか疲れてこのまま眠っちゃいたい気分だった身体を起こして、私は部屋のドアを開けた
ん?シン君だ
ん?その腕に持っている箱は何?ひょっとして?
私はシン君の顔を見上げた
『邪魔していいか?』
『うん。どうぞ。』
ソファーに向かい合って座った私は、シン君の持っている箱を凝視する
するとシン君はそれをテーブルの上に置いて、私に差し出した
『今日はホワイトデーだから・・・』
あ・・・やはり仕返しのお返しだ。私のだったんだ♪
『あんな食べられないようなケーキにお返しなんていいのに・・・』
そう言いながらも私は誘惑に勝てず、その箱を開けてみる
う・・・うわぁ~♪ギョン君がお店を知りたがった理由も頷ける
『あのさ・・・私、公務で疲れて甘いもの食べたくて仕方ないの。食べてもいいかな?』
『食事前だぞ。』
『全然平気。』
構わず私は中に入っていなスプーンですくってそのケーキを口い運んだ
わ・・・わわわわわ・・・・このトゲトゲだらけだった心まで溶かすほどの、優しい甘さが口いっぱいに広がった
無心になって私はそのチョコレートケーキをひとつ食べ終えた
美味しい~~~❤美味しすぎるぅ~~~♪
ヤバイくらい美味しいの。これ・・・
ふたつめに手を伸ばそうとした時、シン君に止められた
『食事に響くだろう?』
『でも食べたい。』
『そんなに・・・美味しいのか?』
『うん。あの劣悪なケーキを贈った自分の愚かさを噛みしめているよ。
こんな美味しチョコレートケーキ初めて食べた。
でもよかったのに・・・バレンタインに贈ったケーキは、シン君の口に合う代物じゃなかったでしょ?』
『見た目はな。だが・・・味は・・・美味しかった・・・』
美味し・・・かった?そんなこと言ってくれなかったじゃん!
シン君から飛び出した驚きの発言にあまりにも仰天し、私はその場でシン君を見つめたまま
固まってしまった
食欲全開のチェギョンは
シン君のくれたケーキの美味しさに夢中になったようです。
あと一話で完結ですよ~♪
次回は多分木曜日に❤
いやいや春ッて食欲出たっけ?
秋ならわかるけど・・・
管理人食欲全開で
ちょっと不安になってます。(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!