このお話は皇太子夫妻が
まだ心を通わせていない頃の
春休みの出来事である
その日、皇太子殿下の自室では
甘い香りが立ち込めていた・・・
『チェギョンの奴がバレンタインー^にくれたあのへんてこな物体・・・
どうやら料理長監修の元作られたようだが、あれがケーキと呼べる代物か?
まぁ・・・見た目は酷い物だったが、味は何とか食べられたが・・・あいつの美的センスは一体どうなっているんだ
くっ・・・仕方がない。俺が手本を示してやることにしよう
幸いチェっ四は皇后様に同伴して公務に出かけているしな。』
半ば嫌がらせのような気持ちだったのかもしれない
俺は自室に大きな調理台と調理器具を持ち込み、早速作業にt取掛かる
小ぶりの耐熱容器にチョコレートスポンジの生地を流し込み、それをオーブンに入れ焼けるのを待つ間
チェギョンからバレンタインの時に貰ったチョコレートケーキの事をまた思い出す
あまりにも酷いビジュアルに、毒見を命じたコン内官でさえ≪妃宮様が心を込めて作られたものですから…≫と
断られたほどだった
そう言えば・・・まるで催促するように東宮に来ていたユルも小さな箱を貰っていたが・・・
あれもケーキだったのではないか?
っつ・・・一体どういうつもりだ!夫のある身で他の男にケーキを渡すなど・・・
チョコレートとバター焼ける香りが、部屋中に漂う
あぁ・・・この部屋に換気扇などはない
窓を開けよう
オーブンの中から取り出したチョコレートケーキは、実に美味しそうな匂いを放っている
あまり甘い物は好きではないが、自分で作ったものは別だ
味見と称してひとつ食べてみる
美味い・・・シン・チェギョン・・・こういうのをケーキと呼ぶんだ
いやいやこれで終わるわけがない
これではあまりにも芸がない
焼きあがったカップケーキの上に溶かしたチョコレートを流し込み、固まる寸前に表面に模様を描く
そして…食用の金箔をちりばめて完成だ
どうだ!この芸術的な出来栄え・・・その辺りのパティシエになど負けはしない
いや待てよ・・・
自分ではそう思っていても、世間は違うのかもしれない
こういう時に役に立つのは親友のチャン・ギョンだ
俺は早速ギョンに電話を掛けてみることにした
『ギョンか?』
『シン~卒業式以来だね。どうしたの?』
『今・・・暇か?』
『いや・・・忙しいけど・・・』
『電話している時間があるのだから暇なのだろう?すぐに東宮に来い。』
『はぁ?』
『いいからすぐに来い。』
『ちぇっ・・・わかったよ、仕方ないなぁ・・・』
無理を言っているのを承知で我を通してしまうのは、俺が俺様気質のせいだろう
さほど待つこともなくギョンは東宮を訪れた
コン内官に案内されリビングに入って来たギョンは、なんだかとても落ち着かない様子だった
本当に・・・忙しかったんだな。すまない
『一体何の用事だよ。いきなり東宮に来いだなんてさ~。』
チェ尚宮がコーヒーを出した後、俺は先ほど作った力作を皿に載せギョンの前に出した
『食べてみろ。』
『おぉ?チョコレートケーキじゃん。食べていいの?』
『あぁ。』
『おぉ~金箔入りの高級品だ。いただきま~~す♪おっ?う・・・うまっ!
これ・・・どこの店で買ったの?』
『あぁ?それは…ちょっと言えない。』
『なんでだよ~こんなに美味いケーキ、ガンヒョンにも食べさせたいのに~~!』
『くくっすまないな。そうか。そんなに美味しかったか。』
『うん。メチャクチャ美味い。』
『そうか。じゃあ機会があったらまた用意しよう。』
『うん。楽しみに待ってる。ところで俺を呼んだ理由は?』
『そのチョコレートケーキを食べて感想を聞きたかっただけだ。』
『それ・・・だけ?』
『あぁ。』
『だったら俺…もう行ってもいいかな?車にガンヒョンを待たせているんだ。ガンヒョンも警護の人に
監視されて居心地悪いだろうから・・・』
ガンヒョンとデート中だったのか
『それはすまなかった。もう行ってくれ。』
『うん。これからホワイトデーのイベントを遂行しないとならないからね~♪
じゃあシンまたね♪』
嬉しそうな足取りでギョンはリビングから出て行った
恋愛中というのはああいうものなのだろうな
そう言ったセオリーが一切なく婚姻してしまった俺達には、実に羨ましい話だ
ん?羨ましいだと?誰がだっ!羨ましいはずがない
自室に戻った俺は、作業の片づけをしようと洗面所に使用した調理器具を持ち込んだ
すると・・・それを見ていたかのようにチェ尚宮が部屋に入ってきて、俺に苦言を呈す
『殿下・・・使用した調理器具を洗面所で洗うのは、衛生面でも問題があります。
何より洗面所が詰まる原因となります。
殿下が最後までご自分の力でやり遂げよとするお気持ちはわかりますが、
これらの物は私が片付けさせていただきます。』
『そうか。すまない。』
後片付けまでして初めて、自分で作ったと自慢できる
少し気が咎めた俺はチェ尚宮にケーキをひとつ手渡した
『これは・・・余計な仕事を増やした詫びの気持ちだ。』
チェ尚宮は手に載っや小さなチョコレートケーキの出来栄えに相当驚いた顔をする
『これを殿下が…おつくりになったのですか?』
『あぁ。』
『ありがたく頂戴いたします。』
さて・・・チェギョンがこれを食べたら一体どんな顔をするのだろう
チェギョンが公務から戻るのを、心待ちにしている俺だった
あぁ・・・久し振りに創作したら
実に時間がかかるものですな(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
今日は・・・あの哀しい出来事から8年。
もしかして亡くなられた方の中には
このブログに来てくださっていた方が
いたかもしれません。
にゃふーでは最後のホワイトデーのお話になります。
もう逢えない皆さんにも届くといいなって
心から思います。