チェギョンとガンヒョンが無事就職内定をした年の暮れ、二人は長く世話になったカフェを去ることとなった
そろそろ二人も入社に向けて準備しなければならない
カフェの責任者は大変残念がったが、『いつでも顔出しますから~♪』そんなチェギョンの言葉を聞き
二人を静かに見送った
春の足音が近づいてくる頃、皆は揃って大学を卒業した
長い間ずっと一緒にいたチェギョンとガンヒョンは、別れを惜しむ様にいつまでも抱き合っていた
『チェギョン・・・アタシがいないと寂しいの?』
『寂しいに決まってるよ~ガンヒョン~~~!』
『あのね・・・アタシの配属されたのは秘書課で、しかも副社長になるギョンの秘書なのよ。
暇さえあればあのカフェを訪れて、アンタたちを呼びつけるに決まってるでしょう?』
『あ~ギョン君ならやりそうだ~~。』
『お互い其々の道で頑張ろう。』
『うん。頑張ろうガンヒョン♪』
別れと言ってもただ職場が違うだけの事・・・これからもチェギョンとガンヒョンは、互いを励まし合う存在で
あり続ける事だろう
四月になり・・・イ財閥の入社式が行われた
入社と同時に専務理事に就任したシンは、重役たちと一緒に入社式会場のホールの壇上に座っていた
採用試験の時と同様に、新入社員シン・チェギョンの名が呼ばれると、会場内はざわめいた
(あ~ここでも・・・)
そう思いながらもチェギョンは動じることがなかった
(私は正々堂々と採用試験に合格したんだからね!)
新入社員としてよりも専務理事イ・シンの恋人としての方が名前が知られているチェギョン・・・
(仕事で勝負するしかないよね。)
シンは壇上の上からでも遠慮のない微笑みをチェギョンに向ける
(あ~もぉ~そういうのダメだって~~!)
そんな心の声がシンに聞こえるはずもない
新入社員として働くようになり、チェギョンは忙しい毎日を送っている
だがそんな中・・・社内電話が日に何度もかかって来るのには閉口した
『シン・チェギョンさん・・・私の部屋へ。』
『はっはい!』
自分の席を立ちあがるとチェギョンはオフィスから出ていく
その背中に先輩社員は冷やかしの言葉を投げかけた
『チェギョンさん、またお呼び出し?』
『すみません。すぐに戻りますので~~!』
急ぎ足でチェギョンは役員の部屋がある階に昇っていく
そして専務室のドアをノックする
<トントン>
『シン・チェギョンです。お呼びでしょうか?』
『どうぞ。』
その部屋の中に入り扉を閉めた瞬間・・・チェギョンは膨れっ面で抗議する
『シン君~~もぉ!一体一日に何度呼んだら気が済むの?』
『お前のデスクをここに運んで、ここで仕事したらどうだ?』
『冗談じゃないよ。全く仕事にならない~~!もぉ…先輩からも嫌味言われちゃうんだからね。
呼び出しは一日に一回だけにして!』
『だったら昼休みは俺と一緒に食事しよう。』
『それもダメ!昼休みは打ち合せしながらご飯食べるんだから。ねっ♪アフター5はシン君に空けているでしょう?
少しは私の立場も理解して!』
『解ったよ。呼び出しは一日一回にする。』
『じゃあ仕事に戻るね。』
『あ・・・待て!チェギョン忘れ物だ。ちゅっ❤』
『///もぉ~!!馬鹿っ!』
このような有様ではチェギョンも仕事に身が入らない
だがチェギョンの抗議が功を奏し、会社での呼び出しはその後一日に一回となった
このことによりチェギョンは仕事に打ち込むことができ、侵入社員でありながら大きな仕事を任されることとなった
入社から三カ月が過ぎたある週末
今日はシン家を招いてのホームパーティーの日だ
シンは朝から一番上質なスーツに着替え、いつになくそわそわとし何度もポケットに手を入れた
そんな様子を見逃す母ミンではない
『シン~~?そこにな~~にかいい物が入っているようだけど~~?』
『えっ?いえ・・・あの・・・別に・・・』
『まぁ~隠し事なんておかしいわ。見せなさい。』
『あ・・・』
できればその時まで内緒にしておきたかったシンだが、ミンの目を欺くことはできそうにない
仕方なく今日の為に用意した物をポケットから出すとミンに見せた
『あら・・・何かしら~?』
ミンはその小さなア箱を開けてみる
『まぁ~♪シン・・・今日プロポーズするつもりなのね?』
『ええ。お母様・・・』
『でもぉ~随分小さな石ねえ・・・イ家の跡取りならこの10倍くらいの石をどど~~んと贈るもんじゃないのかしら?』
『お母様・・・いいんです。小さくてもグレードは最高級ですから。
それにそんな大きな石の指輪を贈ったら、チェギョンの華奢な指には似合いませんしね。』
『ふぅ・・・そうなの?』
『そうです。それに自分で稼いだ三か月分の給料で買ったんです。何より尊いと思いませんか?』
『確かにそうね。頑張りなさいシン♪』
やがてイ家の庭に見慣れたポンコツ車が入って来る
どうやらシン家の家族がやってきたようだ
イ家の家族は全員でシン家の家族を出迎えた
『ようこそいらっしゃいました。』
『奥様お邪魔いたします。』
『ナムギルさんお元気でしたかな?』
『はい。とても元気です。ご無沙汰してしまって・・・』
『さぁ~皆さん、お庭でバーベキューパーティーにしましょう。』
ミンに案内され準備の整っている場所に連れられて行く・・・
『さぁ…まずは皆さん・・・読み物を手に取ってくださいな。』
思い思いの飲み物のグラスを手にした六人・・・
『乾杯~♪といきたいところですが・・・その前にちょっと一大イベントがあるそうですの。おほほほほ~~~♪』
ミンが高笑いしたのを合図に、シンはテーブルの上に今持ったばかりのグラスを置くとチェギョンの前に立った
チェギョンはその意図が分からずキョトンとした顔つきだ
更にシンはチェギョンの前に跪くと、ポケットの中に入った指輪の箱を開けチェギョンに差し出した
『シン・チェギョン‥・交際を始めてからもうすぐ四年になる。
そろそろ・・・そんな時期なんじゃないかなと思っている。
生涯あなたのしもべになります。結婚してください!』
いつかは来ると思っていたその日・・・だが今日がその日になるとは思ってもみなかったチェギョンは目を見開き
驚愕の表情をする
そんなチェギョンにミンは催促するかのように囁いた
『チェギョンちゃん・・・お返事は?』
『あ・・・はい。そうですね。シン君・・・喜んで~~♪』
チェギョンから快諾の言葉を受け取り、シンはその場から立ち上がるとチェギョンの左手薬指にその指輪をはめた
そして徐にチェギョンを抱き締めると。喜びのあまりその場で一回転した
『やったー!!』
交際から四年…覚悟ができていたイ家シン家の両親は、そんな二人に惜しみない拍手を贈った
きっとチェギョンは面接で宣言した通り、結婚しても仕事を続けるに違いない
そしてイ財閥の販売促進部で、その美的センスに磨きをかけることだろう
それと同時にイ・シンの妻として、シンを支えるに違いない
二人の婚約を知ったギョンとガンヒョンは、競うように結婚に向かって突っ走るに違いない
愛し合う二組のカップルに、これ以上ない幸あらんことを祈る
あなたのしもべ 完
短編の筈だったのに
長々とお付き合いいただきありがとうございました❤
あまり苦しいシーンがなかったので
読みやすかったのではないかと思います。
また次のお話は構想中なので
金曜から始められるかわかりません。
しばしお待ちくださいね~~♪
お付き合いいただき感謝いたします。
~星の欠片~ ★emi ★