迎えに来た家の車に乗りギョンがイ家を去ってから、ほんの数分後の事だった
シンの携帯が鳴り響いたのだ
『あぁ?つい今帰ったばかりなのにギョンのやつ一体どうした?』
訝しく思いながらシンは電話を取った
『なんだ?ギョン・・・』
電話の向こうのギョンは慌てた様子で言う
『シン・・・お前のしもべなんだけど・・・』
『しもべ?チェギョンがどうかしたのか?』
『彼女下り坂でスピードが落とせなかったらしくて、道路から転落した。』
『なっなに?』
『いや・・・転落したといっても高さはさほどない筈だから大丈夫だとは思う。
怪我をしているかもしれないから、うちの車で送って行こうかと思ったんだけど・・・
ほら・・・お前に≪手を出すな≫って言われただろ?だから声も掛けないで通り過ぎたけど・・・
心配だから連絡だけは入れておく。』
『そうか。ありがとう。すぐに行ってみる。』
愛車のキーをポケットに入れようとしたシンを、電話を聞いていたミンが咎めた
『シン・・・あなたはお酒を飲んでいるでしょう?車でどこに行くつもり?』
『お母様・・・もう酔いはさめました。大丈夫ですから。』
『ふざけないで!イ財閥の跡取りが飲酒運転だなんて・・・あなたの素行ひとつで
我が家は足元を掬われるのよ!』
『あ・・・ですが、先程ここにいた者が怪我をしたかもしれなくて・・・』
『だったら私が行くわ。』
『ですがお母様は・・・』
『大丈夫、顔を見たからわかるわ。』
顔を見たどころではない・・・本当はすっかり意気投合したチェギョンの一大事なのだ
有無を言わさず運転手のキムを連れ、ミンはワンボックスカーにに乗り込んだ
とりあえず持ってきた救急箱を膝の上に置き、チェギョンの転落現場に急ぐ
車の中でミンはキムに念を押した
『キムさん・・・今から逢う娘さんは、私をイ家のメイドだと勘違いしているみたいなの。
だから奥様とは呼ばないで頂戴。』
『かしこまりました奥様。』
『だから~奥様と言っちゃあダメなの!』
『は・・・はい!』
緩い下り坂を降りていくと平坦な道に降りる直前に長いカーブがある
ミンは目を凝らしチェギョンの姿を探した
『いた!いたわムさん、車を停めて!』
『はい!』
ミンは車から降り道の端からチェギョンに声を掛けた
『チェギョンちゃん・・・大丈夫?』
すると座り込んでいたチェギョンは顔を上げ、驚愕の表情で問い掛けた
『お・・・おばさん!どうしてここに?』
『えっ?あ・・・坊ちゃんのお友達から連絡が来たのよ。それで・・・私が様子を見に来たというわけ。』
『わ・・・良かった。自転車が引き上げられなくて困っていたんです。』
『私が手を貸すわ。キムさんも手伝って。』
『は・・・はい。(奥様・・・)』
チェギョンが押し上げた自転車を、キムが受け取り引き上げる
それからミンはチェギョンに手を差し伸べ、チェギョンを救出した
『はぁ~助かりましたおばさん。』
『あらあら・・・あちこち擦り傷だらけだわ。痛むところはないの?』
『あちこち痛いですけど、大きな怪我はしていませんから大丈夫です。』
『まぁとにかく車に乗って。』
『えっ?』
『送っていくわ。』
『あ・・・でも自転車が・・・』
『もうチェギョンちゃんより先に車に乗り込んだみたいよ。』
『あぁぁ・・・すみません~~!』
車の最後部にチェギョンの自転車を載せたワンボックスカー
チェギョンはミンに勧められるままに後部座席に乗り込んだ
『あら~チェギョンちゃん、一応病院に行った方がよいのでは?』
『いえいえとんでもありません。こんなのへっちゃらですから~!』
『じゃあ…消毒だけでもね。』
ミンは洗浄麺でチェギョンの膝や腕の傷を拭い、その後消毒薬をつけた
『イタタタ・・・』
『ほら!痛いんでしょう?もぉ・・・女の子なのに傷が残ったら大変じゃないの。』
『大丈夫ですって。少々の傷があっても気にしないおうちに嫁に行きますから~♪
あ・・・その前に相手を探さなきゃ~♪しかしおばさん、手際がいいですね。』
『ええそうでしょう♪昔ね・・・シン・・・坊ちゃんがよく怪我をしてきたものだから。』
『え~~っ!あのイ・シン君はそんなに腕白だったんですね。今とはイメージが違います。
さてはおばさん・・・イ・シン君のばあやさんなのですか?』
『(ば・・・ばあや?このアタクシが?ほほほ・・・)ほほほ・・・まぁそんなところよ♪』
本来であれば目を吊り上げてこんな無礼な事を言った相手は、けちょんけちょんにやっつけてしまうミンなのだが
なぜかチェギョンにはそんな無礼さえも許してしまう不思議な魅力があった
一通り手当てして貰ったチェギョンは、キムに自宅の場所を教える
『すみません。お手数かけてしまって・・・』
『いいんですよ。』
世間話をしながらチェギョンの家を目指すイ家のワンボックスカー
通っている大学を通り過ぎ、最寄りのファミレスの前を通った時チェギョンはミンに告げた
『おばさん、あのファミレスですよ~♪私がバイトしているのは・・・』
『まぁそうなの?今度食べに行こうかしら~♪』
『あ・・・でもお肉はやめた方がいいですよ。あのお宅で食べたようなお肉は・・・多分出ないと思います。』
『いいのよ~~♪今度絶対に行くわね♪』
『はい!お待ちしておりますぅ~♪』
それからまだしばらく車は走っていく・・・
そして漸く住宅街と思しき狭い道に入って行こうとする
その時チェギョンはキムに声を掛けた
『あ!この先は様いですから大きな車は通れません。ここで降ろしていただければ結構です。』
『でも・・・大丈夫?自転車・・・壊れちゃってるでしょう?』
『すぐ先に馴染みの自転車屋さんがあるんです。そこに修理に出して帰ります。』
『ねえところで・・・ご自宅からイ家まで自転車でどのくらい掛かったの?』
『ん~~軽く見積もって一時間ってところです。』
『まぁ!この暑い中そんなに長時間自転車で走るなんて・・・次からは迎えに来てくれるように言うのよ。』
『ま・・・まさかぁ~!おばさんお忘れですか?私・・・しもべですよ。あはははは~♪
では本当にありがとうございました~♪』
車から降り自転車を横に置いたチェギョンは、ミンとキム運転手にペコリと頭を下げ車が立ち去るのを見送った
走り去る車の中で、後ろを振り返ったミンは心の中で呟いた
(まったくなんて可愛い子なのかしら~♪
そんな子をシンったらしもべにしているだなんて・・・。今日来た娘達に爪の赤でも煎じて飲ませたい気分だわ。
今度シンがあの子に不当な扱いをした時にはこのアタクシが許さなくってよ~♪)
既にアルマーニャの一点ものを汚した罰は、十分償ったようにミンには思えた
ミンはすっかりチェギョンの事が気に入ってしまったらしい
帰宅したミンをシンは待ち構えて問いただした
『お母様・・・シン・チェギョンに怪我はなかったのですか?』
『怪我してたわよ。病院に行こうって言ったんだけど、あの子が行かないっていうものだから
家の近くまで送り届けてきたわ。
あの子・・・自転車で一時間も掛けて家まで来たそうよ。その自転車も壊れちゃって・・・どうするのかしら
可哀想に・・・』
嫌味たっぷりなミンの言葉に、シンもさすがに責任を感じてしまったらしい
その晩・・・悪友のチャン・ギョンに電話を掛けた
『ギョンか?』
『ああ・・・今日はお疲れ。あのしもべはどうなった?』
『お母様が救出に行ってくださった。』
『なにっ?お前んところのおばさんが?チェギョン・・・苛められたんじゃないのか?』
『とんでもない!チェギョンにすごく同情的だ。まるで俺が悪者みたいだ。』
『まぁ今回は・・・十分悪者かもな。』
『ところでギョン・・・明日の晩、食事に行かないか?』
『お前のおごり?』
『あぁ。もちろん・・・』
『行くよ。待ち合わせはどこにする?』
『大学近くのファミレスで・・・』
『ファミレス?お前がファミレスで食事?』
『あぁ悪いか?』
『いや・・・悪くはないけど・・・お前の口に合うのか?』
『口い合う合わないは関係ない。しもべのバイト先がそこなんだ。』
『あ~つまり罪悪感があるから様子を見に行くってわけ?』
『まぁな。』
『仕方ないな。付き合ってやるよ。』
そしてシンの誘いに乗ったことで、ギョンの運命も大きく変わることとなる
そしてその頃・・・ミンはイ家の執事であるコンにシン・チェギョンの調査を命じていた
昨日から夕方になるとゲリラ豪雨!
さっき雷が落ちるの見ちゃった。
怖っ・・・
そしてすぐにピーカン・・・
アタクシ・・・蚊と格闘しながら
草取りしてきます(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
少しは涼しくなるとよいのだけど却って蒸し暑い!
てか!短編で終わる気配が全くない・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!