『おばさ~~ん、お肉とお野菜追加お願いしま~す!』
もう何度目になるだろうか・・・チェギョンはイ家の勝手口からミンに向かって声を掛ける
『はいは~い♪』
そして大皿に盛りつけた肉と野菜を持ち、チェギョンの元へ向かった
『あなた・・・チェギョンちゃんって言ったかしら?』
『はいそうです。わぁ~名前を覚えてくださったんですか?』
『ええもちろんよ。まだ手が空かないの?』
『はい・・・みんな食欲旺盛で・・・』
『そうなの?』
『じゃあ私いきますね~♪』
勝手口から大皿を両手に持ち、チェギョンは庭に向かって急ぐ
『お待たせしました~!』
『遅いぞしもべ・・・』
『そんなこと言われても、こちらのお庭が広すぎるんですっ!』
『まぁいい。じゃあ次は酒を持ってこい。』
『お酒?もう十分飲まれたのでは?ほら・・・取り巻きの女の子たち、ただでさえ露出が多いのに
これ以上飲ませたら脱ぎそうな勢い・・・』
『しもべの口出しする事じゃない!いいから早く持ってこい!』
『ほいほ~~い!』
確かに口出しする事ではないが、チェギョンはシンの連れている娘達に少し軽蔑の視線を向けた
(あ~あ!色香とだらしないのは全く別物なんだけどなぁ・・・
こんな女の子たちが将来上流階級の奥方に納まるなんて世も末。
この家の奥様はあれを見ても…叱らないのかな。不思議~~!
まぁ私には理解できない世界よね。大学にアルマーニャのスーツでご登校だもん!)
そのスーツを汚した代償に≪しもべ≫となっている自分を戒めるように、チェギョンは小走りで勝手口に向かった
『おばさ~~ん、お酒を持ってくるように言われましたぁ。』
『えっ?もう十分な量を飲んだのでは?』
『ん~~私もそう思うのですけど・・・しもべに口出しする事ではありませんから~。』
『でもぉチェギョンちゃん・・・あなた何も召し上がってないでしょう?』
『ですからしもべはバーベキューに参加する資格などありません~~!』
『もぉっ!とっくにお昼過ぎているのよ。お腹空いたでしょう?同じお肉とお野菜を焼いてあるの。
冷めないうちにお食べなさい。』
『えっ?でもっ・・・私はお酒を運んでいかないと叱られてしまいますぅ・・・』
『私が持って行ってあげるから~チェギョンちゃんは食べなさい。
こんなに暑い中食事もしないで行ったり来たりでは
熱中症になって倒れてしまうわ。ねっ♪召し上がって・・・』
『ですが・・・』
『いいの♪ほら早くそこに腰掛けて~召し上がれ♪』
『じゃあおばさんのご厚意に甘えて♪』
チェギョンは勝手口からイ家に上がり、その場に置かれたテーブルに着いた
『わっ!本当にさっき運んだお肉と同じもの~~❤
はぐっ♪きゃぁ~~~お口の中で蕩けるぅ・・・いやいやマジでこんな上質なお肉、うちで食べたことないよ。
これがお友達とのガーデンパーティーに出されるお肉なの?
生活レベル違いすぎ~~!』
そしてグラスにたくさん氷の入ったお茶を口にする
『ひぃ~~キンキンに冷えてる。美味しい~~♪しかしいいのかな。あのおばさんにお願いしちゃって・・・
しもべ稼業でやってきたのに、こんなに優しくして貰っちゃって・・・
こんな立派なお屋敷のメイドさんにも、いい人はいるんだな~♪』
労働の真っ最中にこんな優遇を受けていいものかと悩みながらも、ミンから施された厚意に
幸せを感じるチェギョンだった
一方・・・ガーデンパーティーで盛り上がっている息子と友人たちの元へ酒を届けに来たミンは、冷笑を浮かべ
集団を睨みつけた
『なあに?女の子がこんなに来ていながら、飲み食いするばかりなのね。シン・・・あなたの連れている女の子は
このレベルなの?』
『お母様!ここにはいらっしゃらなくてよいと・・・』
若干酔いが回っていたシンだったが、その酔いは一気にさめた
『おば様~折角楽しんでいるんですから~固いこと仰らないで~♪』
馴れ馴れしく自分に話しかけたミン・ヒョリンに、ミンは冷たく言い放った
『おば様?馴れ馴れしいのね。今時の若い子ってそうなのかしら?
普通は女の子が気を使って、お手伝いするものでしょう?
なのになあに?そのチャラチャラした格好。夜遊びに来たみたいに露出が多い服だこと!
言っておきますけど・・・ここにいる男の子たちはみんな大会社の社長令息ばかりよ。
チャラチャラした女の子なんて・・・遊び相手にしかならないことを知っておきなさい。』
これにはミン・ヒョリン他女性陣も冷や汗が流れたようだ
『あ・・・おば様すみません。私達お手伝いしますわ。』
『結構よ!そんな恰好のあなた方に来られると…目障りよ。』
乱暴な仕草でテーブルの上に酒を置くと、頭から湯気を噴き出しそうな勢いで戻っていったミン
さすがのシンも母から大激怒されバツが悪くなったようだ
『お開きだな。』
『ああそうだなシン・・・これ以上おばさんを怒らせちゃったら後が怖い。』
『じゃあ私達は・・・失礼するわ。』
この期に及んで後片付けをしようともしない女性陣は、家の車を呼びつけ尻尾を巻いて逃げ帰った
怒りの形相で勝手口に戻って言ったミンは、チェギョンの満面の笑みに迎えられた
『おばさ~~ん、すんご~~く美味しかったです。お茶も冷えていて生き返った気分。
ご馳走様でした~~♪』
『まぁ!綺麗に食べてくれたのね。』
『こんな美味しいもの残せませんよぉ。さて・・・しもべは任務に戻らないと・・・』
『もうお開きになりそうよ。』
『えっ?そうなんですか?あ~よかった。女の子たちがあれ以上醜態晒さずに済んで・・・』
『チェギョンちゃんもそう思った?』
『はい。あれはちょっと危険でした。じゃあおばさん・・・任務に戻りますね~♪』
足取りも軽くシンの元へ走っていくチェギョン
するとそこには既に女性陣はおらず、迎えの車を待っている男性陣だけだった
『しもべ・・・もう帰っていいぞ。』
『お開き?じゃあ・・・これを片付けて帰りますね~♪』
手際よく皿を重ね勝手口に運んでいくチェギョン
そしてすべての皿を運び終えた後、勝手口で声を掛けた
『おばさ~~ん!洗いもの手伝いますよ。先程私がいただいたお皿も洗ってないし~♪』
『あら・・・これだけ運んで貰ったら十分よ。』
『いえいえそうはいきません。ちょっと失礼します。』
チェギョンはテーブルからシンクに皿を運び、手際よく洗い始めた
『あらあらいいのよ。そんなことまでしなくって・・・』
『いいんですって。私もご馳走になったことですし~♪』
(まぁ~シンの取り巻きの女の子とは全然違うわ。あの子たちは後片付けもしないでさっさと帰ったじゃないの。
もうホントシンったら・・・女の子の趣味が悪すぎるわ。)
『ところでチェギョンちゃん・・・夏休みに入って何をしてらっしゃるの?』
『私ですか?大学の課題と・・・バイトしてますよ~♪』
『まぁアルバイト?どこでしてるの?』
『大学近くのファミレスです~~♪』
『まぁ~そうなの?だから手際がいいのね。』
『はい。同じ大学の親友と一緒にバイトしているんですが、楽しいですよ~♪
お金も手に入るし社会勉強にもなります。』
(あら・・・社会勉強になるならシンにもさせようかしら?)
『さてと・・・このお皿とグラスを拭いたらおしまいです。』
ミンはなんだかとても楽しそうにチェギョンと二人で皿を拭く
イ家のメイドたちには、こちらに来なくていいと命じ・・・既にメインのキッチンで夕食の準備に取り掛かっていた
女主人ミンの命令に従わない者などいないのだ
『終わりました~♪おばさん・・・今日はご馳走様でした。』
『いいえ~チェギョンちゃんこそお疲れ様♪』
『しもべなのでまたお邪魔することもあると思います。その時はまた助けてくださいね~♪』
『ええもちろんよ。またいらっしゃいね。私が助けてあげますからね~♪』
本当はミンに食器を拭かせるなど恐れ多いのだが・・・この場合チェギョンはミンをイ家のメイドだと
勘違いしているので無礼には当たらない
ミンに挨拶をした後チェギョンは再びシンの元へ戻り、任務完了の挨拶をする
『じゃあ・・・しもべは帰りま~す♪』
『あぁご苦労様。また連絡する。』
『えっ?まさか夏休み中にコンビニで何か買ってここまで届けろとか言う?』
『いや・・・ここまで届けろとは言わない。』
『あ~よかった。じゃあまた~♪』
ぺこりと頭を下げた後、自転車が置いてある木の下まで歩いていくチェギョンを見ていたシンとギョンは、
自転車に跨って颯爽と帰っていくチェギョンをに思わず笑みが零れた
『シン~あのしもべって面白い女だね。』
『あぁ・・・相当面白い。言っておくがあいつは俺のしもべだから、お前は手を出すなよ。』
『チッ・・・俺の女の趣味とは違うから~!』
ほろ酔い気分も覚めてきた昼下がり・・・イ家の庭には爽やかな風が吹き抜けていくのだった
おふぅ様の誘惑がね~更新が遅くなった理由(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
台風の被害はありませんでしたか?
管理人地方は警戒していたけど
被害もなく過ぎて行ってくれました。
まだ風はなんとなく台風っぽいけど
以前より過ごしやすいです❤